[過去ログ] 宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど (1002レス)
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515: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/10(木)21:54 ID:d++Auzh+0(8/14) AAS
「ガンダム!?」
私は声に出して狼狽えた。そのガンダムは全身をティターンズカラーの黒に身を包み、Mk-?の面影を感じさせつつも明らかに違う機体だった。
『そう、これこそティターンズの正統なるガンダムだ。エゥーゴが強奪したMk-?とも、貴様らが研究所から盗み出したMk-?とも違う。ガンダムMk-?"ハーピュレイ"…まだ試作機だがな』
ビームスピアーを携行しているのはこのパイロットの使い慣れた得物という事だろう。万全な状態ならまだしも、現状でこの2機を相手取るのはかなり骨が折れそうだ。
「今更?か?うちのは?だ」
私は敵に急接近した。振りかぶったビームナギナタを敵はビームスピアーで受ける。
『そんな機体でどこまでやれるかな。貴様らのMk-?も研究データを試験的に建造したものに過ぎん』
敵機は容易くナギナタをいなすと、ビームライフルを放った。ショルダーシールドで受けるも、その反動ですら駆動系は悲鳴を上げた。
『あんまりガンダムに気ぃ取られてっと死ぬぜ!』
息もつかせずにギャプラン改が迫る。身構えた私との間に中尉が割って入る。
省2
516: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/10(木)21:54 ID:d++Auzh+0(9/14) AAS
ガンダムのビームスピアーを、両手のナギナタの刃を重ねるようにして受け止める。
「ちぃ…」
『キリマンジャロで試験運用予定だったものを回してもらったのだ。実戦配備される暁には貴様らのMSなど…』
「…連邦のエリートさんにいい事を教えてやる」
『何だと?』
マラサイでガンダムの腹を蹴り飛ばすと、再び距離を取った。
「MSの性能差は戦力の決定的差ではない。…旧ジオンのエース、赤い彗星の言葉だ』
『その男もついぞガンダムには勝てなかったがな!』
「彼のその精神が私の様な者達に引き継がれた。単なる象徴でしかないガンダムなど!」
マラサイの駆動系は限界だったが、それでもまだ動く。そろそろ奥の手を使うタイミングかもしれない。
省2
517: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/10(木)21:55 ID:d++Auzh+0(10/14) AAS
『…何をした』
「今に思い知る」
言うやいなや、マラサイは敵に迫った。今までとは比べ物にならない瞬発力に敵の反応が追いついていないようだ。私自身も強烈なGに耐えるのが精一杯の中、喰らいついていた。
一気に間合いを詰めると、敵がスピアーを向ける暇を与えずに片手のナギナタでガンダムの右腕を切り落とした。更にもう片方のナギナタを左肩の装甲に突き立て、剥き出しになった肩関節を直接マニピュレータで掴むと、腕ごと引きちぎる。
『馬鹿な!?』
追撃はここからだ。マラサイの姿勢を瞬時に低くすると、敵機の脚を払う。姿勢が崩れた間に、残るナギナタを掌で回すようにして逆手に持ち直す。
倒れる前にバーニアを吹かして距離を取ろうとする敵のガンダムだが、私は間合いを空けさせなかった。
逃げる敵に飛びかかる様にして更に迫る。敵の両脚を、短く持ったナギナタで凪ぐようにして順に捌く。尚も逃げようとする敵の頭部を回し蹴りで弾き飛ばした。
518: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/10(木)21:55 ID:d++Auzh+0(11/14) AAS
ボディ以外の何もかもを失い地に落ちたガンダムを踏みつける。初めてサイコガンダムに相対した時に感じた恐怖を感じることは無かった。もう今の私は記号としてのガンダムに何の意味もない事を知っている。
関節の各部から火花を散らしながら、私の機体はかつての悪魔の名を冠する敵を見下ろしていた。
「お前達ティターンズは、かつてのジオンがおかした過ちをもう一度繰り返してきた。…その螺旋は必ず私達が止める」
『一体何が起きた…』
「これがお前たちの言うガンダムなのかもしれないが、私の知るガンダムではないな」
そういうと、コクピットにナギナタを突き立てた。
519: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/10(木)21:56 ID:d++Auzh+0(12/14) AAS
「中尉」
肩で息をしながら私は通信を行った。
『まじか!やったのかよ!?』
アトリエ中尉はギャプラン改と交戦している。確かに敵は高機動だが、この狭い場ではそれを活かしきれていない。
中尉のライフルもなかなか直撃とはいかないにしろ、確実に敵を追い込んでいる。
「中尉、出力リミッターカットを行った」
『下手打つとバラバラになるぞ!』
「あのままだとこちらがやられていた」
『そりゃそうかもしれねぇが…』
「バラバラにしてやるぶんにはいいだろ?」
省9
520: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/10(木)21:56 ID:d++Auzh+0(13/14) AAS
マラサイの受領から今日に至るまでそれほどの時間を経過した訳ではないが、試作機とはいえこのマラサイは最新鋭とは言えなくなっていた。
リミッターカットでかなりの負荷を掛けてしまった事もあり、恐らくこの作戦で役目を終えることになるだろう。
私は、この機体にかつての愛機だったザクの面影を重ねていた。
59話 ガンダム
521: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/10(木)22:25 ID:d++Auzh+0(14/14) AAS
pixivも更新しました!
