[過去ログ] 【艦これ】赤城「……さて、と」提督「昔話を、しようか」 (1002レス)
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(1): 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/11(木)01:30 ID:aNADSjR+0(1) AAS
>>801
801(1): 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/11(木)01:12 ID:ab3iSX5l0(1) AAS
下げ忘れ、他所のスレの話題持ち込み、さすが末尾Oお里がしれますなあ
そういう貴殿も末尾0ですね?
大文字のオーである可能性も否めませんが
803: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/11(木)02:05 ID:sKkgVh1w0(1/9) AAS
南方基地、ハンガー


隼鷹「……」

提督「……」

隼鷹「ウス」

提督「……お前はなぜ、艤装ごと上に釣り上げられてるんだ……」

隼鷹「いやぁ……艤装つけて迎えに行こうかと思ったんだけどさぁ。
なんか艤装の接続がうまくいかなくて、いきなりクレーンで釣り上げられちまった!」

提督「当たり前だろ……俺の許可無しに艤装を装着できる訳がない」

隼鷹「確かに!!」

提督「お前は本当にバカだな……自力で降りれそうか?」

隼鷹「無理だな。10分くらいこの状態だしな」

提督「……はぁ……ハシゴを探してくる」

隼鷹「うへへ。ありがとー!」
804: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/11(木)02:06 ID:sKkgVh1w0(2/9) AAS
数十分後……


提督「くそっ……なんでセーフティレバーがスタックしてるんだ……!」ガチャ

隼鷹「無理矢理つけたからかな?」

提督「装着出来ないからって無理矢理噛み合わせるとは……
ゴリラかお前は」ガチャガチャ

隼鷹「ウホッ」

提督「お前……森に捨てるぞ……」カチカチ

隼鷹「やめろよ……」

提督「全く……」

805: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/11(木)02:06 ID:sKkgVh1w0(3/9) AAS
ガチャガチャ……バキッ

提督「うおお……」

隼鷹「なんかヤバい音したよな今!」

提督「多分大丈夫だろ……お前なら落ちても」

隼鷹「嫌だよ!」

ガコンッ

提督「お、おお?」

隼鷹「おお?!」

ガシャコン……ウィーン

提督「……ふう……クレーンが下がり出したな……」

隼鷹「ドキドキしたぜ……これでやっと下に降りれるーー」

806: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/11(木)02:07 ID:sKkgVh1w0(4/9) AAS
ウィーン……ガギン!

隼鷹「……」

提督「……」

隼鷹「また止まったんだが」

提督「……この高さなら落ちても大丈夫だろ」

隼鷹「うわあああ!
それが司令官の言葉かぁ!」

提督「……はぁ」

………
……


807: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/11(木)02:07 ID:sKkgVh1w0(5/9) AAS
更に数十分後……

提督は黙々と作業を続けていた

提督「……暑い……」ガチャガチャ

隼鷹「ねー……と言うかこれ、太郎さんに言った方が良いんじゃ……」

提督「そうだな……まさかこんなに手間取るとは」ガチャ……

提督は作業する手を止め、ふぅ、と一息つく。

提督「まぁ、言ってもやることは変わらんのだが……
クレーンが上がる事はままある。
下ろすのは大体手作業だ」

隼鷹「へぇ」

提督「……許可の出ていない艤装を無理に接続しようとすると、クレーンが上に上がるのさ。
普通はセーフティレバーを下げたら降りるはず何だが……
今回はマヌケが一緒に釣られたからな……」

808: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/11(木)02:08 ID:sKkgVh1w0(6/9) AAS
隼鷹「うへへ……でもなんでそんな仕組みが?」

提督「人間は艦娘を管理しようと躍起なんだよ。武器を持たせないようにな。
本質的に深海棲艦と艦娘は似ている。
連中は艦娘が怖いんだ。
決して口にはしない事だが。
お前も、もしかしたら以前居た所で覚えがあるかも知れんが」

隼鷹「……」

提督「深海棲艦が現れたのも、艦娘が現れたのも最近だ。
艦娘による迎撃態勢が整うまでに、沢山の軍人が深海棲艦の攻撃で死んだ。
今の上層部は、その死んだ奴らの同僚が殆どなのさ。
まぁ……後はわかるだろ」

隼鷹「……ん」

809: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/11(木)02:09 ID:sKkgVh1w0(7/9) AAS
暫く、沈黙。

隼鷹「なぁ。あんたは……怖いか?アタシが」

提督「そう見えるか?」

隼鷹「見えないけど……」

提督「ならそういう事だ。
本当にビビってたら、人間所作に出るんだ……よっと!」ガチン!

