[過去ログ] 足柄「提督、夜戦しない?」 (49レス)
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29: ◆7SHIicilOU [saga] 2015/05/24(日) 22:12:51.25 ID:igzxJwmJo(2/2) AAS
「ただ、流石に自重してもらわんとな……」

 ぽつりと呟いたのは執務室にて。
溜まりに溜まった書類を片付けながらだった。
なぜ溜まりに溜まってるのかの理由は決まりきっている。

「どしたの提督ー? そんなため息なんてついちゃってさー」

 本当に小さな呟きだったと思うのだが、
それでも府内では比較的静かな執務室。
間延びした声で俺の呟きを拾い上げた秘書艦の北上が興味なさげに聞いてくる。

「いや、別に」

 と、言わざるを得ない。
別に誰に禁じられてるわけではないとは言え、
やはり褒められた行いでは無いのだから。

「言ってくださいよ。そんなにあからさまだと気になりますから」

 もう一つの声が非難がましげに飛んでくる。
秘書艦でもなく、用もないのに執務室にしょっちゅう入り浸ってる大井だ。
無論その理由はわざわざ説明するまでも無いだろう。
仕事は手伝ってくれるので迷惑ではないが、
こういうとき北上なら適当に流されてくれるのだが大井はそうはいかない。
まいった。
30: ◆7SHIicilOU [saga] 2015/06/05(金) 20:34:08.06 ID:m6SYk2Hjo(1) AAS
「足柄さんのことですか?」

 さてどう答えたものかと悩む間もなく追撃が飛んできた。
しかもど真ん中。そのものずばりだ。

「足柄? 足柄がどうした」

 気取られるわけにもいかんと眉一つ動かさず返す。

「あれ、知らなかったの? 最近の噂」

 北上が意外そうな声をあげる。
噂、噂。……噂ねぇ。一体どのような内容の物が流布されているのやら。

「足柄さんと提督が所謂『良い仲』だと言った内容のですね」

 俺の表情を見て大井が補足する。
良い仲とは表現をかなり選んでの事なのだろう。
繰り返すが自由に出歩けず、海と鎮守府内しか行動できぬ
娯楽の少ない生活を余儀なくされている彼女等がこういった話に飛びつかぬ訳がなく。
その内容は女学校の生徒が行うそれと大差なく、正直下世話だ。

「そりゃまたどうして?」

 肩を竦めて理由がわからないとばかりに問う。
出来る限り気を配っていたつもりだが誰に見られていたとも限らない。
発信源をできるだけ探りたい。

「いやぁ、だって最近距離近いじゃん。提督見ると擦り寄ってるしさ」
「ま、まぁ最近少し親しげでしたから」

 若干の棘が感じられる北上の台詞。
それに被さる様にフォローなのか多いが重ねる。
31: [sage] 2015/06/06(土) 01:25:52.55 ID:bRBhJdyo0(1) AAS

待ってた
32: [sage] 2015/06/06(土) 10:32:56.54 ID:pm044a2RO携(1) AAS
擦り寄ってくる足柄さん……
ありだな
33: [sage] 2015/06/07(日) 01:55:16.84 ID:Fjb+GrtAO携(1) AAS
妙高姉さんの強烈説教の予感
34: ◆7SHIicilOU [saga] 2015/06/09(火) 22:05:51.86 ID:p/NFumFCo(1) AAS
 しかし、親しげだから。か。
漠然としていて、自然と発生したものという感じだな。
これじゃ発信源もクソも無いな。勿論、特に嬉々として
その手の話を題材にあげる娘を特定してそれとなく言えば収まるかも知れんが。
それはそれで噂をする側からすればいい話題提供になりかねない。

「親しげ、ねぇ」

 言葉を反芻する。無論その通りだし自覚もあるが。
かといってそう思われるのはよろしくない。
どうしたものか、と考えていると。

 ノックが二回。

「重巡洋艦青葉です」
「入れ」
「失礼します」

 木製の扉を開いて恭しく一礼して青葉が入室する。
その目は北上と大井をちらりと一瞥し、少し困った様に揺れている。
35: [sage] 2015/06/10(水) 08:29:22.79 ID:P++JRChiO携(1) AAS
おつ
期待
36: ◆7SHIicilOU [saga] 2015/06/25(木) 21:26:21.55 ID:264nMc93o(1/3) AAS
ケッコン間近の北上を誤進軍で沈めてしまった死にたい
37: [sage] 2015/06/25(木) 21:34:30.66 ID:pYVkTv6yo(1) AAS
来世は空母かな…
38: ◆7SHIicilOU [saga] 2015/06/25(木) 21:42:51.22 ID:264nMc93o(2/3) AAS
「あー、なんの用だ?」

