[過去ログ] 宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど (1002レス)
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324: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/23(金)21:20 ID:kqdJT4nq0(5/8) AAS
「くそ…完全に後手に回ったな…」
 サドウスキー大尉は肩を負傷しながら息を荒げていた。ギリギリのところで敵機に壊れた拳を叩きつけ、そのまま海面へ打ち付けた。もう上がっては来れまい。
『おっさん!無事か!?』
「どうにかな。だが追撃は出来そうもない。お前だけでも先行して追うんだ。俺は後続に拾ってもらうから気にするな」
『そのプロレスラーみたいな戦い方、どうにかした方がいいんじゃないすかね?サーベルも抜かねぇし』
「うるせえ、泥臭い方が男らしくて良いじゃねぇか。それにサーベル抜く動作分で殴った方が早いだろ」
『ヴィジョンがまた泣きますよー』
 確かに今回はやられ過ぎた。そもそも初撃で落とされていてもおかしくなかったが、そこからは意地でどうにかした様なものだ。
『そんなら先に行きますよ。外から見てる限り機体は相当やられてる。無理せんでくださいよ』
「わかってる」
325: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/23(金)21:21 ID:kqdJT4nq0(6/8) AAS
 ガンダムの背を見送り、サドウスキー大尉は進路をベトナム基地へ向けた。結局ガンダムには敵わなかったが、今回はそれなりに暴れてすっきり出来たところもある。
 傷の応急手当をしてシートに深く座り直した時、後続のミデア輸送機が見えた。
「良かったなぁ巻き込まれなくてよ…」
 ため息混じりにミデアへ通信を試みる。返答あり。今度こそ味方の様だ。事態を説明しながら収容してもらう。

 無事腰を落ち着けることが出来たサドウスキー大尉は、機体を降りてミデアの艦長と顔を合わせる。
「敵の奇襲で間違いありません。先に出た輸送隊の一部に敵が混じっておった様です」
「ならば我々が後ろから仕掛けられれば挟撃出来る位置にあるのだな」
 ミデアの艦長が腕を組みながらサドウスキー大尉と向き合う。
「奴らだけとは限りません。警戒しながら進んでください」
「そうしよう。君は少しでも休みたまえ」
省3
326: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/23(金)21:21 ID:kqdJT4nq0(7/8) AAS
 まだ敵機の接近を知らないガルダ級の周囲にはミノフスキー粒子はそれほど散布されていないようで、通信はどうにか繋がった。
「こちらはサドウスキー大尉。スギ艦長はおられますか」
『…私だ。その様子だと補給線は守れているのだな。どうかしたか?』
 スギ艦長がモニター越しに顔を見せた。
「敵の奇襲です。ワン中尉の予想が的中したようですな。敵の殿は撃退しましたが、ミデア輸送機をひとつ取り逃がしました。そちらへ向かっています。後を中尉に追わせました」
『ミデア?…そうか、補給に紛れて…。わかった!味方の識別信号を出していても信用出来る将官が応答しないものは近づけさせん』
「よろしく頼みます。私は乗機をかなりやられましたんで、適当な機体を見繕ってから合流します」
『無理は禁物だぞ。こちらで対応できる分はこちらで捌く』
「わかりました」
 ガルダ級との通信が切れた。あまりゆっくりはしていられない。すぐにまた出なければ。
327: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/23(金)21:23 ID:kqdJT4nq0(8/8) AAS
 サドウスキー大尉は再びミデアの艦長の元を訪れた。
「申し訳ないのですが、補給物資の機体をひとつお借り出来ませんか。すぐにも戻らねば」
「休まないのか?…そうだな、ここが正念場だものな。出来るだけ良いやつを出してやろう。メカニックに伝えるよ」
「ありがとうございます」

 足早に格納スペースへ急ぐ。アトリエ中尉は無事に追いついただろうか。彼ならひとりでもある程度足止めは出来るだろうが、敵がどう出てくるかは未知数だ。少しでも戦力が要る。
 格納スペースに到着するとメカニックが忙しく走り回っていた。
「また急なご要望だね!すぐに使えるやつがあるからこれに乗ると良い。エゥーゴからもらったデータを元に生産を開始したばかりのやつだ。
 リックディアスに比べると肉弾戦は苦手だろうが、とりあえずはこれで我慢してくれますかね」
 そういってメカニックが指差した先には、歪なフレーム構造の赤い機体が立っていた。
「こいつは…ガンキャノンか?ちょいと華奢だが」
省9
328
(1): 2019/08/25(日)10:54 ID:MAvNOf/t0(1) AAS
ディテクターキターッ!!