……ウィーン

隼鷹「お、動き出した!」

提督「ふぅ……」

隼鷹「よしっ、これで一件落着だな!」

提督「おい、暴れるなよ。
落ちるぞ」

隼鷹「大丈夫大丈夫ーー」

と言ったそばから。

隼鷹「あーれー?」

810: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/11(木)02:09 ID:sKkgVh1w0(8/9) AAS
ズルッ

提督「おいっ!」

艤装に引っかかっていた隼鷹は、唐突に滑り落ちた。

提督「言わんこっちゃない……!」

艦娘でも、艤装を着けてない状態で頭から落ちると、何か酷い怪我をするかも知れない。
提督は、なんとか受け止めようと、足掻く。

提督「くそっ……!」


……
………


雷「……もうすぐ帰還ね。やっお港が見えっ……は?」

榛名「……えええー……」

鳳翔「……おかしいですね……
他人様の港で、隼鷹が提督に馬乗りになっているように見えるのですが……」

足柄「……奇遇ね。あたしもよ」

必死な提督が隼鷹の下敷きになったところは、丁度帰ってきた足柄達にバッチリ見られてしまった。

足柄「何やってんのよ……あの馬鹿……」

やれやれ、と溜息。
811: ◆hsyiOEw8Kw [sage] 2015/06/11(木)02:10 ID:sKkgVh1w0(9/9) AAS
ここまで
812: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/11(木)02:29 ID:cKYsNsewo(1) AAS
隼鷹も自主訓練増えるのか……
813: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/11(木)02:34 ID:LvaqRbppo(1) AAS
よっしゃ!演習未参加の隼鷹にも見せ場貰えたな
814: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/11(木)03:11 ID:/pdtavL2O携(1) AAS
乙です
815: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/11(木)06:34 ID:iIVbFwmco(1) AAS


>>802
なにいってだこいつ
816: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/11(木)11:51 ID:74HKifQo0(1) AAS
乙です
817: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/14(日)23:56 ID:NL1R4qYX0(1/3) AAS
隼鷹「て、提督?大丈夫?」

提督「まずは……どいてくれ……」

隼鷹「あ、ああ。ごめん」

隼鷹はサッと提督の上から退いた。

隼鷹「大丈夫?立てそうか?」

提督「……立てん……」

隼鷹「……マジで?アタシを陥れようとしてない?」

提督「お前……しばき倒すぞ……」

隼鷹「うわぁ、ごめん!まさか提督がクッションになってくれるとは……」

提督「とにかく落ちた位置が悪かったな……
腰をやったかも知れん」

隼鷹「マジかよ……肩貸すぜ」

提督「頼む……痛たたた!急に起こすな!」

隼鷹「あ、ごめん!」サッ

隼鷹が驚いて手を離し、提督は顔からベチャッと地べたに落ちた。

提督「痛いわ!怪我人を落とす奴があるか……!」

隼鷹「す、すまねぇ」

818: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/14(日)23:57 ID:NL1R4qYX0(2/3) AAS
………
……



数分後……


提督「もっと怪我人は丁寧に扱え!ゴリラか!」

隼鷹「注文が多いわ!ゴリラパンチかますぞ!」

提督「何てやつだ……」

足柄「……で?何やってんの?」

隼鷹「……あ……!」

提督「足柄……榛名、鳳翔、雷。
戻ってたのか」

足柄「今戻ったとこよ」

提督「そうか。
……見事な勝利だった。
とりあえず風呂の申請は済ませてあるから、艤装をハンガーに引っ掛けたら行ってこい。
よく頑張ったな」
819: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/14(日)23:58 ID:NL1R4qYX0(3/3) AAS
足柄「あ、ありがと。まぁ、それは良いんだけどさ……
何で地べたに寝そべったまま喋ってんの?
凄くみっともないわよ?」

