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【世界一初恋】小野寺律にハァハァするスレ

26迷惑な隣人 2/6:2011/06/12(日) 13:37:37
「ごちそーさん。片付けくらいは俺がやる。それ目を通してくれ」
「え?あ、すみません……」
夕食を終え、俺は高野さんから受け取ったネームに視線を落とした。
──俺達が一緒に食事をする羽目になった理由、それは高野さんからの電話だった。
高野さんの担当作家がネームを大幅に変えたいと言ってきた、というものだった。
明日、会社で他の編集の意見も聞くけど、とりあえず近くにいる俺に先に見せたいって…。
もちろん俺は断った。部屋で会ったりしたらなし崩しにどうなるかわかったもんじゃない。
『今、夕食作ってて忙しいんです。俺も明日、会社で見せてもらいますから』
『俺も飯はまだだ。ちょうどいいから俺の分も頼む』
『じょ、冗談じゃないですよ!無理です来ないでください!来ても部屋には上げませんから!』
『5秒で行く』
で、玄関ドア越しの押し問答の末、現在に到る、と。
ひょっとして見習うべきなのか?この人の押しの強さは。
「最初のネームからだいぶ内容変わりましたね」
袖を捲って皿洗いをしている高野さんに聞こえるように、少し大きな声で話す。
「今後の展開も変わりそうですけど、以前に張った伏線と矛盾することはないんですか?」
「俺も確かめたがそれは大丈夫だ。明日には今後のプロットを練り直してFAXすると言ってる」
…それなら明日、プロット見ながらの方がよかったんじゃ?
内心首を傾げながら俺は何度か読み返した。
皿洗いを済ませた高野さんも戻ってきてネームを手に取る。
って…なんで隣に座るんですか。
肩が、触れそうなくらい近くて。
騒ぎ出す鼓動が聞こえてしまいそうなくらいに。
「……こ、このキャラは読者の好き嫌いが分かれそうですね」
「ああ。だがそいつのことを掘り下げたいというのが、今回の変更の理由でもあるらしい」
「そうなんですか…」
「お前はどう思う?最初のネームかこっちか」
「………」
どうなんだろう…。
第一稿の方が無難な展開で纏まっていたは思うけど。
「…作家さんは、変更して描きたいと思っているわけですよね。その方が面白いと」
「そうだ」
「俺は前の方でも良かったと思います。でも作者さんのモチベーションも大事だと…そうも思うんです。
 ああした方が面白かったんじゃないかって思いを引き摺りながら描き続けるのは……」
違う…こんな答えじゃ駄目だ。
商業作品としてどちらが面白いか売れるのか、編集者はそれを判断しないと……。
でも俺はまだ、自信を持って判断を下せない。
少女漫画を何百本と読んでも、売れ筋傾向のデータを見ても、どういう漫画がヒットするのか──。
俺自身の感覚でそれを掴めない。
『一生懸命やりました』なんていう結果を伴わないやる気だけじゃ意味がない。
それは以前、高野さんに言われたことだ……。
「──そうか」
ややあって高野さんが呟く。
その声に失望を感じた気がして、弾かれるように顔を上げた。
「あ、あの──」
「小野寺。あまり理詰めで考えようとするな。お前の編集者としての勘は、悪くない」
高野さんに微笑みかけられる。滅多に見ない表情に不意を衝かれてまた鼓動が高鳴った。
くしゃくしゃと髪を掻き回さると高野さんの体温が伝わってくる。
その手が頬へ降りてくる。
視線を外せない。声も出せず魅入られたように高野さんを見詰めることしか。
高野さんの顔がそっと近付いてきて──。


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