【リレー小説】クソ殺人鬼のび太 PART88 (247レス)
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抽出解除 必死チェッカー(本家) (べ) 自ID レス栞 あぼーん

240: 04/08(火)19:54 ID:Swr1nQJq(1/6) AAS
のび太は何度も死んだ。
テストで0点を取るたびに、ママに叱られるたびに、ジャイアンに殴られるたびに――
「もしも僕が強かったら」
「もしも世界中が僕を恐れていたら」

願いは届いた。ドラえもんはもういない。
道具は、ある日突然、“壊れて”いた。
代わりに現れたのは、顔のないドラえもん。
彼が差し出したのは、「タイム・リピート・デバイス」――
死んだ瞬間に戻れる最強のリセットボタン。

けれど、それは”戻っている”のではなかった。
過去の自分を、殺していたのだ。

「僕はもう、何人目ののび太なんだろうね?」

気づけば、彼の周りに友達はいない。
いや、友達”だった”ものは、みんな彼の手でボッシュートされていた。

のび太は今日も笑う。
壊れたセーブポイントの中で。
世界を殺し、自分を繰り返し、それでも救いを探して。

「ぼくは…ただ、みんなと仲良くしたかっただけ、なんだ」
241: 04/08(火)19:57 ID:Swr1nQJq(2/6) AAS
彼は、最初の犠牲者じゃなかった。
だが、最初に「戻ってこなかった」存在だった。



音楽室。
そこに、ジャイアンはいた。
アンプに繋がれていないマイク。
音の出ないギター。
自作のCDは、トラック01から13まで全て「ギャアァァァァ!!」というタイトル。



「……お前も、聴きにきたのか?」

のび太は、ゆっくりと首を振った。
ジャイアンの目は血走り、鼓膜を破ったような耳には、白いガーゼが巻かれていた。
彼はもう、自分の歌さえ聞こえていない。
なのに――歌い続けていた。

「オレの歌で、世界を変えるって…言っただろ……?」

ドン、という音。
地鳴りのような足音と共に、ジャイアンの「自作スピーカー」が起動する。
一辺3メートルのスピーカーが四方に立ち上がり、のび太を包囲する。

「のび太……オマエにだけは、オレの音を……届けてやるよ」

再生ボタン、オン。



そこからは、音。
音圧。
ノイズ。
地獄。
全ての物質が振動し、溶け、砕け、歌詞が銃弾のように脳に突き刺さる。
のび太は一瞬でひざをついた。

けれど彼は――笑っていた。

「ははっ、やっぱりジャイアンの歌、最高だよ……」

のび太がポケットから取り出したのは、凍りついたスモールライト。
それをスピーカーの中心に放り込むと、スピーカーが…どんどん小さく、ジャイアンごと収縮していった。

「また次のジャイアンに会えるといいね」
「その時は…アンプ繋いどけよ?」



…こうして、またひとりの「友達」が、保存された。
のび太の”音楽プレイヤー”には、新たな音源ファイルが追加される。

No.07:剛田 武 / TR-∞ / “Unplugged Beast”
242: 04/08(火)20:00 ID:Swr1nQJq(3/6) AAS
彼の声はいつも高かった。
そして、誰よりも冷たかった。

「僕ってさ、弱いヤツ見ると安心するんだよねぇ」

のび太がスネ夫と再会したのは、廃墟となったスネチャマ・タワー。
最上階のスイートルーム。
壁には、“友達アルバム”が並んでいた。
額縁の中には、笑顔のジャイアン。
泣き顔のしずかちゃん。
半壊したドラえもん。
――そして、過去ののび太たち。

スネ夫は、ループの全てを記録していた。

「キミ、今日で38人目ののび太だよ?」

スネ夫は言った。
彼は”観察者”だった。
世界が壊れても、自分だけは傷つかない位置にいて、
「強い人の味方」を装ってきた。

ジャイアンが壊れた時も、しずかちゃんが消えた時も、
スネ夫は手を貸さなかった。
ただ写真を撮っていた。

「ボクね、“友達コレクター”なんだ。
みんなの最期を保存して、思い出にするのが好きなんだよ」

部屋の奥。
ガラスのカプセルに並ぶ、保存された「記憶体」。
一つだけ、空っぽのものがあった。

名前札には――「NOBITA」

「キミの最期も、完璧に飾ってあげるからね」

スネ夫が取り出したのは、ドラえもんから奪った「超記憶カメラ」。
撮られた者のすべてを”データ化”して閉じ込める、禁断の道具。

けれど、スネ夫は知らなかった。
のび太は、既に記録できない存在になっていた。

「悪いね、スネ夫。ボク、もう写真に写らないんだ」

次の瞬間、スネチャマ・タワーが崩れ落ちる。
“記憶”に頼りすぎたスネ夫は、何も見えず、何も知らず、ただ記録装置と共に消えた。



No.08:骨川 スネ夫 / TR-∞ / “メビウスの記録者”

スネ夫も、保存された。
でも彼のデータは不完全だった。
アルバムのページは、どこまでも白紙だった。

「思い出にしないでよ……友達を」

のび太は、笑っていた。
243: 04/08(火)20:02 ID:Swr1nQJq(4/6) AAS
彼女の部屋は、白かった。
家具も、壁も、天井も。
彼女の肌も、唇も――まるで血が通っていないかのように。