提督「……立てないんだ……」

足柄「……は?」

提督「……」

足柄「……隼鷹?」

隼鷹「……ウホ」

足柄「……」

榛名「……」

雷「……」

鳳翔「……躾……」

隼鷹「ひっ……」
820: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:06 ID:WQWBkUhi0(1/29) AAS
………
……



提督の私室


提督「痛たたた……お前だけすまんな」

足柄「ほんとに何やってんのよ……」

一番被弾の少なかった足柄に抱かれて、提督は私室へと運ばれた。
他のメンバーは風呂へと向かった様だ。

提督「それは隼鷹に言え隼鷹に……」

足柄「……もう、艤装付けてなくても、艦娘は丈夫だから落ちた所で大丈夫よ。
人間の方がヤワなんだから……」

提督「でも、落ちたら痛いだろ?」

足柄「そうだけど、そういう問題じゃないわよ」

提督「そういう問題じゃない、とは?」

821: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:07 ID:WQWBkUhi0(2/29) AAS
足柄「……論理的じゃないわ」

提督「……論理的で無いと、そう思うのか?」

足柄「……だから、隼鷹なら落ちても大丈夫ーー」

提督「いや、落ちたら痛いだろう。
だから俺はその痛みを軽減しようとした。何かおかしかったか」

足柄「……じゃあ、非効率的、と言うわ」

提督「感情とは非効率的な性質を持っているんだ。それを排するのは違うな」

足柄「……あたしが言いたいのは、隼鷹が丈夫って事よ。
少しの間痛むだけ、最悪でも入渠で、あなたが腰を痛める必要は無かったわ」

822: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:08 ID:WQWBkUhi0(3/29) AAS
提督「……俺の心配をしてくれるのは嬉しいが……まぁ、なんだ。
あまり艦娘を強度で評価するな」

足柄「……あたしはそんなつもりじゃ……」

提督「わかってる。
ただ、俺が好きじゃなくてな……
お前達は無機物じゃない。
他の人間は、そう思わせたいのかもしれないが……
少なくとも、俺はそうは思わん。
すまんな」

ポンポン、と足柄の頭に手を置く。

まただ、と足柄は思う。
時折この男が言う事。
それは足柄の心を酷く、乱した。
よくわからないままに。

足柄「……なんでそんな甘いのよ」

提督「普通の事だ。お前が『異常』に慣れ過ぎている」

足柄「……」

提督「運んでくれて助かった。
お前も風呂に行ってくれて構わん。
夕方には船でサセン島に戻るぞ」

足柄「……あなたはどうするの?」

提督「痛みはマシになってきている。
杖でもつけば大丈夫さ。
ほら、行ってこい」

足柄「……ん」
823: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:09 ID:WQWBkUhi0(4/29) AAS
………
……



南方基地、脱衣所


足柄(……別に隼鷹をモノ扱いしたかった訳じゃなかったわ)

服を脱ぎながら、考える。

足柄(……そう見えたのかしら。
いや、でも艦娘って丈夫だし……
……あたしは提督の体を心配しただけなんだけどなぁ……
……それだけあたし達が大事にされてるってことよね)

ため息。

足柄(あたし達を兵器じゃないなんて言い切るのは……
少なくとも提督くらいしか、あたしは見たことがない)

服を脱ぎ終え、浴室への扉へ手を掛け。

足柄(あたしはどこへ行っても鉄屑扱いされるのが嫌だった。
それで反抗してトバされた訳だけど……
いざ、兵器じゃ無いと断言されると、なんか、ヘンな感じ。
……何なのかしら、これ)

不完全燃焼な心模様のまま、ガラガラ、と戸を引いた。

824: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:09 ID:WQWBkUhi0(5/29) AAS
隼鷹「……お。足柄」

