これを魔女の九九というようです (524レス)
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1: 2015/04/28(火)09:59 ID:SOhsxYKs0(1/17) AAS
汝、会得せよ。
.
281: 2015/06/27(土)12:59 ID:Um.BtjGM0(17/37) AAS
('、`*川「っ……」
(´・_ゝ・`)「理屈じゃなく威圧をぶつけてくるとは、随分痛いところを突かれたようですね」
ζ(゚ー゚*ζ「外野は黙ってなさい」
(´・_ゝ・`)「僕は当事者ですよ。それよか外野っていうのはああいう灰色の陰惨な連中を指すんじゃないんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「お前は……っ!」
省12
282: 2015/06/27(土)13:00 ID:Um.BtjGM0(18/37) AAS
(´・ω・`)「だったら、」
('、`*川「でも、どうしてこんな事をとか、なんでこんな目にとか色々今でも思います」
(´・ω・`)「ペニサス、」
('、`*川「だけどそれがなかったら今のわたしがなかったというのも事実なんです。何もかも忘れて、魔女を目指していなかったら、わたしはデミタスに出会えなかった」
(´・ω・`)「…………」
省12
283: 2015/06/27(土)13:01 ID:Um.BtjGM0(19/37) AAS
慟哭にも似たその叫びは、エゴ以外の何物でもなかった。
与えられた玩具が気に入らなくて壁に投げつけている三歳児となんら変わりのない、幼稚な発言。
デレの瞳は黒に近い青色に染まっていた。
驚いたからだろうか、それとも幻滅したからなのか。
僕には分からなかったが、彼女は今にも泣きそうな顔をしていた。
(´・ω・`)「あ…………」
ショボンは、軽く笑みを浮かべた。
省12
284: 2015/06/27(土)13:02 ID:Um.BtjGM0(20/37) AAS
(´・ω・`)「それもちがう」
ζ(゚ー゚;*ζ「え……」
(´・ω・`)「僕は、僕は何をしようとしていたんだ……?」
(´・_ゝ・`)「!」
なにかがやってくる。
人も魔女も太刀打ちの出来ない、巨大な理の一部を持ったなにかだ。
その予感を肌で感じ、僕はペニサスの手を取った。
省11
285: 2015/06/27(土)13:03 ID:Um.BtjGM0(21/37) AAS
(´・_ゝ・`)「僕もあなたと同じだった! 僕も特別な存在になりたくて、なろうとして、なれなかった! だけど、それでもあなたは一人じゃない!」
('、`*川「そうよ、師匠! わたしもデレさんもいるわ! 師匠は一人じゃない、だから認めて!!」
ζ(゚ー゚;*ζ「ショボン……!!」
(´・ω・`)「……ペニサス、デレ、デミタス」
ショボンは、伸ばしかけていた手を下ろした。
省10
286: 2015/06/27(土)13:06 ID:Um.BtjGM0(22/37) AAS
(´・_ゝ・`)「ショボン……っ!」
それは、急にやってきた。
('、`*川「師匠っ!」
猛烈な風が吹いている。
ショボンの表情は伺えない。
('、`*川「師匠! だめ!」
省9
287: 2015/06/27(土)13:12 ID:Um.BtjGM0(23/37) AAS
透明な澱が過ぎ去ってから一ヶ月。
梅雨に入り、青い空を見る機会が随分減った。
それを考慮してもこの家に流れる空気はあまりにも沈みきっていた。
仕方のない事だ、と僕はため息まじりに納得しようとした。
それでも胸に滞る靄をなくす事は出来なかった。
ペニサスは書庫に籠るようになった。
毎日遅くまで魔法について勉強をし、一人で考え込む事が多くなった。
省12
288: 2015/06/27(土)13:13 ID:Um.BtjGM0(24/37) AAS
('A`)「どゥすルノ」
ある日、ドクオはそう問うた。
('、`*川「どうって?」
ペニサスは戸惑いながら読んでいた本をテーブルに置いた。
('A`)「コのあトノこと」
省12
289: 2015/06/27(土)13:14 ID:Um.BtjGM0(25/37) AAS
あまり自信がない口調で彼女はこう言った。
