[過去ログ] 宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど (1002レス)
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740: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:27 ID:35+2VBiK0(1/18) AAS
お待たせしてすみません!
最近忙しかったので筆があまり進んでおらず…。
ずっとお待たせするのも何なので、とりあえず3話だけ公開しておきます!
741: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:29 ID:35+2VBiK0(2/18) AAS
 ウィード少佐の脱出ポットを回収し、オーブ中尉のガルバルディαが帰還した。それを確認したアレキサンドリアは、船速最大で宙域を離脱する。敵はこれ以上追ってこない様だ。
 戦況をブリッジからモニターしていたドレイク大尉はほっとひと息ついた。
「危なかったわね…」
『どんどん敵の動きが良くなってる…』
 オーブ中尉が悔しそうにモニターから目を逸らしていた。

 ソニック大尉を連れ帰ったのも束の間、月を離れたところをすぐに追撃された形だった。彼を取り戻し撤収に成功はしたものの、使える機体は尽く潰えている。ガルバルディも稼働こそするものの、戦場には出せる状態ではない。
 辛うじてテストのデータだけは持ち帰ることができたが、ニュンペーも失ってしまった。
「ごめん、機体は持ち帰れなかった」
 ウィード少佐がブリッジに戻った。傍にオーブ中尉もいる。
「あなたが帰ってきただけマシよ。データだってほら」
省6
742: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:29 ID:35+2VBiK0(3/18) AAS
「これからどうする?シロッコ大佐にデータを届けるんだったら、ドゴス・ギアだかジュピトリスだかに出向くのがいいかしら」
 近辺の宙域をマップで確認しながらドレイク大尉は話題を変えた。今は前向きに進むしかない。
「…ニュンペーを失った以上、通信で済ませるのは大佐に無礼だからね…。正直顔向け出来たもんじゃないけど、顔出さなきゃ」
 ウィード少佐が椅子に腰掛けながら溜息をついた。彼女も憔悴している様だった。
「ま、今のうちにあなたも休むと良いわ。私が後は見とくから」
「ありがとう。そうする…」
 最低限の確認事項を擦り合わせ、ウィード少佐はブリッジを後にした。その後ろ姿をオーブ中尉と2人で見送っていた。
「お嬢さんは休まなくていいの?」
「何言ってんのよ。フリード独りに任せる訳ないでしょ?」
「頼もしいわね」
省16
743: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:30 ID:35+2VBiK0(4/18) AAS
「なるほど。なかなか渋いですが…」
 レインメーカー少佐を中心に、ブリッジの3人で戦況を確認していた。結局、主だった拠点は元通りエゥーゴの傘下にあると言っていい。
「何だかんだ言って、フォンブラウンを叩くにはグラナダやアンマンが目の上のたんこぶって感じね」
 オーブ中尉がペンを鼻の下に挟んで椅子と一緒にくるくる回っている。
「確かに、敵の主力をあまり叩かずに拠点だけ抑えたからグラナダの巻き返しも早かった…とも言えるわね」
「楽しちゃ駄目ねやっぱ!まずは裏側から抑えておかないと結局遠回りよ」
 そうしてドレイク大尉達が話しているのを、少佐は静かに聞いていた。
「じいさまはどう思う?」
「私ですか。ふーむ…」
 回るのをやめた中尉の問いにも、変わらず思考を巡らせている。
省2
744: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:31 ID:35+2VBiK0(5/18) AAS
「…何にせよ、今は報告と補給が必要だわ」
 声の方を振り返ると、ウィード少佐とソニック大尉の姿があった。
「皆…済まなかった…!俺の力不足がなければ…」
 ソニック大尉は戻った時と相変わらずうなだれている。