足柄「……なんで、あんたも入ってんのよ……」

隼鷹「うへへ」

鳳翔「提督は大丈夫でしたか?」

榛名「私達は蛍光液塗れだったので、ご一緒出来ませんでしたが……」

足柄「ヘラヘラしてたわ。心配するだけ損よ損」

雷「あらそう?なら良かったわ」

と、足柄の後ろの扉が開き、18戦隊の面々が入って来た。

金剛「気絶したままの摩耶が重いヨ……コホンッ」

陽炎「こ、腰がなんかヘンよ私は……」

翔鶴「転けないでよ?……あら、皆さん」

足柄「お疲れ様です……
お風呂、お先に頂いてるわ」

翔鶴「お疲れ様でした。大丈夫ですよ」
825: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:10 ID:WQWBkUhi0(6/29) AAS
と。

金剛「足柄サン……」

足柄「……!」

金剛が摩耶を肩に抱えたまま、スッと前に出た。
浴室内の空気が緊張する。

見ると摩耶はかなり派手にやられていた。
先日の応接室でのやり取りを見ても、金剛は気が長くは無さそうだ。
今も怒っているのかもしれない。

そう考え、少し身構える足柄に。

金剛は、スッと、手を差し出した。
そして、笑顔で。

金剛「Gratz!見事だったネ!」

足柄もその手を取り。

足柄「ありがと。
ナイスファイト!
ふふ、怒ってるのかと思ったわ」

金剛「Why?ワタシ達は仲間デース!
得るものや悔しさは有っても、憎しみはアリマセン!」
826: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:10 ID:WQWBkUhi0(7/29) AAS
………
……



金剛「最後、負けるとは思わなかったネ〜」

足柄「うふふ、実際運が良かったわ」

金剛「そうカナ?あの魚雷、that was epic!」

足柄「あら、ありがと」

金剛「どういう戦略でアレをー?」

足柄「えっとねーー」

金剛は修復槽に摩耶を突っ込み、自身もそこに浸かりつつ、足柄との談義に花を咲かせていた。

金剛「ワタシも飛行機、飛ばそうカナ。便利?」

足柄「有ればとても役に立つわ。攻撃以外でも、ね」

金剛「うんうん。初撃は完全にしてやられたしネー。
……よし、決めた。ワタシも艦載機を載せるネ!
翔鶴!翔鶴ー!」

翔鶴「はいはい、聞こえていますよ」

金剛「明日……No、今晩、艦載機の使い方を教えて欲しいヨ!」

翔鶴「あら。良いわよ」

金剛「Thanks!鉄はhotな内にシバくに限るネ!」
827: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:11 ID:WQWBkUhi0(8/29) AAS
足柄「だってよ、隼鷹?」

隼鷹「くっ……鳳翔さん!アタシ達は今から訓練だ!」

鳳翔「……はい?」

金剛「What?!……翔鶴、ワタシ達も今からやるネ!」

翔鶴「落ち着きなさい……修復中でしょう」

金剛「Shit!」

足柄「……あなたは、真摯ね」

金剛「そ、そうカナ?」

足柄「ええ」

金剛「あ、アリガト」

金剛(……シンシ……紳士?
私が紳士……?え……?
Shitって言ったばかりよ……?)

日本語が分からず、悶々とする金剛の姿を見て何を勘違いしたのか、足柄は続けた。

足柄「……あなたは……自分を兵器だと思う?」

金剛は暫くキョトンとしてから、微笑んだ。
それを見て、足柄はなんだか慌てる。
828: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:12 ID:WQWBkUhi0(9/29) AAS
足柄「ごめんなさいね、急に。
……あなたが……戦いに対して……とても真面目だから。
少し、不思議で」

