[過去ログ] さやか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第二夜 (1002レス)
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432: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/09(月)21:17 ID:JNNU92aSO携(1) AAS

マミさん……描写が詳細なだけに泣ける
QBは殺されたか、近寄るなと言われたか、その両方か
433
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/10(火)02:12 ID:O10Ww5FA0(1) AAS
>>431
まどポのマミさんとは性格どころか戦ってる理由自体が違うんだし無理じゃないか?
あっちではマミさんが正義の魔法少女を続けてこられたのは両親や子供を救えなかった
脅迫観念からきてるものだという
fateの衛宮士郎や000の火野映司のようなキャラ付けだったが(この二人ほど病的ではないが)

こっちのマミさんはQBの恩返しっていう名目で
実のところは何も決められず、状況に流されるまま戦ってきてたから、理由が異なると思う
それでも自分には魔法少女である事しか価値がないと思ってるのは共通だけど

それでも。まどポのマミさんは綺麗すぎる気もするが…
魔女化√で今まで人々を助けてきたのも、結局は子供を死なせた罪や一人の寂しさから逃れたいという
自分の願いのためにやっていたのではないか、そんな自分は魔法少女失格だと自己嫌悪に苛まれ絶望だからな
寂しいとは思っていても、願いの対価に無関係な誰かの為に戦う事に対して
自分自身は疑問や周りに負の感情を抱く事すらなかったみたいだし
さやかや杏子が「マミさんは強すぎる……」となるのもわかる気がするな

まあ一番以外だったのは、虚淵が殺伐としすぎないように色々修正したらしいという事だが
このssやそれ以上にドロドロした内容だと思っていただけに
実際はそんなでもなく、マイルドな感じだったな。ライト層を意識したのかね?
fate/zeroとか鬼哭街みる限りでは、そこらへんは自重しないような人に思えたんだが…
434: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) 2012/07/10(火)18:22 ID:ZDG2rp7AO携(1) AAS
乙!
真実を知ってどうなるやら
435: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) 2012/07/11(水)20:24 ID:hk5BDByw0(1) AAS
乙であります。

「ソウルジェムが魔女を産むなら皆死ぬしかないじゃない!」が発動しないだけまだ希望があるかも・・。
なんというか、さやかちゃんがヒーローに憧れる子供みたいで作中一番の癒しです。
さやかちゃんからすれば鋼牙だけじゃなくてカオルも憧れの対象になりそう。愛する男の何よりの希望になれているんだからね。
436
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/12(木)00:20 ID:JmLavheM0(1) AAS
乙です。

マミさん心の拠り所がなくなっちゃったね…
新たな拠り所になってくれそうな人もなんかヤバいし心配だわ。

後上の方で出てた女の子の魔導具と聞いて「魔導具ホムヴァ」というとんでもないものを思いついた…
437: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) 2012/07/12(木)00:51 ID:abGX7MLAO携(1) AAS
>>436
ほむら「別の時間軸に来たら何故か魔導具になってました…」
つまりこういう事か?

>>1乙です
438: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2012/07/12(木)01:15 ID:S/i+p/xU0(1) AAS

実際、予告の通り「もう何も信じない」ってなって、絶望せず魔女化しないなんて、ありえるのかね?
だって何も信じないっていうのは、何の希望も抱かないってのと、ほぼ同義だぞ?絶望してるのと変わらん。
ほむらもほぼ似たような状態だけど、まどかとの約束だけが、唯一の道標になってるから保てるのであって
439: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/12(木)01:51 ID:KLgcGycSO携(1) AAS
キュゥべえ理論でいけば、希望と絶望は等しい、希望があるから絶望する
希望を持たなければ絶望しないというのも理論上はありかと
でも希望を完全に捨てるなんてできるとは思えないけど、杏子みたいに遅らせることはできるかも
440: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) 2012/07/12(木)10:42 ID:859lwMlF0(1/4) AAS
鋼牙が絶対になんとかしてくれる。信じて見守ろうぜ。
・・・それがたとえマミさんが鋼牙を憎悪する結果になろうとも。
「魔弾」「果実」を見よう。なんとも魔戒騎士とは因果な仕事だ。

ホwwwwwwムwwwwwwヴwwwwァwwww
その発想はなかったわww
魂はほむらで魔導具の姿とかテラシュールww
指輪、ネックレス、腕輪、携帯鏡・・・。
あと残ってんのは、ピアスか。
どんな造形になるのかは想像もつかないけど。
あの可愛いウルバくんですら一つ目のドクロみたいな形だし。
441: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2012/07/12(木)12:04 ID:YLBP2reT0(1) AAS
ユウリみたいになるという事か?
その憎悪がホラーに付け込まれるスキを作らなきゃいいんだが
このマミさんなら、鋼牙だけじゃなくこの世の全てに憎しみを抱きそうな気がする
442: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/12(木)20:38 ID:zk1NmA5K0(1) AAS
>>433
やった事ないからわかんないんだけど
どれくらい性格違うの?
443: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) 2012/07/12(木)20:38 ID:859lwMlF0(2/4) AAS
神須川の親父やミサオちゃんみたいになるってことだよ。

ところでまた「仙水」ネタで恐縮だが、
邪美様のアクションの素晴らしさとあの台詞の独特の喋り方が本当に素晴らしいよな。
烈花といい、魔戒法師の女性ってああいう喋り方多いww
・・・決して棒なわけでは無い。断じてww