「もう!いいのよそれは!ラムって意外と引きずるのよねー」
 オーブ中尉が意地悪く笑っていた。
「ラムが粘ってくれなきゃ全滅してたわ。あなたのおかげよ」
 ドレイク大尉も彼を励ました。実際彼が殿を務めてくれなければかなり際どいところだったのだ。
「皆揃った事だし、そろそろ目的地を」
 そういいながら、いつもの椅子へウィード少佐が座る。その側にレインメーカー少佐も立つ。変わりない光景だった。
省2
745: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:32 ID:35+2VBiK0(6/18) AAS
 アイリッシュ級に帰還したものの、スクワイヤ少尉はコックピットハッチを開けられなかった。
『大丈夫か!?』
「大丈夫です…。大丈夫なんですけど…」
 ワーウィック大尉の呼びかけに応えながら、少尉は自分の身体が自分のものでない様な感覚に襲われていた。あの時感じた恐怖を、身体が跳ね除けられずにいる。コックピットの中で、小さく丸まる様にしてうずくまった。
 しばらくしてコックピットが外から開けられた。覗き込み、様子に気づいた大尉が近づく。
「…どうした」
「わかりません…。ただ…恐ろしくて…」
 大尉はそれ以上は何も言わず、少尉が落ち着くまでそのまま傍に居た。

「光に包まれた時…死ぬんだと思いました。いや…身体がそう思ってしまったっていうか」
 少尉は、僅かに震える肩を手で抑えた。
省6
746: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:33 ID:35+2VBiK0(7/18) AAS
「そうか」
 大尉はぽつりと言った。
「前にも少し話したが…私の話を聞いてくれるか?」
 少尉が小さく頷くと、大尉はその場に座り込んだ。
「きっと、全く同じ様に感じたということは無いんだろうが…。私もある時までは自分がやられるなんて思ったことはなかった。一年戦争を戦い抜いたし、頼れる仲間も居た」
 少し上を仰ぎ見る様に、大尉は回想した。
「ニューギニア基地での戦い…ほんの少し前の話だがな。そこに至るまでの間、交戦の機会が何度かあった部隊がいた。その隊長格と決着をつけなければならなかったんだ。私は乗り慣れたマラサイ、僚機は…ガンダムだった」
「例のニュータイプの…?」
「まぁな。本人は否定的だが、私もニュータイプだと思っている。そんなやつと2人掛かりだったのに、たった1機のジムクゥエルにやられかけた。恐ろしく強くてな…」
 ニュータイプの乗るガンダムとワーウィック大尉が2人掛かりで苦戦するジムクゥエルというのは、正直イメージが沸かなかった。
省7
747: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:33 ID:35+2VBiK0(8/18) AAS
 これ以上の追撃は月を離れすぎてしまう為、一時中断となった。艦長達は、敵を追い払うにはこれで十分と判断した様である。少尉が気持ちを落ち着かせて表に出た頃には、もう艦が再びアンマン市へ入港するところだった。
「もういいのか?」
 機体を降りて格納庫を眺めていると、フジ中尉がやってきた。
「すみません、取り乱して…」
「気にするな。そんな時もあるだろう」
 珍しくフジ中尉の言葉には棘がなかった。
「大尉は勿論だが、艦長も心配していたぞ。後で顔を出してやるといい」
 そういいながら中尉がドリンクを手渡す。受け取りながら少尉は小さく会釈した。思い返せば、いつも中尉はぶっきらぼうでも彼女を気遣っていてくれた様に思う。
「私が思っていたより…死ぬのって穏やかじゃないかもしれません」
「それはそうだ。穏やかに死にたければベッドの上が良いに決まっている」
省3
748: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:34 ID:35+2VBiK0(9/18) AAS
 遠い目をしたフジ中尉を尻目に、少尉もふとこの戦いの不毛さに思いを馳せた。
 彼女は志願兵である。何故志願したのか。それを振り返るには避けて通れない男がいる。その顔が浮かぶだけで、暗い気持ちも一緒に浮かび上がってきた。
「…私、実は」
