[過去ログ] 宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど (1002レス)
1-

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索 歴削→次スレ 栞削→次スレ 過去ログメニュー
967: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/29(水)01:02 ID:c3b+Gpyy0(1/3) AAS
 それから大尉の話はニューギニア基地攻略作戦へと移っていく。
「私とアトリエ大尉は、カラバに地上部隊を任せて基地へと侵攻した。特務部隊の連中をどうにか退けて司令部を目指したんだが、我々が到達した頃にはもう上層部の連中は壊滅した後だった」
「先を越された?」
「いや、仲間割れみたいなものだな。待ち構えていたのは、ひと仕事終えた特務部隊の隊長だったよ」
 それも父の戦いだったのだろう。資料にも、エゥーゴによる占拠時にはニューギニア基地におけるティターンズ首脳部は壊滅した後だったと記されていた。

 大尉はごろりとベッドに寝転がって天井を見上げた。
「あの隊長のことは…忘れられないだろうな」
「…何故?」
 遠い目をした大尉を見つめながら、少尉は訊いた。
「まず何より強かった。もしまたあんな敵と戦うことがあるなら、今度こそ死ぬな」
省7
968: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/29(水)01:04 ID:c3b+Gpyy0(2/3) AAS
「大尉と似てたんですか?」
 少尉からすれば不思議だった。彼女の知る父の姿と大尉の姿はあまり重なる部分は無い。父は口数も少なく、只々厳格な男だった。
「かつての自分と話しているようだった。憎しみに囚われて、独りで戦うことでしか存在を証明出来なかった…。人に、自分の何かを託すのは難しいことだからな」
 それを聞いて、ようやく少尉は腑に落ちた。連邦に所属している事を周囲に隠す為軍服姿も見せず、我が子にすら己を見せなかったのが父だ。それが嫌いでもあった。
「…だが、俺はアトリエ大尉を始めとした仲間に助けられた。やつを倒すにしても私一人では無理だったが、皆の協力で戦えた。それが…生死を分けた大きな差だったんだろうな」
 大尉らしい答えだった。だからこそグロムリンとの戦いでも、身を挺して少尉を守ってくれたのだろう。彼が仲間に助けられたのと同じ様に。