金剛「……提督に、何か言われたのネ」

足柄「……んー……直接ってわけでもないけど……
遠からずって所かしら」

金剛「『お前達は兵器じゃ無い』って感じデース?」

足柄「……まぁ、その通りね」

金剛「Fmm……質問を質問で返すようデスが……あなたは自分を兵器だと思うデスカ?」

足柄「……多少は、ね。
意思のある……兵器だと」

金剛「……ナルホド」

足柄「……あそこに隼鷹が居るでしょう」

金剛「ハイ」

足柄「提督、さっき隼鷹のドジをかばって怪我したのよ」

金剛「それは本当デスカ?大丈夫なのデス?」

足柄「ああ、本人はピンピンしてるんだけどね。
ただ、別に隼鷹は艦娘なんだし、それくらい庇わなくても大丈夫って言ったら……『痛いだろ?』って。
艦娘は無機物じゃないってさ」

金剛「……」
829: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:14 ID:WQWBkUhi0(10/29) AAS
足柄「あんたの方が痛いでしょって思うんだけど!」

金剛「Haha You got it!……デモ、提督はそんな人デス」

足柄「そうね……
ただ……」

金剛「……?」

足柄「あたしが兵器じゃ無いなら、なんで戦ってんだろって。
提督が来てから……そんなことが頭の中に生まれてきて……
考えないようにしてたんだけれど……」

金剛「Ah……」

足柄「認めたくないけど、あたしのアイデンティティーは兵器である事なのよ、きっと。
それが嫌で、反抗していたはず、なんだけどなぁ……」

金剛「……」

足柄「ねぇ、金剛さん。
あなた、本当に強いわ。
今回は、私の運が良かっただけ。
沢山訓練積んで、場数も踏んでるわよね。
……だから聞くわ。
あなたは何故、戦うの?って」
830: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:15 ID:WQWBkUhi0(11/29) AAS
金剛「ワタシは……」

チラリと、気絶したままの摩耶や、鳳翔達と話す翔鶴に目をやる。

金剛「艦娘を、ヒトを、守りたい」

足柄「……」

金剛「今、皆が居て、ワタシは幸せデス。
この時間を守りたいんダヨネ」

足柄「……ヒトってのは……ヒト?」

金剛「そうだヨ。
ヒトは……艦娘を嫌う者も多いネ。
でも、今私に酷い事を言うヒトであっても、大切な家族がいて、幸せな時間があって。
ワタシは……皆の、幸せの礎になりたい」

足柄「……幸、せ」

金剛「その為には、強くならなきゃいけないネー。
それが、真面目な理由ダヨ」

足柄「……他の者の、為に?」

金剛「Hahaha!まさか!全部、ワタシのエゴデース」

足柄「……?」
831: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:17 ID:WQWBkUhi0(12/29) AAS
金剛「例えば、皆がやられたら。ワタシは悲しくなるネ。
例え、誰か知らない人が死んでも、ワタシは悲しくなるヨ。
守るのは、失うと、ワタシが、自分が悲しいから。
Loveなんて……結局そんなモノネ。
ワタシはそう思うヨ」

足柄「……」

金剛「足柄、問いへの答えをあげるネ」

足柄「……?」

金剛「ワタシ達は兵器じゃ無い。ワタシ達は人間でも無い。
ワタシ達は、艦娘ダヨ」

足柄「……艦娘」

金剛「……まぁ、それは提督が言ってた事だケド。
あの人はイジワルだからネ!
意味を聞くと、自分で考えろ、と言われマース!」

足柄「なんだか、提督らしいわ」

金剛「……足柄」

足柄「……ん?」

金剛「ワタシは……あなたが少し、羨ましいデス」

足柄「……?」

金剛「提督の元に居られる事デスヨ」

陽炎「えっ……」

今まで金剛の隣で、ずっと黙っていた陽炎が驚きの声を上げた。

陽炎「……ここは嫌なの?」

832: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:17 ID:WQWBkUhi0(13/29) AAS
金剛「まさか!ワタシは皆を愛してマース!勿論……陽炎もネ!」

