[過去ログ] マミ「私は……守りし者にはなれない……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第三章 (805レス)
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259
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日)08:12 ID:bBqttU7YO携(1) AAS
追いついたけど、すげー面白いな
260
(2): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日)08:56 ID:hR+AGxPyO携(1) AAS
雨宮監督の作品はZOとハカイダー、それとミカヅキしか見たことなかったけど、今度の連休が牙狼で潰れてしまう予感しかしないほどこの>>1のセンスが素晴らしい作品だ
つまり何が言いたいのかというと、今から牙狼全巻借りて視聴します。
本当に面白かったです。
261: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日)09:38 ID:AV5T6FMfo(1) AAS
ミカヅキ見たいのに見つからない
262: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/28(日)12:33 ID:vimIOf3AO携(1) AAS
>>260
牙狼を見終わったらぜひ『ゼイラム』を探して見てくれ♪
263: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/04/29(月)03:19 ID:IOHaG7RAo(1/5) AAS
 *

 そしてまどかの記憶は、昨日の夕方まで遡る。
 まどかはほむらと保健室に入ったが、生憎と外出中のようで誰もいなかった。
仕方がないので、ほむらに促され、勝手にベッドに寝かせてもらった。

 ずっと頭が重かったが、ベッドに横たわって枕に預けてしまうと楽になった。
火照った頬に、ひんやりした枕の感触が気持ちいい。
 ちらと傍らに立っているほむらを見やると、ちょうど目が合う。

「私は先生が帰るまで待ってるわ。気にしないで」

 素っ気なく言うと、ほむらはまた目を逸らした。会話をする気はないようだ。 
 白い天井に目を移す。1,2分ほど何とはなしに見つめていたが、すぐに眠気が襲ってくる。
 抗わずに、まどかは目を閉じた。

 よほど疲れていたのか、次第に曖昧になっていく意識。
 するとどこからか、
 
「今は何も考えなくていいから。全部忘れて、ゆっくり休んで……まどか」

 と、声が聞こえた気がした。
264: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/04/29(月)03:22 ID:IOHaG7RAo(2/5) AAS
 魔法少女のこと、マミのこと、仁美のこと、鋼牙のこと、さやかのこと――自分のこと。
 あれもこれも考えなければと悩み、それが余計に頭痛を激しくしていた。
今も頭の片隅に引っ掛かっていて、どこか気が抜けきれなかったのだが。
 
 しかし、この瞬間――まどろみの世界で届いた、優しく温かい声音は、
それらの重荷を取り払ってくれた。
 ふっと、まどかの全身から力が抜ける。意識が完全に闇に溶ける。

 声に背中を押されるように、まどかは安らかな眠りに落ちていく。
 果たして声の主が誰だったのか、思い至ることもできないままに。
 

 その後、頬の熱と目蓋越しに感じる光で、まどかは覚醒した。
 うっすら目を開いた途端、オレンジ色が眩しい。
窓に目を向けると、光はカーテンの隙間から射し込んでいた。

 どれくらい眠っていたのだろう。
 いつの間にか落ちかけている夕日に目を細め、
とろとろしながらも時間を掛けて意識を揺り起こす。

「目が覚めたみたいね。気分はどう?」

 と、横から声と共に体温計が差し出された。
 ほむらだった。
 長い黒髪が夕日に照らされてキラキラ艶めき、ある種の人形めいた美貌を見せている。
 そんな彼女は見惚れるくらい綺麗で、まどかは暫し言葉を忘れてしまった。
 
「もしかして、ほむらちゃんがずっと付いててくれたの?」

「ええ。先生に頼まれたし、特に予定もなかったから」
265: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/04/29(月)03:24 ID:IOHaG7RAo(3/5) AAS
 相変わらず口調や表情には、一切の愛想が感じられない。
 しかし理由はどうあれ、今まで付いていてくれたことは素直に嬉しかった。
 体温計を脇に挿みつつ、まどかは額に手を当ててみる。

