[過去ログ] 宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど (1002レス)
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287: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/19(月)13:42 ID:o/Vnudzv0(1/10) AAS
 アトリエ中尉とワン中尉は、奪取した機体と共にベトナム基地の方向へ急行していた。
 これまで、言うほど色んな機体に乗ってきた訳でもない。それでもこの機体が他の有象無象とは一線を画したものだということだけははっきりと感じた。
 何ならそもそもまともに起動することすら出来なかった。
「ガンダムか…爺さんになった時に孫に自慢出来るやつだろこれ」
「あんたが爺さんになるまで生きてて、嫁さん見つかってたらの話だけどね」

 まだだいぶ距離がある。この感じだと、ワン中尉が言っていたティターンズ増援の後ろに付く事になりそうだ。
「お前、ほんとに良かったんだな?」
「今更もう戻れないわよ。かといって、ほんとにエゥーゴに出迎えてもらえるのかもわかんないけど」
 アトリエ中尉が座るシートに後ろから片肘を付きながらワン中尉が言った。
「大丈夫だって!どでかい土産持って帰るんだからよ」
省4
288: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/19(月)13:43 ID:o/Vnudzv0(2/10) AAS
「よし。突っ切ってやろうぜ」
「馬鹿言わないでよ!死ぬつもり!?」
「こいつの慣らし運転だ。それに敵もMSは展開していない。こんなとこから突然敵が湧くなんて誰も考えちゃいねぇからな」
「んん…そうはいっても…」
「さて!行くぜ!」
「ちょっとぉ!!」
 言うなりすぐに速度を上げた。まともに相手はせずに突っ切るだけ。ワラワラ敵が出てきたところで逃げる寸法だ。どうせこいつにはそう簡単には追いつけやしない。

 敵の真ん中に入り込む。どうも敵は今頃気付いたようだ。気休めの対空砲火。難なく交わしながら、中尉は武装を確かめる。
「ライフルとサーベルはいいとして…これどうやって使うんだ?」
 インコムと表示された何やら見慣れない武装。
省8
289: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/19(月)13:43 ID:o/Vnudzv0(3/10) AAS
 射出されたインコムは、直線的にカクカクと独特の軌道を描きながら敵艦へと向かう。
「うおっ!何だこれ!」
「もう!言わんこっちゃない!」
 どうやらこれは3次元的に動く端末を操作して遠隔で敵を撃つ兵装らしい。思うように動かない。
「こんなややこしい武器を…!こりゃNTでも扱うの無理だろ!」
「だったら早く仕舞いなさいよそんなもの!」
「いいや俺はやるね!」
 中尉は神経を集中した。機体の操作はいつもと同じようにやればいい。まずは牽制がてら艦橋近くまで飛ばしてみる。多少寄り道しながらも思う方向へ動き始めた。
 敵の対空砲火を縫いながら、インコムは敵艦へと迫る。小さな端末を使って死角から敵を撃つというアイディアは悪くない。確かにジオンのビットに通ずるものがある。
290: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/19(月)13:44 ID:o/Vnudzv0(4/10) AAS
「ん…この感じ…!」
 アトリエ中尉は不思議な感覚に襲われた。インコムを操作する為に、縦横は勿論、奥行に至るまで把握しようと意識を集中していた時だった。
 自分とマシンがじわりと重なる。不意に、今まであれほど手こずっていたインコムの動きが、手に取るようにわかる。現在地も、行き先も、何もかもが自由になった。
 まるで、初めての自転車から親の補助する手が離れていた事に気付いた子供の様に、アトリエ中尉の視界は、ぱっと開いた。
「いける…いける!!」
 先程とは打って変わって、インコムが手足の様に動く。ガンダムが敵の艦橋へ手を向けるとインコムは機敏にその方向へ走る。
「…こうだな」
 中尉の意思がはっきりと伝わる。むしろ、マシンが意思を持って中尉に入り込んできた様でもあった。

 今までに感じたことのない高揚感だった。ガンダムが伸ばした掌をそっと握ると、インコムが十字に艦橋を撃ち抜いた。
「嘘でしょ…?」
省4
291: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/19(月)13:45 ID:o/Vnudzv0(5/10) AAS
「…敵が来るわ!離脱しないと!」
「…わかってる!」
 アトリエ中尉は全速力で戦線を離脱する。背後から小隊が1つ追ってくる。
「追いつかせねぇよ」
 そういうと再びインコムを射出し、瞬く間に全機のSFSを破壊する。恐ろしいまでの力だった。
「す…すごい…。でも、何で急に…?」
「わかんねぇ…まるで手足みたいに動く…」
 ふと、体中から汗が吹き出していることに気付く。アトリエ中尉は今までにないほど集中していた。いや、熱中していたといってもいい。