いやね、凄く気になってた機体なんですよ。
メタスをベースにしたガンキャノンなんていう肝煎りの割に、やってることがほぼ噛ませ犬未満て(笑)
サドウスキー大尉もやる気になってることですし、健闘を祈ってますね

…しかし貴重な機体がどんどん駄目になっていく作品だなぁ(苦笑)
まぁMK-IIIとか不遇の名機も多い時代ですから、出し惜しみはせんでください、寧ろどんどん使い潰せ(爆)
329: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/25(日)22:31 ID:xjRu3I7I0(1) AAS
>>328
ディテクター良いですよね!
プラモがRE/100で出たのは予想外でしたが…笑

1st然り、物語の作り上仕方ないんでしょうが、敵側はバンバン機体乗り潰すのに味方は割とそのまま乗り続けるじゃないですか。
今ならいっぱい機体の選択肢もありますし、何なら色々出てきた方が楽しいまであるんで、様々な形で登場させられればと思います!
330: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/26(月)16:30 ID:0STwH1Iv0(1/16) AAS
「定時報告無し…。やられたのか?ストランドバーグ中尉」
 スペクター大尉が通信機器に向き合ったままひとりごちた。
 敵とあんな形で遭遇するとは考えていなかったが、どうにかミデア1号機は戦線を離脱出来た。そろそろ敵にも情報が渡り始めるはずである。
 エゥーゴの胃袋に入り込んだ形だが、突き破れなければそのまま喰われておしまいだ。
「どうだ?音沙汰無しか」
 アイバニーズ少佐が後ろから声を掛けてきた。まるで今日の天気でも聞くかのように、何の感慨も感じられなかった。
「やられたかもしれません。目視しただけですが、例のガンダムMk-?らしき機影も確認しましたし…」
「そうか。だがストランドバーグ中尉が一方的に落とされたとは考えにくいな。ここまで敵の追撃もない辺り、それなりに健闘しているのではないかな」
 やはりこの男の声から感情を読み取るのは困難だった。不気味なほど静かに、淡々と喋る。
「そろそろこちらもガルダ級との接触が近いですな。どうされます?」
省2
331: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/26(月)16:30 ID:0STwH1Iv0(2/16) AAS
 それぞれの乗機へ乗り込み、発進準備に取り掛かる。
 ミデアからの通信はスペクター大尉が仕込んだプログラムで自動的に行われるが、せいぜい数回の通信で敵も異変に気付く。
『やっと出撃だぜ。ようやく戦場に出られる』
 ビー少尉が子供の様にはしゃいでいる。長らく待機を命じられてさぞかし退屈していたことだろう。
「撹乱が目的だ。無理に深入りする必要は無いぞ」
『堅いこと言わんでくださいよ。ヤバくなければあのデカいの、そのまま落としちゃって良いんでしょ?』
「我々だけで落とせるものか。戦力を見誤るな」
『へいへい』
 呆れた様にビー少尉が通信を切る。そんな少尉にスペクター大尉もまた、呆れた様に溜息をつく。
「これで大勢が動く。有象無象が寄り合い所帯で抵抗したところで、結果はいつも同じだ」
省1
332: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/26(月)16:31 ID:0STwH1Iv0(3/16) AAS
 外が騒がしくなってきた様だ。流石に気付くのが早い。既に情報が回っていたとなると、やはりストランドバーグ中尉は敵を抑えきれなかったと思われる。
「いくぞ。敵が来る」
『あいよ!』
 左右に別れて2機で出撃する。
 スペクター大尉の機体はアイバニーズ少佐やストランドバーグ中尉と同じくジムクゥエルをベースとしている。
 ただし、彼の場合はストライカーカスタムの仕様を流用したワンオフ機である。
 流用といっても精々設計思想程度のもので、各部をアップデートした本機は最新鋭の機体に勝るとも劣らない。搭乗するSFSも高機動戦闘に対応するべくカスタマイズされている。

 共に出撃したビー少尉の機体は部隊唯一のTMA、ジムクゥエルと同じくオーガスタ系に属するギャプランである。
 基本的には強化人間の搭乗を前提として調整されているが、ビー少尉の持つ特異なG耐性によって運用が可能となった。
 とはいえ彼も常時乗り続けるのは困難な為、基本的にはリミッターを掛けて稼働させている。
333: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/26(月)16:32 ID:0STwH1Iv0(4/16) AAS
 左翼を担うべく出撃し、ほとんど出会い頭の様な形で敵と接触する。後方とはいえ敵の陣地のど真ん中だ。想定の範疇といっていい。
 スペクター大尉はすれ違った敵機を目視せずにビームスピアーで後ろから貫く。
 正面から近づいてきた機体も、そのまま返す刃で横一文字に凪ぐ。敵機はまばらだが、こちらの襲撃を予知していたかの様な配置だ。