('、`*川「今までわたしって記憶がなかったでしょう」
(´・_ゝ・`)「そうだね」
('、`*川「それってつまり人間としての自分をかなり失っていた状態で、魔女としての力がすごく不安定だったの」
認識しなければ、いないも一緒。
それは自分の記憶にも適応されるのだろう。
省12
290: 2015/06/27(土)13:15 ID:Um.BtjGM0(26/37) AAS
('、`*川「師匠との日々をなかったことにすればこの呪いは解けるんだろうけど、したくないの」
わたしは諦めない。
いつぞやかの決意が、新しい意味を含んだ。
きっとそれは、彼女を至上の死へ導くだろう。
ふとそんなことを思っていた。
('、`*川「デミタス、一緒に来てくれる?」
(´・_ゝ・`)「聞くまでもないよね、それ」
省9
291: 2015/06/27(土)13:17 ID:Um.BtjGM0(27/37) AAS
朝から降っていた雨はいつのまにか止んでいた。
幸先は良さそうだ。
なんとなくそう思いながら僕は折り畳み傘を鞄にしまった。
湿気を含んだ空気の中、僕たちは歩く。
その弾みで、足元の雑草が抱き抱えていた雫が解放されていった。
(´・_ゝ・`)「旅に出るとは言ったけどさ、まずどこに行くんだい」
門扉を開けながら問いかける。
省11
292: 2015/06/27(土)13:20 ID:Um.BtjGM0(28/37) AAS
ふわりと彼女も空を飛ぶ。
金色と銀色の靴がきらりと光る。
その動作がとても美しく、僕は見惚れていた。
('、`*川「行きましょ」
(´・_ゝ・`)「ああ、うん。ところで場所わかってるの?」
ペニサスはぴたりと動きを止め、僕を見た。
('、`*川「……西比利亜市ってこっちよね?」
省11
293: 2015/06/27(土)13:21 ID:Um.BtjGM0(29/37) AAS
(´・_ゝ・`)「んー……西比利亜市、都所、か」
頭の中に地図を描きながら、僕は歩き始めた。
その後ろを、ペニサスがついてくる。
('、`*川「どれくらいかかりそう?」
(´・_ゝ・`)「半日くらいかな」
('、`*川「遠いのね」
省7
294: 2015/06/27(土)13:23 ID:Um.BtjGM0(30/37) AAS
すなわち九は一にして、十は無なり 了
.
295: 2015/06/27(土)13:25 ID:Um.BtjGM0(31/37) AAS
登場人物紹介
(´・_ゝ・`) 盛岡デミタス
('、`*川 伊藤ペニサス
ζ(゚ー゚*ζ デレ
('A`) ドクオ
省9
296: 2015/06/27(土)13:27 ID:Um.BtjGM0(32/37) AAS
汝、会得せよ
一を十と成せ
二を去るにまかせよ
三をただちに作れ、しからば汝は富まん
四を捨てよ
省4
297: 2015/06/27(土)13:28 ID:Um.BtjGM0(33/37) AAS
………………
………………
……………………
…………………………………………
…………
省4
298: 2015/06/27(土)13:29 ID:Um.BtjGM0(34/37) AAS
……………………………………
………………………………
…………………………
……………………
………………
省3
299: 2015/06/27(土)13:30 ID:Um.BtjGM0(35/37) AAS
「見つけた!」
.
300: 2015/06/27(土)13:31 ID:Um.BtjGM0(36/37) AAS
これを魔女の九九というようです 了
.
301: 2015/06/27(土)13:32 ID:Um.BtjGM0(37/37) AAS
参考にした作品
ファウスト
幾原作品
参考にした楽曲
輪舞-revolution
TERRITORY
葉は華を惟ひ、華は葉を惟ふ
省23
302: 2015/06/27(土)13:52 ID:0rEC8Y0I0(2/2) AAS
なんとも不思議な作品だった
お疲れ様でした
303: 2015/06/27(土)14:06 ID:2xs6OFmc0(1) AAS
おつ面白かった
304: 2015/06/27(土)14:20 ID:0TEy97Js0(1) AAS
盛大な乙を!!素晴らしい作品だった!!
