[過去ログ] さやか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第二夜 (1002レス)
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961: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/01/21(月)02:31 自ID:CVB6/PeJo(1/4) AAS
翌日から、女は別人のように変貌した。
実際、変わっているのだ。外側だけ残して、内側は別の生物に入れ替わっている。
整えた容姿も。巧みな会話術も。華やかな笑顔も。時折見せる憂いの表情さえも。
すべてが罠。
その美しさに惹かれて寄ってくる獲物は誰も、
相手が文字通り人の皮を被った悪魔だとは気付かない。
気付くとしたら最期の一瞬。いざ、己が喰われる段になってから。
女が魔獣ホラーの本性を垣間見せる時になって、初めて後悔する。
後悔は程なくして絶望となり、獲物の人生は終わる。一切の例外はない。
それも、ただの手当たり次第では味気ない。
女は、あくまで罪を犯すことに拘った。
陰我が求めるのか、ホラーに憑依されてもなお変わらなかった。
意思が消えても意志は残る。
憎悪や欲望――
即ち、ホラーと融合した陰我は、憑依後も性格、行動原理など、様々な点で人物の中核を成す。
女の妄執も、彼女という人間の全体からすれば残滓に過ぎなかったが、より一層強く残っていた。
とはいえ、何のことはない。ただの趣味が、実益を兼ねたものになっただけ。
人外の力は、これまで試行錯誤しながら行ってきた殺人を、一気に容易にした。
スリルが減ったことにより達成のカタルシスも減じたが、その代わりに多くをもたらした。
まず死体が残らず、人間には不可能な殺し方が可能になった。
土壇場で抵抗されようが気取られようが、万が一にも仕損じはない。
そして最たるものが捕食である。人間のすべてを体内に取り込んで得られる全能感。
自分が獲物を支配していると実感できる瞬間。
人を喰らう度に、欠落した何かが埋まる気がして、心が安らぐのだ。
962: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/01/21(月)02:37 自ID:CVB6/PeJo(2/4) AAS
最早、押し潰されそうな不安は感じない。
ビクビクしながら日々を過ごすことも、ふと正気に戻った瞬間に後悔に苛まれることもない。
女が恐れるとしたら、それは唯一の天敵の存在のみ。
女は、恋人が死んだ廃ビルに通う。
人間であった頃は犯罪の露呈を恐れ、また、あの日の出来事を思い出さぬようにと避けていた場所。
だがホラーと化した今、忌まわしい記憶など顧みる必要はない。痛む良心など持ち合わせていなかった。
ここはただの廃墟。むしろ、都合のいい餌場だった。
その理由が、いつの間にか廃ビルに住み着いた魔女。
この魔獣とも異なる異形に印をつけられ、連日の如く哀れな人間が誘われてくる。
それを摘まみ食いするのが目的だった。
人を狩るのは造作もない。だからこそ自分で物色し、手を下すのが醍醐味ではあるのだが。
やはり、労せずして獲物が舞い込んでくるのも捨て難い。
絶望していたはずの人間でも、死の間際には表情を恐怖に歪める。
魔女は移動を繰り返していたようだが、本格的にここを住処と定めたらしい。
ホラーの気配に気付いていないとは思えないが、特に妨害する様子もない。
魔女が何を考えているのか。見当もつかなかったし、どうでもよかった。
そして彼女は、今日も屋上に立って獲物を待ち焦がれる。
ただ、その日は少し事情が違った。
現れたのは少女三人と男が一人。
全員、はっきりとした意思の光が瞳に見て取れる。
特に、先頭の少女と最後尾の男の目つきは鋭い。一目で魔女に誘われたのでないと見抜く。
こんな廃墟を、自らの意思で好んで訪れる者。
それは、ここを餌場とする怪物たちを狙う狩人だけ。
963: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2013/01/21(月)02:51 自ID:CVB6/PeJo(3/4) AAS
四人組の一人には見覚えがあった。
白いコートを纏い、髑髏の指輪をはめ、赤い鞘の剣を携えた男。
忘れもしない、その男こそがホラーの天敵。そして個人的にも宿敵であり、怨敵である。
正攻法で勝ち目は薄い。かつて戦ったことがあるだけに身に染みていた。
できるなら関わりたくないところだが、そうもいかない理由があった。
近付いてくる前からひしひしと感じていた――言うなれば匂い。
匂いは四人の中で一番か弱そうな少女から漂っていた。
芳しく香る極上の餌をぶら下げられて、みすみす逃す理由があるものか。
だが、餌を守っているのは、知る限り最強の護衛。簡単には手に入れられない。
さて、どうすれば突破できるだろう。
女は、はたと自分の首筋に気付く。首筋には、魔女のくちづけと呼ばれる印が刻まれていた。
憑依されるまでの不安定な情緒、凶行にも少なからず影響していたと思われる。
いずれは彼女も魔女の餌として、ここに赴いただろうが、中身がホラーとなっては何の意味も為さない印。
ホラー、魔女、使い魔、件の少女。
今、ただの廃墟が雑多な魔の気配で混沌としている。
それらひとつでも欠けるか、離れたならともかく、こう密集していては、ひとつひとつを判別するのは困難。
特に、気配の察知能力が鋭ければ鋭いほど。
ならば一か八か。
この刻印を利用して宿敵の手から逃れると同時に、少女三人を手に入れる。
勝算はあった。何故なら、先頭を歩く少女には、以前から目を付けていたから。
夜や夕方に人気のない場所をうろつく、魔法少女と呼ばれる存在。
お世辞にも幸せそうには見えなかったが、彼女は"破壊欲"でなくホラーの"食欲"を刺激した。
きっと、彼女は率先して動く。動いてくれる。
女はフェンスを乗り越え、外縁に両足を揃える。
恋人だった男には叶わなかった、自らの手で人生の幕を下ろす行為。
その権利すら奪った女の抜け殻を被った魔獣は、男を嘲笑うように両手を広げ――空に身を投げた。
964: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2013/01/21(月)02:54 自ID:CVB6/PeJo(4/4) AAS
ここまで。続きはなるべく明後日までに
長くなりましたが、回想は終わり
一期二期といろいろ見ても、見たからこそ
未だにホラーに憑依されるという状態が分かっているような、いないような
そのせいで遅くなりました
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