 そのままあっという間に敵軍を追い越した。背後の敵影が小さくなる。もう1機として追うものはいなかった。
「これは…世界が変わっちまうな…」
省3
292: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/19(月)13:47 ID:o/Vnudzv0(6/10) AAS
 ガルダ級に帰投し、機体の補給修理を行っている最中だった。緊急で着艦する機体が来るとの事で一層辺りは慌ただしくなった。
 ハッチが開かれ、見慣れない機体が着艦する。異質なフォルムの白いその機体は紛れもなくガンダムだった。
 驚きを隠せないでいると、コックピットからパイロットが降りてくる。ティターンズの軍服を纏った2人組だった。遠目で顔が見えない。
 私を含め場の大勢が騒然としていると、そのパイロット達が少しずつ近づいてくる。顔をはっきりと捉えた時、私は居ても立ってもいられず彼らの元へ駆け出した。

「おう!大尉!すまん、遅くなったな!」
 アトリエ中尉が笑っている。あちこち怪我をしているようだが、以前と変わらない調子だ。
「…中尉、生きてたか」
「死んだと思ってたのかよ!まあ確かに機体はお陀仏にしちまったが、代わりにいいもん貰ってきたから許してくれよ」
 中尉が機体の方を振り返る。確かに良いものを持って帰ってきてくれた様だ。
293: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/19(月)13:47 ID:o/Vnudzv0(7/10) AAS
「まさかのガンダムとはな!戻ってきただけでも驚いたが、本当に凄い男だなお前さんは。ティターンズの軍服も似合うな!」
 サドウスキー大尉も駆けつける。中尉の肩を強く叩いた。
「痛って!勘弁してくださいよ!これでも満身創痍ってやつなんすから!あとこの軍服似合っても嬉しくないっすよ!」
「中尉…!あの状況を切り抜けるなんて…!」
 遅れてやってきた少尉がアトリエ中尉に気付いて涙ぐむ。
「…後ろにいるのは…メイか?」
 女に気付くと更に涙ぐんだ。女もやれやれといった感じで微笑んでいる。

「しかし、何があった?正直状況が飲み込めん」
 私はそういいながら中尉の後ろにいる女へ目をやった。
「まあ成り行きもあってな。ここで話すのも何だし、艦長や少佐にも顔見せねぇと」
省2
294: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/19(月)13:48 ID:o/Vnudzv0(8/10) AAS
 ブリッジへ向かう途中、個室がある区画を通ろうとするとメアリーが飛び出してきた。
「ベイト!やっと帰ってきたのね!待ちくたびれたわよ!」
 そういうなり中尉の腿を蹴る。
「待てよおい!ほんとに痛いぞまじで!うわやめろ」
 構わず蹴るメアリー。気が済むと、中尉にギュッと抱きついた。
「心配してたんだから。…おかえり」
「…おう。ただいま」
 メアリーは中尉の影から女を見上げる。
「この間はごめんなさいね。危害を加える気は無かったの」
 女がしゃがみこんでメアリーに謝る。
省10
295: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/19(月)13:50 ID:o/Vnudzv0(9/10) AAS
「それで?その土産話というのを聞かせてもらおうじゃないか。トンボ帰りしてきた様だしな、スパイのお嬢さん」
 スギ艦長が指を組んだ。
「…申し遅れました、メイ・ワン中尉であります。ティターンズ所属でしたが、もう戻れません」
 俯き気味に言った。
「まぁ派閥の鞍替えといえば容易いが、実際問題殺し合っている仲だ。戻れなくなったからといって、そう簡単にはエゥーゴなりカラバに行こうとはなるまい?何かあったのかね」
「…」
 ワン中尉は洗いざらい話した様だった。自らの出自、潜入の経緯。シェクター少尉との邂逅、アトリエ中尉との研究所出向艦での出来事…。
「…私は、自分の行いが正しかったとは思っていません。ただ、これからは後悔しない選択をしたいんです」
 そういう彼女の目は真っ直ぐだった。
「…どう思う?少佐、大尉」
省13
297: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/19(月)16:48 ID:o/Vnudzv0(10/10) AAS
>>296
ほんとですね!少しだけ覗いてみましたが、サクサク読めそうな感じで良いですね。他の人も書いてるとなるとモチベーション維持になりそうです。
僕も負けずに更新頑張ります!
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