【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その3だよ」【×影牢】 (759レス)
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677: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:27:01.37 ID:1RqAqzjro(9/26) AAS
??→軍人「か、艦娘か!? おーい! た、助け」

 スマッシュフロア<バイン!!

軍人「うわああああ!?」ブットバサレ

 スパークロッド<ニュッ バリバリバリー!

軍人「ばばばば!?」バリバリバリー!

 フライングケーキ<バシュッ!

軍人「ぶぼっ!?」ベチャア!

戦艦棲姫「……チョット、アノケーキ、モッタイナイジャナイ」

提督「あー、あれもそういう罠なんだよ」

戦艦棲姫「アンナコトスルクライナラ、私タチニ食ベサセナサイヨ」

大和「鎮守府に併設した食堂にお越しになればいいと思いますよ?」

如月「一緒にお茶やコーヒーも楽しめますし」

戦艦棲姫「アラ、ソウナノ?」

戦艦水鬼改「……チョット、ソンナ話ヲ、シテル場合?」タラリ

提督「大丈夫だよ、ちゃんと次が控えてる」
678: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:27:46.40 ID:1RqAqzjro(10/26) AAS
軍人「ぐぶぶ……な、なんだ、何も見え」ヨタヨタ

 ハンギングチェーン<ガチン!! キュルキュルキュル…

軍人「痛っ!? な、なんだ……うわああ、なんだなんだ!? お、おろしてくれえ!」サカサヅリ

提督「……うーん、こいつを含めて、敵は残り3人、ってとこか?」

ニコ「そんな感じだね。他の人間たちは、みんなが始末してくれてるよ」スッ

提督「気配で敵の数が分かるとか、なんかいよいよ化け物じみてきたな、俺」

戦艦棲姫「……チョット、コノ娘、イキナリ現レナカッタ?」

大和「ニコさんは神出鬼没なんですよ」

戦艦水鬼改「提督ノ、ストーカー、ダカラネ」

ニコ「お姉ちゃんだよ!?」ジトッ

軍人「お、おおい! 無視してないで、助けてくれえ!!」ブランブラン

戦艦棲姫「助ケナイノ? オ前ト同ジ服ヲ着タ、仲間ミタイダケド?」

提督「仲間? 勘弁してくれよ。あいつ、余所の女提督に振られた腹いせに、鎮守府の救援要請を握り潰して見殺しにするような奴だぞ?」

戦艦棲姫「エェ……」ヒキッ

大和「それはもしや、先日お話しされていた、暁さんのいた鎮守府の……!?」
679: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:28:31.32 ID:1RqAqzjro(11/26) AAS
軍人「お、おおーい! 聞こえてないのか!? 早く助けてくれええ!」

提督「ったく、うるせえな。聞こえてるから黙ってろ」

軍人「なっ……黙ってろはないだろう!? 助けてくれ!」

提督「知るかよ。手前の感情だけで鎮守府ひとつ潰しておいて、それで自分のときだけ助けてもらえると思ってんじゃねえ」

軍人「い、いったい何の話だ!?」

提督「とぼけんな。以前お前が救援要請を握り潰したせいで鎮守府がひとつ陥落してんだぞ。I提督って女提督のこと、忘れたか?」

軍人「……!!」

戦艦水鬼改「今ノ反応……ソノ女提督ノコトヲ、知ッテルミタイネ」

提督「……へえ、お前、それで妻帯者なのか。じゃあ、お前の家族にこの話を伝えておくか。死んでも悲しまないようにな」

軍人「なっ!? そ、それだけはやめてくれ! 頼む! お願いだ!!」

提督「じゃあ助けねえけど、いいのか」

軍人「い、いや、助けてくれ!」

戦艦水鬼改「提督ハ、アイツヲ、カラカッテル?」

如月「そうみたいね。助けるつもりはないでしょうから」
680: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:29:16.29 ID:1RqAqzjro(12/26) AAS
戦艦棲姫「アイツハ、逆サ吊リニシテ、終ワリナノ?」

提督「いや、まだ途中だよ。いま、あいつのお仲間を連れてきてる最中だ」

戦艦棲姫「仲間?」

 メガヨーヨー<ズガァン!