305: 2015/06/27(土)14:20 ID:mvhIudbg0(1) AAS
不思議な気分だ
おつ
306: 2015/06/27(土)14:27 ID:wmzgNwq20(1) AAS
おつ
面白かった
しかもお題消化とは…素晴らしいのう
307: 2015/06/27(土)16:12 ID:J.4lYJko0(2/2) AAS
乙乙!! お題あったのか
とても面白かった。補完も楽しみ
308: 2015/06/27(土)22:50 ID:T3Mz440.0(1) AAS
おつ!
すげえおもしろかった!
ショボンってデミタスと似てたんだね。
ショボンは力があったからエゴな人助けができたけど、デミタスはない分身近なものにしか手を伸ばさなかったんだろうなー
補完も楽しみにしてる
309(1): 2015/06/27(土)23:35 ID:tYq1/n2E0(1) AAS
「見つけた!」の真意がわからん……
それとも補完で明確になるのか
310: 2015/06/28(日)00:11 ID:07sRsRZA0(1/2) AAS
ショボンの事だろ
311: 2015/06/28(日)00:13 ID:SYRS99i20(1) AAS
>>309
しょぼんを見つけたのかそれとも方法を見つけたのか
312(1): 2015/06/28(日)02:02 ID:2lvHYm/I0(1) AAS
乙。面白かった
ただ、読んでて>>276の八行目(空白抜きで六行目)でペニサスの名前が出てきちゃってるのに違和感がちょっとあったなぁ
ここデミタスの一人称で、この直後に思い出すまでペニサスの名前忘れてた状態だし
なんか盛り上がる部分で肩透かしを食らわされた感があったかな
そこまてまの盛り上げ方がよかった分、個人的にはそれが目についた感じ
なんか重箱のスミをつつくような不粋な感想すまぬ
313(1): 2015/06/28(日)04:10 ID:BdrafelI0(1) AAS
それは俺も感じたわ
名前は出さないほうがな
314: 2015/06/28(日)05:19 ID:uu7pNauw0(1/2) AAS
>>312>>313
うわ本当ですね
これはうっかりやってしまったなー悔しい
以下に一応差し替え置いときますもう遅いけど
315: >>276訂正版 2015/06/28(日)05:21 ID:uu7pNauw0(2/2) AAS
脳裏に、一枚のポスターがちらつく。
サバトに行く道すがら、あるいはショボンに見せられたものだ。
制服を着て、幼い笑みを浮かべるあの子の姿。
(´・_ゝ・`)「君は、」
噴き上げる水がことさら強くなる。
水面が掻き乱され、その姿が失せかける。
君の、名前は。
省2
316: 2015/06/28(日)08:00 ID:07sRsRZA0(2/2) AAS
やっと思い出せた名前がペニスって悲しくなるな
317: 2015/06/28(日)23:24 ID:Z8MAIW.Y0(1) AAS
乙乙
お題消化てこんな作品を書けるのか…
318: 2015/06/29(月)03:23 ID:X6iyzmo60(1) AAS
乙乙!
この作品の雰囲気本当すき。
出会えてよかった。
補完の話しも楽しみにしてます。
319: 2015/06/30(火)12:06 ID:qAKy9/Zc0(1/2) AAS
乙!めちゃくちゃ面白かった!
不思議な雰囲気が何かよかったよ
輪舞好きなんだけど、確かにこの話に合う気がする
補完的な話も楽しみだ
質問なんだけど、ペニサスが言ってた友達って誰?
あとデレの過去とかペニサスを嫌ってた理由とか、出来れば知りたいな
320(1): 2015/06/30(火)12:18 ID:P80HFWfA0(1) AAS
そりゃあおめぇ、チューリップの娘は王子様に『ここにいるだけでいい』とまで言われた彼岸花を嫌うだろうよ。
321: 2015/06/30(火)14:51 ID:qAKy9/Zc0(2/2) AAS
>>320 なるほど確かに!ありがとう
322: 2015/09/19(土)08:13 ID:BBw54KTM0(1) AAS
面白かった。乙
323: 2015/12/09(水)23:22 ID:liUN2d9g0(1) AAS
たった今読み終わりました。
ハラハラドキドキして、どんな風に進んでいくのか分からないストーリー展開が最高でした。
ラストは質のいい演劇の締めを見ているようで気持ち良かった!
作者さんありがとう!この作品を読めて良かったです!