魔戒法師は本当に戦闘スタイルが豊富だよね。
方術使ったり、召還獣みたいなもの出したり、魔界竜使役したり号竜使ったり。
剣で斬ったり炎使うだけの(それが何より強力なわけだが)騎士とは一味違うよさがある。
魔法少女の戦闘スタイルにも通じるものがあるかもね。
444: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) 2012/07/12(木)21:28 ID:RwfPMiEy0(1) AAS
後者ならいいが前者ならやばい気が・・・
遅レスだが、>>364ほむらってバラゴの母親にそんなに似てるのか?
以前どっかで読んだ、ここじゃないまどマギとのクロスで
バラゴが母親と瓜二つのほむらに驚くのがあったんだが
445: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) 2012/07/12(木)22:08 ID:859lwMlF0(3/4) AAS
私もほむら×バラゴのSSで「言われてみれば・・・!」と思ったクチだよ。
外見はさすがに似ていないと思うが。

でもほむらとバラゴ様の「大切な人が闇に堕ち、人ならざる者になって自分との記憶も消滅し、[ピーーー]しか道がなくなった」って共通点があまりにもド直球(まどかママ風に)だったんでそう書いたんだ。
あと、病弱なとこ。

私はむしろミサオちゃんのケースのほうが救いがあると思う。親父は結局ホラーになっちゃったし。
446: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) 2012/07/12(木)22:10 ID:859lwMlF0(4/4) AAS
連投スマン。前者と後者間違えたわ・・・。
447: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2012/07/17(火)01:03 ID:OPublyV8o(1) AAS
遅れ気味ですが、明日には少しでも投下したいと思います
夏場は暑くて早朝くらいしか集中して作業ができず、更新頻度は落ちるかも……
448: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage ] 2012/07/17(火)03:10 ID:dJtLFgZZ0(1) AAS
お疲れ様です。楽しみにしてます
449: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/07/18(水)02:24 ID:tqjH1JxGo(1/5) AAS
「おはよう、二人とも」

 呆然とする三人の前に立ったマミが微笑む。
 さやかとまどかは未だ状況が掴めず、仁美は何が何だかわからないといった様子で、
二人とマミを交互に見やる。

 だが、まどかとさやかはそれどころではなかった。
彼女の声を聞いて、顔を間近で見て、混乱に拍車がかかった。
 枯れた喉から発される掠れた声は活気に乏しく。
 不眠だけでなく、明らかに泣き腫らしたのだとわかる目。
 仕草や表情は平常を保とうとしているのが、痛々しさを感じずにいられない。

「あ、はい……おはようございます……」

 と答えるまでにさやかは数秒を要した。
 マミは、顔色を変え、また窺っている二人に気付きながらも平然としている。
それどころか、

「ごめんなさい。ちょっと、みっともない顔で恥ずかしいわ……。それで鹿目さん、美樹さん、
昼休みに少し時間をもらえないかしら?」

 さも普通そうに、照れながら要件を伝える。
 そのギャップに混乱し、かと言って何があったのか問えるはずもなく、二人は黙って頷くしかない。

「良かった。それじゃ、昼休みに教室まで迎えに行くわね。大丈夫、時間は取らせないから」

 にこやかに手を振って去っていくマミの背中を、ただ見送るしかなかった。
450: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/07/18(水)02:27 ID:tqjH1JxGo(2/5) AAS
 唯一、仁美だけが怪訝な目つきで問う。

「あの、まどかさん、さやかさん? 今の先輩はどなたなんですか?」

 一人だけ除け者にされ、マミの眼中にもなかっただろう彼女は不機嫌そうだ。
 しかし、誰と問われても答えに窮する。
 魔法少女の件もあるが、あれが本当に自分たちの知るマミなのか、
さやかにもまどかにも確信が持てなかった。

 何を馬鹿な、と自分でも思う。あれは間違いなく巴マミだ。
それでも昨夜の彼女とも、イメージの中の彼女とも、あまりに違い過ぎた。
 再び、マミの姿を目で追う。小さくなっていく背中は、とても儚く寂しそうだった。



 午前中の授業を、さやかは漫然と過ごした。
 頭の中は今朝のマミとまどかのことで一杯で、とても授業の内容が入る余地はない。
 あの後、仁美に「一昨日、仁美が帰った後に知り合った」とだけ説明したら、
彼女は渋々だが納得してくれた。隠し事をしているのは明白なので、少々不満は残っているようだが。

 まどかはまどかで、特に会話を交わすこともなく教室に入った。
休み時間もどこかに行ったり、他のクラスメイトと話したりで切っ掛けが掴めない。
 ただ、元気がないのは相変わらずだった。

 そして昼休み。
 授業が終わり教室の外を見ると、もうマミの姿があった。
 手招きするマミは、いつもの優しげな微笑を浮かべている。
451: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/07/18(水)02:29 ID:tqjH1JxGo(3/5) AAS
 ちょうどまどかも気付き、席を立っていた。
 数時間ぶりに見たまどかの目はもう赤くはない。落ち込んでいる様子もない。
代わりに、頬が僅かながら紅潮し、足取りがやや覚束ない気はしたが。
 
 さやかがまどかと一緒に教室を出る際、ふと振り返ると仁美と目が合う。
その眼は何かを訴えているようだったが、そのうちにあちらから逸らされた。

「ごめんなさいね。お昼休みなのに」

 仕方なくマミの許に向かうと、マミは最初にそう言った。
 まどか同様、声に張りが感じられない。やつれや目の赤みは幾分か緩和されてはいるが、
陰鬱な雰囲気までは拭い去れていなかった。 