囚人「ぎゃああ!!」ブットバサレ

戦艦棲姫「!」

 ペッタンアロー<パシュ!

囚人「ひいい!!」ペタッ グイーーン

 スプリングフロア<ズバーン!

囚人「ぐげっ」ブットバサレ

 クレーン<ガシッ!

囚人「う、うげえええ!」ツリアゲラレ

戦艦棲姫「スゴイ方法デ、人間ヲ運ンデキタワネ……ソレデ、アイツガ仲間ナノ? 海軍ノ人間ジャナイミタイダケド」

提督「仲間っつうか、同類だな。あの軍人が見殺しにした女提督の母親を殺したのが、あの囚人だ」

大和「本当ですか!?」

提督「魔神の力であいつの過去を見てるんだが、どうやら立件されてねえだけで、父親も殺したみたいだな。Q中将の言ってた通りだ」

如月「なんてこと……!」
681: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:30:01.58 ID:1RqAqzjro(13/26) AAS
提督「そういうわけなんで、同類のあのじじいも一緒に始末してやろうと思ったんだ。パメラ!」

 スローターファン<ギュイイイイイ!

戦艦棲姫「ナンダ、アノ風車ハ」

提督「近づくなよ? あれは近づいたものを引き寄せて切り刻む罠だ」

戦艦水鬼改「ソレヲ、アノ吊ルシタ人間タチノ下ニ置イタ、トイウコトハ」

 ハンギングチェーン<パッ

 クレーン<ポイッ

軍人「いぎゃああ!!」ザクザクザクー

囚人「ぎええええ!!」ズバズバズバー

如月「ああ……そうなっちゃうのね」

戦艦棲姫「吸イ込マレナガラ、切リ刻マレテイルノカ……」

提督「ああ。けど、あいつらは、あんなもんじゃ済まさねえ」

 ギルティランス<ズバッ!

軍人&囚人「ぐぎゃっ!!」ドスドスドスッ

 メガバズソー<ゴロゴロゴロッ!

軍人&囚人「ぎゃあああ!!」ズガシャーン

 ヘルレーザー<ズビーーーム

軍人&囚人「があああ!?」ズバーーー
682: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:30:46.36 ID:1RqAqzjro(14/26) AAS
大和「なんとも痛そうな罠が連続で……」

ニコ「ふふっ、残虐系メディウムが大活躍だね」

提督「さて、そろそろ死んだか?」

軍人「い、いやだ……死にたく、な……」ガクッ

囚人「……う、ううう……」

提督「なんだ、じじいのほうがまだ息があるのか。それなら……サム、いるな?」

 ヴォルテックチェア<ガシャッ!

囚人「ぐえっ! ……こ、これは、電気椅子か……こんなところで、俺は、殺されるのか……!」

提督「なんだお前、嬉しそうにしやがって。気持ち悪いな」

囚人「自死では駄目なんだ……殺されれば、あの世で、また、彼女に会える……ふ、ふふふ」

提督「彼女? ああ、そいつは無理だぞ。お前は天国にも地獄にも行けねえからな」

囚人「……どういう意味だ」

提督「見ろよ」

 (こと切れた軍人の屍が、光の粉になりながら徐々に消えていく)

囚人「!?」
683: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:31:31.25 ID:1RqAqzjro(15/26) AAS
提督「普通なら、人が死ねば、その肉体は土に還り、その魂はあの世に向かう。が、俺たちが始末した人間どもは、そうはならない」

囚人「な、何を言っている? お前なんかに、死後の世界の何が分かるんだ……!」

 ズズズズ…

提督→魔神提督『そりゃこっちの台詞だ。ただの人間のお前にこそ、この世の何が分かるんだ?』

囚人「う……ば、ば、化け物!?」

魔神提督『もうひとつ訊こう。お前は、この俺をなんだと思ってる? 答えてみろよ』

囚人「し……知らない! な、なんなんだ、お前は!?」

魔神提督『それならひとつだけ教えてやる。俺たちは、殺した連中の肉体も魂も、俺たちの好きにできるんだ』

魔神提督『お前の魂は天国へも地獄へも向かうことなく、この場で俺たちに分解されて消える。さっき光りながら消えた奴みたいにな』

囚人「なっ!? そ、そんなことがあってたまるか!!」

魔神提督『お前が何を言おうとお前の未来は変わらない。お前の考えも知ったことか。とっとと餌になって、世界から消えてしまえ』ギロリ

囚人「ひっ!? い、嫌だ!」ガシャガシャッ

 ヴォルテックチェア<バリバリバリバリ!!