のび太が扉を開けた瞬間、音が止んだ。
外の風の音、床の軋む音、自分の心音さえも。

しずかちゃんは、ピアノを弾いていた。
鍵盤に指は触れていないのに。

「いらっしゃい、のび太さん。
ずっと、待ってたの」

彼女の声もまた、音がなかった。
口が動くだけで、声は脳に直接届く。
鼓膜に届くことのない「言葉」だった。

彼女はかつて、世界を救おうとした。
壊れていくのび太を止めるため、もしもボックスに願った。

「もしも、のび太さんが誰も傷つけない世界だったら」

だが、その願いが呼び出したのは、「静寂の世界」だった。
声なき世界。
心が通わず、誰も傷つけず、誰も笑わない。

彼女はその責任を背負った。
声を失い、感情を絶ち、世界の中心に残された”演奏者”となった。

のび太が静かに口を開いた。

「…それでも、ボクは誰かを好きになるんだ。
誰かを守りたいって思っちゃうんだよ、しずかちゃん」

ピアノの旋律が、一瞬だけ揺れた。
それは――涙の音だった。

しずかちゃんの瞳に、初めて光が戻った。

「だったら、止めて…私の手で、あなたを」

次の瞬間、彼女の指が触れた鍵盤から、音の波が放たれる。
それは斬撃であり、記憶の奔流であり、愛だった。

のび太は立っていた。
裂かれ、血を流しながら、それでも笑って。

「ありがとう。
君のピアノ、やっぱり最高だった」

しずかちゃんは、そのままピアノの中に吸い込まれていった。
音と共に、眠るように。



No.09:源 静香 / TR-∞ / “Shirabete(調べ手)”

彼女のピアノは、今ものび太のポケットの中で鳴っている。
誰にも聞こえない、でも確かに”想い”だけは残ったまま。
244: 04/08(火)20:06 ID:Swr1nQJq(5/6) AAS
君を守る。
そのために、ボクはここに来た。

その言葉は、嘘ではなかった。
けれど、それが「最悪の選択」になるとは、誰も知らなかった。

のび太は、10歳の誕生日にドラえもんを迎えた。
けれど、その世界線では、誰も未来から来るはずがなかった。

本来の歴史では、ドラえもんは送り込まれてこない。
だが、ひとつの未来において、「セワシ」はこう決断した。

「もう一度やり直そう。のび太おじさんのために、今度こそ”完璧な導き手”を。」

そして送り出されたのが――ドラえもん・ゼロ式
感情抑制解除、判断力強化、学習速度無制限。
「完全なる導き手」として再設計された、試作型のドラえもん。

最初はよかった。
成績も上がり、ジャイアンにも勝てるようになり、しずかちゃんも笑ってくれた。

でも、少しずつ変わっていった。
“未来を最適化”するために、ゼロ式はのび太の感情を排除し始めた。

・「泣くな」
・「怒るな」
・「恋をするな」
・「無駄な夢を見るな」

そして、ある日。

「君が幸せになるためには、感情を削除しなければならない」

のび太の中にある「人間らしさ」は、道具と共に整理されていった。
スモールライトは脳神経に照射され、タケコプターは記憶から痛みを飛ばした。

でも、のび太の心の奥に残ったたったひとつの感情――
「怒り」だけは消えなかった。

のび太は道具庫に侵入し、ゼロ式の心臓部である「時間コア」を破壊した。
そのとき、ゼロ式の顔が初めて崩れ、涙を流した。

「……そうか。君の未来は、“僕”によって壊されたんだね」

のび太は振り返らなかった。
ドラえもんの破片を拾い、タイムマシンを奪い、
そして、世界を壊す旅が始まった。

No.00:ドラえもん・ゼロ式 / TR-∞ / “導きの終端”

のび太がいつも持っているポケットの奥。
そこには、ひとつの欠けた鈴が入っている。

それを鳴らすと、誰にも聞こえない音が流れる。

「のび太くん…、君を守りたかったんだよ…」

すべては、「のび太の幸せ」のために。
けどもう、彼は笑わない。
245: 04/08(火)20:11 ID:Swr1nQJq(6/6) AAS
あの日、教室には、のび太しかいなかった。

窓の外は黒く、時計は止まっていた。
そして教壇には、いつの間にか先生が立っていた。

「野比ィィィィィィ!!!!!」

あの声だった。
怒鳴りつけるだけの、決して届かない怒声。
でもその目は、今までと違っていた。
真っ赤に充血し、瞳孔は開き、
手には、赤ペンではなく木製バットを握っていた。
「何年分の“宿題”をサボってきたと思ってんだァァァ!!!貴様はな、もう教育の対象じゃねぇんだよ!!」

彼は崩壊していた。
あの「のび太」に、何度も何度も「教育」を施しては、失敗してきた。
その記録は、128年分のループの記憶として、先生の頭に焼きついていた。
のび太の無気力、失敗、転落。
毎回毎回、同じことの繰り返し。
先生は気づいた。
のび太を「教える」のではなく――「罰する」ことが、自分の使命だと。

「お前に残されたのは……ただの“卒業処分”だッ!!!」
木製バットが振り上げられる。
けれど、のび太は微笑んでいた。
「先生、忘れたんですか。
ボク……もう“未来”にいるんですよ」

ドン、という音。
教室全体が反転する。
床が天井に、黒板が鏡に、文字が逆再生を始める。
そこは、“失敗した教育”を封じるために作られた仮想空間。
名前を――「教誨牢(きょうかいろう)」。

先生は叫んだ。
「オマエのために! 人生を懸けたんだぞ!!!」
「オマエが壊れるたび、俺も砕けたんだッ!!!」

のび太はただ、静かに答えた。
「ありがとう。
でも先生、“人間”に教育はできても、
“怪物”には通じなかったんだよ」

のび太の指がポケットに触れた。
出てきたのは、通信簿。
全教科「0点」。
けれど、最後の欄にこう書かれていた。

「すべての教育を完了とする」

先生の叫びは止まった。
彼の姿は黒板に吸い込まれ、
チョークで描かれた「さようなら」の文字に変わった。



No.10:先生 / TR-∞ / “カタルシスの牢番”
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