「うん……だいぶ良くなったかな。ありがとうね、ほむらちゃん」

 数分後、体温計を確認したが、ほぼ平熱まで下がっていた。
 ふと、無表情でこちらを見ているほむらに気付く。
 何か他の言葉を待っているのだと思い、
 
「昨日はちょっと、いろいろと考え事してたら疲れちゃったみたい。えへへ……」

「それは、美樹さやかのこと?」

 照れ臭そうに説明したまどかに、ほむらはあくまで真顔。
 ほむらの指摘に、まどかは俯いた。
 昨日、生活サイクルを崩した直接の原因は鋼牙だが、さやかの件も無関係ではない。
 
「あなたは、どうして何も言わないの?
美樹さやかに、私が嫌がるあなたを無理やり連れて逃げたって言えばいいのに」

 まどかは答えあぐねた。
 何故?
 理由は自分でも判然としない。それに一言で表せるものでもない。
266: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/04/29(月)03:25 ID:IOHaG7RAo(4/5) AAS
「別に言ってもいいわよ。私が全部悪いんだって。そうすれば、彼女も余計な誤解を解くわ」

「じゃあ、ほむらちゃんは、どうしてさやかちゃんを助けてくれなかったの? どうして私だけ……」

「満足に歩くこともできない美樹さやかを担ぎ、同時にあなたの手を取って逃げるのは難しい。
もたもたしているとホラーに追い付かれる危険もあった」

 ならば、ほむらがさやかを担いで逃げ、自分が後を付いていく形ではダメだったのか。
 思わないでもなかったが、まどかは口に出さなかった。 
 まどかは未だ彼女の魔法のからくりを知らない。
 
 しかし、そうできたなら、そうしたはず。しなかったなら、相応の理由があったのだ。
 まどかはほむらを手放しに信用している訳ではないが、さやかのように敵視してもいなかった。

「冴島鋼牙が現れなければ、あなたたちは、いいえ、私も含め全員ホラーの餌食になっていてもおかしくなかった。
だから一人でも確実に助けられる方を選んだ。四人揃って死ぬよりはマシでしょう?」

 信じたのは、ほむらの冷静な判断力。ホラーという未知の怪物を相手にし、
マミの必殺の一撃も通じなかった危機的状況において、彼女は思考を止めなかった。
 少なくとも、まどかの目にはそう映り、自分には絶対できないと思い知らされた。
 
「私は判断を誤ったとは思っていないわ。あの時は、あれが最善だった。
罵りたければ構わない。軽蔑されてもいい。私は残酷な命の取捨選択をしたのだから。それでも――」

 私は間違っていない。
 滔々と捲し立てたほむらの眼は、言外に語っていた。
 まどかは彼女を責めなかった。責められるはずがなかった。
267: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/04/29(月)03:34 ID:IOHaG7RAo(5/5) AAS
ここまで。GW中にもう一度くらい投下できたら

いつもコメントありがとうございます
大変励みになります
上のような議論は拙作を見直す上でとても為になります
自分としては、それほどねじくれてるように書いてる自覚はなかったりするので

>>239
と言っても寝不足や肩こりくらいですが、なかなか万全でないと手が進まないので
でも言い訳臭かったですね。もう言わないようにします

>>259-260
ありがとうございます
長いのに新たに見てくださって、とても嬉しく思います
268
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月)03:46 ID:rtCkArZFo(1) AAS
映画はともかく3期はSSにもからまないんだからネタバレはやめてくれ
ID変わるから問題ないって思ってるんだろうけど文体同じだからすぐわかる
269: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月)03:54 ID:pOcklKIvO携(1) AAS

牙狼を見始めましたが、やっぱり面白かったです。
>>1は雨宮監督作品で牙狼の他に何が好きですか?
270: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月)04:20 ID:d9azo1WAO携(1) AAS
乙乙乙!
ほむらの登場いつぶりだろうか。マミを心配する読者の声はいつも高いが、俺はこのSSで最も心配なのはほむらなんだ…。