囚人「ぎゃあああああ!? 助けて……助けてく」

 フォールニードル<ガラララ…ズシィィィンン!!

囚人「」グシャ…!
684: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:32:16.42 ID:1RqAqzjro(16/26) AAS
 ズズズズ…

魔神提督→提督「……これで、あとひとりか?」

ニコ「うん。でも、みんなが頑張ってくれてるから、すぐに片付くと思うよ」

提督「そうか」

戦艦棲姫「ナカナカ、エグイワネェ……」

提督「そうか? 残念なことに、死体は見慣れてるから、そうは思わなかったんだが」

戦艦棲姫「ソッチジャナクテ、アナタノ姿ノホウヨ。艦娘タチハ、見慣レテルノ?」

如月「うーん、司令官の姿そのものは、あまり気にしなかったけれど。今の人を怖がらせたかったんでしょう?」

提督「まあな」

大和「私はどちらかと言うと死体のほうが……」ウーン

戦艦水鬼改「スグ消エテクレルノハ、良心的ヨネ?」

ニコ「……それを良心的と言っていいのかな?」

如月「それよりも、司令官は大丈夫なの? 無理してない?」

提督「ん? 別に何ともないが……」

ニコ「無理、って、どういう意味かな?」
685: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:33:01.41 ID:1RqAqzjro(17/26) AAS
如月「さっき、I提督のかたきを取ったときとか、魔神の姿になったとき、司令官は全然笑ってなかったでしょ?」

如月「恨まれて当然ってくらい悪い人たちが相手なのに、詰ったり辱めたりしてても、なんていうか、ずっと不機嫌そうで……」

大和「わかります。なんとなく、気が晴れてないと言いますか……」

戦艦水鬼改「……アア、言イタイコトガ、ワカッタ。不快ナ相手ヲ殺シテテモ、愉シソウジャナイ、ッテコトネ」

大和「ええ。こう言っていいのかわかりませんが……仇を取っているわけですし、悪い気分にはならないのではないかと」

戦艦水鬼改「以前、コノ島ニ侵入シタ人間ヲ私ガ殺シタトキモ、ナントモ思ワナカッタ、ッテ言ッテタワヨネ?」

大和「えっ!? いつの話ですか、それ!?」

提督「……テレビ局の連中が死んだときの話か?」

如月「あれ、ル級さんが関係してたの?」

戦艦水鬼改「……提督、知ラセテナカッタノ?」

如月「少なくとも私は初耳よ?」

提督「如月だけじゃなく、誰にも話しちゃいねえよ。誰かに話すようなことでもねえし、あれはあいつらの自己責任だ」

戦艦棲姫「変ワッテルナ……オ前ハ、自分ガ憎イ相手ヲ殺シテモ、ナントモ思ワナイノカ?」

提督「いいや? さすがに、俺がさんざん嫌がらせされた大佐やJ少将が相手だったら、ざまあみろとも思うんだが……」

提督「いま始末した連中に関しちゃ、俺は話を聞いて不愉快になっただけの、ほぼ他人だ。俺にとっては、本当にどうでもいい奴らだ」

大和「それで、感情的になれなかった、ということなんですか」
686: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:33:46.90 ID:1RqAqzjro(18/26) AAS
提督「最後の奴だけは、絶望させたかったんで回りくどいことしちまったけどよ……」

