浦島 (28レス)
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28: ■忍法帖【Lv=1,ポイズントード,FrE】 2016/09/02(金)00:51 ID:qrs(6/6) AAS
「はて、三百年、おかしなこともあるものだ。
たった三年りゅう宮にいたつもりなのに、それが三百年とは。
するとりゅう宮の三年は、人間の三百年にあたるのかしらん。
それでは家もなくなるはずだし、おとうさんやおかあさんがいらっしゃらないのもふしぎはない」
こうおもうと、浦島はきゅうにかなしくなって、さびしくなって、目の前がくらくなりました。
いまさらりゅう宮がこいしくてたまらなくなりました。
しおしおとまた浜べへ出てみましたが、海の水はまんまんとたたえていて、どこがはてともしれません。
もうかめも出てきませんから、どうしてりゅう宮へわたろう手だてもありませんでした。
そのとき、浦島はふと、かかえていた玉手箱に気がつきました。
「そうだ。この箱をあけてみたらば、わかるかもしれない」
こうおもうとうれしくなって、浦島は、うっかり乙姫さまにいわれたことはわすれて、
箱のふたをとりました。
するとむらさき色の雲が、なかからむくむく立ちのぼって、それが顔にかかったかとおもうと、
すうっと消えて行って箱のなかにはなんにものこっていませんでした。
その代り、いつのまにか顔じゅうしわになって、手も足もちぢかまって、
きれいなみぎわの水にうつった影を見ると、髪もひげも、まっしろな、かわいいおじいさんになっていました。
浦島はからになった箱のなかをのぞいて、
「なるほど、乙姫さまが、人間のいちばんだいじなたからを入れておくとおっしゃったあれは、
人間の寿命だったのだな」
と、ざんねんそうにつぶやきました。
春の海はどこまでも遠くかすんでいました。
どこからかいい声で舟うたをうたうのが、またきこえてきました。
浦島は、ぼんやりとむかしのことをおもい出していました。
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