 片や右翼のビー少尉も、敵と敵の間を縫うように飛び回っている。撹乱しつつも確実に敵の数を減らしていく。
『こんなもんか!殆ど的みてぇなもんだなぁ!』
 嬉しそうにビー少尉が叫ぶ。
「油断はするなよ。抵抗はこんなものではあるまい」
『ははっ!どうだかねぇ!』
 大きく旋回しながら、尚も敵を落とし続けるビー少尉。さながらシューティングゲームの様だった。
334: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/26(月)16:32 ID:0STwH1Iv0(5/16) AAS
 近辺の敵を掃討し、ミデアの進路を確保する。ここからが本番だ。
「よし、少尉。少しでもミデアへの対空砲火を減らすぞ」
『楽勝だぜ!』
 ガルダ級へ向かうミデアの両翼に付き、共に進路を揃える。
「君らの戦いはこれから始まる。そう、これからだ」
 スペクター大尉は、目の前に航行する巨大な輸送艦の背中を見つめながら口元に笑みを浮かべ、眼鏡を掛け直した。

34話 ゲーム
335: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/26(月)16:35 ID:0STwH1Iv0(6/16) AAS
「何!?サドウスキー大尉達が??」
 バッカス少佐が驚きの声を上げる。敵がB地点を突破していた。
 私も正直サドウスキー大尉達のポイントよりこちらが本命だと思っていたのだが。我々の守るA地点が最も攻めやすい補給線の筈だった。
「まさか1番遠いB地点から来るとは…。相当根回しされていた様だな…」
 モニター越しのバッカス少佐の声が怒りで震えていた。
「どうしますか?情報通りならガルダ級のC地点も危険です!そのままガルダ級を警備するのはエゥーゴの部隊だった筈ですが…」
 シェクター少尉の声からも焦りが滲み出ている。
「とはいえ、このA地点を放棄する訳にも行くまい…!戦力を割くにもこれ以上数が減っては…」
 歯ぎしりするバッカス少佐。しかし、こうしている間にも敵の奇襲は成果を上げているはずだ。
「…近辺のエゥーゴの部隊に、この座標へ幾らか戦力を割いてもらうよう要請できませんか?」
省4
336: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/26(月)16:35 ID:0STwH1Iv0(7/16) AAS
「…わかった。迷っている猶予は無いな。しかし大尉はどうするつもりだ?」
「私にひとつ考えがあります。我々はここで先手を打つ。そうでしょう?」
 今回当たりが外れた場合や、想定外の動きがあった時自分がどう動くべきか。何度も考えを巡らせていた。
 共通していたのは、とにかく先手を打つということだけだった。きっとこれなら勝てる。

「…。…。…。」
 私は少佐に考えを伝えた。
「それが大尉の秘策ということか。他の面子では行えない作戦だな。確かに事前に全容を明かすわけにはいかなかっただろう」
 バッカス少佐の表情は少し曇っていた。
「本当に良いのか?決行すれば戻れる保証はないぞ。私といえども力添えできるかどうか…」
「その時はその時です。いつか来るだろうこの日の様な時の為に準備してきましたから」
省1
337: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/26(月)16:36 ID:0STwH1Iv0(8/16) AAS
「大尉…!」
 シェクター少尉が力ない声で言った。
「心配するな。別に死ぬわけじゃあない」
「でも…」
「いいから行ってこい。事態は急を要するぞ」
「…!はい…!」
 少尉のGディフェンサーがガルダ級の元へと駆けていった。私もそろそろ行かねばならない。
「それでは少佐。行ってまいります」
「ああ。確実に呼応してくれるのだな?」
「問題ありません。後はタイミングです」
省6
338: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/26(月)16:36 ID:0STwH1Iv0(9/16) AAS
 私は北に向けて進路を取った。敵の陣地を少し通るが、問題なく目的地へ行ける筈だ。いや、行かねばならない。
 マラサイのモノアイが鈍い音とともに光る。ここからは私次第だ。ガルダ級よ、どうか到着まで持ちこたえていてくれ。
 私は、家とも呼ぶべき存在に思いを馳せた。