提督「まあ、I提督とその両親の事情も知らないわけじゃないし、それを知ってあいつらを始末しようと考えたのも間違いはない」

提督「が、それで俺がそいつに怒りやらをぶつけるのは、筋が違うと思ってる。あいつらの気持ちを、俺が勝手に解釈するわけにはいかねえよ」

提督「それにどうせ、あいつらを殺せばI提督たちが喜ぶってわけじゃねえし……この世に戻ってくるわけでもねえしな」

如月「司令官……」

提督「ま、時雨や早霜みたいに戻ってきた例外もいるが、普通そういうことは起こらねえ。メディウムもそうだろ?」

ニコ「うん。メディウムも、無理して壊れたら消失する。ぼくたちがやっていることも、戦いだからね」

戦艦棲姫「……私タチハ、ドウナノダロウナ。艦娘ニ沈メラレテ、艦娘ニナッタ深海棲艦モ、ソレナリニ、イルラシイケド?」

戦艦水鬼改「ソウイウ話ハアルケレド、泊地棲姫ハ、ソウイウシーン、見タコトナイミタイヨネ?」

如月「逆に、艦娘が深海棲艦になったレアケースはあったわよね。ほら、この前、漂着してきた軽巡棲鬼の阿賀野さん」

提督「あいつもイレギュラーだよなあ……」

戦艦棲姫「ソウネ。普通、ナイワヨ?」

大和「なんと言いますか、この島に限って言えば、その普通じゃないことが割と普遍的に起きてませんか?」

大和「ル級さんが鬼級になったのもそうですし、駆逐イ級が人型になるのだって、普通あり得ないことでは?」
687: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:34:31.78 ID:1RqAqzjro(19/26) AAS
如月「確かに……」

戦艦水鬼改「言ワレテミレバ、ソウカモ……」

ニコ(……ぼくたちが、関わったせいかな?)ウーン

提督「そもそも、こんな顔ぶれが穏やかに話してる時点で普通じゃねえよな」

戦艦棲姫「ネエ、ソレハイイカラ、早ク残リノ人間モ片付ケナサイヨ。アト1人ナンデショ?」

提督「ああ、わかってるよ。多分こっちに……」

 タタタッ

イーファ「あ、ご主人様……!」

提督「イーファか? どうした、なにかあったのか」

イーファ「ううん、みんなが、もうすぐおしまいだから、ご主人様を呼んできて、って……」

 <イヤァァァァ!

戦艦棲姫「!」

ニコ「今の悲鳴で、人間狩りが終わったのかな? どこに潜んでたんだろう」

提督「よし、行ってみるか」
688: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:35:16.23 ID:1RqAqzjro(20/26) AAS
 * *

イーファ「こっちだよ。岩と岩の間に隠れてたみたい。ミュゼさんが見つけて、誘い出してくれたの」

女囚「」グチャァ…

提督「おお、見事にぐちゃぐちゃだな。もうこと切れてたか」

如月「お、女の人だったのね……何をした人なのかしら」

マルヤッタ「なんでも、シューキョーカンケーのサギシ? らしいじょ」

提督「お、マルヤッタか。お前がやったのか?」

マルヤッタ「とどめと言うか、駄目押ししたのがマルヤッタだじょ。実際にとどめになったのはシェリルだったかの?」

シェリル「ああ、あたしのシャウト……ヘルジャッジメントでしびれさせてやったのさ」ドヤッ!

提督「そうか、お疲れさん。これで全員だな?」

ニコ「……そうだね。この一帯で、人間の気配はもう感じないね」

戦艦棲姫「ソレジャ私ハ、モウ引キ上ゲテモ、イイワネ?」

提督「ああ、付き合わせて悪かったな。今度、この辺の門扉とか鍵の話をさせてくれ」

マーガレット「魔神様〜!」トテトテトテッ

如月「あら、他のところにいたメディウムのみんなも、戻ってきたみたいね」

提督「マーガレット、お前は走らなくていいぞ。またケーキ持ってコケたらいけねえし」

マーガレット「そんなにしょっちゅう転びませんよ!?」
689: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:36:01.26 ID:1RqAqzjro(21/26) AAS
戦艦棲姫「アナタダッタノネ、ソノケーキ」