 少尉が過去について少し口にしようとしたその時、艦内放送で緊急の呼び出しがかかった。
「…何だ?」
「また後で話します」
「そうか。とりあえず行こう」
 放送に従う様にして、2人はブリッジへと向かった。

 ブリッジに到着すると、そこにはアイリッシュ級の面々が揃っていた。
「おう!元気か?」
省16
749: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:34 ID:35+2VBiK0(10/18) AAS
「正直言って、俺は彼の信奉者でも何でもない」
 グレッチ艦長が腕を組んだまま口を開いた。
「エゥーゴにいるのも成り行きだ。思想的に共感したとか、大義があるとか、そういうのは無い。…言わなくてもわかってるか」
 そういって今度は髭を弄りながら艦長が続ける。
「だがな、筋の通し方ってもんがあるよな?言いたいことがあるならはっきり言や良いんだ。間違っても、自分の言い分が通らねぇからってトップを殺して…文字通り黙殺する様なやり方はよ…筋が、通らねぇんだ」
 珍しく艦長の言葉には熱がこもっていた。少尉を始めとして、皆の視線が艦長に集まっている。
「准将をやったのはティターンズだ。ジャミトフだろうがバスクだろうが知ったこっちゃない。俺は許せん。
 もうこれからは連邦の内紛なんかじゃ収まりきれない様な…全面戦争が始まると思う。だからな、ここではっきり皆に伝えておきたい」
 椅子を降りた艦長がブリッジの窓を背にして皆を振り返った。
「この艦は俺達の新しい家だ。俺が…その…父親みてぇなもんだ。大したことはしてやれなかったが、気づいたらそうなってた。お前達の為に、俺はこれからもっと…頑張る!だから、お前らも頑張れ!」
省9
750: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:35 ID:35+2VBiK0(11/18) AAS
「ぐぬ…!よし!じゃあ今から鬼大佐にしっかり報告してくる!大尉も来い!」
「了解しました」
 鼻をすすりながらドカドカと退出していく艦長に、大尉も続いて出ていく。ざわつきながら持ち場に戻っていくクルー達の中、少尉は自らが生き延びた意味を思案した。
 エゥーゴの指導者が倒れ、一兵卒の彼女は生き延びた。そこに明確な差や理由などない。だが、そこに意味を見出すことが彼女にとっては必要だった。

24話 意味
751: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:36 ID:35+2VBiK0(12/18) AAS
「それで…。連中を取り逃がしたのか?」
 ロングホーン大佐が腕組みしながら椅子に座る机越しに、ワーウィック大尉を伴いグレッチ艦長は直立していた。嫌な汗が背中に流れるのを感じる。
「も…申し訳ありません…!力及ばず…」
 頭を下げる艦長に続いて、傍で大尉も頭を下げた。
「例の試作機は自爆しましたが、恐らくデータは回収されたものかと…」
「まあいい。諸君の働きには感謝しているとも。不十分な補給にしてはよくやった」
 椅子を回し、背を向けながら大佐が静かに言った。
「ブレックス准将亡き今こそ、我々は試されている。指揮系統の再編が必要なこのタイミングを連中が見過ごすとも思えん…。次の指示を待つんだな」
「はっ」
「報告はもういい。持ち場に戻れ」
省1
752: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:36 ID:35+2VBiK0(13/18) AAS
「…ふいー。やっぱおっかねぇぜ」
 ドアを閉めるなり艦長は呟いた。クルー達には見栄を切ったものの、やはり性分はそう容易く変わるものではない。
「しかし、大佐の言うとおり敵の動きは気になりますね」
 大尉は肝が座っている。彼を伴うと幾らか自分も落ち着いていられる気がした。2人はアイリッシュ級の待つドックへと足を向けた。
「そうさなぁ。例のテスト部隊のデータで何をしでかすつもりなのか知らんが…」
「月面で再び戦闘があるとすれば、間違いなく我々は狙われるでしょうね」
「フォンブラウンが本命にしても、アンマンやグラナダは目の上のたんこぶだからな」