陽炎「わわっ……抱きつかないで……は、恥ずかしい……」

金剛「太郎さんも、とても優秀デスヨ!自慢の司令デース。
ただ……提督は……特別なのデスヨ。
あの人は……艦娘に考えさせマース」

足柄「……?考えさせる?」

金剛「まさに『何故戦うのか』とかデスヨ」

足柄「……」

金剛「艦娘に『時間』を与えてくれるのは……あの人だけデス。
他の人には、そうする気が無かったり、現状で一杯一杯だったり……
イロイロ難しいのデース。
艦娘の自由時間を増やすと、司令の負担も増えマスから」

足柄「……そうね」

思えば、提督は毎日遅くまで執務をしていた。
足柄はいくつかの基地を転々とした経験が有るが、特に辺境の基地など、司令があそこまで働いている事は無い。
自分達が食堂で雑談をする、そんな時間を作る為に、あの人は一人で仕事をこなしていたのだろうか。

833: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:18 ID:WQWBkUhi0(14/29) AAS
金剛「まぁ、悩むのはしんどいデスが……悩んだからこそ、得られる答えも有りマス」

足柄「……」

金剛「そういう事を経験してから、忙しい前線に来ると……
悩んでいた事がとても懐かしくて……それで、羨ましいのデース」

足柄「……そう」

金剛「提督に、悩みを打ち明けるのも良いと思いマスヨ!
きっと……喜びマス」

足柄「喜ぶ?」

金剛「ハイ!ワタシの時は……喜んでマシタ」

足柄「……変な人ね、提督って」

金剛「そこがイイ!」

足柄「あなたも、変な人」

金剛「What?!」

うふふ、と笑う。

足柄「あ……そうだ。
一つ聞いていいかしら」

金剛「?」

足柄「提督って……
教官の前は……何をしてたの?」
834: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:23 ID:WQWBkUhi0(15/29) AAS
金剛「んー……実はワタシもよく知らないのデース」

足柄「……そう」

金剛「質問したことは有るのデスが……
頑なに教えてくれなくって……」

足柄「……」

金剛「ただ……
世の中には知らない方が良い事、知らなくて良い事が有るデス。
提督が話さないのならーー」

足柄「わかってるわ。ほんの好奇心よ。
……んー、逆上せちゃったかも。
そろそろ上がろうかしら。
……色々ありがとね、金剛さん」

金剛「いえいえ!こちらこそ艦載機とか参考になったヨ!アリガトー!」

足柄「じゃ、またね」

金剛「あ、そうデース。
一つだけ確かな道標をあげマース」

足柄「?」

金剛「人間でも、兵器でも、艦娘でも。
深海棲艦は、共通の敵デース」

足柄「……」

金剛「アイデンティティーは変化しマス。
ケド、これは絶対に変わらない、事実デース」

足柄「そう、ね」

金剛「……折角なので、ゆっくり考えるデース」

足柄「……そうするわ。ありがと。
……こんな話が出来る人、居なかったから。
なんというか……助かったわ」

金剛「それは良かったデース!
お互いをあまり知らないからこそ、話せる事もありマスから、ネ」

足柄「そうね……それじゃ、また」

835: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)00:25 ID:WQWBkUhi0(16/29) AAS
ここまで
836: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/15(月)00:32 ID:/pxLUKeUO携(1) AAS
乙です
837: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/15(月)00:34 ID:TLtvLS0dO携(1) AAS
深海棲艦か……
これまで忘れてたけど、赤城達の動向が気になる
838
(1): 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/15(月)00:37 ID:EgD98isz0(1/2) AAS
金剛、大井、北上と
加賀、不知火、川内は同時期に提督の元にいたわけじゃないのかな
大反抗戦の前と後って感じか?
839: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [] 2015/06/15(月)00:42 ID:2hVkb21B0(1/2) AAS
乙です!
840: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/15(月)00:42 ID:2hVkb21B0(2/2) AAS
乙です!
841: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/15(月)01:57 ID:8Cc5dKg6o(1) AAS
乙っす

>>838
>>289
289(1): ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/05/12(火)19:56 ID:PeeFadoN0(2/19) AAS
………
……