「大尉って、優しいんですね」
「ん?どうした急に」
 上体を起こした大尉に、少尉は力なく微笑んだ。
「だって殺されかけたわけですよね。傷まで負わされて、生死の境を彷徨って…。そんな風に思えないですよ普通」
省6
969: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/29(水)01:06 ID:c3b+Gpyy0(3/3) AAS
また変な切れ方したら嫌なのでここで切ります!
第2章も長いこと書いてきましたが、次でラストです。
多分明日あたり投下するので、お楽しみに…!
970: 2020/07/29(水)01:52 ID:v51igk6v0(2/2) AAS
待ってまーす!
971: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/29(水)16:54 ID:mYNlLmBN0(1/6) AAS
「私も…聞いてほしいことがあって」
 スクワイヤ少尉は、意を決して切り出した。
「ああ、聞こう」
 ワーウィック大尉は上体だけ起こしたまま次の言葉を待っていた。
「…コンペイトウでの戦いがあって…正直、誰が味方で誰が敵なのかわからなくなったんです」
 自分の手をもう片方の手で包みながら言った。
「信じられるのは自分だけなんだって思って…でも…自分すら少し怪しくて…」
 ウィード少佐を始め、敵の戦う理由を現実として受け入れた時、本当に彼らが討つべき存在だとは思えなくなっていた。
 味方ですらそうだ。身を案じてくれていた父はティターンズだったし、信頼関係を築いてきたグレッチ艦長は真実を隠していた。今となっては、共に戦ってきたフジ中尉に自身のことを話して受け入れてもらえる自信も無い。ジオンとの折り合いをつけたばかりの中尉にはあまりに酷だ。
 そして何より、ワーウィック大尉が父を殺したという事実も知った。その彼は、自身よりも仲間を信じると言う。何が正しく、何が間違っているのか。今の少尉にはわからなくなっていた。
972: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/29(水)16:55 ID:mYNlLmBN0(2/6) AAS
「…それでも私は、少尉を信じるよ」
 暫しの静寂の後、ワーウィック大尉が言った。
「…どうして…?」
 こみ上げてくるものを抑えきれず、嗚咽を漏らす。大尉は、彼を信じられなくなりつつあった少尉とは真逆の事をいう。
「憶えているかわからんが…私が着任した日、休憩室で話したろ。まだあの頃は何というか…少し危うい感じだった」
 大尉が頭を掻く。少尉も今でも鮮明に思い出せる。ボロボロのサラミス改の中で、どうせ何も変わらないと不貞腐れていたあの頃の自分。
「あれから…ガンダムを受け取ったり、私とフジ中尉が少し揉めたり、敵との交戦があったり…。ほんとに色んな事があった」
 また大尉は寝転がった。少尉は溢れ始めた涙を袖で拭った。今日に至るまでの全ての景色が、感情が、猛スピードで彼女の中を駆け巡る。
「今の少尉は…何というか…素敵だ。鬱屈とした時間を乗り越えて…きっと少尉自身、誰かの為に戦う事ができる。…人の苦しみを知って、それでも尚生きて戦うのは簡単な事じゃない。でも今の少尉ならそれがきっと出来ると思ってる。そんな少尉を…私も守りたい」
 拭っても拭っても、涙が溢れた。ようやく気付いた。きっと少尉は、肯定して欲しかったのだ。生きていていいのだと。死後の世界に思いを馳せなくとも、今ある時間を称賛してくれる存在が欲しかったのだ。
省12
973: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/29(水)16:55 ID:mYNlLmBN0(3/6) AAS
 それから少尉が落ち着くまで、2人はただ月を眺めていた。
「月、きれいですね」
 鼻をぐずらせながら少尉は言った。
「旧世紀の日本って国で、とある有名な作家がいてな」
「え?またうんちく?」
 少尉は笑った。大尉も笑う。
「『月が綺麗ですね』ってどういう意味だと思う?」
 大尉が言う。
「そのままですよ、きれいだなーって」
「あなたの事が好きですって意味になるんだと。洒落てる」
省5
974: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/29(水)16:55 ID:mYNlLmBN0(4/6) AAS
 一夜明け、予定より少し遅れつつアイリッシュはアンマン市へ入港した。少し久しぶりの基地には、見慣れた景色が広がっている。補給がひと通り済んだところで、スクワイヤ少尉はブリッジに足を運んだ。
「お、ゲイルちゃんか。調子はどうだ」
「うん…ぼちぼちですかね」
 グレッチ艦長がいつものシートに腰掛けている。少尉はその傍に立った。
「…何かちょっとご機嫌だな?珍しいじゃねぇか」
「艦長とも仲直りしようかなって」
 驚いた様に艦長が少尉を見る。
「私…気にしないことにしたんです。色々。マンドラゴラにも言っちゃってますしね…私は、私の魂を信じるって」

「そうか…魂ねぇ…」
 艦長は口元をニヤリとさせながら、帽子を深く被り直した。
省15
975: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/29(水)16:56 ID:mYNlLmBN0(5/6) AAS
「どうだ?ブリッジはいつも通りか?」
「うん、いつも通り。何だかんだで…ほんと変わんないですよあの人達」
 廊下を歩いていると、ワーウィック大尉も合流した。2人で格納庫へと足早に進む。
「少尉は変わった」
「またその話?大尉は相変わらずですよ!」
「それならいい」
「はいはい」
 談笑しながら向かった格納庫では、新しい機体の周りに人だかりが出来ていた。ここからではよく見えない。
「あ!あれ大尉のやつでしょ!?早く!」
「そんなに慌てなくてもな…おい…」
省4
976: ◆tyrQWQQxgU 2020/07/29(水)17:04 ID:mYNlLmBN0(6/6) AAS
第2章完結です。
ご愛読ありがとうございます。

これから第3章…最終章へと入っていく訳ですが、その前にスピンオフ的な話を4話程投下します。
時系列的にはコンペイトウ攻略作戦後なので、61話〜最終話辺りと平行している感じですね。
これも最終章に繋がる重要なパートになりますので、お楽しみください!