マーガレット「あ、お話は聞いてました、あとでご馳走しますよ! いつも食堂で準備してますから!」

ミュゼ「あ゛〜、疲れたぁ。私も食堂でお茶してきまーす」

レイラ「ミュゼ、あなたまたテツクマデをそっちに置き忘れてるわよ?」

ミュゼ「えええ!? やだっ、ごめんなさい!」タタッ

ニコ「珍しいね、レイラがこんな岩場に来るなんて。色気がない場所は好きじゃない、って言ってたのに」

レイラ「ええ、ですが今回は、大人数相手の大舞台でしょう? 出ないわけには参りませんわ」

レイラ「それに、たまにはこういう荒々しいロケーションを味わうのも、悪くはありませんわね。次の舞台の参考にいたしましょう」フフッ

提督「シェリルやシャルロッテもそうだが、お前たちはいつも舞台にいるもんな。こういう場所でもちゃんと戦ってくれるのは助かるぜ」

シェリル「いいってことさ。あたしはどんな場所だろうと、あたしの歌を響かせてやるぜ!」

サム「では、お席は私がご用意いたしましょうか」スッ

提督「……」

ニコ「……そう言ってヴォルテックチェアを出したりしないよね?」

サム「おや。そのように疑いの眼差しを向けなくても良いのですよ? 大丈夫ですとも、フフフ……」

ナンシー「そんなことより、早く帰ってお茶にしましょ?」

ソニア「さんせーい!」

リンメイ「お風呂でもイイヨ!」

コーネリア「久々の大仕事だ。槍の手入れもしとかないとな」フフッ
690: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:36:46.33 ID:1RqAqzjro(22/26) AAS
ミーシャ「そういえば、アカネさんたちって、戻ってきてましたっけ……?」

アーニャ「大丈夫だよ、戻ってくるって、そのうち!」

パメラ「そのあたりのお仕事はニコちゃんがやってくれるでしょ?」

ニコ「……確かにそうだけどさ。ほら、みんなも一緒に探してきてよ。いま、鎮守府に戻っても、まだ人間がいるんだからね」

レイラ「あら、そうなんですの?」

イーファ「……くんくん、バナナのにおいがする。シャルロッテはこっちかな? ぼく、探しに行ってみるね」

シェリル「仕方ないな……魔神さん、あたしたちは少し時間を潰してから戻るよ」

 ゾロゾロ…

戦艦棲姫「メディウムハ、コンナニ大勢、潜ンデイタノカ」

提督「罠一種類につき一人だからな。15人も相手するとなったら、70人いるメディウムを総動員させて丁度いいくらいだ」

提督「しかも相手は10人が護送中の犯罪者で、5人が海外へ左遷させられる予定だった海軍の関係者だからな」

提督「全員堅気じゃねえから、全力で潰しに行かねえとこっちが痛い目見ちまう。やり過ぎるくらいでいいっつったのも、そういう理由だ」

戦艦棲姫「ソイツラ、何ヲシタノ?」

提督「ん? ええっと……犯罪者のほうは、殺人とか通り魔とか性的暴行とか、あとは政治犯とか、詐欺で数億盗んだとかいう連中だな」

提督「軍の関係者のほうは、パワハラで部下を自殺させたとか、横領とか、嘘ばっかり報告してた支離滅裂野郎とか……」

戦艦棲姫「ソンナ人間、生カシテオク必要アルノ?」

提督「簡単に殺せないから、人間どもも苦慮してんだよ」
691: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:37:31.24 ID:1RqAqzjro(23/26) AAS
戦艦棲姫「人間ノ法律ガ悪ルイノネ。サッサト作リ変エテシマエバ良イノニ」

提督「簡単に言うなよ……」

戦艦棲姫「簡単ニ言ウワヨ、他人事ダモノ。オマエナラ、ソンナ面倒ナコト、シナイデショウ?」

提督「……まあ、そうかもだけどな」

戦艦水鬼改「アラ、コノヒト、意外ト面倒ナコト、スルワヨ? 今回ノコノ騒ギダッテ、ワザワザ船ヲ……」

提督「余計な事言うな」クチフサギ

大和「それより提督! ひとまずこの場の確認も済んだことですし、提督は皆さんより先に戻って中将にご報告いたしましょう!」

如月「そうね。司令官は先に行ったほうがいいわ、大和さんと水鬼さんもね」

戦艦水鬼改「私モ?」

如月「ええ、水鬼さんも中将に会ってきたんでしょう? そうだとしたら、一緒に戻って顔を見せないと、ね?」

提督「……余計な事言うなよ?」

戦艦水鬼改「ワカッテルワヨォ」プー

提督「んじゃ、とりあえず行ってくるか。如月とニコに、この場を任せてもいいか?」

如月「ええ、大丈夫よ。ニコちゃんもいいわよね?」

ニコ「……しょうがないなあ。魔神様、ここはお姉ちゃんに任せて、行っておいで」
692: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:38:32.81 ID:1RqAqzjro(24/26) AAS
提督「助かる。ありがとな」

