[過去ログ] 宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど (1002レス)
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469: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/02(水)18:15 ID:78CJ4RI60(1/15) AAS
「くそ、駄目だな」
 朱雀の迎撃を躱しながら依然止まる気配をみせないサイコガンダムに、バッカス少佐が舌打ちしている。その傍らに立つワン中尉は、立案補佐としてブリッジにいた。
「ワン中尉。あの機体、確かに無人なんだな?」
 バッカス少佐は椅子から身を乗り出してサイコガンダムを注視している。
「はい。強化人間が外部から操作する形を取っていた筈です」
「今回はメアリー目当てなのか、ティターンズに駆り出されたのか…あるいはその両方か」
「この艦が狙われてるのは確かですね」
 最新とは言えないが、ワン中尉がこれまでに知り得た情報は共有していた。
 このサイコガンダムはニューホンコンに現れたものとは仕様が違う。
 本来コックピットを搭載する頭部には大型のサイコミュを搭載しており、予め登録された者の脳波を外部から受信する機能が強化されている。
省1
470: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/02(水)18:16 ID:78CJ4RI60(2/15) AAS
『待ってろ!今から強襲を掛ける!』
 アトリエ中尉のガンダムだった。シェクター少尉のメタス改も随伴している。
「中尉か!…待て、大尉達はどうした?」
 バッカス少佐が彼らの単独行動に気付いた。
『もう上陸してますよ』
「全く…!個人プレーはやめろとあれほど」
『あんなの見えたら朱雀を放っておけないでしょうが!お説教は帰ってから聞きますよ!』
 そういって通信は切れた。少佐が呆れた様に溜息をつく。
「…ワン中尉、すまんがあの二人は帰ってきたら修正だ」
「何で私にそれを言うんです」
省1
471: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/02(水)18:16 ID:78CJ4RI60(3/15) AAS
 サイコガンダムの背後をとった中尉達が攻撃を始める。メタス改のハイメガキャノンが直撃するも、Iフィールドに阻まれた。
 しかしそれで注意が逸れたのか、方向転換したサイコガンダムは彼らの方へ砲撃を始めた。正面の拡散メガ粒子砲から雨の様にビームが降り注ぎ、取り付こうとする中尉達を阻んでいる。
 ガンダムもバズーカで応戦する。機体上部に数発命中するも、装甲を抜くまでは至らない。アトリエ中尉から通信が入る。
『ワン中尉は居るか!?』
「いるわよ」
 オペレーターと代わり、椅子に座るとモニター越しの中尉を確認した。
『あの機体のIフィールド発生装置は何処だ?』
「流石にそこまではわからないわね…」
『適当に撃ってても落とせねえぞこいつは…うおっ』
 サイコガンダムの砲撃を躱しながら反撃するだけでも骨が折れる様だ。このままでは埒が明かない。
省4
472: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/02(水)18:17 ID:78CJ4RI60(4/15) AAS
 ガンダムは1枚の補助翼を集中して攻撃している。側面を取るのは容易ではなく、メタス改が上手く敵を誘導しつつ狙う。徐々にだが、敵の飛行が不安定になってきている様だ。
「よし、こちらからも引き続き主砲で援護しろ。Iフィールド装備とはいえ直撃すれば無事では済まん」
 バッカス少佐が砲撃指示を出す。今の朱雀なら通常のMS隊くらい容易く落とせる火力がある。アトリエ中尉達が敵の足を止めてさえくれれば一矢報いることが出来るはずだ。
「ワン中尉!居住区から呼び出しが来ていますが…」
 オペレーターの1人が知らせてくれた。恐らくメアリーだろう。サイコガンダムの襲来を考えると、何かあってもおかしくない。
「行ってこい。ここは大丈夫だ」
 バッカス少佐が親指で後ろを指しながら言った。
「ありがとうございます。何かあればすぐに伝えます」
「頼むよ」
 現場に伝えられることは伝えた。踵を返すと、ワン中尉は居住区へ走った。
473: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/02(水)18:17 ID:78CJ4RI60(5/15) AAS
「メアリー!」
 居住区の通路でうずくまるメアリーを発見した。手で頭を抑えながら、息も少し荒い。ワン中尉は側に行って肩を抱いた。
「お医者さん呼ぼうか」
「大丈夫よ。黒いのが来てるってわかって、それでちょっと頭が痛いだけ」
「でも…」
 遮るように立ち上がったメアリーは、心配するワン中尉の手を引いて歩き始めた。
「どこ行くの?」
「メイって、ロボット乗れる?」
「MSの操縦は最低限なら出来るけど…ってまさか格納庫行く気?ああ、だめだめ…」
 ワン中尉は足を止めメアリーを引き留めた。しかしメアリーは尚もワン中尉の手を強く引っ張る。
省7
474: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/02(水)18:18 ID:78CJ4RI60(6/15) AAS
「もう!少佐に言いつけるわよ!…ほんとにもう!命令違反するとこまでアトリエ中尉に似てきたわね全く…」
 呆れつつも立ち上がり、急いでメアリーを追う。これまで敵襲はあったが、これほど彼女が焦っているのは初めて見た。
 ニュータイプ能力というものに何処まで信憑性があるのかは不明だが、少なくともメアリーは好き勝手に我儘を言う娘ではない。
 本当に何かあるのかもしれない。ワン中尉はとにかくメアリーを追いかけた。