 2人は話しながら歩いた。すると、向かいから1人の士官らしき男が歩いてきているのが視界に入った。ワーウィック大尉の足が止まる。
「あ…?アトリエ中尉…?」

「お!?まじか…元気かよ…!?」
省14
753: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:37 ID:35+2VBiK0(14/18) AAS
「噂のニュータイプにお会いできて光栄だ」
「そんな大層なもんじゃありません」
 グレッチ艦長はそういうアトリエ大尉と握手を交わす。
「しかしネモとは勿体ない。うちはガンダムがあるが、君の様なパイロットにも支給すべきだと思うがな」
「お、ガンダムがあるんですか。そいつはいいね…。今は誰が乗ってるんです?ワーウィック大尉?」
「まさか。私はガンダムには乗らん。スクワイヤ少尉という女性だ。彼女もなかなかの腕だよ」
「ほう…?」
 アトリエ大尉が不敵な笑みを浮かべた。
「今回の補給で新しい機体も受領予定なんですが…そういう事ならちょっとした遊びでもどうです?」
「遊び?そんな暇は無いぞ。色々と聞いてないのか?」
省18
754: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:37 ID:35+2VBiK0(15/18) AAS
「ん…?なんです?」
 丁度メカニックと格納庫で打ち合わせ中のスクワイヤ少尉を見つけた。帰還時には取り乱していたものの、今はすっかり落ち着いた様子である。
「こういう申し出があってな…。彼はベイト・アトリエ大尉」
 グレッチ艦長は事の顛末を彼女に伝える。
「へぇ…!彼が隊長の言ってたニュータイプ」
「このガキンチョがガンダムの?ZもMk-?のガキが乗るって聞いたが、ガンダムってのはそういうもんなのか?」
 アトリエ大尉が茶化すと、少尉はムッとした表情を見せた。
「…マンドラゴラは私の機体です。誰にも渡せません。それに私、大人です」
「言っただろ。そんなポンポン回せるもんじゃない」
 ワーウィック大尉がやれやれとアトリエ大尉の肩を叩く。
省4
755: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:38 ID:35+2VBiK0(16/18) AAS
「誰も勝負しないとは言ってませんよ」
 彼の背を睨みながら少尉が言った。ワーウィック大尉が驚いた。
「おい少尉!」
「ほんとにこの子が私に相応しいのか…試すには良い機会です」
 スクワイヤ少尉は機体を見上げた。残っている先の戦闘での目立つダメージは外装くらいのものだ。
「度胸はあるみたいだな…気に入ったぜ。お前はガンダムでいい。俺は…あれを借りる」
 背を向けたままのアトリエ大尉は、百式改を指差した。
「どうせあれが大尉の機体だろ?チューンナップしてあるなら丁度いい」
「待て待て、ほんとにやる気か?艦長もなにか言ってやってくださいよ」
「うーん、俺はアトリエ大尉の腕前を見てみてぇな」
省15
756: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:39 ID:35+2VBiK0(17/18) AAS
「よし、俺はブリッジから観戦しよう。久々に酒でも飲むか!大尉、何かつまみは持ってますかな?」
「そういうことならちょっとしたやつがありますよ!持ってきましょうか」
「お、いいねぇ」
 アトリエ大尉とは気が合いそうだ。彼こそ引き入れたいくらいである。想像していた様な浮世離れしたニュータイプ像とはだいぶ違う。
「ニュータイプって一口にいっても、こんなチンピラみたいな人もいるのね」
「仮にも上官だぞ?これだからガキは」
「なんです?止めときます?」
「いやー、ガンダム楽しみだなー」
 スクワイヤ少尉がアトリエ大尉と火花を散らしているのが目に見える様だ。
「こんなことにはなるとは…。アトリエ大尉、やり過ぎるなよ」
省5
757: ◆tyrQWQQxgU 2020/02/05(水)11:40 ID:35+2VBiK0(18/18) AAS
今回はここまで。
引き続き投下しますんで、よろしくお願いします!
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