[過去ログ] 宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど (1002レス)
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561: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/20(日)14:32 ID:q4IweA7h0(1/8) AAS
>>560
長らくお読みいただいてありがとうございます!

この時期は機体の変遷が早くて、マラサイやジムクゥエルではもう厳しいですからね…高性能試作機や改修機といえども。自分としてはタイトル回収をした段階でマラサイの役目は終えたかなと。

あと数話でこの物語には一度区切りを着けます。その先はまだ考えていませんが、語る余地は大いにありそうですね。沢山想像を膨らませてもらえればと思います!
562: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/20(日)14:33 ID:q4IweA7h0(2/8) AAS
 どれだけの時間が経ったのか。私はベッドの上で目を覚ました。白い天井がまず目に入る。身体は起こせないし、どうも左側の視界が覆われている様だ。
 今いるのは病室らしい。看護師らしき女性が私の意識確認を行うと、バタバタと出ていった。戦いはどうなったのか。考えがまとまらないうちに周りが騒がしくなってきた。
 やってきた医師の男と簡単にやり取りしていると、外も何やら騒がしくなってくる。
「サム!!」
 ドアを乱暴に開ける音と共にメアリーの声がした。制止する看護師をすり抜けて、ベッドの前で立ち止まる。横になっている私に飛びつこうとしたところで後ろから首根っこを掴まれていた。付いてきたらしいアトリエ中尉だった。
563: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/20(日)14:33 ID:q4IweA7h0(3/8) AAS
「…よお。起きたな」
「中尉か…。私は…」
「あんた、1週間は寝てたぞ」
「そんなにか…!」
 思わず私は笑った。
「心配したんだからね…」
 私は、そういって泣きじゃくるメアリーの頭を撫でた。
「大尉…!お目覚めですか」
 ワン中尉も入室してきた。
「迷惑をかけたみたいだな」
省3
564: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/20(日)14:34 ID:q4IweA7h0(4/8) AAS
「…我々は、勝ったのか?」
 静かになった個室で、私はまた天井を見上げていた。アトリエ中尉はベッドの傍の椅子に腰掛けた。
「ああ、基地は完全に占拠したよ。ここはその医務室だ」
「他の皆は?」
「何だかんだ全員無事!重傷を負ったのはあんただけだな」
「皆優秀なメンバーで良かった。引き際を心得ていなかったのは私だけの様だ」
 私が笑うと中尉も鼻をこすった。
「まぁ…機体が中破で済んだのはサドウスキー大尉だけで、他は皆スクラップにしちまったけどな」
「ガンダムももう駄目か?」
「武装を全て喪失、両腕欠損にフレームもガタガタ…。これでワンオフ機だぜ?作り直した方がまだ安い」
省4
565: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/20(日)14:34 ID:q4IweA7h0(5/8) AAS
「敵隊長機のパイロット…」
 私が口を開くと、中尉が難しい顔をして腕を組んだ。
「あいつなぁ…相当な腕だったのは認める」
 私には、あのパイロットが喋った気持ちがわからなくもなかった。あの戦いで最期だとやつ自身が悟っていたのかもしれない。
「…やつの言っていたことは、ある面では間違っちゃいない」
「だとしても、勝ったのは俺達だ」
 少し食い気味に中尉が言った。
「ああ、勝った。だが、逆になっていてもおかしくなかったとも思う。…何となく、似通っていたな、あの男と私達は」
「…言いたいことはわかるぜ。もし仲間だったなら、ああいうやつともうまくやってたかもしれねぇ」
 中尉が大きく溜息をついた。
省7
566: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/20(日)14:35 ID:q4IweA7h0(6/8) AAS
 それからしばらくはベッドの上で過ごしたが、怪我そのものはそこまで大したものではないと感じていた。左上半身と顔の火傷が主な治療箇所で、そのまま跡が残りそうだった。
 短い時間だが、見舞いに来てくれたバッカス少佐達にも状況の詳細は聞いた。どうも今回の作戦で、この辺りのティターンズ勢力はあらかた一掃出来たらしい。残る大きな拠点はキリマンジャロか。
 攻略へ乗り出すには我々も戦力を整えねばならない。それに、宇宙に上がればグリプスやゼダンの門などまだまだ敵の勢力は力を蓄えている。
567: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/20(日)14:36 ID:q4IweA7h0(7/8) AAS
 とある朝、身体が鈍ってはいけないと思い、許可をもらって散歩がてら基地の外に出てみた。ここは基地として大規模に手を加えられてはいるものの、まだまだ自然の多い場所だった。
 私は木々を背に断崖から見える海を見つめていた。
「あら、ワーウィック大尉。散歩ですか」
 後ろからやって来たのはシェクター少尉だった。
「許可が下りたからな。こないだはあまり話せなかったが、見舞ってくれてありがとう」
「こちらこそすみません、バタバタで…。今日から僕らも一時休暇です」
 少尉は私と並ぶ様に横に立つと、眩しそうに空を見上げた。
「そういえば、ワーウィック大尉とアトリエ中尉はこれからどうするんです?」
「…今度こそエゥーゴの部隊に編入だろうな。皆とはしばしお別れだが、また会うことにはなると思う」
 私はその場に座り込み、その辺の手頃な小石を海に放り投げながら言った。
省4
568: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/20(日)14:36 ID:q4IweA7h0(8/8) AAS
「メタスは良い機体だったんですが、僕にはまだ使いこなせなかった…」
「大丈夫さ。私など、見ての通りのこのざまだ。マラサイも完全に死んだしな。…少尉には期待している。まだ若いし、私などよりよっぽど伸び代もあるさ」
「ありがとうございます…。でも大尉達、カラバに残るって訳にはいかないんですか?」
「そう言ってもらえるのは嬉しい。だがな、目的を見失ってはいけないぞ少尉」
 そういうと、私はまた立ち上がり少尉の肩を叩いた。そのまま肩に手を置いて見つめ合う。
「これからも色んな事があると思う。だが次に会うとき、更に強くなった少尉の姿を見せてほしい」
「…わかりました。お約束します」
 少尉は少し寂しげに笑ってみせた。また軽く肩を叩くと、私はその場を後にした。

 この戦いで確かに断ち切ったひとつの螺旋。少しだけ違う世界線に来てしまったかのような、不確かだが明瞭でもある心地だ。散歩を続けながら思考を巡らせていた。
 この先、決して理想郷がある訳ではないだろう。自らが思う形を切り開かねば、また別の螺旋が始まるだけだ。しかし戦っているのは自分だけではない。それこそシェクター少尉の様に、若い世代がまた台頭してくる筈だ。彼らの道標となるのも新たな役目のひとつかもしれない。
省2
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