【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その3だよ」【×影牢】 (720レス)
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1: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2023/07/22(土) 19:26:36.51 ID:8YcaGZNqo(1/22) AAS
・DMM【艦隊これくしょん】と
 DMM【影牢トラップガールズ】(2016/07/29サービス終了)、
 およびPS4【影牢〜もう一人のプリンセス】のクロスオーバーです

・キャラ崩壊注意

・提督も艦娘も殆どが不幸属性持ちです

・前スレと前々スレ、さらには前日譚の『墓場島鎮守府?』シリーズを
 全部読まないと話がわからないと思います

・基本的にsage進行しますので、感想、雑談など、書き込みの際は
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696: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:05:16.49 ID:eLSxtmOxo(2/25) AAS
 * 島の北東部 かつての砂浜の岩礁地帯 *

提督「さて、さっさと戻って中将に……ん? ありゃ誰だ」

 (何者かが岩場の上で海側に足を向けて、大の字になって寝転んでいる)

戦艦水鬼改「……艦娘ッポイナ?」

大和「艤装が煙を吹いてますね……ここに流れ着いてきた艦娘でしょうか」

秋雲(中破)「……ふえっ!? だ、誰!? って、大和さん!? と……どぇええぇえ!? 深海棲艦んん!?」

戦艦水鬼改「知ッテル艦娘カ?」

提督「いや、知らない顔だな」

秋雲「あれれー、おっかしいなぁー!? あたしってば、いつ沈んだっけ!? まだあの世には来てないはずなんだけどおお?」オメメグルグル

提督「なに寝ぼけてんだ。ほれ、お前はどこのどいつだ、何が望みだ、早く言え」

秋雲「ちょっとお!? そんなに立て続けに言われたってこっちにだって心の準備ってのがあんのよ!? ちょっと待ってってーの!」プンスカ!

提督「中破してる割には元気だな。早霜に似た服を着てるが、同型艦か?」

大和「いえ、夕雲型には似ていますが、彼女はその前の陽炎型ですね。形が似ているために、夕雲型の制服を着ているようです」

提督「ふーん……」
697: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:06:00.83 ID:eLSxtmOxo(3/25) AAS
秋雲「……うーん、三途の川の渡し守にしては、健康的な小麦色の肌の色をしてるなあ」マジマジ

秋雲「そしてその見慣れたその海軍の制服……もしかして、あなたどこかの提督さん? なんで深海棲艦が一緒にいるの?」

提督「それに答える前に、先にこっちの質問に答えろよ。お前、墓場島鎮守府って知ってるか」

秋雲「なにその推理小説にでも出てきそうな島の名前! そんな鎮守府あるの!?」

戦艦水鬼改「知ラナイノカ?」

秋雲「うん、初めて聞いたなあ。墓場島鎮守府……もしかして、あっちに見える建物がそうなの?」

大和「本来は××島鎮守府ですけれど、そちらの名前のほうが広まっていますね。とりあえず、あなたの名前と所属を訊いても?」

秋雲「あ、ごめんごめん、あたしの名は秋雲! 良提督鎮守府の秋雲さんだよー!」

戦艦水鬼改「ノリガ、軽イナ……」

提督「良提督? 聞いたことねえな。で、お前はどうしてここに来た?」

秋雲「どうして……あー、そりゃ、ちょっと言いづらいんだけどぉ……」

戦艦水鬼改「……言ワナイノカ」ジトッ

秋雲「ちょっ! ちょっとタンマ! さっきから戦艦の姐さんの圧がすごいんだけど!? 言います! 言いますってば!」
698: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:06:46.04 ID:eLSxtmOxo(4/25) AAS
秋雲「えー、そのぉ、秋雲さんはですねえ……ちょっと、あの、お恥ずかしい話ですが……家出……してきたん、ですよ」

大和「家出? 鎮守府から?」

提督「何か不満でもあったのか」

秋雲「まあ、不満と言いますか、何と言いますか……方向性の違いと言いますか」

戦艦水鬼改「?」

提督「……とりあえず、詳しく事情を聞く前に、ひとつ肝心なこと訊いておくか。お前、生きたいか、それとも死にたいか、どっちだ?」

秋雲「いやいやちょっと待って!? なにそのとんでもない2択!! 今の流れでどうして死ななきゃいけない選択肢が出てくんの!?」

提督「自殺志願者じゃねえんだな?」

秋雲「ないよ!? 死ぬ気ないよ! 死にたくもないしそういう考えに至ってもいないし! え、ってゆーか、そういう島なの……?」

提督「ろくでもない目に遭わされた艦娘が多いのは確かだな」

秋雲「うへえ……秋雲さんどうなっちゃうのよコレ」
699: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:07:31.75 ID:eLSxtmOxo(5/25) AAS
 * 食堂外 テラス席 *

