[過去ログ] いろは「私、先輩のことが、好きです」八幡「……えっ?」 (393レス)
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(4): [saga] 2015/04/13(月) 23:56:40.96 ID:we2Pcx8f0(1) AAS
高二、春

いろは「せんぱーい。助けてくださーい」

八幡「え? 嫌だけど」

いろは「即答とか酷いですねー。せっかくかわいいかわいい後輩が、相談しに来ているというのにー」

八幡「相談しに来るやつのセリフじゃねぇからそれ」

いろは「まぁ、そんなわけで相談です」

八幡「人の話は聞け」

いろは「葉山先輩のことなんですけど――」

八幡「おーい、一色さーん」

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2: ◆.6GznXWe75C2 [saga] 2015/04/13(月) 23:57:55.41 ID:we2Pcx8fo(1/5) AAS
いろは「最近何をすればいいのかわからないんですよ!」

八幡「知らんわ」

いろは「いや、先輩なら葉山先輩の弱点とか知ってるんじゃないんですか?」

八幡「なんで倒すこと前提に話し進めてんだよ。あとそんなの知ってるわけないだろ」

いろは「でも海老名先輩が『隼人くんのことはヒキタニくんが一番知ってる』って言ってましたよ?」

八幡「それは妄想だ。しかも腐ってる方の」

知ってたけどね。それに私にそんな趣味ないし。

いろは「とりあえず話を戻しますと、私がアタックしていても葉山先輩は振り向いてくれないんですよ」

八幡「ふむ」

いろは「多分今のままじゃダメなんだと思うんですよね」

八幡「なるほど」

いろは「だから先輩に相談しに来たんです」

八幡「いや、その理屈はおかしい」
3: ◆.6GznXWe75C2 [saga] 2015/04/13(月) 23:58:23.49 ID:we2Pcx8fo(2/5) AAS
いろは「そうですか?」

八幡「考えてもみろ。そもそも俺はぼっちだ。対人関係ですらまともにこなせないやつが、恋愛相談に乗れるわけないだろうが」

いろは「そんなの百も承知ですよ」

八幡「ならなんだ。フラれたいのか? 失恋経験なら誰にも負けない自信があるぞ」

いろは「そうじゃないです!」

その話についても詳しく聞きたいところだが、今は我慢。

八幡「じゃあなんだよ」

いろは「これまで私は正攻法で葉山先輩にアタックしてきました。でもあまり効果はありません」

八幡「ほう」

いろは「だからここは奇策が必要なんですよ。先輩みたいなその斜め下の発想が葉山先輩攻略の鍵になるのかもしれません」

八幡「斜め下なのかよ」

いろは「少なくとも上ではないですよね」
4: ◆.6GznXWe75C2 [saga] 2015/04/13(月) 23:58:51.36 ID:we2Pcx8fo(3/5) AAS
いろは「で、どうしましょう?」

八幡「待て。俺はまだ承知していない。何ならこれからも承知しないまである」

いろは「変なとこで強情ですねー。そんなんじゃモテないですよ?」

先輩、顔は悪くないんだからそういうところ気にすればモテると思うのに。

八幡「余計なお世話だ」

いろは「はぁ……」

八幡「とりあえず俺じゃなくて――」

仕方ない。ここは奥の手だ。

いろは「『それでも俺は――」

八幡「わかったわかった聞くから聞くからやめろ」

いろは「わーい♪」

八幡「このゆるふわビッチめ」ボソッ

いろは「『それでm――」

八幡「何でもありません」
5: ◆.6GznXWe75C2 [saga] 2015/04/13(月) 23:59:17.93 ID:we2Pcx8fo(4/5) AAS
八幡「奇策っつってもなぁ、俺に特に案はねぇぞ」

いろは「えー? むしろ先輩って普段からそういうことばかり考えてそうですよ?」

八幡「どういうことをだよ。てか俺はそういうスイーツ(笑)じゃねぇ」

いろは「話通じてるんじゃないですか。でも私じゃ限界があるんですよー」

八幡「ちなみに今までは何をしてきたんだ?」

いろは「えーと、タオルを持っていく時に葉山先輩のを一番やわらかくて心地いいのにしてあげたり」

八幡「なるほど、マネージャー特権だな」

いろは「そうです。あとは、たまにお菓子をあげたり」

八幡「ふむ、大抵の男ならイチコロだな」

いろは「えっ、それってまさか口説い――」

八幡「てねーから。ここからフラれるまでの流れにもいいかげん飽きたわ」

いろは「そうですかぁ……。残念」
6: ◆.6GznXWe75C2 [saga] 2015/04/13(月) 23:59:46.02 ID:we2Pcx8fo(5/5) AAS
八幡「まぁ、大抵の男ならってだけで、葉山には通じないだろうな」