「いえ、それでお話って言うのは……?」

「ええ。話って言うか、今日の放課後、また昨日の喫茶店に一緒に行って欲しいの。そのお誘い」

 救助した命と一緒に行ったオープンカフェ。
お茶もケーキも美味しく、後で調べたところによると、割と評判の店らしい。
ここから少し遠いが、昨日のように魔女退治にならなければ遅くはならないだろう。
 さやかに特に拒む理由はなかったが、気になることがひとつ。
452: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/07/18(水)02:30 ID:tqjH1JxGo(4/5) AAS
「それは構いませんけど、どうしてですか? 何でまた二日続けて?」

「そこで大事な話がしたいの。あなたたちにも関係する話よ」

「魔法少女の……」

 まどかが呟き、マミが頷く。
 しかし、わざわざ喫茶店でする理由にはならない。
 もっと邪魔が入らない場所。例えば学校内でも、時間だって今からでもいいはずだ。

「長くなりそうだから。昼休みの間じゃ、とても話し終わらないの。
お昼を食べながら話せる内容でもないし……ね」

「何か深刻な事情があるんですか? マミさん、その、何だか疲れてるように見えますけど……」

「えぇ、少しね……。でも大丈夫。心配いらないわ。
あなたたちに、これ以上無様なところは見せられないもの」

「そうですか……」

 心配するまどかを逆に励ますように、マミは堂々と振舞って見せる。
 その様は強く、優雅さを感じさせる、さやかの知るマミだった。
 まどかも同じ。今は少し疲れているだけで、暫くすれば出会った時の気高く美しいマミに戻ってくれる。
そう、無条件に信じていた。

 さやかもまどかも忘れていた。
 自分たちとマミは、出会ってまだ三日目だと。
 彼女という人間も、抱えている苦悩も、たかが三日で理解できるはずがないというのに。

 そして考えもしなかった。
 彼女自身、ギリギリの一線で踏み止まっていると。
その、良く言えばプライド、悪く言えば見栄が、マミがマミらしくある為の最後の防波堤なのだとも。
453: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2012/07/18(水)02:34 ID:tqjH1JxGo(5/5) AAS
進んでないですが、ここまで。日曜までにもう一回くらい投下したいと思います

>>431
今のところ考えていません
プレイしていないのに設定だけ拾うのも抵抗がありますし
でも、より良くできると思ったらあるかも
454: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) 2012/07/18(水)10:16 ID:Yh5xrH0AO携(1) AAS
乙←ポニーテール
先が楽しみだ
455: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/18(水)16:39 ID:PONlX939o(1) AAS
良い
456
(1): VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) 2012/07/18(水)19:12 ID:GStJRzPd0(1) AAS
乙であります!

この段階で魔法少女の秘密が知れ渡る展開はまだなかったはず。さやかちゃんも契約前だし、希望が見えてきたか?
・・・とはいえ、契約しないと見せ場も無いですし・・・。
この展開だと知らないのは杏子ちゃんのみということになりますね。

まどポ未プレイとのことですが、
ゲームオリジナルの必殺技などもあるのでとりいそぎ現時点の主役ポジのマミさんの必殺技格の技を列挙しておきます。
通常技格の技は割愛、ゲームにおける効果も割愛でいきます。

【アイギスの鏡】
反射技。敵の攻撃をすべて跳ね返す。
【絶対領域】
防御技。敵の攻撃を全て防御する。
【黄金の美脚】
強烈な蹴りを見舞う。
【レガーレ・ヴァスタアリア】
リボンで拘束する。一度に複数の敵を絡め取ることが可能。
【テ・ポメリアーノ】
仲間に紅茶を振る舞い、回復させる。ちなみに日本語だと【午後の紅茶】らしいです。
【無限の魔弾】
原作にもあった自分の周りに大量のマスケット銃を召還して一斉砲撃する技。
台詞「無限の魔弾よ・・私に道を拓いて!ヴァロットロ・マギカ・エドゥー・インフィニータ!!」
【魔弾の舞踏】
原作にもあった銃の乱舞。
台詞「優雅に・・華麗に・・。わたし、魔法少女ですもの!」
【ティロ・フィナーレ】
説明不要。
【ボンバルダメント】
「もう何も怖くない」のポーズで巨大大砲を召還し、強烈な一撃を見舞う。マミさんの究極技。
ティロ・フィナーレを凌ぐ威力。
457: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2012/07/22(日)01:59 ID:Ve1cGr42o(1) AAS
今日までに投下したかったのですが、申し訳ありません
明日には必ず
458: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/07/23(月)02:47 ID:bSGNlsgYo(1/3) AAS
 マミは重い身体を引きずって教室に戻った。
 後輩たちの前では元気な振りをしていても、独りになると途端に気だるさが全身を蝕む。
 本当は学校なんて来たくなかった。虚脱感に身を委ねて、一日中寝ていたい気分だった。
だって、その瞬間だけは何もかも忘れられる。何も考えなくて済むから。

 なのに今、自分は学校にいる。
 真実を二人に伝えなければ――その一心でマミは登校していた。
 巻き込んでしまった彼女らの為にも。これ以上の自責の念を背負わない為にも。
 二人を、絶対に契約させてはならないのだ。

 決意は固めたはずなのに、未だ心の整理はつかない。
 怖かった。
 他人に説明することで、真実を客観的に見つめるのも。
 それを事実として受け止めることも。
 二人から嫌悪と恐怖の視線を向けられるかもしれないことも。

 だから時間が必要だった。説明の仕方を考える時間と、覚悟を決める時間が。
 その時間も刻一刻と過ぎていく。緊張は増すばかりだった。
午前中一杯を使って授業もろくに聞かず考えに考え、どうにか頭の中で台本はでき上がる。

 そして昼休み。彼女たちを誘うことで、覚悟はできた。
悩むのは充分過ぎるほど悩んだ。もう悩んでいても仕方がないと。   
 鞄を開き、粛々と次の授業の準備を始める。その時、ふと一枚のプリントが目に入った。
 