中将「……生存者は確認できず、か」フゥ…

提督「行方不明って扱いにしてもいいでしょう」

葛城「……」

中将「君たちが責任を感じる必要はない。指揮を執ったのはこの私だ」

与少将「……しかしそれでは……!」

提督「艦娘がいるから忘れられてるが……この御時世、人間にとっては渡航そのものが命がけだ」

与少将「!」

提督「人間が艦娘連れて渡航した場合も、3回に1回は深海棲艦と交戦して、そのうち8回に1回は船が沈んでるって聞いてる」

提督「艦娘だって時々沈んでるのに、人間に犠牲が及ばない航海を約束すんのは無理がある。船だって的として見りゃでかいしな」

提督「あの船も旧式とはいえそこそこ速度も出るって聞いてるのに、それで魚雷に被弾しちまったってのは運が悪かったとしか言えねえよ」

提督「なんらかの攻撃を受けて、艦娘が無事。かつ、中将という生存者もいる。まずはそれで良かったと思えってんだ」

葛城「そうかも、しれませんけど」

提督「つうか、もともと厄介払いの連中ばかりだろ? 囚人に至っちゃあ殺す手間が省けていいじゃねえか。生かしてたって税金の無駄だろ」

葛城「そういう問題じゃなくて!!」クワッ!

提督「なんだ真面目だな。いずれにしろ、終わっちまったことをぶちぶち言ってもしょうがねえよ」
700: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:08:15.79 ID:eLSxtmOxo(6/25) AAS
提督「お前らも訓練してきているんだろうが、今回のは完全に事故だ。犬に?まれたと思って諦めろ」

葛城「……」

提督「それで納得できねえんなら強くなりやがれ。お前らがこれからやれることと言ったらそれくらいだろ」

葛城「……っ! わ、わかってるわよ! 見てなさい、いつか瑞鶴先輩みたいになってやるんだから!!」

提督「おう、せいぜい頑張りな。ところで与少将、この件、俺が口を出してもいいか?」

与少将「……まあ、ややこしくならん程度に頼むぞ?」

提督「ああ。まあ、事故に近いっつう状況説明だけにしといてやるよ」

提督「それから、ちょっと考えたんだけどよ。事態をややこしくさせかねないことを言うが……」

提督「今回の魚雷って、案外、海軍が秘密裏に魚雷の威力確認のためにどっかで演習してた、その流れ弾とかじゃねえの?」

与少将「……何を言うちょるか!?」

葛城「海軍内の仕業だって言うんですか!?」

提督「まず、海軍かどうかは別にしても、魚雷を撃った奴は確実にいるわけだ」

提督「俺たちも兵器開発をしてないわけじゃないが、いまのところは、それでわざわざ領海の外に出てはいないし」

提督「そもそも俺たちが中将の乗ってる船に向かって攻撃する理由がねえ。普通に中将はこの島に対しての協力者だし」

提督「政府との会談を控えてるこの時期にそんなことしたら、いろいろ台無しになっちまう」

与少将「確かにのぉ……」
701: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:09:01.73 ID:eLSxtmOxo(7/25) AAS
提督「で、俺としちゃあ、海軍がなんか新兵器でも開発してんのか? と思っちまうんだよ。信用してない分、余計にな」

与少将「いやいや、いくらなんでも、それで中将閣下の船が被害を被るようなことはせんじゃろ……」

提督「そうかあ? 深海棲艦は絶対滅ぼす、みたいな脳みその奴、まだいるんじゃねえの? 曽大佐みたいによ」

提督「そういうやつが、あわよくば一矢報いる思いで、俺たちの島に向かって魚雷を撃った、ってほうがあり得そうだけどな」

葛城「曽大佐って、あの、おじいちゃんになっちゃったっていう……!?」ゾッ

提督「知ってんのか」

与少将「今では有名じゃぞ、悪い意味でな。しかし、そのおかげで、この島に攻撃を仕掛けようという声が鎮静化したのも事実ではあるが」

提督「だからこそ秘密裏に、って思ったんだけどな」

与少将「……となると、ますますどこから来たかがわからんちあ」

提督「まあ、後は……新たな脅威となる深海棲艦がいる、って線も考えられるが、今んとこ、そういう報告も受けてねえしなあ」

与少将「むー……」

葛城「……」

提督「……ここまで喋っておいてなんだが、ことがことだし、事故扱いで処理されて有耶無耶になりそうだな?」

与少将「むう……」
702: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:09:46.24 ID:eLSxtmOxo(8/25) AAS
提督「連中が乗ったボートも見つからないってことなら、この辺の早い潮に流されて転覆したってこともあり得るし」