提督「……すまんな、太郎くん。このクソ忙しい時に」

太郎『いえ、むしろ此方からお願いさせていただきたかった演習ですので』

提督「助かる」

太郎『そんな。此方の都合に合わせて頂いているのですから』

提督「いやいや……まぁ、お手柔らかに頼むよ」

太郎『此方こそ、よろしくお願い致します』

提督「それと……この間話した件だが……」

太郎『はい。英雄提督であることを伏せておく件ですか?』

提督「ああ……」

太郎『部下にはきっちりと言い含めておきます。……しかし、ずっと隠し通せるとは……』

提督「わかっている。今しばらく、保てばいい」

太郎『……そう、ですか。わかりました』

提督「手間を掛ける」

太郎『いえいえーー』

そんなこんなで打ち合わせをしていると、電話の向こうで翔鶴が太郎を呼ぶ声が聞こえた。

提督「おっと。すまん、時間を取らせたな。では、また明日に」

太郎『とんでもありません。では、失礼致します』

ガチャリ、と受話器を置く。
彼に負担をかけているという自覚はある。
太郎は今、極めて多忙だった。
なんせ、彼は最前線の部隊にあり。
そして件の情報公開ガイドラインの通達がもうすぐ行われるからだ。
また、南方基地が、情報公開と同時に決定した防衛線構想の一部である事が忙しさに拍車をかけていた。

直前に演習海域が公開されるのも、単純に太郎が演習準備の時間を取れない為、公平を期しての事である。

提督「……しかし、これは有益な演習となる筈だ……お互いにな」
で口止め頼んでるから金剛も知らない振りしたんじゃない?
842
(1): 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/15(月)04:01 ID:Q9aLAaCHo(1) AAS
英雄提督のことはどうしても隠したいみたいだしね
榛名には夜戦忍者がバラしちゃったけど
843: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/15(月)04:40 ID:YyS8bz0U0(1) AAS
乙です 
>>842 そうか知っているのは榛名だけだったか忘れてた
844: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/15(月)06:05 ID:q+R5VDdjo(1) AAS
>深海棲艦は、共通の敵デース
>これは絶対に変わらない、事実デース
霧島や那智が現れるかもしれない現状を思うと苦しいな
845: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2015/06/15(月)07:54 ID:48Hh67bNO携(1) AAS
確実に来るその日に備えて自分にも言い聞かせてるんだろうな
846: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)23:19 ID:WQWBkUhi0(17/29) AAS
足柄(何で勝ったのに、こんなにモヤモヤするかなぁ……)ガラガラ……

榛名「あ、足柄さんが出ましたね」

鳳翔「あら……」

雷「逆上せたのかしら?」

隼鷹「ほうほう、んでんで?」

翔鶴「偵察機を飛ばす時は、全機の視界で一枚絵を作るイメージで飛ばすと良いですよ」

隼鷹「一枚絵……ナルホドなぁ」

翔鶴「景色の流れ方が違うと、見落としが発生したりしてややこしいですが……」

隼鷹「ほむほむ」

雷「こっちはこっちで話し込んでるわねぇ……」

鳳翔「交流するのは、良い事です」

金剛「なら、交流しまショウ!」

榛名「こ、金剛さん?!修復は……」

金剛「もう大丈夫デース!」

鳳翔「それは良かったです」

金剛「しっかし榛名は強かったデスネ!」

榛名「そ、そうでしょうか……えへへ」

鳳翔「……摩耶さんと陽炎さんは大丈夫ですか?」

金剛「ンー。傷的な意味では問題nothingなのデスが……
陽炎がすっかり榛名を怖がってしまって……」

847: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)23:20 ID:WQWBkUhi0(18/29) AAS
榛名「え……?」