最終章はまだ殆ど構想が出来ていない状態で、しばらく期間が空くかと。
スレッドもぼちぼち埋まりそうなので、スピンオフの後は感想や質問があればお聞かせ願えたらと思っています。

気付いたら1年以上お付き合い頂いてますね…!
引き続きよろしくお願いします!
977
(1): 2020/07/31(金)14:40 ID:L0VueQHU0(1) AAS
乙です!

スクワイヤ少尉...ニュンペーの名前、覚えてくれたんでしょうか(苦笑)
終わりを見ている辺り、ウィード少佐も過去に囚われた人間になってしまいました(泣)
分離式ナギナタを用いた死闘、熱いです!
拡散ビームといい、ニュンペーは隠し腕のついたパラス・アテネを想像すれば良さそうですね(但しミサイル無し)
2連ライフルが無いことで固定の腕部ビームガンが映えるの、良いと思います
ライフルを鈍器にして長短を補うスクワイヤ怖っ!
爆発するイメージあるんですけど、死にたがり経験からその辺の匙加減も分かるといったところでしょうか

遂に明かされるスクワイヤの出自......けどこのやりとりで「アイバニーズ=ティターンズ兵」と知るのは難しくないですか?
ボスニア隊みたいに半ば従わされてる部隊やスードリ隊のような義勇兵、ホンコン特務のように呼ばれる流れもあります
省19
978: ◆tyrQWQQxgU 2020/08/01(土)23:46 ID:DxKUOfXf0(1/2) AAS
>>977
いつも感想ありがとうございます!

アイバニーズ=ティターンズ所属という部分はもっとわかりやすく書いても良かったかもしれませんね!どうも読み手書き手が知ってる事の説明は疎かにしがちです…

フジ中尉のアレは漢字に英語でルビ振ってあるくらいのイメージで良いと思います。笑

正直言いますと、ウィードは最初から死ぬ予定でした。残念ながら。
何もないと思っていたスクワイアが色んなものを手に入れていく過程と、充実していると思われたウィードが色んなものを失っていく過程は対比になっています。
その先に何があるのかは、3章でも書けたらなと思ってます。

1章では母と娘の話をしたので、2章では父と娘の話をしたいなと思っていました。メアリーの時は母親側の描写多めだったので、今回は殆ど描写しない手法で書いてます。それぞれ、直接的に護った母親と間接的に護った父親ですね。
省10
979: ◆tyrQWQQxgU 2020/08/01(土)23:56 ID:DxKUOfXf0(2/2) AAS
追記ですが、強さ的には

 アイバニーズ
≫アトリエ≧ワーウィック
>ソニック≧ウィード≧スクワイア≧フジ

くらいのつもりです。機体的にはぶっちぎりでマンドラゴラが強いですが、操作性も最悪です。
ニュンペーは量産前提なところもあり、操作性や拡張性が最も高い設定です。レコアさんが完成形のパラス・アテネであそこまでやれてましたし。
なので、組み合わせ的にはやっぱりワーウィック×百式改が2章作中だと1番強いでしょうね。

…いや、名無し×グロムリンが1番強いか。笑
980
(1): 2020/08/02(日)09:23 ID:vxOKlxpp0(1/2) AAS
おおっ、強さ比乙です!
ソニックはウィードより強い設定なんですね、只の筋肉じゃないと思ってましたが

量産前提のニュンペーは作中のアレキサンドリアに先行配備されるのでしょうか...捨てた女からフィードバックして。
あとソニックが最初に乗ってたガルバルディγも気になりますね。
>>657で説明はありましたが、αとβだけでもかなり違うので若干曖昧なままというか
例えばカラーリングなんてどうなんだろうなー、て思ってました

ウィードのニュンペー→水色
オーブのガルバルα→薄萌黄
ドレイクのガルバルβ→赤紫

と来れば
省3
981: ◆tyrQWQQxgU 2020/08/02(日)09:37 ID:c/vKaxZs0(1/9) AAS
>>980
ソニックは一歩引いてる感じありましたが、彼自身は決して弱くないです。コンペイトウでも実質独りでスクワイア達相手に粘ってますしね。
とはいえ大体ウィードと同じかやや上くらいのイメージです!