提督「海軍もこれ以上の不始末は表沙汰にしたくもねえだろ。適当な原因でっち上げてもそれまでなんじゃねえの」

与少将「不本意だが、場所が場所だけに調査もできんじゃろうし、そういうことにされそうじゃな」

葛城「私たちは……中将さんは、どうなるんですか」

提督「悪いようにならねえように、俺たちが立ち回るしかねえんじゃねえか。武蔵の映像もある、海軍だっておおごとにしたくねえはずだ」

与少将「……ところで、艤装がボロボロの艦娘を連れて来ちょったが、どうしたんじゃ」

提督「あいつもあの船と同じく、流れ弾らしい魚雷に被弾したみたいでな。島の北東に流れ着いたところを保護した、ってとこだな」

与少将「中将閣下の船を狙った魚雷と同じものか?」

提督「かもな。詳しい話はこれからだ」

 クルリ スタスタ…

与少将「……その事情によっては、わしらの出番になるかもしれんちゅうわけか?」

那智「そうなるでしょうね。ただ、ここに流れ着くような艦娘が、素直に元の鎮守府に戻れるような事情か、というのはありますが」

葛城「どういうことよ、それ……」

間宮「……陸奥さん。提督さんって、自分でやっておいてよくあそこまで口が回りますね?」ヒソヒソ

陸奥「ふふっ、秘密よ?」ウインク
703: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:10:31.62 ID:eLSxtmOxo(9/25) AAS
 *

秋雲「……えーと、あたしたち、漫画を書いてたんですよ」

提督「へぇ……てことはお前、絵が上手いのか」

秋雲「まあ、それなりには。で、ほかの鎮守府の同型艦……同じ秋雲たちに誘われて、一緒にサークル作って同人誌作ってたんですけど」

戦艦水鬼改「ドウジンシ?」クビカシゲ

秋雲「んっとねえ、同好の士っていうか、趣味が同じ人が集まって作る本のことなんですけど」

秋雲「あくまで内輪で、自分たちが作りたい趣味の本を自分たちのために作っちゃう感じ?」

戦艦水鬼改「本ヲ作ルノカ……楽シイノカ?」

秋雲「そりゃもう! みんなでひとつの本を作るって、それまでやったことなくって!」

秋雲「こう、モノが出来上がると、やり遂げたなあ、って感じで感動もひとしおで!」

秋雲「で、次はもっといいもの作ろう! ってみんなでまたワイワイやりだすんだよねぇ」ニヒヒッ

秋雲「……で、そういう楽しい期間がそれなりにあったんだけど、最近それが楽しいと思えなくなっちゃって……」

提督「ふーん。なにかあったのか」

秋雲「……疑問に思うようになっちゃったんですよ。私って、こういうのが描きたいんだっけ? って」

提督「? どういう意味だ?」
704: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:11:16.01 ID:eLSxtmOxo(10/25) AAS
秋雲「うーん、なんて言えばいいかなぁ……絵を描くことは好きなんだけど、なんか、これじゃない? みたいな?」