「しまった……」

 と呟き、マミは机に両肘をついて項垂れる。
459: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/07/23(月)02:50 ID:bSGNlsgYo(2/3) AAS
 進路希望調査。見出しには大きくそう書かれていた。
 今日は放課後に進路相談があったのを、すっかり失念していた。

 仕方がない、二人には先に行って待っていてもらおう。
 我ながら勝手だが、明日では遅い。一日でも早く伝えたかった。
 だが、それはそれとして。

「進路か……」

 誰にともなく独り言ちる。
 もう三年生だというのに、意識するのは初めて。
 いや、本当は目を背けて見ない振りをしていた。

 以前から、延々と続く戦いの日々に疲れを感じてはいた。
 魔法少女として魔女を倒しても金品などの報酬は得られず、仕事として成り立たない。
それでも正義という慰めと、使命感という呪縛があったから、なんとかやってこれた。

 でも、今は違う。もうこんなこと、いつまでも続けたくはない。
 かと言って、何か明確な将来のヴィジョンがあるわけでもなく。
それでも続けなければならない理由を知ってしまった。

 まったく、お先真っ暗という言葉がぴったり当てはまる。
今のマミには一年後、一ヶ月後はおろか、明日の自分の姿さえイメージできなかった。
 道を確かに定め、道の先に希望があると信じられるなら歩いていける。
たとえ、どれほど過酷であっても。

 けれどマミには道が見えない。自らの希望も、目標も。
 キュゥべえへの願いは、「生きたい」ただそれだけ。
その通り、キュゥべえに頼まれた戦い以外には、ただ生きてきただけ。

 誰かの為、キュゥべえの為に尽くすばかりで、自分の為に何をしてきたのだろう。
何をしたかったのだろう。何かを積み上げてきた実感も、充足も得られず、ただ必死に命を繋いできた。
誰に愛されることもなく。

 昨夜、数年ぶりに自ら課していた使命からマミは解き放たれた。
しかし自由とはほど遠く、様々なしがらみに囚われたままで目的を見失ったマミには、
目指す未来など見つけられるはずがなかった。

 頬杖をつき、ぼんやり遠くの空を眺めながら、マミは昨夜のことを思い出す。
 真実を求めて、知らされたのは残酷な現実。何か得た訳でもなく、大切な友達を失った、
省1
460: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2012/07/23(月)02:52 ID:bSGNlsgYo(3/3) AAS
全然進んでないですが、ここまで
もう少しあるので、完成したら明日にでも

>>456
ありがとうございます!
参考にさせていただきます
461: ◆ySV3bQLdI. [saga] 2012/07/26(木)03:03 ID:EBKYw+nEo(1/10) AAS


 マミはテーブル上のキュゥべえと向かい合い、問答を繰り返した。
 時に憤り、時に怯え、時に悲しみ、それでも涙は見せなかった。
 だが、平坦な反応しか返らないことに疲れ、いつしかマミの感情からも起伏は失われていった。
 
 どれくらいの間、そうしていただろうか。
十五分か二十分程度だと思うが、もっと長く引き伸ばされた時間にも感じた。
 そして最後の質問、返ってきた答えにマミが見せた表情は、怒りと呆れが入り混じる引きつった笑い。

「……そんなことの為に?」

「そんなこと、はないんじゃないかな。それが僕の唯一絶対の存在理由だからね。
それに、君たちだって無関係じゃない」

 最初は理解を超えた途方もないスケールに圧倒され、言葉の意味を噛み締めるにつれ何だか納得してしまい、
しかしよくよく考えれば、やはり"そんなこと"だ。
 脱力感が身体を包む。マミは額を押さえて、どうにかよろけるのを堪えた。
 彼と自分とでは何もかもが違い過ぎる。どうして、こんな存在と友達だと思えたのだろう。

「私は、このことを鹿目さんと美樹さんに話すわ」

 脱力が治まると、マミは鋭い視線でキュゥべえを睨めつけ、言った。
 彼女たちに関わった手前、警告するのが先輩としての責任。
腹いせにキュゥべえの邪魔をしてやろうという気持ちも、なかったとは言えない。

「好きにすればいいさ」

 もっとも、こんな程度で彼が揺らぐとも思っていなかったが。
462: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/07/26(木)03:05 ID:EBKYw+nEo(2/10) AAS
「そうよね、あなたのことだもの。その可能性を考えないはずがない。
それでも話したのだから、何か勝算があるんでしょう?」

「勝算なんて何もないよ。僕は君たちに嘘はつかない。訊かれたら答える。
強制もしない。契約するもしないも自由だ。
ずっとそうしてきたし、君にもそうだっただろう?」

 などと言っているが、怪しいものだとマミは思う。
 魔法少女と、そのシステムの核心。彼は最も重要な事実を伏せていた。
それが負の一面だから。知ったが最後、誰も契約しなくなるから。
 逃げられない状況で銃を突きつけて脅迫して、やっと天秤が動いたのだ。

「ただ、限りなく確信に近い予感はあるけどね。僕が特に何もしなくても、まどかは契約するよ」

「……どういう意味?」

「彼女が秘める膨大な因果が、彼女の運命を捻じ曲げる。いや、決定付けていると言うべきかな。
因果という言葉が示すように。
彼女を最悪の魔女にしたくないと思うなら、彼女の運命を、因果を断ち切るより他に術はない」

――因果を、運命を断ち切る。それは、つまり――。

 ゾッと背筋を悪寒が突き抜ける。
 何故か、自身の放った弾丸がまどかの眉間を、他の魔法少女のソウルジェムを砕く光景が、
鮮烈に脳裏に閃いた。
463: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/07/26(木)03:08 ID:EBKYw+nEo(3/10) AAS
――何を考えているのかしら、私……。まだ魔法少女でもない鹿目さんを殺すだなんて……。

