[過去ログ] 【小説】スナック眞緒物語【けやき坂応援】 (1002レス)
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(1): (東京都) 2019/01/27(日)23:08 ID:9Phc8t0O0(1/4) AAS
「スナック真緒」は休載して、別のタイトルのものを始めます。
一日に2回程度の投稿で、ゆっくりと進行することになると思います。
「スナック真緒」の第三弾はそれが終わった後で再開します。
38: (東京都) 2019/01/27(日)23:10 ID:9Phc8t0O0(2/4) AAS
エル・エステ(その1)
「女の子だ」と母のお腹をさすりながら父は予言しました。
「芽が出て実が成るという願いを込めて、芽実というのはどうでしょうか?」と母が言うと、
「柿崎芽実か、いい名前だ」と父は仕合せそうに応えました。
それが私の最も古い記憶ですが、母胎の中にいる私がその様子を見られるわけがないので、もちろん刷り込みによるものでしょう。
父はフラワーアーティストでした。
私の生家には屋根裏部屋があり、父は誰も入れず、何か秘密めいたことをしていました。
その疑問を母に尋ねると、誰かを入れると霊力が逃げていき、仕事がはかどらなくなるからだと答えました。
母はいつも一緒に家の中にいて読み書きを教えてくれましたが、不思議と母の記憶はあまりありません。
父の素性は謎のところがあり、過去も知りませんでした。
省1
39: (東京都) 2019/01/27(日)23:12 ID:9Phc8t0O0(3/4) AAS
エル・エステ(その2)
長野県の小さな盆地に私の生家はありました。
四方の山の稜線が世界の限界を知らしめて、小学校の低学年くらいまではその外に世界があることを全く疑わなかったのです。
大きなイヌワシになって空を飛ぶという夢をよく見ました。
山の斜面にぶつかって上昇する風を受けて、羽ばたくことなくぐんぐん舞いあがってあっという間に空高くに昇る。
段々畑は柔らかい緑の絨毯を敷いた階段のようでした。
太陽の光を浴びて輝く池はコンパクトの鑑のようでした。
豆粒ほどになった私の家が眼下に見え、ああいつも私はあそこに住んでいるんだなあと思いました。
イヌワシになれるという力を得た私は喜びに溢れ、どこでも行けるし何でも見渡せると思ったのです。
でも、盆地を囲む山の稜線の外には世界はなく、その外に行こうということを考えたことはありませんでした。(続く)
40: (東京都) 2019/01/27(日)23:15 ID:9Phc8t0O0(4/4) AAS
エル・エステ(その3)
でも、閉じられた世界に住んでいたことで無意識のうちに学べたこともいろいろあります。
山の地形が目印となって日の入りや日の出の位置をはっきりと頭に刻み込むことができ、その位置が季節で違うのを学習しました。
日の出入りの位置が夏至では北にずれ、春分や秋分では真東や真西となり、冬至では南にずれる。
太陽の一日の軌道は半円のリング状となり、その半円リングは地面と垂直ではなく南側に倒れているというのも自然と覚えました。
だから、日の出入りの位置との関係で夏は日が長く冬は日が短くなるということは理解していました。
私の家の庭には一本だけ大きな木があって、年間を通してその木の影を観察したものです。
影が夏は短く冬は長くなるということから、太陽は夏が高く冬が低くなるというのも無意識に体得していました。
また、その木の樹皮に触れ、その下の脈動を感じることで、季節の移り変わりを予感しました。(続く)
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