 こほんと青葉に向き直り姿勢を正す。
呼んだ覚えは無いが、なにかしらの用事があるのだろう。

「えぇっと、とりあえず良い知らせと悪い知らせがあります」

 チラリと再び北上と大井を見やってから、
手元に携えた書類に大きな瞳を向ける。
タイミング的には遠征報告かなにか、か?

「では、良い知らせから頼む」
「はい。天龍さん率いる第四遠征艦隊が先ほど鼠輸送任務から帰還しました。
 報告によると高速修復材二つに箱一つ、燃料360L・弾薬450ダースを持ち帰ってきました、
 有体に大成功と言っていいでしょう」
「わかった。第四遠征艦隊には午後は休むよう伝えておいてくれ」
「はい。では、次に悪い知らせですが。第二航空艦隊が北方海域より帰還、
 旗艦赤城中破、及び僚艦祥鳳・蒼龍・飛鷹が順に大破・大破・中破となり
 高速修復材を四つ使用したいと申請が来てます」
「……わかった許可しよう。それと、第四遠征艦隊だが編成を変えて球磨を旗艦にして鼠だ」
「了解しました……それと、これは完全に私事なのですが」

 ハキハキとした報告から打って変わってまた俺の両サイドに居る二人に視線が向かう。
39: ◆7SHIicilOU [saga] 2015/06/25(木) 21:49:16.81 ID:264nMc93o(3/3) AAS
「あー、もーこんな時間じゃーん。てーとくー、私等ちょっと間宮に行って来てもいい?」

 それを受けて肩をすくめながら北上がわざとらしく大声を上げる。

「ほら、大井っちも」
「え、ちょ、北上さん?」
「いいでしょ?」

 大井の手を引いて返事を聞く前に扉に向かう。
俺の気が利くその秘書艦の背中に俺名義でツケとけと伝えると、
北上は振り返らず手だけを軽く振って、そして部屋から退出した。

「……さて、それで。なんだ私事とは」

 途端に静かになった執務室内。
一体一で向かい合う形になった青葉に対し、
ゆっくりと言葉を紡ぐ。
40: [sage] 2015/06/25(木) 23:08:14.08 ID:zhK4ouVGO携(1) AAS
おぉう…お悔やみを申し上げます
41: ◆7SHIicilOU [saga] 2015/06/30(火) 20:59:19.63 ID:dOBvJWflo(1) AAS
 口を開いて、閉じて。
拳を開いて、握って。
幾度かそれを繰り返し、言葉を選びながらぽつりぽつり。

「噂を、ご存知でしょうか? 足柄さんとの」

 普段のハキハキした様子を失った、
例えるならまるで羽黒の様な話し方。

「……あぁ、ついさっき部屋から出て行った両名にその話を教えられたばかりだ」

 噂。噂。
その単語と青葉がとても怪しく繋がる。

「そうですか……いえ、実は……」
「お前が発生源か?」
「い、いえ違います! 誓って!」

 疑いを籠めた言葉に俯いていた顔を勢いよくあげて否定する。

「その、でも、あの……実際青葉も二週間前に見てしまって……その、私室から……その」
「……」

 言いたい事はわかった。
つまりはなんだ、初日から疑いもクソも現場を目撃されていたのか。
アホらしい。

「……それで? 言わんとしている事は理解したが、そこからがわからん。
 お前が噂の出所であるのなら謝罪の為とも思えるが、何のために二週間も経った今日ここに足を運んだんだ?」
42: [sage] 2015/06/30(火) 21:04:57.23 ID:crAqjft0o(1) AAS
待ってました期待
43: [sage] 2015/07/01(水) 12:51:45.83 ID:7+AqeQrqO携(1) AAS
んー?青葉じゃないだと?
44: ◆7SHIicilOU [saga] 2015/07/01(水) 22:13:57.13 ID:PE4IYjydo(1) AAS
「いえ、その……ほら、司令官がご迷惑してないかと……。
 あ、あの……皆の勘違いですよね? 青葉は、わかってますから!」