>>268
その通りだ。自粛するよ…。

ところで燕邦隊長のおっぱいがけしからない件
( ゚∀゚)o彡°
271
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/29(月)04:30 ID:mGMcvjw30(1) AAS
更新きていたか乙
ほむらにスポットがあたるのは当分先になりそうだ

>>1も言ってるけど>>251のマミさんが泣かないって根拠は何?
捻くれた見方をしてるのはそっちな気がするが
272: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage sage] 2013/04/29(月)17:59 ID:WTCJ+47Q0(1) AAS


>>271
このマミさんが泣いてくれるのか不安に思ったのは
先輩としての対面やプライドに拘って本音や弱味を見せる事を極端に嫌っているからかなあ
さやかが心配しただけで惨めな気持ち苛まれる性格の人が
原作3話やTDSのマミさんみたいにまどかの前で涙ながらに悩みを打ち明けたりするかなあ?って
零の時みたいに同情なんてされたくもないし、後輩にそんな姿を見せる事を惨めと思いそう

仮にこのマミさんが原作3話の様になったとして
一緒に闘って人の力になりたいとまどかが言っても喜びはするだろうけど
その一方で無垢なまどかに複雑な気持ちを抱き
泣いたりせずに、いつもの後輩に向ける顔で喜ぶけどどこか距離があり
本編の様に悩みをまどかに告白しないで一線を引いたような感じになりそうなのが・・・
人の善性に半信半疑な部分を持つ冷めた一面を持ってるし、このマミさん
273: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/04/30(火)00:13 ID:yxBWPBxSO携(1) AAS
上でも言ったけど、マミの性格というか考え方は1、2、3話でそれぞれ変化してると思う
だから現状これがマミのキャラだと決めて話すことは困難であり、あまり意味がないと思う
274: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/05/07(火)02:35 ID:KTdzHMbGo(1) AAS
ちょっとスランプ気味ですが、今週中には必ず
275: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金)12:07 ID:jgo/ABB40(1) AAS
このSSも随分長いことやってるよな
276: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金)20:13 ID:C+VeKq7R0(1) AAS
無粋の輩も増えたけどな
277: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/13(月)03:45 ID:WK12HDz4o(1/5) AAS
「……もういいよ」

「私のことを怒ってないの?」

「さやかちゃんを見捨てたのは……やっぱり納得できない。でも、ほむらちゃんを憎むことはできないよ。
だって、ほむらちゃんは私の命を助けようとしてくれたんだから。
ほむらちゃんのお陰で私が助かったのは間違いないから」

 そして自分は間違ってないと言った彼女の表情。
 彼女の冷静さは冷徹や冷酷とも取れる。しかし、この時は違った。
 そこに見えたのは、微かな苦渋の色。それだけでも、彼女が心底から利己的な人間ではないと思えた。

「ほむらちゃんのせいにはできないもん。
さやかちゃんが辛くて一番いてほしい時に、傍にいられなかったのは事実だし」

 命の恩人を悪く言いたくはないが、それとは別に、まどか自身にも負い目があった。
 怒りとも悲しみともつかない感情。きっと、さやかの胸の内に渦巻いているのは、そんな思い。
 度々こちらを不安そうに見る目には、ほむらと同じ迷いがあった。

 一昨日、あの暗闇で伸ばした手を払った、さやかの目を思い出す。
 激情から一転、子供のように怯えを露わにした瞳。
 わからないのかもしれない。どうしたいのか、どうすればいいのか。

「理屈じゃないんだよ。さやかちゃんは考えるより感じるって言うか、
思ったら突っ走っちゃう娘だし」

「でも、あなたはそれでいいの? 真実を話さなければ、彼女は納得しない。
あなたへの怒りだって治まらないと思うけど」

「これまで私は、さやかちゃんに返し切れないくらい、たくさんのものをもらってるから。
やり切れない気持ちの捌け口にでもなれるなら、受け止めるのが友達……だと思うから」
278: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/13(月)03:49 ID:WK12HDz4o(2/5) AAS
 まどかは困ったふうに、小さく笑った。
 当然、さやかとすれ違ったままでいいとは思わない。