いろは「ですよね……。葉山先輩ってそういうの日常茶飯事っぽいですし」

八幡「わかってるんだな」

いろは「わかっていますよ! 好きな人のことなんですから!」

八幡「…………」

いろは「……? どうかしたんですか?」

八幡「いや……、なんと言うか、前から思ってたんだけどよ……」

いろは「何ですか?」

八幡「なんでそんな堂々としていられるんだ?」

いろは「……?」

八幡「普通好きな人が誰かなんて、他人に知られたくないものじゃないのか?」

いろは「んー……、そうですかね……?」

八幡「まぁ、別にどうでもいいけどよ」

いろは「なんかイラっとしますね、その言い方」

……そう言えば、なんでだろ?
7: ◆.6GznXWe75C2 [saga] 2015/04/14(火) 00:00:24.72 ID:Vlu9VqDdo(1/17) AAS
――

――――

いろは「そんなわけで作戦会議でーす」

八幡「どうしてこうなった」

いろは「かわいい女の子と、しかもかわいい後輩と一緒にお茶なんてラッキーじゃないですかー」

八幡「かわいいって自分で言うんじゃねぇ。しかも二回も。唯一褒められる点は場所の指定がサイゼリヤだったってことだけだぞ」

いろは「あは。まぁそんなことは置いといて」

八幡「おーい」

いろは「どうすればいいと思いますかね?」

八幡「完全に無視か」

いろは「だってそんなのどうでもいいですし。はやく何か案を出してくださいよ」
8: ◆.6GznXWe75C2 [saga] 2015/04/14(火) 00:00:51.74 ID:Vlu9VqDdo(2/17) AAS
八幡「って言われてもなぁ……」

いろは「じゃああれです。先輩がされたらドキッとするようなこととか」

八幡「……話しかけられたら、とか?」

いろは「どんだけ女子に免疫ないんですか!?」

じゃあいま私と話してるのもドキドキしてるってこと? ワンチャンあるかな。それ以前の問題だけど。

八幡「うっせぇ。ぼっちはみんな女子苦手なんだよ」

いろは「それじゃあ全然参考にならないじゃないですか」

八幡「だからそもそも俺に聞くのが間違いなんだって」
9: ◆.6GznXWe75C2 [saga] 2015/04/14(火) 00:01:18.93 ID:Vlu9VqDdo(3/17) AAS
いろは「いやいや、聞きましたよ?」

八幡「何をだ」

いろは「葉山先輩とテニス勝負したそうじゃないですか。しかも勝ったとか」

八幡「ああ、あれか。いろいろ運が良かったからな」

いろは「経緯がどうであれ先輩は葉山先輩に勝った人間なんです。だから相談しているんですよ」

八幡「…………」

いろは「……先輩が」

八幡「?」

いろは「先輩だけが、頼りなんです」

少しだけうつむいて、目をうるませて、上目遣いで頼みこむ。これで大抵の男子はイチコロ――。

八幡「あざとい」

やっぱり先輩には効かないかー。
10: ◆.6GznXWe75C2 [saga] 2015/04/14(火) 00:01:57.46 ID:Vlu9VqDdo(4/17) AAS
いろは「そういえば最近奉仕部の方はどうなんです?」

八幡「また話の振り方が雑だな。……そうだな、特にないんだよなぁ」

いろは「でも妹さんが入ってきたんですよね?」

八幡「ああ……そうなんだよ……。ただ大体雪ノ下か由比ヶ浜が小町と話すから、俺が校内で小町と話すことがないんだよな……。せっかく同じ高校に入れたのに……」

あっ、地雷だったっぽい。こうなった先輩はめんどくさいなー。

八幡「同じ学校で軽口を叩き合う兄妹を夢見てたのになぁ……。どうしてこうなっ――」

いろは「あー、もーいーです」

八幡「」
11: ◆.6GznXWe75C2 [saga] 2015/04/14(火) 00:02:32.29 ID:Vlu9VqDdo(5/17) AAS
いろは「それで、どうしましょうか」

八幡「話の脱線の仕方が雑なら戻し方も雑だな。……そうだな」

そう言ったきり先輩は黙る。顎に手をやっているところを見ると、割とちゃんと考えてくれているらしい。

しかしそれも五分ほどで終わり――。

八幡「ダメだ、わからん」

弱音を吐き、そのままついさっき来た辛味チキンをかじる。美味しいよね、それ。

八幡「そもそも葉山が誰かと付き合うって絵が全く想像つかん」

いろは「えー? そうですかぁ?」

八幡「なんかあいつが誰かを好きになったりするのも――」

ふいに先輩の口が止まる。目の焦点が私に合っていない。まるでどこか遠くを見ているようにも見える。

その視線を追うが、別段気になるものはない。

いろは「……先輩?」

八幡「いや、なんでもない」
12: ◆.6GznXWe75C2 [saga] 2015/04/14(火) 00:03:08.09 ID:Vlu9VqDdo(6/17) AAS
八幡「さてと、さっきの話だが」

いろは「おっ、何か思いつきましたか?」

八幡「普通に遊びに誘ってみるのはどうだ?」

いろは「それができたら苦労しませんよー」

それで何度断られたことか。葉山先輩のガードは固すぎて突破不可能な気がする。

八幡「いや、それは少し遠慮気味にだろ?」

いろは「?」
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