 なにやら一人でテンパっている。

「ですから、その……ご迷惑なのであれば、青葉が火消しを、と思いまして。
 だって、ほら……嘘、ですものね?」

 ……あぁ、なるほど。
つまりはそういう事か。青葉は暗にこういっているのだ。
『俺が嘘と言えば嘘にします』と。無論、それを直接言ってしまうと
真実だと思っていると言う事になるのでこんな迂遠な言い方をしている、と。

「あぁ、……そうだな」

 青葉は、まぁ鎮守府内に置いて新聞を作成したり
写真を撮ったりと報道面の仕事もしている。
よくそれが原因でトラブルも起きているが、それは人のプライベートを
許可無く掲載したりしたためで、虚偽の記載をした事はない。
曰く誇りだというが、此度はその青葉に嘘を吐かせる事になる。

「その日は重巡で最高練度の足柄を呼んで今後の事について話をしていただけだ。
 次点の羽黒ですら足柄の半分の練度だからな、訓練を重点的に、とな」

 そのことに少々の罪悪感を覚えながら、
つらつらと眉一つ動かさず嘘を吐く。

「……なるほど。わかりました! では、そのように皆の誤解を解いておきますね!」

 それを受けて、一拍置いた後笑顔で青葉は返す。

「……あぁ頼む。……すまないな」

 ぽつりと呟いた謝罪の言葉。

「いえ、これも青葉のお仕事ですから!」

 それは青葉の少し寂しげな笑顔に掻き消された。
45: [sage] 2015/07/01(水) 23:29:26.19 ID:X/hMniFPo(1) AAS
この青葉絶対上目づかいだろ……可愛いなさすが青葉かわいい
46: ◆7SHIicilOU [saga] 2015/07/03(金) 21:27:10.76 ID:ERw5K6Y1o(1/2) AAS
―――

 噂。うわさ。ウワサ。

「なんだー誤解だったみたいだね大井っち」

 時刻は正午をまわった頃。
食堂での喧騒はいつも通りに私を包んで、
けれどいつもと違う雰囲気にも感じられる。

「そうみたいですね。ま、多分そうだろうとは思ってましたけど」

 それはきっと会話の内容の所為。
このところ続いていた噂。
それが真実である事を私は知っていて、
そして敢えてそれを煽るように振舞ってみせた。

 もっと、もっと騒げ。と。
それを真実を認識して欲しかったから。

「えぇー、それは嘘だよー」
「本当です」

 けど、今日の話題は昨日までと打って変わって。
噂は偽りへと、誤解へと、勘違いへと。
私が望んだ物と逆の方へ流れ移ろっている。
47: ◆7SHIicilOU [saga] 2015/07/03(金) 21:34:04.45 ID:ERw5K6Y1o(2/2) AAS
 原因はわかっている。
青葉が火消しをしているのをこの目で見たもの。

 なんで彼女が唐突にそんな行動に出たのか。
その理由も、なんとなくわかっている。

 わかってる、わかってる。……わかって、いた筈なのに。

 右手が握った銀の匙。
掬われた好物はけれど口に運ばれる事無く
淡々と香辛料の匂いを撒きながらその温もりを失っていく。

 汗をかいたガラスのコップ。
注がれた水、浮かぶ氷。溶けてカランと音を立てる。

「馬鹿ね、私」

 身体を重ねて、肌を合わせて、
幾度も逢って、幾度も、求めて。
誰よりも傍に居るつもりになってた。
そこが私の場所になるんだと。

 けれど、彼にとってそれは、嘘。
嘘に、するべき事柄だったのだ。
なんて、一方通行。
48: [sage] 2015/07/15(水) 22:37:55.36 ID:XzhyfuBB0(1/2) AAS
はよ
49: [sage] 2015/07/15(水) 22:37:55.36 ID:XzhyfuBB0(2/2) AAS
はよ
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