提督「よくわかんねえな……?」

秋雲「自分でもよくわかってなくて、うまく説明できないんですよー。このわけのわからない違和感のせいで、どうにも集中できなくて」

秋雲「で、それ以来、自分が思うように絵が全然描けなくなっちゃいまして。今も大絶賛スランプ中!」アタマカカエ

秋雲「だから一度絵を描くのをやめよう、絵から距離を置こう、って考えて。本業の出撃に影響出ても嫌だしさ?」

提督「……まあ、海軍に所属する艦娘としては正しいな」

秋雲「それで、サークル活動もお休みしようと思って、みんなに相談したんだけど……それがすっごい勢いで猛反対されて!」

大和「どうして反対されたんです?」

秋雲「それもわかんないの。なんか、辞めるのがもったいないとか、とにかくすっごい引き留められたんだよねぇ……」

戦艦水鬼改「辞メル? ソノ、サークルカラ、抜ケルノ?」

秋雲「うん。今の私はなんにも描けないんだから、サークルに残っててもしょうがないと思うのよ」

秋雲「勿論、みんなにはいろいろお世話になったから悪いなあって思ったし、引き留めてもらったりもして嬉しかったんだけど」

秋雲「みんなの役に立てない以上は、そこに居座ってもしょうがない気がしてさ。そもそも、絵から距離を置きたかったわけだし」

提督「で、辞められなかったから家出ってか?」

秋雲「いやぁ、結果的にはその通りなんだけどぉ、そうなるまでに葛藤とか、いろいろあったのよー?」
705: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:12:00.80 ID:eLSxtmOxo(11/25) AAS
秋雲「ほら、どうせ残るならなにかしら活動の役に立ちたいと思うじゃない? でも、私、戦うのと絵を描く以外はすっごい苦手でさ?」

秋雲「ストーリーを作るのなんかも全然だし、じゃあ何かサポートできるか、って言われても……私には絵しかなかったからさ」シュン…

秋雲「本を作るって目標があるのに、私だけ何もしてないってなると、いたたまれないし気まずいし、そこにいるだけで罪悪感がひどくって」

秋雲「一度、絵から離れたら、何か違うものが見えるかも、って考えもあったし、全部手放してすっきりしたかったってのもあったの」

秋雲「なのにしつこく引き留められて、だいぶ神経すり減らされちゃってさあ……それでますます厭になっちゃったっていうか」

秋雲「絵を描くこと自体は好きなはずなんだけど、全然楽しいと思えなくなっちゃって。ストレスで手が震えて出撃にも影響出るくらい」

戦艦水鬼改「重症ネェ」

秋雲「もー、そのくらい本当にやばかったから、ある日、絵を描くのも辞める覚悟でサークルから脱退します! って連絡したのよ」

秋雲「そんでスマホも連絡先全部拒否って電源落として、道具も机に全部しまって鍵かけて! 潔く、漫画のことは忘れよう、って!」

秋雲「そうやって、全部封印した矢先にうちの良提督が、サークルのみんなから漫画描く依頼を受けてきちゃってさあ……」ガクーッ

大和「ええ……?」

戦艦水鬼改「ソイツ、ナニヤッテンノ……?」

秋雲「ええ、なにやってくださりやがってんだって思いましたよ……良提督にサークルのことを話してなかった私も悪いんだけど」
706: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:12:47.10 ID:eLSxtmOxo(12/25) AAS
秋雲「それでもさ、私がどうしても描けないから辞めたいんだって訴えれば、良提督が味方になってくれると思ってたのよ」

秋雲「それがさ!? 私が描けないから離れたいって言ってんのに、みんなが褒めてたから描いたほうがいいとか言って私の話を聞いてくれないんですよ!」

秋雲「才能がもったいないとかみんなと一緒に活動したほうが幸せとか! そんな外からの声よりこの秋雲さんの切実な訴えに耳を傾けていただきたいんですけど!?」

秋雲「君のためを思ってとか美辞麗句並べてるけどそれどう考えても引き受けた手前引っ込みがつかないから私に折れろって感じの保身から来てるやつじゃないですかねえ!!?」ウガー!

大和「……」アタマオサエ

提督「肝心な時に役に立たねえなそいつ……」

戦艦水鬼改「ソイツ、駄目ナコトシカ、シテナクナイ……?」

秋雲「そうなの!! ほんっと、それダメなやつで! マジで味方から背中を撃たれるってやつでさあぁぁ!」ナミダジョバー!

秋雲「だいたいなんで提督が海軍の本来のお仕事より、趣味のサークルのお手伝いを優先するよう自分の部下に説得しちゃうのよ!?」

秋雲「普通逆じゃないの!? 提督としての自覚ある!? それとも秋雲さん艦娘として戦力に数えられてない!?」ウワァァァ!

秋雲「……ということがありまして。その流れで出撃しなくていいよと戦力外通達されて主砲も魚雷も取り上げられたのが何日か前」ハイライトオフ

大和「えっ」

秋雲「ぼけーっと海を見てたところまでは覚えてたんだけど、なんか気が付いたら海にいて」

戦艦水鬼改「アンタモ、ナニヤッテンノ……」

秋雲「よくわかんないうちに魚雷貰っちゃって、航行できずにあの岩場に流れ着いて、いまココ! って感じ? うふへへへへ」

提督「躁鬱の差が激しいな……」
707: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:13:45.81 ID:eLSxtmOxo(13/25) AAS
秋雲「いひっ、いやもう、こうやって整理して話してたら、あー秋雲さん帰りたいって思ってないんだなーって心境が確認できちゃってさあ」