https://www.pixiv.net/novel/series/1155468
さて、遂にプロローグを含めると60話分の物語に。
稚拙な文章とムラのある更新ペースでしたが、皆様の応援もありここまでこれました。
明日は先行して書き溜めた2話分を放出して、そこからは残りの話をほぼリアルタイムでお届けしたいと思っています!ライブ感!
物語も佳境を迎えていますが、楽しんでいただけているでしょうか?
よろしければ最後まで是非お付き合いください!!
522: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/11(金)15:16 ID:Fe3g27KP0(1/12) AAS
ワーウィック大尉とアトリエ中尉が基地内部に潜入してしばらく経つ。シェクター少尉はメタスの電装系の復旧作業をどうにか終え、サドウスキー大尉達と2人の退路を守っていた。
「敵もかなりの数が降伏しましたね」
『ああ。どうも指揮系統に乱れがあったらしいな。このフィールドは殆ど制圧したと言っていいだろう』
サドウスキー大尉のリックディアスはSFSに載せて対応していた。脚部が損傷している為白兵戦は難しい。
『スティレット!あたしもだいぶこの子の扱い慣れてきたわ』
メアリーの操るサイコガンダムがこちらに手を振っている。友の仇ともいえる機体だったが、こうなってしまえば敵の面子も何も形無しだ。メアリーが扱えば愛嬌すら感じさせる。
所詮機械など扱う人間次第なのだ。真の仇だった強化人間も今は亡く、後は2人の帰りを待つだけだった。
523: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/11(金)15:17 ID:Fe3g27KP0(2/12) AAS
『皆、基地内部から高速でこちらに向かってくる機体があるわ。味方ではなさそう』
ワン中尉のジム2からの通信。少尉の方でも熱源を確認していた。
『また強化人間じゃなきゃ良いがな』
サドウスキー大尉のリックディアスが身構えるとほぼ同時に、その機体は地上へと現れた。ギャプランの様だが、かなり改良されているように見える。
「あれは…!特務部隊のやつじゃないですか?」
『俺もそう思ったとこだ。どっちにしろ厄介だな』
そういうと大尉のリックディアスは敵機の後を追った。少尉のメタス改もそれを追う。
『あんまり無茶するなよ!主砲も使えん状態じゃ火力もかなり低下してる』
大尉の言うとおり、先程の戦闘でかなりダメージを負っている。長期戦になればなるほど不利なのは明白だった。
「お互い様ですよ。1機だけなら連携すればどうにか」
524: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/11(金)15:17 ID:Fe3g27KP0(3/12) AAS
『ナメられたもんだぜ!壊れかけとは!』
敵の声が届く。やはり特務部隊のギャプランか。
「今日はあんただけか。他の連中はやられたのか?」
『そういうお前らもエースが2人とも居ねぇな!さっき会ってきたが』
『何だと!?』
サドウスキー大尉が声を荒げる。キャノン砲で追撃を掛けたが難なく躱された。
『今頃どうしてるんだろうなぁ?』
敵が少尉達をからかう様に笑った。
「ふん、あの2人に限ってお前ら如きにやられはしない。お前こそ1人で逃げ出してきたってところなんじゃないのか?」
『減らず口を!』
省4
525: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/11(金)15:17 ID:Fe3g27KP0(4/12) AAS
『大口叩く割に全然だなぁ。やっぱガンダム抜きじゃ遊び甲斐がねえな』
敵はこちらの攻撃をいとも簡単にすり抜ける。大尉の牽制も功を奏していない。元々高機動なギャプランだったが、更にその加速力を高めている様だ。
掻き回されていたところに複数のメガ粒子砲が走る。メアリーのサイコガンダムだった。
『調子乗るんじゃないわよ!』
