あなたの文章真面目に酷評します Part108 (608レス)
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抽出解除 必死チェッカー(本家) (べ) 自ID レス栞 あぼーん

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532: 1/3 [sage] 2020/06/18(木) 09:42:47.23 ID:R7nTZO4l(1/3) AAS
おはようございます
ワイスレにも貼りましたが、批評お願いします

 戦時中、七つボタンの兵隊は、あらゆる男子のあこがれだった。一五も例に漏れず、予科練の採用試験に応募したが落ちてしまった。しかし、昭和19年に召集を受けて、徴兵検査に合格。一五は20歳で中国へ出征した。
「寒いのう…」
 蒸気機関車で戦地へ向かう最中、一五はぎゅうと小柄な体を縮こませて、カチカチと歯を鳴らしていた。
 春先とはいえ、どこまでいっても黒い山と大地が地平線に伸び、灰色の雲がたちこめ、雪がちらついていた。さらに一五たち下級兵は、客室ではなく、貨車にすしづめにされていた。おまけに日本を出立して丸一日を過ぎていたが、みんなろくなものを食べていなかった。
 寒さとひもじさに震えが止まらず、かすみそうな一五の意識の中で、はっきりとした声が聞こえた。「食え」
 一五が我に返ると、同じ二等兵の名も知らぬ同期が、おにぎりをひとつ差し出している。故郷の田舎でも食べられなかった銀まんまのおにぎり! ごちそうを目の前にしてごくりと喉を鳴らしたが、一五は心優しく謙虚な青年だった。
「え… ええのか…?」一五が遠慮がちに訊く。
「おれはいらん」同期の二等兵は強い意志を持って言った。一五は両手でそのおにぎりを受け取ると、「ありがとう… ありがとう…」と涙をこぼしながらそのおにぎりを、大切に、大切に食べた。
 ところが。
 翌朝、一五におにぎりをくれた兵士は目を覚まさなかった。「なんで死ぬるんじゃ! 死ぬるくらいなら、なんでわしにムスビをくれたんじゃ!」一五はすっかり冷たくなったその兵士の体を揺さぶって号哭した。
 このようにして、輸送中の貨車の中で、息絶える同期は少なくなかった。道中で死んだ兵士の遺体は、貨車から投げ出され、石ころのように中国の大地に捨てられていった。
533: 2/3 [sage] 2020/06/18(木) 09:47:17.36 ID:R7nTZO4l(2/3) AAS
 鉢植えの植物はすべて枯れ、ゴミ袋の山にハエがブンブン飛び回っているベランダに、しとしとと雨が降りそぼる。
 男は、古アパートの6畳の和室にいた。畳にはいつ取り込んだか脱ぎ捨てたかもわからない衣類が散らかり、その上にコンビニ弁当やパンの包袋、チューハイの缶などのゴミが乱雑に入ったゴミ袋がいくつも置かれ、さらに無数のコバエが浮遊を楽しんでいる。
 男は、50代の坂をいくつか越えたくらいの年代で、偏った食生活のせいで醜く肥え太っていた。いくら6月中旬で蒸し暑いとはいえ、年季の入ったタンクトップにゴムのゆるみきったトランクスだけを身にまとっていて、余計にむさ苦しさを増していた。
 ゴミに埋もれていないタンスの上には、一枚の写真が飾られている。20年以上前の、誰かの結婚式の時の写真だ。男の、たったひとりの弟の結婚式の写真だった。
 年老いてはいるがまだ健在だった頃の両親、丸顔がかわいらしいお嫁さんをもらった、眼鏡をかけた精悍な顔立ちをした弟。そしてその弟の横で、遠慮がちに写っている、まだ30歳前の太ってはいないが冴えない外見の男の姿。
 男は、家族には長年会えていなかった。否、もう会えないのだ。30代半ばにしてリストラに遭い、ギャンブル依存症に陥って、実家の金目になりそうなものを漁ろうとした罪で一族から縁を切られたのだ。
 両親は他界したが、母だけは我が子可愛さに、男にいくばくかの遺産を与えてくれた。でも、それが尽きる日はもう近い。男名義で作られた預金通帳に記された残高金額はあとわずかしか残っていない。
「芽衣子です。うつ病ですが、生活保護をいただきながら、のんびり暮らしてます(^-^)/ 現在『ぬいぐるみの森』プレイ中v」
 ああ、憎々しいこの女。
 サポートがとうに終了しているOSのノートパソコンのモニタには、日本最大規模掲示板群のとあるスレッドと、男が嫌悪している顔も知らない女のブログが映し出されている。
 俺も生活保護をもらって悠々自適とした生活を送りたい。しかし、恥を忍んで生活保護を申請しに行くと、「貯金もあるようですし、あなたは障害者でもない。コンビニでも何ででも働けますよね?」と、男は役所の人間に突っぱねられた。そして貯金がいよいよ10万円を切って再度すがると、役人は折れて、扶養照会の書類を弟に郵送してくれた。
 弟からの返答は、「月に5万円だけ払ってやる」といったものだった。
 月に5万円なんて俺をなぶり殺しにする気か!と男は憤慨したが、とうの昔に縁を切られた弟の連絡先を知るはずがなく、男はぶつけようのない怒りを内に溜め込むばかりだった。
 働こうにも、この容姿と年齢ではどこに行っても落とされる。コンビニのアルバイト? 俺の一時間をたった3ケタの時給で買われてたまるか。
 男はどこまでも傲慢で、世界を見下すことに生を見出していた。
「朝から晩まで一日中このスレに貼りついて、他にやることないの?」
「お前は哀れだよ、おっさん」
「サイテーだよなお前」
 男のスレッドの書き込みに対しても、嘲笑や罵倒が含まれたレスポンスがいくつもいくつもついている。そういえば昨日の深夜、夜食を買いに行ったら、二人組のギャル女に「うわっ、キモッ」と露骨に距離を取られた。なんなんだ、どうしてこうなったんだ、俺には文才があるんだぞ! お前らみたいな雑魚を相手してるような暇はねーんだよ!
「0666 芽衣子 2020/06/18 12:39:05
バカの一つ覚えみたいにナマポ女ナマポ女って、自分がもらえなかったからってやつあたりすんなよw ダニおじさんw」
 くそっ!また芽衣子のナマポクソ女が! 俺の評価点を上回ってから物を言えよ!
「小池さん! うるさいよ!」
 男がわめくと同時に、厚くはない壁がドンッと叩かれ、隣人から叱責される。
ーーいかんいかん、俺は紳士たらねば…。
 男はおもむろに立ち上がると、足の踏み場もないくらいのキッチンに赴き、インスタントコーヒーを淹れて、定位置の精液のシミだらけの煎餅布団に座る。
 そして、ちゃぶ台に置いてあるノートパソコンのキーボードを叩き、誰からも嫌われつつもスレッドを消費するのだ。
「コーヒーがうまい。やはり、長雨の時期にはコーヒーが一番であるな」
 醜男のクスクスとした笑い声は、どしゃ降りになり出した雨の音に消されていった。
534: 3/3 [sage] 2020/06/18(木) 09:50:49.91 ID:R7nTZO4l(3/3) AAS
普段書いている文章は一人称ではなく三人称なのですが、「地の文に登場人物のセリフが入っているせいで、視点がぶれている」旨指摘されました
こちらでも批評お願いします
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