 それでも、まどかはこうも思っていた。
 自分とさやかの仲は、これしきで揺らぎはしない。これっきりで終わる訳がないと。
 絆を、友情を信じる。しかし、それは信じたい、積み重ねた時間に縋りたいという願望。
 不安の裏返し。

 この二日、積極的にさやかとの関係を修復しようとしてこなかったのには、もうひとつ理由がある。
 敢えて語らなかったのは、ほむらにも触れられたくなかったから。
 黒い陰を儚い微笑の裏に隠して、自分に言い聞かせるようにまどかは言う。

「大丈夫。さやかちゃんとも時間が経てば、仲直りできると思う。
本当は、すごく優しい娘だから。できれば、ほむらちゃんとも――」

「そう……あなたがそう言うのなら、この件については、もう何も言わないわ」

 言わんとするところを察したのか、ほむらが遮った。
 事実上の拒絶を受けて、まどかは続く言葉を紡ぐ気になれなかった。

「でも、もうひとつ、これだけは覚えておいて。冴島鋼牙――彼は確かに人を守りし者。
絶対の信頼を寄せていい相手かもしれない。あなたが人である限りは」

 唐突に話が変わり、戸惑うまどか。訳もわからず相槌を打つが、最後の一言が引っ掛かった。
 その意味を問う間もなく、ほむらは続ける。

「でも、全能じゃない。事実、彼があの場に現れたのはまったくの偶然。
助けてくれたのも、単なる幸運。二度目、三度目があるとは限らない。
もし私があなたを連れて逃げなければ、彼が来なければ。少しでも歯車がズレていれば、あなたは確実に死んでいた。
巴マミは斃れ、あなたと美樹さやかは手を握り合ったまま切り裂かれ、他にも大勢の人間が喰われたでしょうね」
279: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/13(月)03:51 ID:WK12HDz4o(3/5) AAS
 その口調は淡々としていながらも厳しく、疑問を差し挟むことを許さない。
 
「うん……わかってるよ。ほむらちゃんには感謝してる……」

「感謝も謝罪も必要ない。そんな言葉、何の意味もない。私は二度と危険に近付かないでほしいだけ」

 有無を言わせぬ眼力に射抜かれる。
 彼女の纏う雰囲気に、まどかは気圧されていた。
 いや、何も言えなかったのは、それだけが理由ではない。
まったくの正論で、反論の余地がなかったからだ。ぐうの音も出ないほど。

「あなたがあの場に行かなければ、美樹さやかも行かなかった。
結果だけ見れば、あなたは彼女を危険に巻き込んだとも言える」

「うん……」

 と、まどかは力なく答えるしかなかった。
 最初に改装区画に立ち入ったのは結果論で済むかもしれない。
 だが、ほむらは知らない。

 さやかが走れなかったのは何故か。
 誰を庇って両足に傷を負ったのか。
 この一点だけは、言い逃れのしようがないほど、まどかに原因があるのだ。
ほむらにも責任転嫁できない。

 理解していたはずなのに、改めて言葉にされると突き刺さった。
280: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/13(月)03:52 ID:WK12HDz4o(4/5) AAS
――私のせいで、さやかちゃんが死ぬかもしれなかった。
命こそ助かったけど、心に消えない傷を負ったかもしれない。
だから……さやかちゃんに拒絶されても仕方ないんだ……。
それでも離れたくないと思う私は……ずるいのかなぁ――