如月「ふふっ、どういたしまして」

ニコ「後でみんなも労ってあげてね?」

提督「ああ、勿論だ」

 スタスタ…

ニコ「……ふう……」

如月「? 溜息なんかついて、どうしたの?」

ニコ「いつも思うんだけど……これで、良かったのかな、って」

戦艦棲姫「ドウイウ意味?」

ニコ「本当なら、魔神様が人間と手を取り合うなんてこと、ないはずなんだ」

ニコ「それを、頭を下げて、約束を作って、僕たちと人間との間に『境界線』を引こうとしてる。ぼくは、どうしてもそれが納得できなくて」

ニコ「魔神様にとって、それは屈辱じゃないのかな。深海棲艦にとっても、そうじゃないのかい?」

戦艦棲姫「私ハ、人間ニ、頭ヲ下ゲルツモリハナイワ」

ニコ「君たち艦娘も……特に如月、きみにとっては、人間なんて救いようのないものだったんじゃないのかい?」

如月「……そうね。司令官に出会うまで、ずっと私は、地獄にいたような気分だったわ」

如月「その司令官が、人に対して頭を下げるのは、間違っているのかもしれない……」

如月「でも、司令官は言っていたじゃない。私たちの目的は、私たちの居場所を作ること。誰にも邪魔されない安住の地を得ること」

如月「司令官は、そのために、人間と話し合いを進めてきたのよ」

ニコ「……」
693: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:39:17.34 ID:1RqAqzjro(25/26) AAS
如月「ニコちゃんが納得できないのはわかるわ。私だって、そう思うときがあるもの」

如月「でも、司令官は、人間を知っているからこそ、私たちが戦わなくていいような、人間に関わらずに済むような手段を取ろうとしているの」

如月「それが、今の司令官の『戦い』なんだと思うわ……!」

ニコ「……ぼくたちこそ、魔神様のために戦ってるのに……」

如月「司令官も同じなのよ。ニコちゃんたちも、深海棲艦たちも、私たちも心配だから……みんなを守るために、司令官は動いてる」

如月「曽大佐の艦隊が来た時だって、そうだったでしょう? 司令官として、魔神様として、私たちと同じように、命を懸けたいのよ」

戦艦棲姫「……私ニハ、声ヲカケテ来ナカッタナ?」

如月「それは単純に、戦いに巻き込みたくなかったからじゃない? 私たちが引き起こしたからって考えてたんだと思うわ」

戦艦棲姫「……本当ニ、変ワッテルワネェ」

ニコ「魔神様が、命を懸けたいなんて……」

如月「私としては、そういう危険なことはやめて欲しいんだけど。ニコちゃんもそうでしょ?」クスッ

ニコ「うん……魔神様も、一緒に……か」ウツムキ

戦艦棲姫「……ネェ」ヒソヒソ

如月「?」

戦艦棲姫「アイツ、嬉シソウネエ?」ニヤリ

如月「ふふっ、そうねぇ」ニコニコ

ニコ「ちょっと、何の話!?///」カオマッカ
694: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/08/24(土) 23:40:07.57 ID:1RqAqzjro(26/26) AAS
今回はここまで。

>668
お褒めにあずかり恐縮です。
ほぼほぼ台詞で構成しているので、できる限り読んでわかりやすく、というのは心がけています。
695: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:04:31.35 ID:eLSxtmOxo(1/25) AAS
それでは続きです。
696: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:05:16.49 ID:eLSxtmOxo(2/25) AAS
 * 島の北東部 かつての砂浜の岩礁地帯 *

提督「さて、さっさと戻って中将に……ん? ありゃ誰だ」

 (何者かが岩場の上で海側に足を向けて、大の字になって寝転んでいる)

