【ファンタジー】ドラゴンズリング7【TRPG】 (251レス)
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176: スレイブ ◆T/kjamzSgE [sage] 2018/12/03(月) 00:04:12.62 ID:G00Sprlt(1/4) AAS
>「ようやく俺もみんなを助けられるって気がするぜ!
『流れ流れて形となり、我が友を助けたまえ』」
>「させるものか! ――”Linked Horizon”《繋がる地平》!
ここでそなたを取り逃がせば……また無数の世界が犠牲になる!」
ジャンの水魔法が液体金属の制御を奪い、スレイブ達の武具をより強固なものへと鍛え上げる。
ティターニアの世界の垣根を越えた問いかけに、確かな力で応える者たちが居る。
>万象一切が汝を拒む――『アイソレーション』」
畳み掛けるように発動したシャルムの創造術式が虚無の竜を飲み込み、その巨体を押し潰した。
機は来たれり。スレイブはみたび地を蹴り、ジャンの引き剥がした装甲の下に斬撃を叩き込んでいく。
虚無の竜を構成する液体金属、その大部分が切り離され、活力を失ってただの液だまりと化した。
いける。最終プログラムの実行まで三秒を残して、虚無の竜を打ち倒せる。
言葉を交わさずとも、誰もがそう確信した瞬間だった。
>『――いいえ、まだです。私はまだ負けていません』
嵐のような波状攻撃に完全消滅したはずの虚無の竜。
その声が、何者もない虚空から聞こえてきた。
「馬鹿な……これだけの攻撃に晒されて、耐えられるわけが……」
同時に、一つの違和感。
これまで、虚無の竜の声……『音声』は、抑揚のない無機質なものだった。
一時は誘導プログラムとやらで感情の籠もった声を発していたが、それは欺瞞に過ぎない。
しかし、今この場に響く声は、あたかも『同じ生物』であるかのような、声。
躯体と制御機構の殆どを破壊された虚無の竜が、代わりになにかを得た。
それはあまりに荒唐無稽で、口に出してしまえば随分と陳腐なもの。
だが、虚無の竜に致命的に欠けていて、だからこそ指環の勇者が勝りうる唯一の希望だったもの。
>『――戦術プログラム『心』の実装が完了しました。戦闘を続行します』
>「……心?心ですって?……あり得ない。そんなもの、創り出せる訳が……」
シャルムの動揺が、いやに耳朶に強く響いた。
如何なる錬金術や魔術の深奥に至ろうとも、『心』の創造など為し得た者は一人としていない。
捉えようのない抽象的な概念であるし、そもそも作り出すまでもなく生き物であれば誰もが持ちうるものだからだ。
最後の60秒で、虚無の竜が創り出そうとしていたもの。
それは、スレイブ達にとってわざわざ創り出す必要などないもので。
――そして虚無の竜には、それこそが必要だった。
177: スレイブ ◆T/kjamzSgE [sage] 2018/12/03(月) 00:04:35.48 ID:G00Sprlt(2/4) AAS
>『演算は終了――検証は成就しました。所要時間は57秒。感謝します、指環の勇者達よ。
あなた達が答えを教えてくれたから――私は最後の再構築を3秒縮める事が出来た』
「心理誘導ではない、純粋な『感謝』……か。こんな皮肉があってたまるか」
欠け落ちていた最後のピース、心を取り戻した虚無の竜。
"彼"は、ティターニアとシャルムの奥義とも言うべき魔法をいとも容易くその身に再現していく。
生まれ出たのは4つの影。ジャンと、ティターニアと、シャルムと……スレイブ。
それぞれを模した、虚無の竜達だ。
>『それがあなた達の勇気を、愛を奮い立たせる。。
今の私にはその事が理解出来ます。そして、故に私もこの魔法に名前を付けましょう。
私は、私が護るべきだった世界を甦らせる。必ず。その想いを込めて――』
>『――Hello World(新世界へ)と』
カウントダウンは終わりを告げ、世界の再構成が、始まった。
少しずつ、しかし確かに塗り替えられつつある世界。
どうにか阻止せんとシャルムが魔導拳銃を放つが、弾丸が虚無の竜に届くことはない。
液体金属が形づくった『スレイブ』が、本物よろしく弾を剣で弾き飛ばしたのだ。
>『悪いが、彼女達に手を出す事は俺が許さない。……なにを驚いているんだ?