  不吉なイメージを頭を振って払うマミ。一瞬でも想像した自分が恐ろしくなる。
 勿論、そんな気はさらさらない。
 だが、ほんの些細なボタンの掛け違い、タイミング次第であり得るかもしれないのだ。
 そして彼、冴島鋼牙と戦うとしたら、きっと――。

 正義の味方は、絶対に私たちの味方にならない。
 暁美ほむらの残した言葉の意味。いつか自分たちが戦う日が来るかもしれない。
その時、どちらがどの位置に立つかは予測できなかったが。
 マミが漠然とした不安を拭いきれないでいても、キュゥべぇは構わず続ける。

「君が話すことで多少は延びるかもしれないけど、いつかは必ず。
君たちには気が遠くなる時間を、僕は過ごしてきた。あと何十年か待とうが、どうということはないさ」

 そうなのかもしれない。
 彼は時間の感覚が人間とは大きく異なるのだろう。厭きたり退屈といった感覚もない。

「もっとも、それほど長い時間はかからないんじゃないかと踏んでる。
それでなくても、彼女自身が変わらなければ、彼女は奇跡を求めて手を伸ばすだろう」

 奇跡に頼らない心。確かに、自分を卑下しているまどかには的を射ているかもしれない。
 しかし、奇跡を一度たりとも希わない人間などいるのだろうか。
避けられない命の危機、どうにもできない現実に直面したなら、誰もが奇跡を願うのに。

「そもそもさ、マミ。君の場合は、あの日、あの事故現場で、悠長に説明している時間もなかった。
もし仮に、僕が説明したとして、君は契約を拒んだかい?
本来なら、あそこで尽きていたかもしれない君の命が、今日まで永らえたのは契約があったからだ。
感謝されこそすれ、恨まれる筋合いはないんじゃないかなぁ」
464: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/07/26(木)03:10 ID:EBKYw+nEo(4/10) AAS
 だからこそ、マミはキュゥべえに言い返せなかった。事実、選択の余地はなかった。
 自分には彼を糾弾する資格がない。それ故に悔しく、それ故に歯噛みしながら黙るしかなかった。
 せめてもの反抗に、

「都合の悪いことは隠すくせに……」

「言葉が足りないことは嘘とは言わないよ。僕なりに、話さない方がいいと判断したまでさ。
君たちの為にもね」

 ボソッと呟いた言葉にも、キュゥべえは律義に返事をする。
 だが何が少女たちの為なのか、マミにはとても理解できない。

「詭弁だわ。私以外にも、おかしいと思った魔法少女はいくらでもいたはず。
その時の少女たちの嘆きや動揺を見ておいてなお、話さない方がいいなんて言えるの!?」

「真実を知ってからは、ほとんどの少女が時を置かずに脱落していったからね」

「そんな馬鹿な……――!?」

 途中まで出かかって、マミはハッと口を押さえる。
 想像の中の魔法少女が、今の自分と重なったのだ。

 命懸けの戦いがどれほど過酷か、知りもせずに契約して。
 それでも願いの対価と納得して、或いは正義の行いと誤魔化して、戦い続けて。
 やがて終わりの見えない戦いの中で傷付き、精神を擦り減らして。
 ある時おかしいと気付く。
 
 切っ掛けは戦いに嫌気が差したか、人間離れした自身の肉体にショックを受けたか。
 少女はキュゥべえを問い詰めるだろう。一縷の望みに賭けて。
 だが望みは呆気なく打ち砕かれる。
465: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/07/26(木)03:13 ID:EBKYw+nEo(5/10) AAS
 
 その瞬間の怒り、悲しみ、苦しみは、誰より深く共感できる。
今まさに、マミは同じ苦痛を受けている。 

 ソウルジェムが黒く染まりきる時、救ってきた人たちを、
守りたかった家族や友人を、その手で殺める魔女になると。
 この肉体は魂を宝石に変えて抜き取られた、いわば抜け殻で、既に人ならぬ身だと。
 自分は散々利用された後に、すべての元凶の彼から、
信じていたキュゥべえの口から絶望を宣告されるのだ。
 
 彼女たちの末路は、容易に想像できる。
 魔女になったか、動揺して戦闘中に致命的な隙が生じたか、
自ら魂を――ソウルジェムを砕いたか。

 そして、それらはマミが確実に辿る道なのだ。

 治まりかけていた、諦めかけていた感情が、マミの内に蘇る。
より強く、今度は煮え滾るような熱い激情が腹の底から沸々と湧き上がるのを感じた。
 それは怒り。
 憤怒の炎は脳天まで駆け上ると同時に理性を焼き尽くし、身体を衝き動かす。
 
「――っ!!」

 マミは胸元のリボンを毟り取ると、リボンは掌の中で瞬時にマスケット銃へと形を変える。
 そして銃口は迷いなく、かつての親友に突きつけられた。
466: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/07/26(木)03:16 ID:EBKYw+nEo(6/10) AAS
「……本気かい? そんなことをすればどんな騒ぎになるか、わからない君じゃないはずだ」

「黙って……!」

 腕を伸ばし、銃口を数センチ近付けて、言葉を遮る。
 夜のマンションで突然の銃声。マンション中が蜂の巣をつついたような騒ぎになるだろう。
とても誤魔化しの利く状況ではない。
 ましてマミの精神状態を考えれば尚更である。警察沙汰は避けられない。

 だが今のマミにはどうでもよかった。
 全身の震えは引き金に掛けた人差し指にまで伝播して、今にも発射寸前。
銃口も暴れ、狙いも危ういが、鼻先まで迫っていれば関係ない。
 しかしマミは、瞳まで怒りに染まっていない。それどころか、大粒の涙を流していた。

「消えて……! 独りにして……お願いだから!!」

――私が、あなたを撃つ前に……! 