 ギュッと拳を握り、下唇を噛む。
 そうでもしないと涙がこぼれそうだった。
 まどかの様子を察したのかどうか、やや穏やかな声で、ほむらが言った。

「あなたを責めるつもりはないわ。
あなたの意志の強さや優しさは認める。それでも――」

「私、そんなに優しくも強くもないよ。ううん、むしろずるくて、弱虫で、何の役にも立てない」

 慰められるのが耐えられなかった。
 まどかは自罰的な衝動に任せ、恐ろしい想像を口にする。

「もし、ほむらちゃんも冴島さんもいなかったら私だって……」

 もし、鋼牙が来なかったら。
 ほむらに手を引かれていなかったら。
 自分は死ぬまで一緒にいられただろうか。最後まで、さやかの手を離さずにいられただろうか。

 何度となく胸に問いかけても、答えは出なかった。

 一歩一歩、近付くホラー。
 迫る死の恐怖。
 繋いだ手を振り解いて駆け出すことで、助かる可能性が僅かでも上がるなら。

――さやかちゃんを見捨てて逃げたかもしれないのに。
281: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/13(月)03:55 ID:WK12HDz4o(5/5) AAS
ここまで
なんやかんやで2週も開いてしまいましたが、
明日からはまた本気を出して書こうと思います
282: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月)07:34 ID:WrLF4rzAO携(1) AAS
乙!
心情描写が上手くて引き込まれる
続き楽しみにしてる
283: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月)07:57 ID:hMZA0SfAO携(1) AAS
乙です
284: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月)19:55 ID:zupc1h2SO携(1) AAS
来てた!乙
285: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/15(水)17:05 ID:NfeOPlGSO携(1) AAS

風〜旅立ちの詩〜のCDはまだだけど、ライブの動画はあった
286: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/19(日)00:45 ID:C7u++giG0(1) AAS
三期は独特すぎたけど最新話は牙狼らしかった。
287: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/20(月)03:01 ID:OXLduBPHo(1/6) AAS
 口にはできなかった。
 あまりにも恐ろしくて。
 口にすれば、本当に認めてしまいそうで。

 まどかは長く沈黙していたが、いつまで経っても催促は聞こえない。  
チラリとほむらを窺うと、彼女は今まで見たこともない顔をしていた。
 目を丸くし、半開きの口。
 一言で表すなら、驚愕。
 
 変化は微細だったが、無表情が常の彼女だからこそ顕著だった。
 目が合ったと気付くなり、ほむらは逃げるように目蓋を閉じた。肩に掛かった髪を優雅に払って一息。
 目を開けた時、動揺はすっかり消えていた。
 
「どうかしら。それでも、あなたは、きっと――」

「きっと、なに?」

「……きっと、その前にアイツが契約を唆しにきたでしょうね。そしてあなたは魔法少女になった」

 まるで真意を鉄面皮の下に隠すよう。
 気にならないでもなかったが、追及はしなかった。彼女が隠すなら、どうせ聞いたところで答えは得られない。

「私にも力があれば……」

 誰にともなく呟く。
 ほむらの言う通り、そんな状況に追い込まれれば契約したに違いない。
 そうすればホラーにも対抗できた。代償として、たった一度の願いをよく考えずに使い切り、
終わらない死闘に身を投じる羽目になるが。
288: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/20(月)03:05 ID:OXLduBPHo(2/6) AAS
「あなたは、力が欲しいの?」

「うん……うぅん、どうなんだろ。わかんない」

 力は欲しい。でも、それは手段であって目的じゃない。
 では目的とは。
 弱い自分を変えたいが為。確固たる自信を持ち、輝ける自分になりたい。 
一方で、誰かを救いたい、誰かの役に立ちたいという気持ちもある。

「でも、私なんかじゃ力があっても変われないのかな」

 まだマミにもさやかにも明かしていない、秘めた想いを吐露したのは、たった一人にだけ。
 魔戒騎士、冴島鋼牙。
 昨日たまたま夜道で再会した鋼牙に、まどかは助言を求めた。
 