秋雲「てゆかもうこれ脱走じゃん。秋雲さんてばもう一巻の終わり? 馘で済む話じゃないよね? 物理的に艦首が飛ぶよね?」

戦艦水鬼改「普通ナラ、ソウカモシレナイワネェ」

秋雲「やっぱりぃ? そんなことならさっさと三途の川を渡っとけば良かったかなあ……」グンニョリ

大和「……提督、秋雲さんから事情を聞く限りは、良提督の対応に問題があるように思えますね」

提督「ま、俺たちが何を言ってもしょうがねえ。改めて訊くか、おい秋雲」

秋雲「ぁい?」

提督「お前はこれからどうしたい? 死にてえのか生きてえのか、どっちだ? お前の、望みはなんだ?」

秋雲「望み……望みかあ……」ボンヤリ…

大和「……」

戦艦水鬼改「……」

秋雲「あたしは……艦娘として、普通に出撃したい、っていうのと……やっぱり、絵が、描きたいなー」

提督「絵?」

秋雲「うん。絵を描くの辞める、って、その場で言いはしたけど……やっぱり、あたし絵が好きなのよ」

秋雲「いま、自分が何がしたいか、って単純に考えたら、やっぱり、紙と鉛筆持って、あたしの好きに描きたいっていうか……」
708: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:14:30.64 ID:eLSxtmOxo(14/25) AAS
提督「好きなものを描いてたんじゃねえのか?」

秋雲「うーん、最初は嫌じゃなかった気がするけど……今はもうわかんなくなっちゃった」

戦艦水鬼改「……何ガ違ウノカシラ」

秋雲「えっとねえ……これまでは、みんなでお話を考えて、構想を練って、それをわーっと絵にしていく、って感じだったのよ」

秋雲「ずーっと机に向かって描いてたから息が詰まっちゃって……それで気分転換に外に出て、その辺の草花描いたりしてたんだよね」

秋雲「でさ、ここもロケーションすっごいいいよねー。オープンテラスで、花壇があって、水路があって……すっごい綺麗」

提督「……まあ、ここに住んでる住人たちのおかげで、綺麗にしてるからな」

秋雲「こういう景色を描き残したいなあ……って、ぼんやり眺めてて思ったの。水の音や、風やにおいを感じながら描けたら幸せだなーって」

大和「ということは、秋雲さんは漫画家ではなく風景画家を志望している、と……?」

秋雲「あ、ああ……それ! それかも!」キラキラッ!

秋雲「うわあああ、なんか見えてきた! ばーっと、私のやりたいことが目の前に広がってきたー!!」

秋雲「描きたい! 紙と鉛筆と消しゴムと肥後守が欲しい!! 出来ないんなら涙で床板を濡らしてその水で絵を描いてやるー!」ウオオー!

戦艦水鬼改「……ヒゴ?」

提督「肥後守っつう折り畳み式の小刀があるんだよ。今の話だと、鉛筆削るのに使いてえんだろ」
709: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:15:15.73 ID:eLSxtmOxo(15/25) AAS
朧「涙で絵を描くってところは雪舟ですね」スッ

秋雲「うおぅ!? お、朧もいたの!?」

朧「……なに? 朧がいたらおかしいの?」ムッ

秋雲「いやいや、そうじゃなくて、確かに言い方悪かったけど! そこはほんとごめん!」ワタワタ

秋雲「てかさ、この島、深海棲艦がたくさんいるから、そんな島にも朧がいるのがびっくりでさー! 朧は大丈夫? 元気なんだよね?」

秋雲「……うん、いま冷静になったけど、すごいとこだよね、ここ。なんで私、戦艦クラスの鬼級の隣で優雅にコーヒー飲んでるの?」シロメ

泊地棲姫「気絶シテナイデ、冷メナイウチニ、コーヒー飲ミナサイ」

秋雲「アッハイ、アリガトウゴザイマス」シロメ

提督「……中将、与少将。とりあえず奈准将の艦娘たちは、海軍まで送り届けてもらっていいか?」

与少将「ん? おお、こっちの艦娘はわしらに任しとき。で、そっちの秋雲は、時間を置いてから迎えに来るとええんか?」

提督「いや、秋雲のことは、こっちから連絡するまで秘密にしておいてくれねえか? 特に良提督には知られたくねえな」

秋雲「!」

与少将「……んむ、ええじゃろ。わしも傍から聞いてて、良提督はどうもええ格好しぃのケがあるように思えるけえの」

与少将「下手に知らせたら、自分の名誉回復のために出しゃばってくるとしか思えんし、最悪この島に内緒で押しかけてきそうじゃな?」

提督「だよなあ……やっぱりそう思うか?」
710: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:16:00.93 ID:eLSxtmOxo(16/25) AAS
与少将「部下の不満に耳を傾けず、余所からの頼みごとを聞いて無理を強いちょるようじゃ、他にも問題ぶち起こしてそうじゃな……」

