今は昔、 (43レス)
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32: 忍法帖【Lv=3,ゆうしゃ,4Hp】 2016/08/28(日)13:28 ID:33d(22/25) AAS
 竹取心惑ひて泣き伏せるところに寄りて、かぐや姫言ふ、
「ここにも心にもあらでかくまかるに、上らむをだに見送りたまへ」
と言へども、
「なにしに、悲しきに見送り奉らむ。われをいかにせよとて捨てては上りたまふぞ。具していでおはせね」

と泣きて伏せれば、心惑ひぬ。
「文を書き置きてまからむ。恋しからむをりをり、取りいでて見たまへ」とて、うち泣きて書くことばは、

「この国に生まれぬるとならば、嘆かせ奉らぬほどまではべらで過ぎ別れぬること、かへすがへす本意なくこそ覚えはべれ。
脱ぎおく衣を形見と見たまへ。
月のいでたらむ夜は、見おこせたまへ。
見捨て奉りてまかる空よりも、落ちぬべきここちする」と書き置く。

 天人の中に持たせたる箱あり。
天の羽衣入れり。
またあるは不死の薬入れり。
ひとりの天人言ふ、
「壺なる御薬奉れ。きたなき所のもの聞こし召したれば、御心地悪しからむものぞ」
とて持て寄りたれば、わづかなめたまひて、少し形見とて脱ぎおく衣に包まむとすれば、ある天人包ませず、御衣を取りいでて着せむとす。
その時に、かぐや姫「しばし待て」と言ふ。
「衣着せつる人は、心異になるなりといふ。もの一こと言ひおくべきことありけり」
と言ひて、文書く。
天人、おそしと心もとながりたまひ、かぐや姫、
「物知らぬことなのたまひそ」とて、いみじく静かに、公に御文奉りたまふ。
あわてぬさまなり。
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