 本当は理解している、彼を撃っても何の解決にもならないと。
 確実に殺すなら、リボンで縛っている。拘束していないのは、辛うじて理性が働いている証拠。
 キュゥべえは何か言いたげにしていたが、議論ができる段階ではないと悟ったらしい。

「やれやれ……勝手だね、君は」

 言い捨てて、窓に向かう。
 彼は去り際に一度、マミを振り返った。 

「わかったよ、マミ。今日は出直そう。頭が冷えて、まだ僕に用があったら呼んでよ」
467: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/07/26(木)03:18 ID:EBKYw+nEo(7/10) AAS
 キュゥべえは窓からベランダに出て、どこかに消えていった。
 だらんと垂れ下がったマミの手から零れた銃が、床に乾いた音を立てて転がる。
 にも関わらず、マミはキュゥべえが出て行った窓を虚ろに眺めていた。

 まるで、僕は気にしてないから、とでも言うかのようだった。
いや、キュゥべえは、これっぽっちも気にしていない。
 一人の魔法少女との関係が崩れようが、恨まれようが、彼には些細なこと。
 一方通行だとわかっていたのに、こんなにも胸が苦しい。

 魔法少女の正体、キュゥべえの本心と本性。
 独りになったマミに、真実は重く圧し掛かる。
 自らを押し潰す重みに耐えかね、マミはテーブルに突っ伏した。
 
「うっ……うぅ……」

 最初は小さくしゃくり上げるだけだったが、やがて肩の震えは大きくなっていく。
 そして遂に――。
468: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/07/26(木)03:19 ID:EBKYw+nEo(8/10) AAS
「ぁあああああああああ――!!」

 ずっと堪えていた涙が、悲しみが噴出した。
 堰を切った感情の波が怒涛の如く押し寄せて、もう制御不能だった。
 誰に遠慮することもない。思い切り声を張り上げて、マミは泣いた。
生まれたばかりの赤ちゃんのように泣きじゃくった。

 両親が死んで自分だけが生き残った日も、同じように泣いていた。
 あの日すべてを失って以来、築き上げた誇りも何もかも砕かれ、絆はまやかしだと知らされた。
 またすべてを失ったマミには、泣くことしか残されていなかった。
 
 泣き疲れてきた頃、ようやく涙と声が止まる。
 しかし、それからもマミは何をするでもなく床に横たわっていた。
疲労困憊のはずなのに、食欲も眠気も湧かない。
体力も気力も使い果たし、僅かに回復しても泣く行為に消費される。
 
 マミの悲嘆は終わることがなかった。落ち着いても、暫くすると思い出して泣けてくる。
 その日、マミは声が枯れ、涙が涸れるまで夜を泣き明かしたのだった。
 
469: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/07/26(木)03:23 ID:EBKYw+nEo(9/10) AAS


 独り席で呆けていたマミは、頬を伝う感触で我に返る。さっと目元を拭うと、指は濡れていた。
 思い出してまた自然と泣いていたのか。周囲を見回すが、幸い誰にも見られていなかったらしい。
 マミは軽く溜息をつくと、机に置いていたプリントを白紙のまま乱暴に鞄に突っ込んだ。

 金の面倒を見てくれている親戚は何と言うだろう。
高校くらいは行かせてもらえるだろうが、特に興味も持てなかった。
 一寸先は闇という状況下で、しかもどの道を行こうが、果てに待つのは絶望のみ。
これでは歩くこと自体が無意味だった。

 現在マミの関心は今日の放課後、それも下校後にしか向いていない。
 二人に真実を伝えたら、距離を置こう。あとは彼女たち個人の問題だから。
 
――私は頼れないけど、彼女たちはまだ縋れる。彼に、黄金の光明に。
だから私なんかとは関わらない方がいい。巻き込んでしまうかもしれないし、私も惨めになるだけ。
大丈夫、怖くない。だって私には――

 全部なくなったと思い込んでいたけど、ひとつだけ残っていた。
 一人の女性の笑顔を思い浮かべると、心が少し軽くなり、早く会いたいと期待に胸が躍る。
 魔法少女とも魔戒騎士とも関係ない彼女となら一緒にいられる。
たまに会って話を聴いてくれるなら、それだけで充分だった。

――でも、昨日会ったばかりの私を、命さんは本当に友達だなんて思ってるの……?

 キュゥべえとの件もあって疑心が生まれるが、すぐに頭から追い払った。
 気分が沈んでいる今は何も考えない方がいい。負の思考にばかり囚われてしまう。

 忘れようと、ふと頬杖をついて窓の外を見ると、雲ひとつない春の青空が広がっていた。
 綺麗だという言葉は浮かんでも、心は暗く淀んだまま。
 昨夜だって、どれだけ泣いても心は晴れなかった。結局、忘れられるはずがないのだ。