与少将「とにかく、秘密にするのは決まりじゃけえ、葛城たちは、この島の秋雲のことを口外せんようにな。ええな?」

葛城「は、はいっ」

提督「悪いな、そうしてもらえると助かる」

泊地棲姫「ナカナカ理解ノアル将官ネェ。ソウイウ人間バカリダトイインダケレド」

与少将「お前たちが良い隣人なら、わしらもそうあるべきじゃろ。わしこそ、提督がここまで善人だと思わんかったぞ?」

提督「善人? 俺がか?」

与少将「妖精に育てられた、と聞いてからは納得しちょるがの。人間嫌いと言う割に他者に対する配慮が行き届いちょる」

与少将「泊地棲姫も提督を信頼しておるようじゃが、この男のそういうところが気に入ったんじゃろ?」

泊地棲姫「ソウダッタカナ……」

与少将「む、違うのか?」

提督「……何訊いてんだお前。子姑根性出してんじゃねえよ」

与少将「わしは単純に仲良くなったきっかけを知りたいだけじゃ」

泊地棲姫「キッカケカ……強ソウダッタカラ、ダナ」

与少将「強そう?」
711: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:16:45.95 ID:eLSxtmOxo(17/25) AAS
泊地棲姫「私ガ攻メ込ンダトキノ艦娘タチハ、トンデモナイ気配ヲ纏ッテイタカラナ。ソレヲ纏メテイタ提督モ、コンナ姿デハナカッタ」

提督「あー……そうか、俺が泊地棲姫と初めて会ったときは、半分深海棲艦の姿だったもんな」

泊地棲姫「強イモノニ従ウノガ、我々深海棲艦ノ常ダガ……二度目ニ会ッタトキハ、人間ノ姿ヲシテイタカラ、少シ驚イタ」

泊地棲姫「ツイデニ、頭ヲ掴マレタノモ、アンナニ痛イ思イヲシタノモ、ソノアト優シクシテモラッタノモ、全部初メテダッタ……」ポ

戦艦水鬼改「思ワセブリナ、言イ方ヲスルナ」

与少将「提督、泊地棲姫の頭を掴んだんか……?」タラリ

提督「ああ。ちょっとあんまりなことを言い出すもんでな」

与少将「ようけ無事じゃったのぉ……」

秋雲「いやいやちょっと待って、なんで私、フリフリエプロン着た泊地棲姫にコーヒー淹れてもらってるの? こんなの絶対おかしいよ」シロメ

泊地棲姫「マダ順応デキテナイノカ」

提督「ま、しょうがねえんじゃねえか。こんな状況、来てすぐ受け入れられる艦娘も、そうそういないだろ」

戦艦水鬼改「……最上クライカシラ?」

朧「ああ、確かに、最上さんはすんなり受け入れ過ぎと言うか、図太いというか……」

大和「そうですねえ」クスッ
712: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:17:30.92 ID:eLSxtmOxo(18/25) AAS
夕張「私も信じたい気持ちと信じられない気持ちがせめぎあってて混乱するわ……正直、こんな状況おかしいと思うんだけど」アタマカカエ

