[過去ログ] さやか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第二夜 (1002レス)
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56: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/04/07(土)02:22:11.27 ID:7tfJJhllo(2/11) AAS
――まぁ、だいたい察しは付くけれど……。

 わざわざ指摘するのも億劫だった。むしろ、さやかとまどかの言葉の方がマミを追い詰めた。
 力ある者には戦う義務がある、なんて言葉は、きっと力のない人間が言い出しっぺだと思う。
 だとしたら、力を持ったマミは、自分を捨てて大衆に奉仕しなければならない。

 無関係な誰かの為に戦うなんて、さやかが思うほど簡単なことではないのだ。
 それが奇跡の対価だとしても、合意のうえでの契約だとしても、真実は少女には重過ぎた。
 何も知らないあなたたちごときには計り知れない懊悩があるのよ、と言えるものなら言いたかった。

 過酷なこれまでと、暗いこれからに、薄々疑問と不安を抱き始めていた矢先に、昨夜から続く出来事。
意地も信念もプライドも、強大な力の前に容易く手折られ、自己満足にもならなかった。
身を犠牲にしてまで助けたかったさやかとまどかを救うこともできず、救ったのは、より強大な力。
 挙句、いつか自分は屠ってきた魔女になるかもしれないと言う。忌み嫌っていた災厄そのものに。

 力のあるなしなんて関係ない。戦いたい奴が戦えばいい。
 それが今のマミの偽らざる気持ち。
 もし、鋼牙のような強い人間が代わりに戦ってくれるなら。
 もし、戦わざるを得ない理由がなければ。
 今すぐにでも投げ出して、そして逃げ出したかった。

 支えにしていた矜持を砕かれ、か細くとも残っていた人々を救うという使命感も意味を失うかもしれない。
 もうどうでもいい、何もかもが虚しいという思いが、マミの胸中に芽生え始めていた。
 彼女たちも、いつかこんな気持ちを抱えるのなら、やはり、

「……そうね。だったら、もう関わらない方がいいわ。
足手纏いになるだけ。あなた自身も傷つくだけ。
魔法少女にも、魔女にも、あいつ……キュゥべえにも。そして魔戒騎士、冴島鋼牙にも」

 ほむらの忠告に従った方がいいのだろうか。
 故にマミは口を出さず、ただ語る少女の黒い瞳をぼうっと見ていた。
244: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/05/21(月)02:37:14.27 ID:OuKAohIbo(5/8) AAS
「ここで何をしている」

 声の相手は白いロングコートの男。
 魔女や魔獣とは対極に位置する存在。
 夕方に別れたばかりの魔戒騎士、冴島鋼牙だった。

「ふぇっ…………はぁあ〜〜」

 まどかは無様に尻餅をついたままにも拘らず、深々と息を吐き出した。
極度の緊張と、そこからの急激な解放で、完全に脱力してしまった。
 胸を押さえて深呼吸を繰り返し、暫くして立ちあがろうとするが、

「あ、あれ?」

 腰が抜けて立てない。
 それどころか、腕までもガクガクで力が入らない。 
 まどかが戸惑っていると、目の前に手が差し出された。

「立てるか?」

「あ、すみません……」

 広がっていたスカートの裾を押さえ、真赤に恥じらいながら手を取るまどか。
小柄な少女とはいえ、鋼牙はいとも容易く引き上げた。
 立ちあがったまどかは制服の汚れを払うと、改めて頭を下げる。

「あの、ありがとうございました」
280: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/29(火)03:05:17.27 ID:yPoLJiU5o(1) AAS
まどかもまどかで力に憧れている節は否めないな
健気で考え過ぎる性格でもやっぱりそういうお年頃だ
729: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/10/27(土)03:10:37.27 ID:U5eNztmHo(5/7) AAS
 零は容赦なく命の顔面を打つ。
 これはホラーだ。人ではない。手加減など必要ない。
 たとえ、美しい女の顔をしていようと。油断すれば、喰われるのはこちらなのだ。

 命は仰け反って、反撃もままならないかに思えたが。
 命の重心と、軸足が心なしか動いているのを零は見逃さなかった。
 来ると感じた瞬間に、床にブーツを滑らせる。

 床に手をつき、左足を大きく前に突き出した格好は一見、滑って転んだかにも見える姿勢。
それがミスではないことを証明したのは直後、返す刀で零の頭頂を掠めた踵。
 脚が戻りきる前に零が軸足を払うと、命は堪らず尻餅をつく。
 
 両者が同じ目線まで下がった。
 零が見たものは爬虫類を連想させる冷たく光る瞳。感情は読み取れなかった。
驚きもなく、ただあるのは殺意。

 けれど危険を察した零は、即座に上に跳んだ。片足のみで、しかも曲げた膝をほとんど伸ばさずに。
ほんの僅かな一手間も惜しかった。
 その下――数瞬前まで零の顔があった位置を、ついた両手をバネにした命の両足が貫く。
 この時、初めて命の目に驚愕の色が宿った。

 零のブーツが、真上から伸び切った命の右脚を踏み砕く。
 落ちた、ではなく、踏んだ。
 ただでさえ無理な跳躍にも関わらず、逆らおうとする肉体を意志で捻じ伏せ、跳んだその足を強く叩きつけたのだ。
 
 喉から甲高く、それでいて濁った金切り声が絞り出された。
 ホラーとて痛みは感じる。痛ければ反応するし、叫びもする。
 命は重い両足を震わせながらも、どうにか立ち上がろうとする。
か弱く美しい女性の外見もあってか、痛々しくもあった。
756: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/11/06(火)03:30:46.27 ID:VPkeJGs0o(8/9) AAS
 外を見遣ると、何かが風を切り、高速で飛来してくる。
 零は後ろに飛び退きながらも、一瞬たりとも目を逸らせなかった。

 まるで放たれた矢――いや、この速度と予想される破壊力を形容するには到底足りない。
 砲弾。
 或いはミサイル。
 様々な比喩が頭に浮かぶ。

 だが幽かに赤く光の尾を引く様は、美しく、どこか一瞬で消えそうなほど儚く。
 彼女の姿は零の目に、まるで流れ星のように映った。

 そして窓に飛び込んでくる流星。
 けたたましい音を響かせながらガラスを派手に砕き、床に槍を突き立てた。

「ちっ……外したか」

 憎々しげに呟いて立ち上がったのは、魔法少女、佐倉杏子だった。
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