[過去ログ] 宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど (1002レス)
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356: ◆tyrQWQQxgU 2019/09/02(月)23:00 ID:fcpsgOD90(1/8) AAS
 ワーウィック大尉と共に転向し、すっかり慣れ親しんだ艦。しかし今はそこが戦場と化していた。爆炎が上がる格納庫へ突っ込むようにして着艦した時、そこには変わり果てた光景が広がっていた。
 ミデアのものと思われる残骸と、散乱した機材。立ち上る炎と煙の中で動かなくなった人影、何かを大声で叫びながら助けを求める乗員達。必死で救命、消火に当たる人々。…一言でいうなら、ここは地獄だった。
357: ◆tyrQWQQxgU 2019/09/02(月)23:01 ID:fcpsgOD90(2/8) AAS
『アトリエ中尉か!俺だ!ここだ!』
 ブリッジとの通信を終え、すぐ立て続けにモニターに映った男。顔の判別がつかない程汚れきっていたが、声ですぐにヴィジョンだとわかった。
「ヴィジョンか!生きてたなら何よりだ!」
『お前もな!ブリッジとの回線が死んじまったが、短距離の通信ならどうにかいけた。お前、これからどうするんだ?』
「MSが紛れ込んでるんだろ、そいつを追う」
『そうか。カスタムされたジムクゥエルだった…ミデアから出てきたのMSはそいつだけだ。
 後、特務部隊らしき連中が数人白兵戦を仕掛けてきてる。他のクルーはそいつらと交戦してる頃だろうな』
「わかった。あんたもいつまでもこんなとこいたら危ねえぜ」
『ちょっと怪我しちまってな…救護待ちだぜ』
 先程から肩で息をしているようだった。姿全身は見えない。
省3
358: ◆tyrQWQQxgU 2019/09/02(月)23:01 ID:fcpsgOD90(3/8) AAS
 敵の進路はすぐにわかった。MSが艦内を歩き回ることなど、ガルダ級といえど当然想定していない。
 無理矢理作られた20m程度の高さの道。少し辿った段階で、動力炉を目指していることは明白だった。

「俺達が遊ぶには、ここは狭すぎると思うぜ」
 アトリエ中尉は、マラサイを落とされた時のジムクゥエルを思い出していた。
 あの時、シェクター少尉を逃してからどれほどの時間戦っていたのか。今となってはもうわからない。とにかく敵を落とし、引きつけるために戦った。
 万策尽きた頃、悠々と現れたのがそのジムクゥエルだったのだ。鮮やかな動作ですぐに手練だとわかった。アトリエ中尉は死を覚悟していたが、結局やつに見逃された。
 堕ちていく機体のバーニアを吹かせるだけ吹かし、空中分解しながら着水したのを覚えている。
 その後は半分無意識で岸まで辿り着き、打ち上がったMSを見つけて動かそうと試みていた。ワン中尉の声がしたところで記憶は一度途切れた。
359: ◆tyrQWQQxgU 2019/09/02(月)23:02 ID:fcpsgOD90(4/8) AAS
 今回の襲撃があの時のジムクゥエルによるものかはわからないが、何となく因縁の様なものを感じていた。
 恐らくだが、アトリエ中尉が不在の際に部隊が遭遇したというエースも同一人物ではないか。
 考えを巡らせながら、ひたすら敵機を追う。区画を破壊しながら先へ進もうとしているジムクゥエルの背を捉えた時、アトリエ中尉の予感は確信に変わった。
「あの時のやつ!!」
 各部をカスタマイズしたジムクゥエル。明らかにあの時の機体だった。中尉はサーベルの柄を握ると、ビームを展開しないまま急接近を試みた。
 敵もこちらに気付く。あろう事か敵はライフルの銃口をこちらへ向けた。
「こんなところで撃つ気か!?」
 敵は躊躇なくビームを放った。中尉は避ける訳にもいかず、シールドで受ける。飛び散った粒子が周辺を焼いた。
「敵さんからすれば、ガルダ級を落とせればなんでも良いってか…!」
 この辺りはまだ貨物や資材が多いが、更に進まれると居住スペースもやられてしまう。
省1
360: ◆tyrQWQQxgU 2019/09/02(月)23:03 ID:fcpsgOD90(5/8) AAS
 敵は尚も発砲しようとライフルを構えた。アトリエ中尉は敵機の斜め上にシールドを投げた。敵の傍の隔壁に突き刺さる。
「よし、そこだ…インコム!」
 瓦礫の中に潜ませたインコムで敵のライフルを撃ち抜く。貫通したビームはそのままシールドに反射し、拡散した粒子が敵機に降り注ぐ。微量だが目くらまし位にはなる。
 怯んだ隙にガンダムは敵へ掴みかかった。態勢を崩した敵機に覆い被さるような形になる。
 左手で敵の頭を抑え、右の手でサーベルの柄をコックピットへ向ける。敵機は、サーベルを持った腕を両手で掴み必死に抵抗してきた。力比べになり、両機の腕部が軋む。
「好き勝手しやがって…!お前との腐れ縁もこれまでだよ…!」
 敵機は、脚部をこちらの腹に押し込み蹴り上げる様な格好で更に抵抗してくる。流石にこちらの腕部も悲鳴を上げる。
 形振り構っていられなくなったアトリエ中尉がサーベルに刃を形成しようとした時、その脚部から対人用の砲が発射された。
 砲撃を受けIフィールドをうまく形成出来なくなったサーベルは、多少の粒子をこぼした後沈黙してしまった。
「くそ…!」
省3
361: ◆tyrQWQQxgU 2019/09/02(月)23:04 ID:fcpsgOD90(6/8) AAS
「流石に抵抗するよなあ…!…仕方ねえ」
 アトリエ中尉はバーニアを吹かした。艦内でバーニアは使いたくなかったが、これ以上敵を留まらせる訳にもいかなかった。
 強い圧力を受けた敵機が、挿し込んだ脚部を畳む様にして丸まった。丁度体育座りの様な態勢で圧力に耐えている。2機分の重量とバーニアの出力で床が割れ始める。
「ここまで来たら博打に乗ってもらうぜ!!行こうか!!」

 中尉はインコムで床を焼いた。切り抜かれた床は圧力に耐えきれず破れた。下に落下する勢いで床を抜いていく。
 艦底と思われる部分もインコムでくり抜き、バーニア出力に任せて敵を穴目掛けて叩きつける。
 敵機の抵抗で簡単には艦外へ押し出せない。敵機は空いた穴に体が嵌った様な態勢で、四肢でどうにか留まっている形だ。
「往生際の悪い…!」
 アトリエ中尉は一度軽く跳び上がると、勢いそのままに敵機を踏みつけた。外に吸い出される力と相まって、流石の敵機も耐えきれず艦外へ弾き出された。
362: ◆tyrQWQQxgU 2019/09/02(月)23:04 ID:fcpsgOD90(7/8) AAS
 同じく吸い出されそうになる中尉の機体はどうにか穴の縁を掴む。トリモチランチャーを撃てるだけ撃ち、穴の修繕を試みる。
「流石にこれ以上は無理か…。後の修繕は頼むぜ…落ちるなよガルダ級…!!」
 そう一人こぼすと、中尉も艦を掴む手を離した。気流に飲まれながら、先程のジムクゥエルを探す。
「この程度で終わらねえよな…芽は摘んでおく」

38話 腐れ縁
363: ◆tyrQWQQxgU 2019/09/02(月)23:07 ID:fcpsgOD90(8/8) AAS
少しまた間が空いてしまいましたが更新しました!pixivもどうぞ!

https://www.pixiv.net/novel/series/1155468
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