 自信に溢れ、堂々とした態度。それでいて驕らず、当然の如く他人の為に命を懸けられる正義感の持ち主。
 さやかに比べれば控えめでも、その様はまどかにとっても理想像だった。
しかし、結果は素気無くあしらわれてしまったのだが。

「冴島さんにも、そう言われたみたいで……」

「それは、どういうこと?」

 まどかは躊躇ったが、ほむらに打ち明けることにした。
 彼女ならどう答えるだろうか、知りたかった。 

 まどかは、昨夜の鋼牙とのやり取りを順を追って話していく。
 すべてを話し終えた時、ほむらは一言。
289
(1): ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/20(月)03:09 ID:OXLduBPHo(3/6) AAS
「……そうね、もっともだわ。あなたじゃ、彼のようにはなれない。巴マミにも」

「やっぱり、そう……なのかな」

 途切れ途切れにしか言葉が出なかった。
 密かにがっかりしている自分に気付く。
 ほむらなら肯定してくれるかもと、内心では期待していた。出会ってまだ、たったの数日なのに。

 鋼牙もそうだった。結局、彼に都合のいい幻想を抱いて、ショックを受けて。
 そして、また繰り返す。
 こんな甘えた自分が嫌で堪らなかった。

 それでも釈然としない。
 超人的な身体能力も、卓越した技も、まして黄金の剣と鎧が欲しい訳でもない。
 ただ強靭な意志と、鋼牙やマミがしてくれたみたいに、誰かの手を救い上げる力さえあればいい。
それだけで、自分で自分を誇れる。褒めてあげられる。

 なのに、それすらも叶わないのか。分不相応な高望みなのかと。
 キュゥべえは強い素質があると言っていたのに。

 まどかが納得しきれていないと察したのか、ほむらは静かに言い放つ。

「本当に……あなたは何もわかっていない。何も気付いていないのね」

 まどかは何も言い返せなかった。
 その声には、呆れにも似た落胆が含まれていたから。
290: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/20(月)03:11 ID:OXLduBPHo(4/6) AAS
 言葉を失うまどかに構わず、ほむらは窓の外を眺め、

「もう遅いわ。そろそろ帰りましょう」

 鞄を手に立ち上がる。
 外はいつしか薄暮に染まり、紫が増していた。
 すっかり話し込んでしまったらしい。それほど長く感じなかったのに、
この時間の空は、ほんの十数分で大きく色を変える。

「あ、うん……」

 続いてまどかも、いそいそと帰り支度を始める。 
 その間ずっと、ほむらの言ったことが頭の中をグルグル回っていた。

――私がわかってない……気付いてない?
ほむらちゃんも、冴島さんと同じことを……。
私は、何を間違えてるんだろう――
291: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/20(月)03:12 ID:OXLduBPHo(5/6) AAS
「それじゃあ、私は先生に報告してから行くから。あなたは先に帰っていて」

 考えながら廊下まで出ていたまどかはハッとなる。
 向き直ると、ほむらは既に一人で職員室の方に歩き出していた。
 
「あっ、ほむらちゃん――」

 思わず呼び止めたものの、言葉が見つからなかった。
 これ以上、何を話せばいいのか。伸ばしかけた手が、宛てもなく宙を彷徨う。
 ほむらは立ち止り、

「彼の言う通り、人の役に立ちたいならボランティアにでも勤しむのが賢明よ。
あなたには、それが似つかわしい」

 振り返らずに言うと、また歩き出した。
 遠ざかる後姿。まどかは、拳を固く握って見送るしかなかった。
 また重くなる頭が、ズキリと痛んだ。
292: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/05/20(月)03:14 ID:OXLduBPHo(6/6) AAS
短いですが、ここまで
こういうシーンは悩みますが、
次はもう少しサクサク進められると思います
293: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/20(月)07:08 ID:mlGaQkbdo(1) AAS
英雄ってのはなろうとした時点で失格だってどこぞの悪徳弁護士も言ってたな
296: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/20(月)09:43 ID:fJDFfOEL0(1) AAS