「馬鹿!手を出すんじゃない!」
一瞬動きが鈍ったギャプランだったが、サイコガンダムの方へ加速しだした。
『研究所の頭でっかち共が作ったおもちゃか!ぶっ壊してやる。…いや待てよ、今の通信はそっちか?』
まずい。敵がジム2の方に気付いた。少尉はMA形態で敵より先にメアリー達の元へと急ぐ。
526: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/11(金)15:18 ID:Fe3g27KP0(5/12) AAS
『お前の相手はこっちだ!』
サドウスキー大尉が砲撃を行い敵の進路を阻むが、敵は尚も突っ込んでくる。
「…!こなくそ!」
再びMS形態になると、一か八か敵の進路に正面から立つ。
『トチ狂ったか!貰った!!』
敵のメガ粒子砲をまともに喰らう。右腕と左脚が弾け飛ぶが、それでもギリギリまで引きつける。
『スティレット!!』
ワン中尉の声が響く。
527: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/11(金)15:18 ID:Fe3g27KP0(6/12) AAS
「…今だ…!」
射撃体勢を取ったメタス改のバックパックを敵に向けて射出する。敵の油断と大尉の牽制で、ギャプランはこれを躱すことが出来なかった。機首から破損した主砲に突っ込む形になり、著しく体勢が崩れた。
『くそ!』
敵パイロットが狼狽える。
『少尉!使え!!』
すかさずサドウスキー大尉の方向からSFSが飛んでくる。危うくメインブースターを失って落下していくところだった。メタス改は右の片膝を突き、膝下を失った左脚を踏ん張らせる。
左手には残る最後のビームサーベル。出力を最大まで引き上げると、トマホークとサーベルを組み合わせた様な刃を形成した。
528: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/11(金)15:19 ID:Fe3g27KP0(7/12) AAS
『小賢しい真似ばかり…!』
メインカメラを塞がれ、無軌道な動きを繰り返す敵機。無事着地したサドウスキー大尉が射撃を試みた。
『流石に躱せんだろう!今度こそ落ちろ!』
複数被弾しながらも動きを止めないギャプラン。むしろ当たりにいっているとも取れる。
「そうか、そんなにそれが邪魔か」
遂にメタス改のバックパックが誘爆を起こす。爆炎の中から半壊したギャプランが姿を現した。
『俺はまだ飛び足りねえ!こんなところで終われるかよぉッッッ!!!』
敵の叫びも受け止める様に、少尉のメタスは再び正面から迎え撃つ。
獣の様な咆哮をあげ崩れゆく機体が突っ込んでくる。それを介錯するかの様に、少尉はギャプランを胴から両断して切り捨てた。そのままバラバラになった敵機は、爆散しながら落ちていった。
「終わりはあるさ、誰にも」
省1
529: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/11(金)15:21 ID:Fe3g27KP0(8/12) AAS
カラバのガンダムと交戦に入ったスペクター大尉達から定時報告が途切れた。まだ交戦中なのか、或いは…。アイバニーズ少佐はコクピットの中で腕を組んだまま待機を続けていた。2人を先行させ、少佐は地下のドックで待機していたのだった。
ドックでは撤退時に使用するはずの潜水艦が出航準備をしている。まだ前線では将兵達が決死の覚悟で戦っているはずだ。これではまるで敵前逃亡ではないか。誰の仕業かは大体の察しはついている。
停泊している潜水艦の準備が出来たのを見計らって、少佐はその進路を塞ぐようにして潜水艦の前に立った。制止する管制官の声は全て無視しながら、潜水艦の司令部に通信を行った。
530: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/11(金)15:22 ID:Fe3g27KP0(9/12) AAS
