[過去ログ] マミ「私は……守りし者にはなれない……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第三章 (805レス)
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287: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/20(月)03:01 ID:OXLduBPHo(1/6) AAS
 口にはできなかった。
 あまりにも恐ろしくて。
 口にすれば、本当に認めてしまいそうで。

 まどかは長く沈黙していたが、いつまで経っても催促は聞こえない。  
チラリとほむらを窺うと、彼女は今まで見たこともない顔をしていた。
 目を丸くし、半開きの口。
 一言で表すなら、驚愕。
 
 変化は微細だったが、無表情が常の彼女だからこそ顕著だった。
 目が合ったと気付くなり、ほむらは逃げるように目蓋を閉じた。肩に掛かった髪を優雅に払って一息。
 目を開けた時、動揺はすっかり消えていた。
 
「どうかしら。それでも、あなたは、きっと――」

「きっと、なに?」

「……きっと、その前にアイツが契約を唆しにきたでしょうね。そしてあなたは魔法少女になった」

 まるで真意を鉄面皮の下に隠すよう。
 気にならないでもなかったが、追及はしなかった。彼女が隠すなら、どうせ聞いたところで答えは得られない。

「私にも力があれば……」

 誰にともなく呟く。
 ほむらの言う通り、そんな状況に追い込まれれば契約したに違いない。
 そうすればホラーにも対抗できた。代償として、たった一度の願いをよく考えずに使い切り、
終わらない死闘に身を投じる羽目になるが。
288: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/20(月)03:05 ID:OXLduBPHo(2/6) AAS
「あなたは、力が欲しいの?」

「うん……うぅん、どうなんだろ。わかんない」

 力は欲しい。でも、それは手段であって目的じゃない。
 では目的とは。
 弱い自分を変えたいが為。確固たる自信を持ち、輝ける自分になりたい。 
一方で、誰かを救いたい、誰かの役に立ちたいという気持ちもある。

「でも、私なんかじゃ力があっても変われないのかな」

 まだマミにもさやかにも明かしていない、秘めた想いを吐露したのは、たった一人にだけ。
 魔戒騎士、冴島鋼牙。
 昨日たまたま夜道で再会した鋼牙に、まどかは助言を求めた。
 
 自信に溢れ、堂々とした態度。それでいて驕らず、当然の如く他人の為に命を懸けられる正義感の持ち主。
 さやかに比べれば控えめでも、その様はまどかにとっても理想像だった。
しかし、結果は素気無くあしらわれてしまったのだが。

「冴島さんにも、そう言われたみたいで……」

「それは、どういうこと?」

 まどかは躊躇ったが、ほむらに打ち明けることにした。
 彼女ならどう答えるだろうか、知りたかった。 

 まどかは、昨夜の鋼牙とのやり取りを順を追って話していく。
 すべてを話し終えた時、ほむらは一言。
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(1): ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/20(月)03:09 ID:OXLduBPHo(3/6) AAS
「……そうね、もっともだわ。あなたじゃ、彼のようにはなれない。巴マミにも」

「やっぱり、そう……なのかな」

 途切れ途切れにしか言葉が出なかった。
 密かにがっかりしている自分に気付く。
 ほむらなら肯定してくれるかもと、内心では期待していた。出会ってまだ、たったの数日なのに。

 鋼牙もそうだった。結局、彼に都合のいい幻想を抱いて、ショックを受けて。
 そして、また繰り返す。
 こんな甘えた自分が嫌で堪らなかった。

 それでも釈然としない。
 超人的な身体能力も、卓越した技も、まして黄金の剣と鎧が欲しい訳でもない。
 ただ強靭な意志と、鋼牙やマミがしてくれたみたいに、誰かの手を救い上げる力さえあればいい。
それだけで、自分で自分を誇れる。褒めてあげられる。

 なのに、それすらも叶わないのか。分不相応な高望みなのかと。
 キュゥべえは強い素質があると言っていたのに。

 まどかが納得しきれていないと察したのか、ほむらは静かに言い放つ。

「本当に……あなたは何もわかっていない。何も気付いていないのね」

 まどかは何も言い返せなかった。
 その声には、呆れにも似た落胆が含まれていたから。
290: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/20(月)03:11 ID:OXLduBPHo(4/6) AAS
 言葉を失うまどかに構わず、ほむらは窓の外を眺め、

「もう遅いわ。そろそろ帰りましょう」

 鞄を手に立ち上がる。
 外はいつしか薄暮に染まり、紫が増していた。
 すっかり話し込んでしまったらしい。それほど長く感じなかったのに、
この時間の空は、ほんの十数分で大きく色を変える。

「あ、うん……」

 続いてまどかも、いそいそと帰り支度を始める。 
 その間ずっと、ほむらの言ったことが頭の中をグルグル回っていた。

――私がわかってない……気付いてない?
ほむらちゃんも、冴島さんと同じことを……。
私は、何を間違えてるんだろう――
291: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/20(月)03:12 ID:OXLduBPHo(5/6) AAS
「それじゃあ、私は先生に報告してから行くから。あなたは先に帰っていて」

 考えながら廊下まで出ていたまどかはハッとなる。
 向き直ると、ほむらは既に一人で職員室の方に歩き出していた。
 
「あっ、ほむらちゃん――」

 思わず呼び止めたものの、言葉が見つからなかった。
 これ以上、何を話せばいいのか。伸ばしかけた手が、宛てもなく宙を彷徨う。
 ほむらは立ち止り、

「彼の言う通り、人の役に立ちたいならボランティアにでも勤しむのが賢明よ。
あなたには、それが似つかわしい」

 振り返らずに言うと、また歩き出した。
 遠ざかる後姿。まどかは、拳を固く握って見送るしかなかった。
 また重くなる頭が、ズキリと痛んだ。
292: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/20(月)03:14 ID:OXLduBPHo(6/6) AAS
短いですが、ここまで
こういうシーンは悩みますが、
次はもう少しサクサク進められると思います
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