――私は間違っていたのかしら……。

 真実なんて知らずに死んだ方が幸せだったのだろうか。
 憂いと迷いを湛えた瞳には後悔が浮かんでいた。
470: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/07/26(木)03:25 ID:EBKYw+nEo(10/10) AAS
ここまで。次は出来れば日曜ですが、たぶん来週
今回、冗長かとも思いましたが、念入りにしたかったので
471: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/26(木)12:04 ID:JTDigG1wo(1) AAS
そろそろマミさん持ち直すか
472: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/01(水)16:10 ID:xkOTsb670(1) AAS
このところ遅れがちみたいだけど大丈夫かな
マミさんのテンションに引きずられたとか
暑いので体にもPCにも気をつけてください
473: ◆ySV3bQLdI. [sage saga] 2012/08/01(水)23:45 ID:JkRNrdXoo(1) AAS
お気遣いありがとうございます
今年はエアコンが無いのでなかなか……
明日か明後日くらいにはなんとか
週一のペースだけは崩さないように
474: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/08/04(土)03:15 ID:/EHE1KDLo(1/8) AAS
 鳴り響くチャイムの音が授業の終わりを告げる。
 さやかは終礼と同時にいそいそと片付けを始め、二分とかけずに帰り支度を済ませた。
 放課後はマミとの約束がある。待たせるのも悪いし、恭介の見舞いに行く時間を考えたら、
あまりグズグズしていられない。
 さやかが急ごうと席を立つと、仁美と視線がぶつかった。

「さやかさん。今日は――」

「あ、ごめん仁美。今日は先約があってさ」

 答えると同時に、仁美は表情を悲痛に曇らせる。
 彼女は習い事などで放課後も割と多忙であり、別々に帰るのは珍しくない。
だからこそ一緒に帰れる時は大切にしたいと三人ともが考えていたが、
それにしても今日の反応は過剰だった。 

「朝の巴先輩……ですの?」

「うん、ちょっとね……」

 咄嗟に眼を逸らし、言葉を濁らせてしまう。
本当なら何らやましいこともなければ、負い目だってあるはずない。
 だが、あくまで秘密を伏せて"ちょっと"の部分を語れば、仁美はどう思うだろう。

 ただ遊ぶだけだと受け取られかねない。
 新しくできた、仁美の知らない友人と。
 三人で楽しく。
 彼女一人を除け者にして。

 仁美は酷く傷つくだろう。弁解のしようがない。それなら隠す方がいくらかマシだと思った。
故に、"ちょっと"としか答えようがなかった。それはそれで仁美を傷つけるとしても。
475: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/08/04(土)03:18 ID:/EHE1KDLo(2/8) AAS
「そうですか……ならどうぞ、ご勝手に」

 仁美は俯いて言うと、プイッと身を翻して教室を出て行ってしまった。
 怒らせてしまったと、さやかは溜息をひとつ。

 まぁ、落ち着けばわだかまりも解けるだろうし、また一緒に帰れるようになる。
でも仁美も、もう少し信用してくれればいいのに。自分たちの関係が簡単に崩れるはずないのだから。
 そんなふうに軽く考えて、敢えて追いかけはしなかった。 
 
「さやかちゃん……仁美ちゃんとケンカしたの?」

 声に向くと、鞄を持ったまどかが立っていた。不安げに眉を寄せている。
 
「別に。ちょっと怒らせちゃっただけ。それより……」

 はぐらかすなり、さやかは近寄って彼女の顔を凝視する。
 そういえば、こっちの問題もあった。悩みはどうなったか知らないが、今は落ち込んでいる様子はない。 
 だが――。

「まどか、やっぱりちょっと顔が赤いよ? 大丈夫?」

「だ、大丈夫だよ……って、さやかちゃん!?」

 さやかはまどかのおでこを露出させ、自分のものとピタリくっつけた。
 まどかの顔が更に赤みを増す。何より、じんわり伝わる彼女の体温は、
自分のそれより僅かだが高く感じられた。
476: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/08/04(土)03:23 ID:/EHE1KDLo(3/8) AAS
「熱い……まどか、あんた熱あるんじゃないの?」

「うん、朝から何だか熱っぽくはあったけど……昨日、ちゃんと寝なかったから体調崩しちゃったかも。
でも、大丈夫だよ、これくらい」

「ダ〜メ、今日は帰りなって。送ってってあげるから」

「でも、マミさんとの約束が……」

 まだ微熱程度でも、こじらせて悪化させたら面倒だ。風邪は引き始めが肝心とも言うし。
 また、これを切っ掛けに帰り道でまどかに悩みを訊きたかった。
そして、あわよくば帰り道で完全に仲直りしたかった。

 なのに、まどかは律義にもマミとの約束を気にしている。
大人しいくせに、ここぞという時は頑固なまどかの性格を熟知している身としては、さてどう説得したものか。
 さやかが頭を悩ませていると、

「鹿目さん、美樹さん。よかった、まだ教室にいてくれて……」

 入口からマミが覗いていた。
 息を切らしていることから、よほど急いできたらしい。
周囲を見回すと、いつの間にか教室に残っている人間はまばらになっていた。

「忘れていたのだけど、今日は放課後、進路指導があったの。
だから悪いんだけど、先に行って待っててくれないかしら?」

「それなんですけど、マミさん。まどかがちょっと熱っぽいから、今日は帰って休ませた方が……」

 話というのがどれほど大事か知らないけれど、マミも遅れるなら無理に今日でなくてもいいだろう。
 と、さやかは考えたのだが。
477: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/08/04(土)03:25 ID:/EHE1KDLo(4/8) AAS
「そう……なら無理はしない方がいいわね。私としては美樹さんだけでも来てほしいんだけど……」

「でも、まどかを置いてくのも……」

 マミはやんわりと要求してくるが、さやかは気乗りしなかった。
 まどかが心配――それももちろんあるが、一人で行きたくない気持ちが大きい。
マミがここまで拘るからには、相応の理由があるに違いないからだ。