ガルバルディ軍団は元デザインから継ぎ接ぎして別物っぽくなってるイメージだったので、詳細の色までは考えてなかったですね笑
単色というよりはほんとツギハギのイメージです。
そうはいっても特に描写も無いので、好きなカラーで読んでもらって良いかなと思います!
982
(1): 2020/08/02(日)11:38 ID:yA8n81MZ0(1) AAS
連投規制は鯖自体が政治板やニュース板の煽りを喰らってるっぽいな
あっちの連投荒らしや煽りは最悪に酷いからな
コロナ関連で何処ぞの国家のバイオテロだとか触れ廻ってるキチガイもいたし

運営が規制かけまくってるんだろう
983
(1): 2020/08/02(日)11:45 ID:vxOKlxpp0(2/2) AAS
新旧シャア板でもそれくらい働いてくれないかと思うわ

やたらID持ってる(それでいて同じようなことばかり書く)輩もいるけど
運営なら寿命半分とか出さなくても見えるんでしょ?
984: ◆tyrQWQQxgU 2020/08/02(日)21:22 ID:c/vKaxZs0(2/9) AAS
>>982
>>983
なるほど、そういう背景が…!!
そういうことなら暫くは連投するの難しいでしょうね…改善されてほしいものですが…
985: ◆tyrQWQQxgU 2020/08/02(日)23:31 ID:c/vKaxZs0(3/9) AAS
「おっと…。いやはや、私もトレーニングは好きな方だと思っていたが…敵わんな」
 入室してくるなり、ロングホーン大佐が呆れた様に笑った。
「…いつまでも寝てる訳にはいきませんよ。身体が…なまってしまう…!」
 上半身を剥き出しにして懸垂をしながら、ソニック大尉は応えた。その背中には、自爆時に背に受けた生々しい傷痕が残っていた。

 大尉が意識を取り戻した時、目を開けたその場所はエゥーゴによって占領された基地内の医務室だった。医師の問診では常人ならば死んでいておかしくない高さから落ちていると指摘されたが、その割には軽傷で済んでいる。日々の鍛錬が物を言うとはこのことであろう。
 傷が癒えたのち捕虜として尋問も受けたが、ソニック大尉は潔く全て答えた。事の経緯が真実だとすれば、これ以上ティターンズに恩義を感じることもない。そして何より、失っていたであろう命をロングホーン大佐に拾われた様なものだった。
 今現在は、コンペイトウから移送されてアンマンの月面基地に滞在している。
「それで…意思は固まったかね?」
 壁に寄りかかりながらロングホーン大佐は腕を組んでいた。
「…」
省16
986: ◆tyrQWQQxgU 2020/08/02(日)23:32 ID:c/vKaxZs0(4/9) AAS
 シャワーで汗を流し、連邦軍の標準的な制服を着込む。久しぶりにティターンズ以外の制服だったが、元々着ていたこともあり身体には自然と馴染んだ。
 こうして個室まで与えられているのは破格の待遇と言えた。まるで隊員のひとりの様な扱いだ。大佐からしてみればもうエゥーゴに入れたつもりらしい。しかし、それと同時にいつでも逃げていいと言われているのと同じでもあった。手早く荷物をまとめる。
 特に周囲を気にするでもなく部屋を出た。基地の構造は把握していないが、詳細とまではいかずともおおよその見当はつく。
「ロングホーン大佐か…。変わった男だ」
 大尉は部屋を出ると、小さな荷物を持ってその場を後にした。目下向かうのは、MSが格納されているであろう整備ドックである。
 人の格好や流れを見ながら、整備ドックの方向を探った。今のような状況だと格納庫は人も多いはずだ。メカニックらしきクルーやスーツを着たままのパイロットが出てきた方へと足を運ぶ。

「ここか…」
 大きな扉の先にはドックが広がっていた。慌ただしい人の動きに囲まれ、多数の機体が整備を受けている。
 ソニック大尉は品定めをする様に外周を歩いた。GM2やネモなどの主力量産機、一部にはGMキャノン2の様な型落ち機体も見受けられた。
「…おっと、あんた。ここから先は関係者しか入れないぜ」
省7
1-
あと 16 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル

ぬこの手 ぬこTOP 3.992s*