引っ越し (7レス)
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2: デアカルテ 2007/07/05(木)18:36 AAS
彼女は運転もこなれていた。これなら安心して荷物を任せることが出来る。

「しかし、力強いんですね。」
彼女は、手伝うと言った僕の申し出を丁重に断った。まあ、あの仕事振りを見れば当然なのだが、常人離れしている気もする。

「ええ〜、そんなことないですよ〜」
彼女は照れ隠しに笑う。

「何か、スポーツでもやってたんですか?」
「実は私、子供のころ病弱だったんですよ。それで健康になるようにって最初は水泳を始めて・・・そしたら、いつの間にかスポーツそのものよりトレーニング自体が楽しくなっちゃって・・・」
彼女によれば、このバイトも趣味と実益を兼ねてるそうだ。力仕事はトレーニングになるし、実入りも良い、ということらしい。

会話が弾むと、目的地まであっという間だった。僕の新居は、よくあるタイプのワンルームマンション。しかし、今更ながら困ったことに気が付いた。エレベータがないのだ。しかし、彼女は・・・

「ああ、元々階段を使うつもりだったんで大丈夫ですよ」
階段を使えばそれこそ鍛錬になるし、そもそも他の住民のことを考えて使うつもりはなかったらしい。しかし、相変わらず仕事が早い。彼女曰く、やっと身体が温まって来たのだそうだ。荷物の運び込みは、またしてもあっという間に終わってしまった。そのお陰か、荷解きもスムーズに終わった。予定の時間より大幅に早く終わったということもあり、彼女にお茶を振舞うことにした。

「この土地は初めてなんですか?」彼女がそう聞いてきた。
「いえ昔、子供の頃にこの近くに住んでたことがあったんですよ。中学に上がる前ぐらいに引っ越しちゃいましたけど・・・。」
「・・・ぁ、それで・・・・・」
「ん? どうしたんですか?」
「・・・いえっ、何でも。」
彼女は何か思うところがあったようだが、笑って誤魔化された。

・・・ん? すると、今度はこっちが妙なところに気付いた。
「あの・・・、その袖のところ、裂けてません・・・?」
両袖の口から肩に向けて、シャツの生地が数センチほど裂けてスリットのようになっている。糸が解れているから、間違ってもスリットではないだろう。

「・・・ああ! また・・・・・」
「・・・また?」
「いえ、パンプアップしちゃうとたまーに袖が耐えられなくなって裂けちゃうんです。普段はあまり、全力を出さないように気を付けてるんですけど、今日は少し興奮しちゃって・・・」
「・・・興奮?」
「・・・あ、いえこっちの話です。」
そういえば、元々大きかった力瘤が更に大きくなってる気がする。それ以前に、さっきまでの仕事ぶりが全力ですらないというのだ。

「私って女の癖に腕が太過ぎて、長袖だと男性サイズのシャツでも腕が通らないんですよ。腕に合わせちゃうと、特大サイズのシャツになっちゃってお腹が余まっちゃいますし・・・」
確かに、胸も特大サイズの割りに、お腹や腰周りはキュッと締まっている。それで、多少寒い季節でも半袖なのに合点が行った。

「これでも、筋肉付いちゃうのに抵抗ないわけじゃないんですよ。トレーニング自体は楽しいんですけど・・・。力も強くなった分、気を付けないといけないですし・・・。」
「何か、失敗をしちゃったことが・・・?」
どんな失敗をしたのか、少し気になる。

「TVキング選手権って素人が参加出来る番組があるんですけど、それの力自慢大会の時に・・・」
「・・・どうしたんですか?」
「腕相撲でプロレスラーの腕を折っちゃって・・・」
・・・・・凄い、があの力瘤を見れば説得力は充分だ。寝惚けて、目覚まし時計を握り潰したこともあるらしい。
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