35話 家とも呼ぶべき存在
339: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/26(月)16:37 ID:0STwH1Iv0(10/16) AAS
「エゥーゴの部隊は何をやっている!」
 スギ艦長は怒号を飛ばした。
「応答ありません!…壊滅したものと思われます…」
 オペレーターが震える声でそう答えた。まさか敵の部隊がもう到着するとは考えていなかったが、それにしても鮮やかな手並みだ。
「それで、状況は!?」
「ミデア輸送機は尚もこちらに向かって前進中。対空砲火で対応しますが、如何せんMS部隊が…」
「居ないものを頼るな!しかし…!何が目的だ…ヴォロ・アイバニーズ…!」
 敵の動きが完全には読めないが、エゥーゴの部隊がやられている以上、MSは既に展開中の筈だ。これ以上どうしようというのか。

「敵機2機!SFSとTMAがそれぞれ後方左右から来ます!」
「集中砲火で叩き落とせ!ミデアはどうした!?」
省7
340: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/26(月)16:38 ID:0STwH1Iv0(11/16) AAS
「くそ!無茶苦茶やりやがるぞあいつら!!!」
「無事か!?」
「無事なもんかよ!助かったのはほんの一握りだ!」
 モニターに映った格納庫は火の海だった。喚くヴィジョンもススか血かわからないもので塗れている。通信も声が辛うじて聴き取れる位で、殆ど雑音で何も聞こえない。
「やつら、突っ込んできたあとで爆薬に火を着けやがった!内側から爆破されたんじゃこの艦といえども…!あとMSが1機…」
 そこまで言って通信が切れた。スギ艦長はモニターを拳で叩く。
「ここまでやられるとは。他ポイントから報告は?」
「アトリエ中尉、シェクター少尉がこちらへ急行中!遅れてサドウスキー大尉もこちらへ向かっています」
「彼らの到着までに落とされては笑いものだな。…諸君、ここは我々の家だ。これ以上他所者に土足で踏み入らせるな!礼儀ってものを教えてやれ!」
 消火作業に当たっていない各部署の手の空いた者から銃を手に格納庫へ走る。
省1
341: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/26(月)16:38 ID:0STwH1Iv0(12/16) AAS
「報告します!格納庫へ敵のMSが1機侵入している模様!設備や隔壁を破壊しているとのこと!機種は…ジムクゥエルです!」
「乗員を下手に近付けるな!生身ではMSには敵わん」
 ジムクゥエルは対人の兵装も装備していた筈だ。迂闊に仕掛ける位なら好きにさせたほうがまだ良い。人的被害は後から単純に補充出来るものではない。
 艦内のマップを睨みながら報告へ耳を傾ける。いかにMSと言えども、様々な障害物がある広大な艦内を容易く突き進める訳ではない。
 しばらくは問題なく持ちこたえられる。とはいえ、格納庫はもう使い物にならないだろう。
342: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/26(月)16:39 ID:0STwH1Iv0(13/16) AAS
 程なくして再度オペレーターが報告する。
「アトリエ中尉が到着しました!着艦します!」
「着艦!?」
 アトリエ中尉は、燃え盛る格納庫へ乗り上げるようにして着艦した様だ。全く何処までも強引な男だ。
「よ…よし!ジムクゥエルを追撃させろ。艦内だということを忘れるな!…いや!撤回だ!忘れろ!とにかく敵を艦から叩き出せ!!」
「は…はい!伝達します!」
 オペレーターが焦りながらアトリエ中尉へ通信する。
『おい!艦長!どうなってんですこりゃあ!』
 アトリエ中尉からの通信が届く。
「説明は後だ!オペレーターからの指示は聞いたな!?」
省3
343: ◆tyrQWQQxgU 2019/08/26(月)16:39 ID:0STwH1Iv0(14/16) AAS
 通信が切れる。続けてオペレーターが声を上げる。
「シェクター少尉も到着!外の敵と交戦中です!」
「思っていたより皆迅速だな。連携できる地点へ散らせていた甲斐があった。しかしGディフェンサー単機では…」
『単機でもやれます!引き続き対空砲火を!』
 通信が開いていたのか、シェクター少尉から応答がある。
「よく来てくれた。しかし、エゥーゴの部隊は壊滅したと思われる。補給無しではいつまでも持たんぞ?」
『承知の上です!ワーウィック大尉の到着まではなんとか持たせてみせます』
「…死ぬんじゃないぞ、若人よ」
『当然です』
 そういって少尉は通信を切った。
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