天津風「そうよね、こうやって話し合えるって言うのなら、なんで私たちは戦わなきゃいけないのかしら……」

提督「ん? なんで、って、そりゃ話し合えないからだろ? わかってんじゃねえか」

天津風「そ、そういうことじゃなくて……!」

提督「そういうことだよ。人間だってそうじゃねえか。話し合いで解決できないから、同じ人間同士でも争うし殺しあう」

提督「さっきの秋雲の話だって、他人が自分の理想や都合を押し付けてくるから、秋雲が苦しんだって話だぜ?」

天津風「……!」

提督「俺たちも、話が通じない奴は、人間も深海棲艦も、艦娘であっても関係なくぶっ潰すつもりでいるんだ」

提督「お前たちが出会った深海棲艦たちも、話し合うつもりのない、手前の感情を押し付ける連中ばっかりだった。それだけの話じゃねえの?」

天津風「そ、そうかもしれないけど……そうだって言うんなら、この島の住人はそういう深海棲艦とは違うっていうのね?」

提督「俺からは島に住むならそうお願いしてるが、俺は人間と仲良くしたいと思ってねえ。争わないように疎遠になりてえんだ」

天津風「……なんなのよ、それ」ジトッ

武蔵「そういう反応も仕方ないとは思うが、提督自身が人間に嫌な思いばかりさせられ続けていたからな」

武蔵「この島の艦娘も、捨て艦だけじゃなく、冤罪を受けたりセクハラされたりと、人間に嫌な思いをさせられた艦娘ばかりだ」

武蔵「提督は、そういう人間たちから艦娘を庇い続けてきたのだからな。人間嫌いに拍車がかかってもやむをえまい」

葛城「さっきの話につながってくるわけね……」
713: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:18:16.10 ID:eLSxtmOxo(19/25) AAS
秋雲「ちょっと待ってなに今の話!? って言うことは朧も捨て艦とかにされたってこと!?」ガタッ!

朧「……まあ、朧はそうだったけど」

秋雲「よく生きてたねえ! ううっ、本当に良かったよぉ!!」ダキツキッ

朧「ちょっと、そういうの鬱陶しいから、やめて」ヒキハガシ

秋雲「……オボロガ、冷タイヨ……」ヨコタワリ

提督「……朧、秋雲とはなんかあったのか?」

朧「艦のときに、一緒に五航戦の護衛についてただけです」

提督「なるほど。知った顔がいりゃあ、頼りたくもなるか」

春風「話が少しそれましたが……こちらの司令官様の意図としては、人に虐げられた艦娘や、厭戦的な深海棲艦の保護のため……」

春風「人間と距離を置くべく、武器を置いて話し合いをなさっている、という理解でよろしいんですね?」

提督「まあ、そんなとこだな。うちの連中を面倒な目に遭わせたくねえ。外と関わって嫌なことに巻き込まれるのは最低限にしたい」

天津風「……だからこの島の中は、深海棲艦がいるのに穏やかな風が吹いてるのね。ほとんどの特別海域って、暗雲が立ち込めてるし」

瑞鳳「こっちのお菓子もおいしいし……この島、なごみ成分が多すぎよ?」モグモグ
714: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:19:00.83 ID:eLSxtmOxo(20/25) AAS
間宮「あら、泊地棲姫さんの焼いたクッキーも好評みたいですね」

瑞鳳「えっ、そうなの!?」

泊地棲姫「フフフ、当然ダ」テレッ

あきつ丸「こう言ってはいけないかもしれませんが、親近感がわいてしまうでありますな」

葛城「言っちゃってるじゃない……」

那智「以前はここに住む深海棲艦はル級だけだったんだがな。随分と賑やかになったものだ」フフッ

中将「……提督は、本当に良い仲間に恵まれたな。この島を戦いに巻き込まぬよう、儂も働かねばならん」ウム…!

神州丸「……ときに、少将殿? あの手紙は、提督殿に渡したでありますか?」

与少将「む! いかんいかん、忘れとった! 提督! お前さんに個人的な手紙が届いちょるぞ!」サシダシ

提督「ん? 手紙? 誰からだ……宛先が俺と、吹雪?」ウケトリ

朧「……提督、この人、もしかしてあの吹雪の……」

提督「あいつか……! 朧、悪いが吹雪を呼んできてくれるか?」

朧「はいっ!」
715: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:19:45.96 ID:eLSxtmOxo(21/25) AAS
 * それからしばらくして 食堂内 *

吹雪「お待たせしました司令官! 吹雪をお呼びですか?」

提督「おう、懐かしい奴から手紙が届いたぞ」

吹雪「懐かしい? 誰でしょう」

朧「あれ、まだ封を切ってなかったんですか?」

提督「宛先が俺と吹雪だからな。見るなら揃って見ないと駄目だろ。ほら吹雪、早く隣に座れ」チョキチョキ

吹雪「は、はい! それで、この手紙は……」チャクセキ

提督「吹雪からだ。S提督んとこのな」

吹雪「S提督の!? あの改二になってた吹雪ちゃんからですか!?」

提督「ああ。差出人の名前は吹雪じゃねえけど……」ガサッ

 (封書の中から出てくる数枚の写真と手紙)

吹雪「!! これは……この人がS司令官です!! うわあ、懐かしい……!!」ウルッ

提督「……隣にいる女、吹雪に似てるな?」

吹雪「ほ、ほんとですね……でも、明らかに私や、あの吹雪ちゃんよりずっと大人に見えますよ」

与少将「ちょいと邪魔するぞ……ああ、解体された吹雪っちゅうんは、この娘じゃったか」

提督「解体!?」
716: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:20:30.72 ID:eLSxtmOxo(22/25) AAS
与少将「艦娘の解体処分には2種類あるんじゃ」