戦艦水鬼改「……艦娘ッポイナ?」

大和「艤装が煙を吹いてますね……ここに流れ着いてきた艦娘でしょうか」

秋雲(中破)「……ふえっ!? だ、誰!? って、大和さん!? と……どぇええぇえ!? 深海棲艦んん!?」

戦艦水鬼改「知ッテル艦娘カ?」

提督「いや、知らない顔だな」

秋雲「あれれー、おっかしいなぁー!? あたしってば、いつ沈んだっけ!? まだあの世には来てないはずなんだけどおお?」オメメグルグル

提督「なに寝ぼけてんだ。ほれ、お前はどこのどいつだ、何が望みだ、早く言え」

秋雲「ちょっとお!? そんなに立て続けに言われたってこっちにだって心の準備ってのがあんのよ!? ちょっと待ってってーの!」プンスカ!

提督「中破してる割には元気だな。早霜に似た服を着てるが、同型艦か?」

大和「いえ、夕雲型には似ていますが、彼女はその前の陽炎型ですね。形が似ているために、夕雲型の制服を着ているようです」

提督「ふーん……」
697: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:06:00.83 ID:eLSxtmOxo(3/25) AAS
秋雲「……うーん、三途の川の渡し守にしては、健康的な小麦色の肌の色をしてるなあ」マジマジ

秋雲「そしてその見慣れたその海軍の制服……もしかして、あなたどこかの提督さん? なんで深海棲艦が一緒にいるの?」

提督「それに答える前に、先にこっちの質問に答えろよ。お前、墓場島鎮守府って知ってるか」

秋雲「なにその推理小説にでも出てきそうな島の名前! そんな鎮守府あるの!?」

戦艦水鬼改「知ラナイノカ?」

秋雲「うん、初めて聞いたなあ。墓場島鎮守府……もしかして、あっちに見える建物がそうなの?」

大和「本来は××島鎮守府ですけれど、そちらの名前のほうが広まっていますね。とりあえず、あなたの名前と所属を訊いても?」

秋雲「あ、ごめんごめん、あたしの名は秋雲! 良提督鎮守府の秋雲さんだよー!」

戦艦水鬼改「ノリガ、軽イナ……」

提督「良提督? 聞いたことねえな。で、お前はどうしてここに来た?」

秋雲「どうして……あー、そりゃ、ちょっと言いづらいんだけどぉ……」

戦艦水鬼改「……言ワナイノカ」ジトッ

秋雲「ちょっ! ちょっとタンマ! さっきから戦艦の姐さんの圧がすごいんだけど!? 言います! 言いますってば!」
698: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:06:46.04 ID:eLSxtmOxo(4/25) AAS
秋雲「えー、そのぉ、秋雲さんはですねえ……ちょっと、あの、お恥ずかしい話ですが……家出……してきたん、ですよ」

大和「家出? 鎮守府から?」

提督「何か不満でもあったのか」

秋雲「まあ、不満と言いますか、何と言いますか……方向性の違いと言いますか」

戦艦水鬼改「?」

提督「……とりあえず、詳しく事情を聞く前に、ひとつ肝心なこと訊いておくか。お前、生きたいか、それとも死にたいか、どっちだ?」

秋雲「いやいやちょっと待って!? なにそのとんでもない2択!! 今の流れでどうして死ななきゃいけない選択肢が出てくんの!?」

提督「自殺志願者じゃねえんだな?」

秋雲「ないよ!? 死ぬ気ないよ! 死にたくもないしそういう考えに至ってもいないし! え、ってゆーか、そういう島なの……?」

提督「ろくでもない目に遭わされた艦娘が多いのは確かだな」

秋雲「うへえ……秋雲さんどうなっちゃうのよコレ」
699: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:07:31.75 ID:eLSxtmOxo(5/25) AAS
 * 食堂外 テラス席 *

