【三題使って】 三題噺その4 【なんでも創作】 (200レス)
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「新年」「放課後」「マジック」
2014/01/05(日)03:16
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124: 「新年」「放課後」「マジック」 [sage] 2014/01/05(日) 03:16:12.29 ID:BKNQ2jc+ 新年も近い12月下旬。 僕は放課後の町を歩いていた。 くたびれた商店街は柄にもなくライトアップして下品な光を放ち、形だけのサンタ帽をやる気もないおばちゃんたちがかぶり、聖夜を演出する体を取っていた。 つまらない。 僕は思った。 こんなの茶番だ。 誰も楽しんでいないのに、異国の宗教にかこつけた馬鹿騒ぎに何の意味があるのか。 シャッターの降りた店の間、暗がりでミィ、と鳴き声がした。 一匹の子猫が顔を出す。 はぐれたのか、いるべきその保護者はいない。 肋骨が浮き出て空腹は明らかだった。 子猫は僕の足にすり寄る。 僕は気まぐれで脇の小さな雑貨店で1缶200円もする子猫用の餌を買った。 プルタブを引き抜き、子猫の目の前にコン、と置いてやる。 子猫は僕を見上げ、やがて遠慮もせず餌を食べ始めた。 僕は猫の傍らに座り、そっと頭を撫でる。 「健一くん……?」 背後から聞き慣れた声が響く。 僕は立ち上がり、振り向いた。 同じクラスの川上さんだった。 彼女も帰りのようで鞄と反対の手にお菓子の入った買い物袋を下げていた。 「川上さん、どうしたの?」 「ううん、健一君、優しいんだなって思って」 女子と話すことに慣れてない僕は誉められたことに照れを見せるまいと、堅く一文字に口を引き結ぶ。 「……猫、好きなの?」 「うん、まぁね」 何となくいいなと思っていた子との校外での遭遇に、僕は狼狽える気持ちを隠して平静に話すことに努めた。 「うちね、猫いるんだ」 「そうなんだ」 「明日、来ない?」 「いいね……って、ええ?!」 突然の申し出に平常心なんてどこへやら、僕は頓狂な声を上げていた。 「明日クラスの女子でクリスマスパーティなんだけど、ドタキャンが出ちゃって……。女子で来れる人もういないんだけど、健一君ならみんな呼んでいいって言うと思う」 でも、と言いかけた僕の手をさっと彼女の冷たい手が掴む。 彼女は鞄からマジックを取り出し僕の手の甲に書いた。 『12/24 19:00』 「ケンタッキーも女子だけじゃ食べきれないし、絶対来てよね。そうそう、1000円分のプレゼント交換、忘れないで!」 言うだけ言って彼女はじゃあね、とぱたぱたと駆けていく。 子猫がミィ、と鳴いた。 その帰り道は少しだけ楽しく思えた。 僕は手の甲に目をやる。 彼女がくれた、それはまさにマジック。 今の僕には明日のイブのために、商店街の喧噪は楽しげな皆の喜びの声に満ちているように聞こえたのだった。 <了>(999文字) http://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1345555392/124
新年も近い月下旬 僕は放課後の町を歩いていた くたびれた商店街は柄にもなくライトアップして下品な光を放ち形だけのサンタ帽をやる気もないおばちゃんたちがかぶり聖夜を演出する体を取っていた つまらない 僕は思った こんなの茶番だ 誰も楽しんでいないのに異国の宗教にかこつけた馬鹿騒ぎに何の意味があるのか シャッターの降りた店の間暗がりでミィと鳴き声がした 一匹の子猫が顔を出す はぐれたのかいるべきその保護者はいない 肋骨が浮き出て空腹は明らかだった 子猫は僕の足にすり寄る 僕は気まぐれで脇の小さな雑貨店で缶円もする子猫用の餌を買った プルタブを引き抜き子猫の目の前にコンと置いてやる 子猫は僕を見上げやがて遠慮もせず餌を食べ始めた 僕は猫の傍らに座りそっと頭を撫でる 健一くん? 背後から聞き慣れた声が響く 僕は立ち上がり振り向いた 同じクラスの川上さんだった 彼女も帰りのようで鞄と反対の手にお菓子の入った買い物袋を下げていた 川上さんどうしたの? ううん健一君優しいんだなって思って 女子と話すことに慣れてない僕は誉められたことに照れを見せるまいと堅く一文字に口を引き結ぶ 猫好きなの? うんまぁね 何となくいいなと思っていた子との校外での遭遇に僕は狼狽える気持ちを隠して平静に話すことに努めた うちね猫いるんだ そうなんだ 明日来ない? いいねってええ?! 突然の申し出に平常心なんてどこへやら僕は頓狂な声を上げていた 明日クラスの女子でクリスマスパーティなんだけどドタキャンが出ちゃって女子で来れる人もういないんだけど健一君ならみんな呼んでいいって言うと思う でもと言いかけた僕の手をさっと彼女の冷たい手が掴む 彼女は鞄からマジックを取り出し僕の手の甲に書いた ケンタッキーも女子だけじゃ食べきれないし絶対来てよねそうそう円分のプレゼント交換忘れないで! 言うだけ言って彼女はじゃあねとぱたぱたと駆けていく 子猫がミィと鳴いた その帰り道は少しだけ楽しく思えた 僕は手の甲に目をやる 彼女がくれたそれはまさにマジック 今の僕には明日のイブのために商店街の喧は楽しげな皆の喜びの声に満ちているように聞こえたのだった 了文字
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