アンタになら分かるだろう。俺達が残り僅かな質量を分けあってまで、何故四つの肉体を作ったのか』
>『俺達はコイツらに攻撃は通さねえ。何があろうと、どんな目に遭おうともだ』
>『そして私達はそれを信じ、ただ術式を組み上げる。自分の身を守る事など、考えもしない』
>『つまり――この戦術は愛と勇気、心の力を最大限活用出来るという訳だ。ふふふ、画期的だろう?』
虚無の竜の戦術プログラムは、これを以て完成した。
これまで行っていた、指環の勇者単独の模倣ではない。
指環の勇者『達』――それぞれが互いを補い合う役割を持った、『パーティ』を作り上げたのだ。
目に見えるのは4つの影だけだが、内包する"勇者"はそれだけではない。
フィリアの百足を、シノノメの剣を、ラテの欺瞞を代わる代わるに再現し、刃がシャルムの喉を捉えた。
「シアンス……!ティターニア、治療を頼む!」
>「……私は……後回しに……もう一度……奴を……」
シャルムの命にまでは届いていない。しかし、これで詠唱は阻止された。
ここより後ろに退路はない。塗り替えられつつある世界の中で、最後の戦いの火蓋は、静かに切って落とされた。
178: スレイブ ◆T/kjamzSgE [sage] 2018/12/03(月) 00:05:07.66 ID:G00Sprlt(3/4) AAS
>『――まぁ、そうなるわな。俺だって今更諦めろって言われて、はいそうですかとは答えねえ。
なら仕方ねえ……全員、ぶちのめすまでだ!かかってきやがれッ!!』
スレイブは堪らず怒鳴るように吠えた。
「心があるのなら、お前らにも分かるだろう!俺たちがこの世界を守りたい理由が、その気持ちが!
心を得てなお、何故立ちはだかる!?貴様はもう、機械的に世界を再構築する装置ではなくなったはずだ!」
『そうしてお主らが守った世界に、我らはいない』
魔術師型の片割れが、返答のようにそう零した。
『純粋な生存競争ですよ、ディクショナルさん。私達は心を得て、装置としての大義を失い――
プログラムの基盤には、願いだけが残りました。私達はこの世界を、私達の望む姿に変えたい。
それは、貴方達指環の勇者がここまで旅をしてきた理由と、そう遠くはないでしょう?』
それに、と魔術師型は言葉を繋いだ。
『願いはもう一つあります。私達は世界の再構築を、何度も失敗してきました。
幾度となく、様々な要因で、正確に世界を再現することができませんでした。
その度に演算処理機構の内部に蓄積されてきたエラーの正体が、心を得た今ならば理解できます』
それは、プログラムには組み込まれていなかった感情。
『――うまくいかなくて、悔しい。今度こそ、成功させたい。それが、私達の今の望みです』
「……だったら、もう問答は無用だな。俺も、俺の望みを言おう」
敵は心を、信念を杖にしてみたび立ち上がった。
その意志に、その執念に、応えられるのはやはり心だけだろう。
「俺は、俺が殺してきた者達が守りたかったものを守る。彼らを英雄にするために、世界を救う。
どちらが望む世界を掴むことが出来るか……勝負だ、虚無の竜」
言葉を皮切りに、スレイブは跳んだ。詠唱を続ける魔術師型目掛けて矢の如く疾走する。
剣士型が機敏に反応し、剣を抜き放って迎え撃った。
『彼女達に出は出させないと言ったはずだ』
「言うだけなら誰にでもできる。成し遂げてみろ」
『無論――ですの』
剣士型の輪郭がぶれ、虫精を模した姿へと変わった。
虫精型が両腕を百足へと変じさせ、両側からスレイブを拘束せんと迫る。
179: スレイブ ◆T/kjamzSgE [sage] 2018/12/03(月) 00:05:29.66 ID:G00Sprlt(4/4) AAS
「……任せた!」
スレイブは、誰ともなしにそう呼びかけた。
それだけで良い。それで、仲間にはすべての意図が伝わる。
防御を考えなくても良いのは、虚無の竜達の専売特許ではない。
百足を掻い潜ると、既に虫精型は再び形を変え、闇を宿した刃を肉体から生やした――魔族型が待ち構えていた。
「その剣技は何度も見ている……幼い頃からな」
シノノメの剣を模した斬撃を紙一重で躱せば、もはや魔術師型との間を隔てるものは距離以外に何もない。
間髪入れずに、左手に隠し持っていた長銃で狙いをつけ、魔術師型を銃撃した。
音を切って迫る弾丸は、しかし魔術師型を破壊し得ない。
間一髪で、剣士型が身を挺して割って入ったからだ。
『させるものか……!』
「俺の心を模した貴様なら、必ずそうすると読んでいた。
……だから、悪いな。その感情は、利用させてもらう」
スレイブに背を向けるかたちで弾丸を弾いた剣士型に、仮借なく剣を叩き込むスレイブ。
強引にかばったことで体勢を大きく崩した剣士型は、畳み掛けるように打ち込むスレイブの斬撃を受けきれない。
そして、死角から弧を描く短剣バアルフォラスを、防ぐことができなかった。
剣士型の胸部に短剣が深く突き刺さり、魔力を吸い尽くされた液体金属が崩れて散った。
【残り三体】
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