【三題使って】 三題噺その4 【なんでも創作】 (200レス)
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142: 2014/10/20(月)21:31 ID:7qprIz7S(1) AAS
 最高の胡瓜が成る土地を見つけたといって出奔した父の命日から四年、何故か親族の過剰な
保護を受けた私は今月、この色々あり過ぎて困った高校を卒業する。
「進学先の女子大に男が闖入しようとしているとの情報を入手しました。いかが致します?」
 それは俺だと初対面からの旧交を懐古した所で意味はない。この執事面した裏切り者が私を
売るつもりであることは既に知っている。片腹痛いがそれは仕方がない。
 母は亡い。私を産んで育て、敵があればそれを滅するために必要な全てを授けて逝った。
「誰ぞのストーカーなのか。男子のすることではないな、なあ?」
「いや、お厳しい。ですが今回のはお嬢さまのそれとは違う邪な企みがあると、これに」
 差し出された茶封筒から汚らしい白紙を引き出しつつ、問うた。
「答えの解っている茶番を呼んだりはしていないよな?」
「まさかっ」
 やたらいい声で易く跪いて靡くこの従僕が、裏切りを前提にしている筈なのに殺してしまえ
ないのはどうしたことだ。
「まあいい、どうせ豚の鳴く声だ。邪魔なら消せばいい」

 四月。どうしてこの学校は共学の体面を繕うのだ。都市圏にそれなりの敷地を抱いた私学が、
こうまで外界と隔絶されている理由がおかしい。
「あったんですよ、お嬢」
 つま先からそれ以外まで土にまみれた、土偶に似たそれが、したり顔で誇って見せる。
「気易く呼ぶな。それで?」
 従僕のヤスが入手してきた情報に私は驚愕した風を装う。

「ここの敷地、いや所有地の何処かに源泉があるそうで」
「ああ、手に入れた者には全てが約束されるというアレな。炭酸水が湧くんだろ?」
 父が追って消えたのはその一つだ。どうせそれは呪われている。
「いやいや、胡瓜を制する者には世界を云々とかのヨタじゃあないですよ、こいつはガチです」
「そうか。いいよ、行け」
 勝手にしたらいいのに、それで世界を制する筈のヤスはそこで消沈する。
「いや、それがですね? 私もそれなりに頑張っては見たんですが、女子力が足りないとかで」
 他の一族同様、皆殺しにしておけばよかった。物理的なそれは既に備わっている。
「……お前らは不細工揃いだからな」
「せめて神楽舞って遜色ないレベルの上玉を、と」
「死ね」
「いやそれはもう、野郎の願いが叶うまではこちとら死人も同然なんで」
 土気色の理由はそれか。
「……約束しろ。これが済んだらこの国から出て失せると」
「しますとも! お嬢に逆らってまで生きたくないですから!」
 何の間違いか、男ながら巫女としての能力を見出され、将門的な自称最恐の霊魂をパンツ一
枚で昇天させた過去が憎い。お前らも、子供なら誰だってやってみるだろ?
「特にお前は、俺の前に二度と顔を出すなよ」
「そりゃもう……」

 何で奴らは反省というものをしないのだろうか。
 緑色に光る生命体の輝きが、物理法則を無視したムーブで母船に帰還する様子を眺めながら、
私は誓って何も仕込んでいない袴姿で、それを眺めていた。
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