【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 5冊目 (775レス)
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437: 2013/01/22(火)23:57 ID:Ax8qB6S7(2/2) AAS
「真九郎さん起きてますかー?」
この朝五月雨荘の5号室の住人である紅真九郎は布団の中でぐっすりと眠っていた。
ここ最近とある仕事により、数日間自室を開けていた真九郎であったが、昨日ようやく片が付いたのだ。
しかし体力的にも精神的にも疲れていた真九郎はやっとの思いでここ五月雨荘に帰り付き、
とにかく眠りたかったので部屋に着くなり布団を敷き乱雑に服を脱ぎ捨て寝間着に着換え、布団に突っ込むように潜り込んだ後に眠りこけたのである。
そして翌日。その日は月に何度かある、早朝の五月雨荘に崩月夕乃が訪れる日だった。
最近仕事により学校で見かけなかった彼女の思い人である紅真九郎の様子を甲斐甲斐しくもこの少女は心配して見に来たのであった。
しかし、真九郎は夕乃の呼びかけにも気付かずに眠り続けた。トントン、と真九郎の部屋の扉がノックされる。
「真九郎さん起きてますかー」
別段扉に鍵をかけているわけでもない。入るもの拒まずな状態なのだから素直に入ってくればいいものを、律儀にも夕乃は真九郎に呼びかけ続けるのだった。
さすがに呼びかけ続ければ誰だって意識が覚醒してくる。真九郎の意識も段々と眠りの底から浮上してきていた。
(ん…、夕乃さんの…声。今日は…来る日…か)
真九郎は布団の中でそんな事を思っていたがまだ起きられるような状態ではなかった。そして再びの夕乃が呼びかける。
「入っちゃいますよー?」
部屋の主である真九郎はまだ眠っている。だから返事は返せるはずがない。しかし、返事をした者がいた。
「ああ、すまないが少年は疲れているようなのでね。もう少し寝かせてやってくれないか、少女よ」
紅真九郎は、自分が誰かに、そう、真九郎があまり好きではないはずの煙草の匂いをいい香りに変えてしまう誰かに、抱き締められている事に気がついた。
扉の向う側が、沈黙した。
扉が、ゆっくりと、開いた。
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