「ここで何をしてらっしゃるので?フェンダー少将」
『…君に何の関係があるのだね。少佐こそ何故こんな所で油を売っている』
予想通り、この艦にはフェンダー少将が乗艦していた。旗色が悪くなっての撤退といったところだろう。この男は昔からそういう立ち回りばかりしてきた。
「少将殿がご予定にない動きをされていましたから、何事かと。こちらのご心配には及びません、前線は皆が支えております」
『ならば君も早く合流したまえ。私は指揮系統を別の場所に移さねばならん』
「別の場所とは?キリマンジャロですか?それともダカールの上等なチェアの上ですかな」
『…何が言いたい』
「少将。あなたは支援こそしてくださったが、前線からは逃げてばかりだ。この艦を出航なさるなら敵前逃亡でしょう。まぁ、出航出来たらの話ですがね」
『そこをどけ!不敬だぞ!!』
フェンダー少将が声を荒げた。ドックに待機していたMS隊が出てくる。
531: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/11(金)15:22 ID:Fe3g27KP0(10/12) AAS
「全く何処まで腐って…」
出てきたMS隊がライフルをこちらに向けるよりも早く、こちらから撃ち抜き無力化した。
『は…反逆ではないか!!』
「どのお口で仰るのか。すぐにお戻りください。只でさえ前線は混乱しております。それを指揮官が投げ出すなどと」
『構わん!出せ!轢いてしまってよい!!』
「これ以上は話す余地がないのでしょうな」
少将の乗る潜水艦は、少佐のジムクゥエルに構わず前進を始めた。それを正面から受け止め踏みとどまるが、流石にMSで艦を止めるのはいささか無理がある。徐々に押し込まれていく。
『ははは!要らぬ邪魔などするからだ!』
「どうでしょう」
ジムクゥエルは今回の改修で新しく装備を増設している。その1つであるサブアームを背後から展開した。
省3
532: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/11(金)15:23 ID:Fe3g27KP0(11/12) AAS
前進する推力を弱めた潜水艦。しかしもう遅い。切り取った前部を放り投げると、ぽっかり空いた断面にビームライフルを放つ。内部から焼かれ、物資に誘爆し始める。
『だ…脱出だ…』
通信の向こうで少将が慌てふためいているのがわかる。
「だから私はお伝えしたのですよ。早くお戻りくださいと」
そういいながらハッチというハッチを焼く。もうフェンダー少将はこの艦を降りられない。それを知らない彼は誘爆の恐怖に怯えながら右往左往する事だろう。
「それからもう一つ。スペクター大尉に何か仕込まれましたな」
『お…お前の監視をさせた…!何を考えているかわからんからと…』
「やはりそうでしょうな。しかし、ガンダムをあげた途端容易く巻けました。あなたからの支給品ですよ」
『な…何がほしい!?昇格か!私の推薦ならすぐにでも…』
「私は今の地位、今の機体で十分です。それでは」
省1
533: ◆tyrQWQQxgU 2019/10/11(金)15:23 ID:Fe3g27KP0(12/12) AAS
アイバニーズ少佐は一方的に通信を切った。黒い煙と炎を立ち上らせる艦を背に、レーダーの熱源反応を見ていた。2機。味方の識別信号を出していないあたり、例のガンダムとマラサイだろう。やはり先行させた2人はやられた様だ。
部下はやられ上官はこのざま、残るは自身のみだった。これまでも負けは経験してきたが、ここまで追い込まれた事はない。しかし絶望感は不思議と無かった。それに勝るほどの開放感と充実感に満たされている。
「来るか」
近付く熱源反応に、アイバニーズ少佐の高揚も高まっていく様だった。
61話 黒い煙と炎
534(1): 2019/10/13(日)16:44 ID:VCIn2oIi0(1) AAS
結構好き
続けて欲しい
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