誰だセディンベイルを逃がしたのは
299: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/21(火)02:06 ID:fjElgNp80(1) AAS

英雄、正義の味方は「なろう」とするものではない、「なっている」もの
300
(3): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/21(火)10:06 ID:0Jrsu+6AO携(1/2) AAS
そんな遥か昔から言われてたこと今書き込んでも仕方なかろう
「勉強しろ」とか「若いうちに苦労しておけ」みたいに自分で経験し実感しないと理解できない道は、誰もが通るわけだからそう言われ続けてるんだし

概念としての英雄や正義の味方ってのはあくまで偶像や理想像だけど、実際に自分を救ってくれた人間は漫画やテレビの中の架空の存在じゃなく、自分と同じ世界に存在する現実の人間で、少なくとも救われた側にとっては正真正銘のヒーローだろ
尊敬や憧れの念を抱いたり、同じ場所に立ちたいと思うこともある
まどかの場合それが魔法少女であるマミや守りし者である鋼牙だったわけで
どっちかというと、スポーツ苦手だった少年が実際にプロのプレイを間近で目の当たりにしたことで触発され、自分もプロになりたいと思うようなものだと思うよ
301
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/21(火)10:36 ID:9oydDysT0(1) AAS
更新乙

そしてお前ら落ち着け
そもそもまどかは英雄になりたいなんて一言も口にしてない希ガス
ただ「自分は何もできず誇れるものもないから、せめて人の役に立つような人間になりたい」とモヤモヤしてるところに悪しき存在を討つことで人々を守る(ように見える)魔法少女や魔戒騎士の分かりやすいまでの姿を見て、しかも自分も魔法少女になれる素質があると言われたら、そりゃそういう方向に意識が捉われても仕方ないんじゃないか?
302: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/21(火)10:43 ID:1t+tFaF9o(1) AAS
ちょっと中二に毒されすぎてるよみんな
303: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/21(火)15:49 ID:0Jrsu+6AO携(2/2) AAS
面白いから話題や議論が生まれるわけであって、物語考察も作品の素直な楽しみ方だと思うよ
斜に構えて水を差す奴が一番中二なんじゃないかな
304: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/21(火)16:10 ID:lPEMe8Gho(1) AAS
そういう分かりやすいヒーロー像に憧れて足元が見えてないのも年相応で不自然なことではないんだよな
酷い時は魔法少女は問題児ばっかりでまどかだけは天使とか言う馬鹿もいるけど、ぶっちゃけまどかだって他の魔法少女と一緒で不安定な中学生であることは変わらん
305
(2): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/21(火)16:55 ID:H7B2sXTc0(1/3) AAS
あまり伸ばすと「投稿来てると思ったら」が来るぞ

セディンベイルの陰我に侵されたか?

まぁ議論するならするで構わんが人様が見て不快にならない言葉遣いを心がけましょうね。
306: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/21(火)18:10 ID:kT3qDw4c0(1/3) AAS
感想なんて人それぞれなのに何をケチ付けてるんだか
他人も自分と感じ方じゃないと気が済まないのか?
気に入らなきゃ無視すればいいだろううに……
307: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/21(火)18:15 ID:kT3qDw4c0(2/3) AAS
感想なんて人それぞれなのに何をケチ付けてるんだか
他人も自分と同じ感じ方じゃないと気が済まないのか?
そのレスが気に入らなきゃ無視すればいいだろうに……
308
(2): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/21(火)18:28 ID:H7B2sXTc0(2/3) AAS
他人を不快にさせないように配慮するのは人間として常識だと思いますけどね

汚い言葉吐いといて無視しろはあまりにも身勝手。
まぁここまでざっと見て引っかかるところは無いとは思うけど過去に議論をヒートさせて

「信者」だの「痛い」だの板の空気を悪くする言葉が飛び交って結果荒れたケースが散見されるからナーバスにもなる。

議論の自由もいいけど板の雰囲気も大事にしてほしいってこと。
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