雷「そんな心外そうな顔をしなくても……」

榛名「いやぁ……大分手加減したつもりだったのですが……」

陽炎「……あれで、ですか?」

榛名「あら、陽炎さん」

榛名が振り返ると、そこには険しい顔をした陽炎が。

陽炎「もう少し、摩耶への配慮とか、ないんですかっ……」

榛名の目が細められる。

榛名「配慮しましたよ?」

陽炎「摩耶はあんなに血を流してっ!」

金剛「陽炎」

陽炎「だって、やり過ぎじゃないの!私の艤装だってーー」

金剛「陽炎。Cut it out.」

陽炎「でもっ!いくら提督さんの所だからって、勝手が過ぎーー」

ピクリと、榛名の眉が動く。

榛名「あなたを誘う為に……わざと派手に出血するようにと、顔面と胃を狙いましたから。
手心は加えてますってば」

848: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)23:20 ID:WQWBkUhi0(19/29) AAS
陽炎「誘うって……!
納得がいきません……!
私達は、仲間じゃ、無いんですかっ」

榛名「……はぁ……仲間、ですか」

溜息。

雷「ちょっと榛名……」

榛名「とにかく、艦娘はあの程度では死にません。
修復槽に突っ込めば傷も残らないでしょう」

陽炎「そういう問題じゃーー」

駄々を捏ねるように繰り返す陽炎に、榛名は苛立ったのか。
予備動作無しで陽炎の喉元に手を伸ばした。

決して素早い動作ではない。
だが、誰も反応出来ずに。
榛名の人差し指は、いつの間にか陽炎の喉仏あたりをツンツンと突いていた。

849: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)23:21 ID:WQWBkUhi0(20/29) AAS
陽炎「ひっ……」

金剛「榛名!」

鳳翔「榛名さん!」

無視して続ける。

榛名「良いですかぁ……?
艦娘なんてのは、喉仏を陥没させただけで戦闘不能になります。
それは締め落とすよりも、遥かに楽なんですよ……?」

陽炎「く、訓練なんだからっ……
そんな、殺すようなっ……」

今度はグリグリと喉仏を押して。

榛名「うふふ。喉仏潰したくらいじゃ死にませんよ?」

陽炎「わかんない、じゃない……」

榛名「わかりますよ。私自身、何度も潰された事がありますから」

陽炎「……っ」

不気味に嗤いながら言う榛名の言葉には、重みがあった。
榛名の人差し指に力が篭る。

榛名「寧ろ、後遺症が残らぬようにと、丁寧に対処した事を感謝してーー」

隼鷹「榛名。
そろそーろ……おイタが過ぎるぜ」

そこで隼鷹が、榛名の人差し指をそっと、しかしがっちりと握った。

榛名「……」

榛名は不満気だが。

鳳翔「ーー提督に、ご迷惑がかかりますよ」

側から見ていた鳳翔のその一言で、矛を収めた。

榛名「……ごめんなさい。
私、もう上がりますね」

850: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)23:22 ID:WQWBkUhi0(21/29) AAS
鳳翔「……」

去り際に。

榛名「ああ、陽炎さん。重要な事を言い忘れてました」

陽炎「……?」

榛名「強い味方に守って貰う事が、『仲間である』事ですか?」

陽炎「……」

榛名「それは、甘えですよ」

陽炎「……!」

陽炎は、何も言えなかった。

榛名「では」

陽炎「……」

雷「もー……
ウチのポンコツが色々ごめんなさいね……」

雷も謝るが、内容を否定する事はなかった。

851: ◆hsyiOEw8Kw [saga] 2015/06/15(月)23:23 ID:WQWBkUhi0(22/29) AAS
金剛(こりゃまた、榛名の思考は足柄とえらい違うわね……)

陽炎「……」

金剛「陽炎」

陽炎「……?」

金剛「悔しければ、強くなるネ」

陽炎「……」

金剛「失敗した事は、あなたがよくわかっているヨネ。
でも、その悔しさは怒りじゃなくて、自分への努力に向けるべきダヨ」

陽炎「……ごめん……なさいっ」ダキッ

金剛「よしよし。
嫌な事は、涙で流しちゃうに限るヨ!」

陽炎「うわぁぁぁ!」

鳳翔「……我々は退散、しましょうか」

隼鷹「んだね。
またね、翔鶴さん」

翔鶴「……はい」

鳳翔(しかし……榛名さん。
提督という単語にとても敏感になっている……
一体何があったのですか?)

何故だか、モヤモヤする。
何だろう、この気持ちは。

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