 怖い、と思った。
 自分に受け止められるのかと、不安だった。

「だから大丈夫だって、さやかちゃん。ちょっと保健室で休ませてもらって、そしたら一人で帰るから。
それだけ大事な話なんだよ、きっと、ね?」

 だから私の分も聞いてきて、とまどかは微笑んだ。
 確かに本人の言う通り、微熱くらいなら一人で帰るのも問題ないとは思うが。
 さやかがなおも渋っていると、背後から声がした。

「私も保健室に用があるの。彼女は暫く私が見ていてもいいけれど」

「転校生……!」

 暁美ほむらだった。
 気遣ったつもりかもしれないが、普段のほむらの態度からして胡散臭い。
 仮にそうだとしても逆効果。
大どころか、その上に超が付くほど彼女が嫌いなさやかは、敵愾心を剥き出しにして睨む。
が、ほむらはどこ吹く風。さやかを見向きもしない。
478: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/08/04(土)03:27 ID:/EHE1KDLo(5/8) AAS
「どうかしら」

「え……っと、ほむらちゃんの用事のついでなら、別に私はいいけど……」

 まどかは気まずそうに、さやかとマミを見遣る。

「あんたなんかにまどかを――」

「いいんじゃないかしら。誰かが付いているなら安心ね」

 遮ったのはマミ。まさか同意するとは思っておらず、さやかは驚いた。
 だって、この女は自分に銃を突きつけ、あまつさえホラーの前に置き去りにしたのだ。
そんな危険な奴に、まどかの看病を任せられるはずがない。

「マミさん! だって、こいつは……!」

「美樹さん。彼女は鹿目さんに危害を加えたりしないと思うわ。
そんな気があれば、とっくにやってる。チャンスはいくらでもあった、でしょ?」

 マミはほむらに目配せして同意を求めた。
 ほむらは肯定も否定もしなかったが、マミにはそれも予想通りだったのか、
気を悪くした様子はない。

「むしろ、鹿目さんにだけは無害、と言ってもよかったかしら?」

「ご想像にお任せするわ」

 短い言葉、二人だけで通じ合うマミとほむら。さやかには、何が何だかさっぱり理解できなかった。
 気に入らない。ほむらの態度も、マミがほむらを警戒しないことも、何もかも。
 中でも、最も気に入らないのは。
479: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/08/04(土)03:36 ID:/EHE1KDLo(6/8) AAS
「そうだよ、さやかちゃん。ほむらちゃんだって親切で……」

――またなの?
また、まどかはそいつの肩を持つの?
あたしの言葉よりも、そいつを信用するの?
どうして……わかってくれないの?
あたしたち、ずっと前から友達だったのに――

「そうよね……あんただけは守ってくれたもんね。
一昨日だって、怪我したあたしを見捨てて二人で一緒に逃げてさ……」

 意思に反して言葉が口をついて出た。こんなこと言いたいんじゃないのに。
 さやかは、静かに拳を震わせる。口の端が引きつる。
 昨日、抱えていた葛藤と同じ。信じたいのに信じられない。

 厄介なことに、一度でも根を張った疑念とトラウマは、拭い去ろうとしても簡単には拭い去れない。
些細なことで表出する度に、自分と誰かを傷つける両刃の剣。まさに今のように。

「違うよ、さやかちゃん! そんなんじゃないよ!」

「もう好きにすれば! マミさん、あたし先に行ってますから!」

 言うが早いか、さやかは廊下を蹴り出した。
 一刻も早くこの場を離れたかった。これ以上自分の醜い面を晒す前に。
黒い感情が言葉の刃に変わって、まどかを傷つけないよう。

「さやかちゃん!!」

 背後から叫び声が届いても止まらない。振り返らずに全力で走り続ける。
 さやかとまどかの身体能力には開きがある。足もずっと速い。
本気で走れば追い付いてこられないだろうから、顔も見られずに済む。
 今は自分の顔を見られたくない。まどかにも合わせる顔がない。
480: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/08/04(土)03:41 ID:/EHE1KDLo(7/8) AAS
――まどかが、ああいう娘だって知ってるのに。
仁美と同じ。仁美には信じて、なんて思っておいて、まどかを信じられなかった。
仁美も、まどかも傷つけて……あたしバカだ……。
こんなの、時間が勝手に解決してくれる訳ない。簡単に仲直りなんてできる気しないよ……――

 湧き上がる自責の念を振り切るように、さやかは走り続けた。

 勢いで学校を飛び出して、バスに乗って十数分。
途中、何度も寄り道をしたり遠回りをして数十分。その頃には、街は夕暮れ時を迎えていた。

 オレンジの光が街を染める中、肩を落とし、とぼとぼと歩くさやか。
 憂鬱だった。あんな八つ当たりを見せた後、どんな顔をしてマミに会えばいいのか。
 そして、もしまどかが無理を押して来ていたら。
考えたら不安で不安で、つい意気地なく先送りにしてしまった。

「はぁぁ……行きたくないなぁ……」

 と、今日何十回目かの溜息。
 しかし、いつまでも逃げてばかりいられない。結局、足は約束のオープンカフェに行き着く。
 そもそも、何故マミはわざわざ学校から離れた店を選んだのだろう。腰を据えて話すにしても、
もっと適当な場所がありそうな気がする。
 理由はすぐにわかった。

「あら、美樹さん……よね。こっちこっち」

 外に並んだテーブルの一席から声が掛かった。おいでおいでと手招きしているのは夕木命。
昨日、マミが助けた女性だった。
481: ◆ySV3bQLdI. [ saga] 2012/08/04(土)03:42 ID:/EHE1KDLo(8/8) AAS
ここまで。もう少しあるのですが、日曜には完成させて、その時に
スランプ気味なのか自信がなくなってきました
会話中心なので描写を省略してみたつもりですが、参考に意見を聞かせていただければ助かります
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