中将「……生存者は確認できず、か」フゥ…

提督「行方不明って扱いにしてもいいでしょう」

葛城「……」

中将「君たちが責任を感じる必要はない。指揮を執ったのはこの私だ」

与少将「……しかしそれでは……!」

提督「艦娘がいるから忘れられてるが……この御時世、人間にとっては渡航そのものが命がけだ」

与少将「!」

提督「人間が艦娘連れて渡航した場合も、3回に1回は深海棲艦と交戦して、そのうち8回に1回は船が沈んでるって聞いてる」

提督「艦娘だって時々沈んでるのに、人間に犠牲が及ばない航海を約束すんのは無理がある。船だって的として見りゃでかいしな」

提督「あの船も旧式とはいえそこそこ速度も出るって聞いてるのに、それで魚雷に被弾しちまったってのは運が悪かったとしか言えねえよ」

提督「なんらかの攻撃を受けて、艦娘が無事。かつ、中将という生存者もいる。まずはそれで良かったと思えってんだ」

葛城「そうかも、しれませんけど」

提督「つうか、もともと厄介払いの連中ばかりだろ? 囚人に至っちゃあ殺す手間が省けていいじゃねえか。生かしてたって税金の無駄だろ」

葛城「そういう問題じゃなくて!!」クワッ!

提督「なんだ真面目だな。いずれにしろ、終わっちまったことをぶちぶち言ってもしょうがねえよ」
700: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:08:15.79 ID:eLSxtmOxo(6/25) AAS
提督「お前らも訓練してきているんだろうが、今回のは完全に事故だ。犬に?まれたと思って諦めろ」

葛城「……」

提督「それで納得できねえんなら強くなりやがれ。お前らがこれからやれることと言ったらそれくらいだろ」

葛城「……っ! わ、わかってるわよ! 見てなさい、いつか瑞鶴先輩みたいになってやるんだから!!」

提督「おう、せいぜい頑張りな。ところで与少将、この件、俺が口を出してもいいか?」

与少将「……まあ、ややこしくならん程度に頼むぞ?」

提督「ああ。まあ、事故に近いっつう状況説明だけにしといてやるよ」

提督「それから、ちょっと考えたんだけどよ。事態をややこしくさせかねないことを言うが……」

提督「今回の魚雷って、案外、海軍が秘密裏に魚雷の威力確認のためにどっかで演習してた、その流れ弾とかじゃねえの?」

与少将「……何を言うちょるか!?」

葛城「海軍内の仕業だって言うんですか!?」

提督「まず、海軍かどうかは別にしても、魚雷を撃った奴は確実にいるわけだ」

提督「俺たちも兵器開発をしてないわけじゃないが、いまのところは、それでわざわざ領海の外に出てはいないし」

提督「そもそも俺たちが中将の乗ってる船に向かって攻撃する理由がねえ。普通に中将はこの島に対しての協力者だし」

提督「政府との会談を控えてるこの時期にそんなことしたら、いろいろ台無しになっちまう」

与少将「確かにのぉ……」
701: ◆EyREdFoqVQ [sage saga] 2024/09/07(土) 09:09:01.73 ID:eLSxtmOxo(7/25) AAS
提督「で、俺としちゃあ、海軍がなんか新兵器でも開発してんのか? と思っちまうんだよ。信用してない分、余計にな」

与少将「いやいや、いくらなんでも、それで中将閣下の船が被害を被るようなことはせんじゃろ……」

提督「そうかあ? 深海棲艦は絶対滅ぼす、みたいな脳みその奴、まだいるんじゃねえの? 曽大佐みたいによ」

提督「そういうやつが、あわよくば一矢報いる思いで、俺たちの島に向かって魚雷を撃った、ってほうがあり得そうだけどな」

葛城「曽大佐って、あの、おじいちゃんになっちゃったっていう……!?」ゾッ

提督「知ってんのか」

与少将「今では有名じゃぞ、悪い意味でな。しかし、そのおかげで、この島に攻撃を仕掛けようという声が鎮静化したのも事実ではあるが」

提督「だからこそ秘密裏に、って思ったんだけどな」

与少将「……となると、ますますどこから来たかがわからんちあ」

提督「まあ、後は……新たな脅威となる深海棲艦がいる、って線も考えられるが、今んとこ、そういう報告も受けてねえしなあ」

与少将「むー……」

葛城「……」

提督「……ここまで喋っておいてなんだが、ことがことだし、事故扱いで処理されて有耶無耶になりそうだな?」

与少将「むう……」
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