【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 5冊目 (775レス)
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114: ■ 2012/01/16(月)02:39 ID:j0C+5tvz(4/5) AAS
ジュウは―――表情には出さなかったが、混乱した。紅香は今何と言った? 退学? シリアだと?
暫く話の続きを待ったが、ガキ大将の様な母はタバコを吹かすだけ。そのまま無為に十数秒を経た頃、チラリと
ジュウを顧みた紅香はさも呆れた様に言う。
「何だ、まだ居たのか。さっさと部屋へ行って荷物をまとめてこい」
彼女に話をする気がない場合、大抵は何を訊いてもどうにもならない。だから何時もは無視するか、従うかの
二者択一を迫られ、結局は暴力沙汰に発展するのだが・・・流石に今回は、訊き返さざるを得なかった。
「待てよ、一体何の話だ」
「うるさいやつだな。黙って親のいう事をきけ」
「ふざけんな!」
思わず椅子を蹴って立ち上がる。その顔を、紅香の眇めた視線が捉えた。
「そりゃ、こっちのセリフだ。馬鹿が」
相手の目を見たジュウは、僅かに息を呑む。その表情が、どこか今まで見てきた不機嫌面とは一線を隔す、深刻な
ものに感じられたのだ。紅香は明らかに――――――激怒している。
悪い予感がする。半ば搾り出す様に、ジュウは尋ねた。
「・・・その外国行きってのは、どのぐらいの期間だ?」
相手は冷たい視線を向けたまま、何も答えない。つまり―――
「どのぐらいだ!!」
紅香は紫煙を吐き出すと、穏やかで、冷たい言葉を発した。
「お前が選んだ事だろ?人が散々、普通の青春を謳歌させてやろうとしてやったのに」
胸の辺りで何かが綻ぶ音がする。自分が立っている足元が、実は底なしの穴だったと告げられる直前―――
そんな不確かな感覚。鼓動が早鐘を打ち始め、ジュウは動揺を隠せなくなった。間違いない。これは何かが一変する、
その瞬間だ。
事実を突きつける様に、紅香が告げた。
「アウトだよ、ジュウ。腹を括れ」
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