53話 襲来
475: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/02(水)18:21 ID:78CJ4RI60(7/15) AAS
 声が聞こえていた。メアリーは力の限り走りながら、その声の主を思い出していた。母である。メアリーはふと、朱雀に乗船するまでの事を振り返っていた。

 担当の研究員という立場であることもわかっていたが、メアリーは彼女が自分の母親であると知っていた。それを気付かせたのは顔立ちや距離感だったかもしれないし、日頃の何気ない仕草だったのかもしれない。
 彼女が母であると名乗ってくれることは無かったが、共に過ごした時間は忘れない。被験体8号としてそこに居続けることは幼いメアリーにとって辛いものだった。
 気をひこうと問題を起こしても、叱られるでもなくただ同じ毎日の繰り返し。
 そんな折、何の気なしに母が教えてくれた物語があった。上手くいっていなかった家族が、とある不思議な教育係によって変わっていく物語だ。
 メアリーは、その教育係から名前を貰って名乗ることにした。彼女の様に、不思議な魔法でこの生活を変えてみたかった。そして何より、母に名前で呼んでほしかったのだ。
476: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/02(水)18:22 ID:78CJ4RI60(8/15) AAS
 ある日、母はメアリーを連れて外へ出た。まだ日が昇りきらない明け方。いつもは越えることが許されなかった壁の向こうへと連れ出してくれた。
 限りのない空、遠くから近くから聞こえる様々な音。ハッとする緑と何処へ続くかもわからない道。そのどれを取っても、メアリーが自分の目で見たことのないまさしく架空の存在だった。
 駆け回り、寝そべり、空気を吸って匂いを嗅いだ。はしゃぐメアリーを見つめる母は穏やかで、そして何処か悲しげだった。その母は言う。
「あなたは自由なのよ。今日が特別なんじゃなくて、これがあるべき本来の日常なの」
「じゃあ、いつでも連れてきてくれるの?」
 メアリーの目は輝いた。
「違うわ。あなたは外の世界を知るべき。これからは施設ではなく、この外の世界で生きていくの」
 そう言われると不意に不安になった。確かに退屈はしていたが、いざとなるとまるで出て行けと言われているような気分だった。独りで何も知らないところへ行くのはいくらメアリーでも怖い。
「大丈夫よ。ちゃんと人に案内もさせるし、待ち合わせ場所をこのマップデバイスに入れておいたわ。私は…」
 そこまで言って母は言葉を濁した。メアリーはそれが意味する所を何となく察した。きっと一緒には来てくれないのだろう。
477: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/02(水)18:22 ID:78CJ4RI60(9/15) AAS
「そこで何やってる!?」
 遠くにいる軍人と思しき男達がメアリー達に怒鳴った。母の目の色が変わる。母はメアリーに合わせてさっと屈み込むと目をしっかり見つめた
「行きなさい」
「でも…」
「行きなさい!メアリー!」
 初めてメアリーは叱られた。名前を呼ばれた。涙が溢れ出す。ぐっと背中を押され、メアリーはよたよたと走り出した。
 一瞬振り返り見た母の姿は何処か寂しげで、もう会えないような気がしたメアリーも悲しくなった。
「またね…ママ…」
 聞こえたかはわからない。だが、母の頬を伝った一筋の涙だけははっきりとメアリーの目に写った。
「ウェイブス研究員!こんなとこで何をやっているのだ」
省2
478: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/02(水)18:23 ID:78CJ4RI60(10/15) AAS
「あれ?」
 落ち着いた頃、母に言われたデバイスを取り出そうとしたが見当たらない。道中落としてしまった様だ。
 途方に暮れていた時、エレカーに乗った見知らぬ男性に声を掛けられた。
「君、1人かい?お母さんは?」
 パーマがかかった茶髪、落ち着いた雰囲気の男。今まで感じたことのない親近感の様なものを纏っていた。
「ひとりよ。地図無くしちゃって」
「そうか、俺も同じだ」
 車を降りた男は、メアリーの側に来ると微笑みかけた。
「大丈夫だ。君なら上手くやっていけるさ」
「?」
省7
479: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/02(水)18:24 ID:78CJ4RI60(11/15) AAS
 彼のエレカーに同乗させてもらった。
「何処に行くの?」
「俺もこの辺りの土地勘がある訳じゃなくてね。立ち寄ってこの街に来てるだけなんだ。地球連邦の基地に向かう」
「あなた軍人さん?」
「意外かな?」
「何ていうか、優しそうだもの。細っこいし」
「軍人というには頼りない男さ」
 彼は自嘲気味になりながら車を走らせた。
「君、名前は?」
「メアリー!あなたは?」
省13
480: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/02(水)18:24 ID:78CJ4RI60(12/15) AAS
 目的の扉をノックする。恰幅のいい男が出迎えた。
「やあ、遅かったな。…その子は?」
「待たせて済まない。この子はメアリーだ。道中で知り合った」
「そうか、その話も詳しく聞きたいな。わざわざ連れてきたくらいだからワケアリなんだろ?ニュータイプ」
「よせよハヤト。…メアリー。ちょっと話してくるから、そのあたりに掛けて待っててくれないか」
「あなたニュータイプなの?」
「どうかな。君はそうだろ」
 彼は笑って扉の向こうに消えた。
481: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/02(水)18:25 ID:78CJ4RI60(13/15) AAS
 彼を待っている間、メアリーは窓の外を眺めていた。MSやSFS、輸送機など様々なものが並んでいる。その中でも目を惹いたのは、とてつもなく大きな赤い輸送艦だった。
 興味をそそられたメアリーは、なかなか戻らない彼を待ちくたびれて立ち上がった。
「ちょっとって言ったのに。あたしはせっかちなの」

