[過去ログ] マミ「私は……守りし者にはなれない……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第三章 (805レス)
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263: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/04/29(月)03:19 ID:IOHaG7RAo(1/5) AAS
 *

 そしてまどかの記憶は、昨日の夕方まで遡る。
 まどかはほむらと保健室に入ったが、生憎と外出中のようで誰もいなかった。
仕方がないので、ほむらに促され、勝手にベッドに寝かせてもらった。

 ずっと頭が重かったが、ベッドに横たわって枕に預けてしまうと楽になった。
火照った頬に、ひんやりした枕の感触が気持ちいい。
 ちらと傍らに立っているほむらを見やると、ちょうど目が合う。

「私は先生が帰るまで待ってるわ。気にしないで」

 素っ気なく言うと、ほむらはまた目を逸らした。会話をする気はないようだ。 
 白い天井に目を移す。1,2分ほど何とはなしに見つめていたが、すぐに眠気が襲ってくる。
 抗わずに、まどかは目を閉じた。

 よほど疲れていたのか、次第に曖昧になっていく意識。
 するとどこからか、
 
「今は何も考えなくていいから。全部忘れて、ゆっくり休んで……まどか」

 と、声が聞こえた気がした。
264: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/04/29(月)03:22 ID:IOHaG7RAo(2/5) AAS
 魔法少女のこと、マミのこと、仁美のこと、鋼牙のこと、さやかのこと――自分のこと。
 あれもこれも考えなければと悩み、それが余計に頭痛を激しくしていた。
今も頭の片隅に引っ掛かっていて、どこか気が抜けきれなかったのだが。
 
 しかし、この瞬間――まどろみの世界で届いた、優しく温かい声音は、
それらの重荷を取り払ってくれた。
 ふっと、まどかの全身から力が抜ける。意識が完全に闇に溶ける。

 声に背中を押されるように、まどかは安らかな眠りに落ちていく。
 果たして声の主が誰だったのか、思い至ることもできないままに。
 

 その後、頬の熱と目蓋越しに感じる光で、まどかは覚醒した。
 うっすら目を開いた途端、オレンジ色が眩しい。
窓に目を向けると、光はカーテンの隙間から射し込んでいた。

 どれくらい眠っていたのだろう。
 いつの間にか落ちかけている夕日に目を細め、
とろとろしながらも時間を掛けて意識を揺り起こす。

「目が覚めたみたいね。気分はどう?」

 と、横から声と共に体温計が差し出された。
 ほむらだった。
 長い黒髪が夕日に照らされてキラキラ艶めき、ある種の人形めいた美貌を見せている。
 そんな彼女は見惚れるくらい綺麗で、まどかは暫し言葉を忘れてしまった。
 
「もしかして、ほむらちゃんがずっと付いててくれたの?」

「ええ。先生に頼まれたし、特に予定もなかったから」
265: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/04/29(月)03:24 ID:IOHaG7RAo(3/5) AAS
 相変わらず口調や表情には、一切の愛想が感じられない。
 しかし理由はどうあれ、今まで付いていてくれたことは素直に嬉しかった。
 体温計を脇に挿みつつ、まどかは額に手を当ててみる。

「うん……だいぶ良くなったかな。ありがとうね、ほむらちゃん」

 数分後、体温計を確認したが、ほぼ平熱まで下がっていた。
 ふと、無表情でこちらを見ているほむらに気付く。
 何か他の言葉を待っているのだと思い、
 
「昨日はちょっと、いろいろと考え事してたら疲れちゃったみたい。えへへ……」

「それは、美樹さやかのこと?」

 照れ臭そうに説明したまどかに、ほむらはあくまで真顔。
 ほむらの指摘に、まどかは俯いた。
 昨日、生活サイクルを崩した直接の原因は鋼牙だが、さやかの件も無関係ではない。
 
「あなたは、どうして何も言わないの?
美樹さやかに、私が嫌がるあなたを無理やり連れて逃げたって言えばいいのに」

 まどかは答えあぐねた。
 何故?
 理由は自分でも判然としない。それに一言で表せるものでもない。
266: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/04/29(月)03:25 ID:IOHaG7RAo(4/5) AAS
「別に言ってもいいわよ。私が全部悪いんだって。そうすれば、彼女も余計な誤解を解くわ」

「じゃあ、ほむらちゃんは、どうしてさやかちゃんを助けてくれなかったの? どうして私だけ……」

「満足に歩くこともできない美樹さやかを担ぎ、同時にあなたの手を取って逃げるのは難しい。
もたもたしているとホラーに追い付かれる危険もあった」

 ならば、ほむらがさやかを担いで逃げ、自分が後を付いていく形ではダメだったのか。
 思わないでもなかったが、まどかは口に出さなかった。 
 まどかは未だ彼女の魔法のからくりを知らない。
 
 しかし、そうできたなら、そうしたはず。しなかったなら、相応の理由があったのだ。
 まどかはほむらを手放しに信用している訳ではないが、さやかのように敵視してもいなかった。

「冴島鋼牙が現れなければ、あなたたちは、いいえ、私も含め全員ホラーの餌食になっていてもおかしくなかった。
だから一人でも確実に助けられる方を選んだ。四人揃って死ぬよりはマシでしょう?」

 信じたのは、ほむらの冷静な判断力。ホラーという未知の怪物を相手にし、
マミの必殺の一撃も通じなかった危機的状況において、彼女は思考を止めなかった。
 少なくとも、まどかの目にはそう映り、自分には絶対できないと思い知らされた。
 
「私は判断を誤ったとは思っていないわ。あの時は、あれが最善だった。
罵りたければ構わない。軽蔑されてもいい。私は残酷な命の取捨選択をしたのだから。それでも――」

 私は間違っていない。
 滔々と捲し立てたほむらの眼は、言外に語っていた。
 まどかは彼女を責めなかった。責められるはずがなかった。
267: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/04/29(月)03:34 ID:IOHaG7RAo(5/5) AAS
ここまで。GW中にもう一度くらい投下できたら

いつもコメントありがとうございます
大変励みになります
上のような議論は拙作を見直す上でとても為になります
自分としては、それほどねじくれてるように書いてる自覚はなかったりするので

>>239
と言っても寝不足や肩こりくらいですが、なかなか万全でないと手が進まないので
でも言い訳臭かったですね。もう言わないようにします

>>259-260
ありがとうございます
長いのに新たに見てくださって、とても嬉しく思います
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