[過去ログ] 【PSO2悲報】ヒメキさん、ニートだった8【270万】 (1002レス)
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7: 2019/09/14(土)11:43 ID:P8uAc31K(7/7) AAS
ヒメキ文献

昔、鳴喜(めいき)という流れの絵師がいた。
あてのない旅をし、鳥がのどかに鳴くさまを何よりも喜ぶというその名の通り、穏やかで人徳あふれる人物であり、
彼が得意とした画は仏書符(ほとしょふ)という札ほどの小さな仏画である。
若くしてその才は尖り、作品はもはや絵の枠をはみ出し、描かれた仏はその場に存在するかのように光っていたとされる。

この鳴喜がとある村に滞在した折、寺の屏風に大きな仏画を描いてはくれないかと頼まれた。
鳴喜は描き上げるまで自分の面倒を見ることを条件に、この頼みを快く引き受けた。
住職はかつて鳴喜の仏画を目にし、たいへん感動したとのことで、鳴喜を手厚くもてなした。
普段は小さな仏画を得意とする鳴喜が大作を手がけることは珍しく、現存するもののうち
本人のものと確認されているのは霧の中にたたずむ仏を一面に描いた「居霧大図」(いきりだいず)のみである。

さて、かの絵師に描いてもらえるとあり大層喜んだ住職であったが、
鳴喜は来る日も来る日も朝に「推し事」(おしごと=推察して考えることがある)
と呟いたきり、一向に仕事をしようとしない。
さすがにしびれを切らして「まだか」と問うと、「これは美至(びいた)の呟きである」と答える。
美に至るための重要な工程であると言われればそういうものかと納得しかけたが、
ひと月も筆すら手にしないとあっては堪忍袋の緒も切れた。

「鳴喜殿。お主を疑いとうはないが、画を一枚描いてみてはくれぬか」
ああだこうだと文句を垂れる鳴喜に無理に筆を持たせ、札を突き出す。
渋々筆をとり仏書符を一枚描き上げた鳴喜だが、その画はかつて住職が目にしたような尖りもはみ出しも光も感じない。
見た目は似てはいるが全くのまがい物であった。
「お主、薄追であるな」という住職の問いに、偽物の鳴喜は頭を垂れた。
先人の後を追い、その手法を裏でまるまる盗み我が物とする輩、すなわち裏追人(りついと)。
その中でも最も程度が低く、意味を解さず薄っぺらい表面ばかりを真似た裏追人が薄追(ぱくつい)である。

己の浮き立った心が人を見る目を曇らせたと反省し、住職はこの薄追を縄にかけることはしなかったが。
村の者は大変な怒りようで、すぐさま薄追を叩き出して周りの村に人相書きを広めた。
この件に関しては
「非鳴喜、拝戸簾路在」(ひめいき・はいどれんじあ=鳴喜に非ざるもの、戸や簾(すだれ)を拝み路に在る)
という一文が残されている。
偽物はどこからも追い出され、遠くの路から家々の戸や簾を拝むことしか出来なくなったということである。

偉そうな身ぶり口ぶりでも他人のものを借りた偽物には行動が伴わず、いつか露呈してしまう…
というのがこの話の第一の教訓であるが、今を生きる我々も上っ面に惑わされず本当の人格を見抜く目を持ちたいものである。
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