 建物を出て、先程の輸送艦の方へひとり歩いた。資材の搬入などを行っているようで、巨大な格納庫へと様々な物資が運び込まれている。
 集積所の様な場所に忍び込んで遊んでいると、突如足元ごと貨物が浮いた。リフトか何かに乗っていた様だ。
 もしかするとそのまま艦に乗り込めるのではと考えたメアリーは、息を殺して物資の箱の隙間に入り込んでみた。

 運良く検品が済んだ貨物だったようで、そのままリフトごと艦まで運び込まれていく。不意に暗くなった周囲の様子で、メアリーは艦内に入り込めた事に気付いた。
 その後は近くを物色したりしながら隠れて遊んでいたが、様々な気配の中に紛れて気になる感覚を持った人達がいた。それがワーウィック大尉やアトリエ中尉だったのだ。
 メアリーが思うより早く気付かれてしまったが、特にアトリエ中尉とは感応するものがあった。基地に連れてきてくれた男とはまた違ったが、近いものを感じ取っていた。
482: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/02(水)18:26 ID:78CJ4RI60(14/15) AAS
 それからの事は思い返すまでもない。気付けばもう朱雀のクルーの一員だ。その朱雀に今、危機が迫っている。
 あの黒い巨大なものは、初めて追ってきた時こそただ無機質で不可解な思念を発していたが、今回は違う。何より、メアリーを呼ぶ母の声が聞こえる。
 それは助けを求めているようにも思えたし、ただメアリーを慈しむ声のようにも思えた。

 母の声を聞いているにも関わらず危機感を覚えるのは、その思念を覆うように黒いものを感じるからだ。色んな思いを束縛し、塗りつぶす様な黒。
 怯えさえ抱くようなその黒は、危険だとしか思えなかった。母の声がするならば、メアリーの声も同じ様に届くかもしれない。メアリーは自分にできることをするなら今しか無いと思った。
 ワン中尉が手伝ってくれなくともどうにかしなければ。そんな思いでひた走った。

54話 ニュータイプ
484: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/02(水)20:38 ID:78CJ4RI60(15/15) AAS
>>483
早速読んでいただけて嬉しいです!

コックピット1つ潰すくらいのサイコミュを搭載してるので、無人で動かすことに特化したサイコガンダムって感じです。
メアリーもニュータイプ的な感応に長けているので、そこが結びついている感じですね。

彼の一人称めちゃめちゃ悩んだんです!
昔以上にグリプス戦役の頃の彼は割と荒んでるというか、生意気ながきんちょと口論しちゃう位には大人気ないんですよね。
それに、比較的近しい相手にはフランクな口調になる印象なので、ニュータイプ的に波長が合うなら、子供相手でもあんな感じなんじゃないかと。

あと、個人的にも俺口調の彼の方が頼もしくて好きですw
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