◆三島由紀夫の遺訓◆ (514レス)
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430: 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/07/09(土) 09:56:38.45 ID:oJmbFBkt(1/4) AAS
三島:僕はいつも思うのは、自分がほんとうに恥ずかしいことだと思うのは、自分は戦後の社会を否定してきた、
否定してきて本を書いて、お金をもらって暮らしてきたということは、もうほんとうに僕のギルティ・コンシャスだな。

武田:いや、それだけは言っちゃいけないよ。あなたがそんなこと言ったらガタガタになっちゃう。

三島:でもこのごろ言うことにしちゃったわけだ。おれはいままでそういうことを言わなかった。

武田:それはやっぱり、強気でいてもらわないと……。

三島:そうかな。おれはいままでそういうことは言わなかったけれども、よく考えてみるといやだよ。

武田:いやだろうけど、それは我慢していかないと……。

三島:それじゃ、我慢しないでだよ、たとえば、戦後社会を肯定して、お金をもうけることは非常に素晴らしい
ことだ、これならだれに対しても恥ずかしくない、と言えるかな。

武田:言えないでしょう、それは。

三島由紀夫
武田泰淳との対談「文学は空虚か」より
431: 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/07/09(土) 09:57:18.22 ID:oJmbFBkt(2/4) AAS
三島:言えないでしょう。そうすると、われわれだってどっちもいけないじゃないの。どうするのよ……。

武田:だから最後まで強気をもつということよ。

三島:強気をもつということは、もう小説を書くことじゃないだろう、そうすれば。文学じゃそれは解決できる
問題じゃない。

武田:だって、小説だって、あの長いもの書くのに、強気でなければ書けないよ。

三島:しかし僕は、それは絶対文学で解決できない問題だと気がついたんだ。まあ頭は遅いけど。
たとえば政治行為というものはね、あるモデレートな段階で満足できるものなら、自分の良心も満足するだろう。
たとえば、デモに参加した、危険を冒して演説会をやった、私は政治行為をやったということで、安心して文学を
やっていられる。私は自分の良心にこれだけ忠実にやったんだぞ、ということで、文学をやる、小説が売れる、
お金が入る、別荘でも建てる、犬でも飼う、ヨットを買う、そんなことほんとうにいやだな。

武田:それは、あなたはいやでしょうね。

三島:ほんとうにいやだな。

武田:だけども、つまり政治行動というものは、ほんとうはそうじゃないからね。

三島由紀夫
武田泰淳との対談「文学は空虚か」より
432: 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/07/09(土) 09:58:14.75 ID:oJmbFBkt(3/4) AAS
武田:文学をやっていれば、いちおう決定しないですむ、というような風習が日本にある。

三島:あるんだよ。それは日本ばかりじゃない、僕はヨーロッパからきた風習だと思うよ。日本だったら
決定してますよ、明治維新までは。それは、ものを書く人間、詩をつくる人間、それから、少くとも文章を
書く人間は決定してますよ。だけど、いまの日本じゃ、非常にヨーロッパ的になったんです。つまり、ものを
書く人間のやることだから、決定しないですむんだという考えがある。僕はとってもそれがいやなんだよ。
(中略)
僕は、学生が東大で提起した問題というのは、いまだに生きていると思っているけれどもね。つまり、反権力的な
言論をやった先生がね、政府からお金をもらって生きているのはなぜなんだ、ということだよ。簡単なことだよ。
周の粟をくらわず、という人間がぜんぜんいないということだよ。これは根本的批判だよ。
私立大学ならそれはいいよ、だけど官立大学じゃそれは成り立たんじゃないですか。

三島由紀夫
武田泰淳との対談「文学は空虚か」より
433: 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/07/09(土) 09:59:04.51 ID:oJmbFBkt(4/4) AAS
武田:たとえば、いまヘドロの問題があるでしょう。ヘドロの一番の問題は、われわれが紙を使って生きていると
いうことですね。もし日本文学全集が出なくて、あるいは大新聞があんなに増頁しなかったら、石狩川のヘドロも
大昭和製紙の田子の浦のヘドロも出ないですよね。それを自分が、自分の芸術、あるいは自分の美をうたいあげる
根底は、けっきょくそのヘドロによって支えられているという感覚がないと、無限に批判できますよ、それは。
(中略)画家の使う絵具だって、映画監督の使うフィルムだって、全部ヘドロを出しているんだもの。それを
ふまえないで公害問題を言うと、それこそまた戦後の空虚だね。

三島:またはじまっていると僕は思うんだ。つまり、公害を批判すれば、またそれでいいんだ。(笑)文学と
いうものは、そういうものにいつも反抗してきたはずだろう。ところがいま文学の機能というのは、ほとんど
反抗しないようなところにきちゃって、反抗する力もなくなっちゃったんじゃないの。そういうものはウソだと
いうことを。

三島由紀夫
武田泰淳との対談「文学は空虚か」より
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