与少将「艦娘をまるっと艦として全部処分する解体と、艦娘の娘の部分を切り離して艦の部分だけを解体する解体とな」

提督「そんなことできるのか……」

与少将「これも妖精さんのオーバーテクノロジーっちゅう奴じゃ。後者はわしも数回しか事例を知らんがの」

与少将「この吹雪の場合は、後者を選んで、かつ、成人年齢にまで成長した状態にしてもらったと聞いちょるぞ」

提督「……」マユヒソメ

与少将「この制度を利用すれば、提督が危惧してそうな『悪いこと』もできるんじゃが……」

与少将「妖精さんたちの厳しい審査を通らんと、切り離すタイプの解体はできんけえ、安心せえ」

提督「妖精が審査するのか……なら、信用しても良さそうだ」

吹雪「司令官、早くお手紙読みましょう!」

 *

提督「……」

吹雪「……良かった、二人とも幸せそうで」グスッ

吹雪「差出人の名前が全然違ってたのも、艦娘を辞めた時に名前を変えたからだったんですね……!」

提督「まさか艦娘辞めてS元提督と二人で暮らせてるなんてな。大団円じゃねえか、こうなりゃこっちからは何も言うことはねえ」

吹雪「何を言ってるんですか! お祝いの一言くらい返してあげないと!!」

提督「そうか……?」
717: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:21:15.79 ID:eLSxtmOxo(23/25) AAS
朧「提督、こっちの吹雪も元気だって、伝えてあげてもいいと思いますよ?」

提督「……まあ、そういうことなら……」

吹雪「司令官、私たちも写真撮りましょうよ! 送ってあげて、私たちも元気だって、安心させてあげましょう!」

提督「わかったよ……青葉呼んで撮ってもらうか」アタマガリガリ

朧「……艦娘って、辞められるんだ……」

中将「艦娘にも、戦う以外の違う人生があっても良いだろう。軍人も死ぬまで戦い続けるわけではない」

朧「!」

中将「君も、艦娘を辞めたいと思ったのかね?」

朧「……いえ、朧は、ずっと艦娘のままでいると思います」

中将「ふむ……そうかね」

朧「はい。辞める気はないんですけど……艦娘を辞めて人間になるとき、名前って変えられるんですか?」

中将「ああ、変えられるようにした。その理由の一つに、彼女たちが元艦娘であることを知られないようにするため、というものがある」

中将「過去に、海軍の内情を探ろうとした輩が、元艦娘の女性を拉致しようとした事件があった」

中将「その時は幸いにもその女性が返り討ちにしたのだが、名前がそのままでは危ないということで、好きに名乗ってもらうことになったのだ」

朧「そうだったんですか……」
718: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:22:16.13 ID:eLSxtmOxo(24/25) AAS
中将「それに、そうでなくとも、戦争が終わるなどして仮に退職者が多数現れれば、同じ名前の娘が何人も現れることになってしまうし」

中将「たとえ同じ艦であっても、別個体である以上、個性がある。人間になろうとする事情も様々であろう」

中将「新しい人生を歩むのだ、いつまでも艦娘であったころの名前に縛られていることもあるまい」

朧「……それで、あの吹雪は『マナツ』なんて名前に変えたんですね」

朧(たぶん、あの司令官が轟沈させた『吹雪』のことを、思い出させないために……かな)

 * 夕方 *

伊8「戻りました」

提督「よう、お疲れ。遠くまで出張ってくれてありがとな。ちょっといいか?」テマネキ

伊8「はい?」

提督「中将の船を超長距離魚雷で狙ったとき、船の周囲以外に艦娘はいたか?」ヒソヒソ

伊8「いえ、艦隊はいなかったと思いますけど」ヒソッ

提督「もし、ひとりだけ、ぽつんといたら?」

伊8「単艦ですか? ……もしかしたら、感知漏れの可能性はあります」

提督「そうか……じゃあ、秋雲を巻き込んでても仕方ねえか」

伊8「??」
719: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:23:15.99 ID:eLSxtmOxo(25/25) AAS
ということで、今回はここまで。
720: [sage saga] 2024/09/09(月) 11:18:06.48 ID:UXEBM6NC0(1) AAS
解体の後…全解体と人間化両方採用してるSSは初めて見た。
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