[過去ログ] さやか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第二夜 (1002レス)
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562: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/08/29(水)02:17 ID:xDvK8blDo(1/5) AAS
「…………はぁ?」

 思わず間の抜けた声を出してしまった。
 まったく予想だにしない答えに、さやかの思考が止まった。言い返す気にもなれなかった。
 ホラーというのは、一昨日自分たちを散々苦しめた、あの恐ろしい魔獣のことだろうか?
 何故、どこから、そんな突拍子もない結論が出たのか。

「あくまでしらばっくれる気? ま、それでもいいんだけどさ……」

 光を背にした杏子の表情は窺えない。ただ、小さく歯を覗かせている口元だけは見えた。

「ちょ、ちょっと待ってよ! 何であたしがホラーなんかに……」

「へぇ、ホラーが何か知ってるんだ。ますます怪しいね……。
こりゃあ、語るに落ちるってやつかな。もう化けの皮が剥がれたのかい?」

「だから、そうじゃなくって!」

 駄目だ、まったく話にならない。
 そもそも彼女は何者で、どうしてホラーを知っているのだろう。
 魔戒騎士――いや、鋼牙が騎士には女はいないと言っていた。
となれば、魔戒法師とかいう騎士をサポートする存在なのか。

 だとしても、おかしい。自分がホラーでないことは、さやか自身が誰より知っている。
 魔戒法師にも見間違いや勘違いがあるのだろうか。
騎士にはザルバのような魔導具があるから間違いがあるとは思えないのだが。

 彼女が何者か、それを知ったのは直後。
 杏子が左手をかざしたかと思いきや、中指にはめた指輪から赤い閃光が迸った。
光は一瞬で棒状になり、先端には刃。そして光が散ると同時に、それらが実体を成した。 
563: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/08/29(水)02:23 ID:xDvK8blDo(2/5) AAS
 手の内に生まれた槍は、迷いなくさやかの鼻先に突きつけられた。
杏子は不敵に微笑み、さやかは身を強張らせる。
 しかし槍の恐怖よりも、驚きが勝っていた。
何故なら杏子が見せた現象、その光には思い当たる節があったから。

「ほら、さっさと正体を見せなよ。そしたら、あたしが切り刻んでやるさ」

「まさか……あんたも魔法少女!?」

 さやかの知る限り、そんなことができるのは魔法少女か魔戒騎士だけだが、騎士とは少し違う。
何より、何度か見たマミの戦闘と酷似していた。

「……魔法少女を知ってんのか? まさか、あんたも?」

「あたしは違う……。違うけど、巴マミって人に助けてもらって……
キュゥべえに素質はあるって言われたけど、契約はまだ……」

「巴マミ……」

 杏子が噛み締めるように復唱する。
 呟きは重く、そこに複雑な思いが秘められていると、さやかにも漠然とだが読み取れた。
 知り合いか尋ねようとしたが、それより早く杏子が遮る。

「あんた、名前は……?」

「美樹……さやか」

 問われるがままに答えると、杏子は槍を引いた。
 これで当面の危機は去ったのだろうか。
 ほっと息をつこうとしたのも束の間。
564: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/08/29(水)02:33 ID:xDvK8blDo(3/5) AAS
 ヒュガッ――と、槍が耳を掠めて、顔の真横に突き刺さった。

 コンクリートの壁を深く貫いた槍は、目にも留まらぬ速さで繰り出され、遅れて風圧が髪を煽る。
 髪の毛の何本かが切断され、はらはらと地面に落ちても、さやかは震えることもできず硬直していた。
ほんの僅かな身動ぎで、鋭利な刃と頬が触れて血が流れるだろう。
 
「もう一回確認しとく。ほんっと〜に、ホラーじゃないんだな?」

 低い声音が、鋭い眼光が、さやかを射抜く。
 不意を討たれ、さやかは完全に縮み上がった。

 粟立つ肌。
 涙で滲む瞳。
 そこに揺れる不安。

 視線に射竦められながらも、自らが生き残れる選択肢を必死に模索してもいた。
 この二日間の経験の賜物だろう。
特に一昨日潜った死線に比べれば、まだ辛うじて精神的余裕があった。

 ホラーだと言えば勿論、答えなくてもホラーと見なされるかもしれない。
 ホラーなんかじゃない、そう答えても殺されるかもしれない。相手は頭から疑っているからだ。

 さやかは考えに考え、ゆっくりと、しかしはっきりと首肯した。
 杏子の眼を見据えて、人間だけが持てる強靭な意志の光を示す。
 目が合ったまま、数秒。

 槍が、引き抜かれた。
 杏子は背を向け、槍を一振り。たった、それだけの動作で、槍が跡形もなく消滅した。
 今度こそ、危機は去ったのだと悟る。
565: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/08/29(水)02:40 ID:xDvK8blDo(4/5) AAS
 極度の緊張から一転して解放へ。
安堵するや否や疲労が押し寄せてきて、さやかはへなへなとその場に崩れ落ちた。

「どういうことだ、おい……まるで話が違うじゃねぇか……」

 へたり込むさやかに目もくれず、杏子は口元を押さえブツブツ何事か呟く。
 誰かに語りかけているのではなく、思考が口から垂れ流しになっている。
しかも、本人はそれに気付いていない。

「まさか……!」

 やがて、杏子の目がカッと見開かれた。どうやら彼女の中で何らかの結論に至ったらしい。
 いったいどんな心の動きがあったのか。
 さやかには知る由もないが、ひとつだけ確かなこと。

 彼女は今、猛烈に怒っている。凄まじい怒りに震えている。
 その顔は真っ赤な髪より赤く染まっていた。

「ぁんの野郎ォッッ……!!」

 杏子がやり場のない握り拳を壁に叩きつけると、鈍い音と共に分厚い壁が砕けて欠ける。
 腫れた拳の痛みで少しは冷静さを取り戻したのだろうか。さやかを振り向き、

「……悪かったね」

 と、ぶっきらぼうに言い放つなり、杏子は走り去った。
 振り回すだけ振り回して去っていった杏子を見送るさやかは呆然自失。
いつも突然に遭遇しては、状況も飲み込めぬ間に翻弄され、気付いたら終わっている。
ここ最近の災禍は、まるで嵐のようで、命があるのが不思議なくらいだった。

 さやかは暫く呆けていたが、いつまでもこうしてはいられない。
のろのろと立ち上がり、汚れを払い、元いた店に戻る。
 警戒しつつ物陰から覗き込むと、そこには命も零の姿もなく、
さやかの荷物一式と転がったイス、テーブル上には楽譜だけが置かれていた。
566: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/08/29(水)02:49 ID:xDvK8blDo(5/5) AAS
短いですが、ここまで。できれば明日にでも、もう一度
たくさんのコメント、いつもありがとうございます
正直、知らない知識もあったりで、とても参考になります
つきましては、陰我消滅と陰我吸囚、という言葉について教えていただけませんか?
想像はつくのですが、ググってもそれらしい意味が書いておらず、どなたかお願いします
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