324: 2016/01/06(水)14:49 ID:7ochckmE0(1) AAS
待ってるよー
325: 2016/02/17(水)21:01 ID:KBVdQSbM0(1) AAS
たった今ブンツン堂で読み終えてきた
雰囲気もよかったし、最初から最後まですっげー面白かった!
いい物語をありがとう、続き待ってます!
326: 2016/04/05(火)00:01 ID:CJK58DcY0(1) AAS
教育的指導
327: 2016/04/07(木)13:32 ID:0NHWARFs0(1) AAS
外部リンク:ow.ly
328: 2016/05/04(水)13:31 ID:ZhNHmJtI0(1) AAS
面白かったなぁ
なになにやつだも面白かったししゅごいよ
329: 2017/05/21(日)15:16 ID:Fqa66Dmo0(1/24) AAS
さざめく波の音が耳をつく。
その騒々しさに心を奪われ、はたと辺りを見渡した。
薄暗がり、グリルから漂う肉の焼ける音、それを邪魔しない程度に匂うカサブランカ。
手元にはワイングラス、行儀のいいウェイターが、うす桃色のワインを注ぎ入れた。
その下にはシルクで出来たクロス、艶やかな布の上にはボーンチャイナが一皿。
バターで風味付けされた鯛が、そっくり返っている。
食べてとねだっているのか、逃げようとして跳ねたところなのか。
省7
330: 2017/05/21(日)15:17 ID:Fqa66Dmo0(2/24) AAS
(´・ω・`)「どうしたんだい、デレ」
魚は嫌いだったか、と問う彼に、首を横に振る。
ζ( ー *ζ「なんでもないの」
そう、なんでもないの。
今日は四月一日。
わたしの誕生日。
忙しいなか、彼はわたしのために来てくれたのだ。
省13
331: 2017/05/21(日)15:18 ID:Fqa66Dmo0(3/24) AAS
(´・ω・`)「僕も夜景が好きでね」
ζ(゚ー゚*ζ「…………」
ロゼのワインを、口に含む。
酔いが足りないようだった。
頭の片隅で、ざざん、ざざんと波が押し寄せる。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたの好きなものをわたしも見せてもらえるなんて」
幸せだ。
省10
332: 2017/05/21(日)15:18 ID:Fqa66Dmo0(4/24) AAS
愛の炎よ、澄み渡る方へ向かえよかし
.
333: 2017/05/21(日)15:19 ID:Fqa66Dmo0(5/24) AAS
わたしと彼の出会いを遡るには些か時間が掛かった。
まず、わたしはカンザスの田舎に住んでいた。
ママと二人で。
パパはいない。
いないことに疑問は持っていなかった。
ママはわたしのことをめいっぱいに愛していると伝えてきた。
一人でわたしを産んで、一人でわたしのために部屋を改装し、一人でわたしを育てるために、休みなく働きに出ていた。
省9
334: 2017/05/21(日)15:20 ID:Fqa66Dmo0(6/24) AAS
ラベンダーの花に見飽きてくると、今度は空を眺めた。
天気が良すぎる日はつまらなかった。
空に浮かぶ雲の形で、わたしは遊ぶことが多かった。
ζ(゚、 ゚*ζ(あれは馬)
その背に跨って、わたしはラベンダーの森を駆け抜ける。
ζ(゚、 ゚*ζ(あれはドーナツ)
ママはよくドーナツを作ってくれた。
省11
335: 2017/05/21(日)15:21 ID:Fqa66Dmo0(7/24) AAS
トイレよりも狭い部屋で、服を脱いで、水着を着て。
人混みに紛れて、ようやく海にたどり着いても、やっぱり人がいて。
大して遊べないうちに時間ばかりが過ぎていき、また狭い部屋で着替えて、疲れて家に帰る。
しかも、海の水はしょっぱくて、塩が肌にかぶれるのだという。
海にもシャワーが付けてあるけど、たくさん人が待っているから待つだけでもうんざりする。
おまけに水はちょっぴりしか出てこない。
それだったら浴びても浴びなくてもおんなじなのだと、ママは海の良くないところをたくさん説明してくれた。
省8
336: 2017/05/21(日)15:21 ID:Fqa66Dmo0(8/24) AAS
空を見るのにも飽きてしまったら、今度は壁の絵を眺めてみる。
ママは、わたしが女の子だと知って喜んだそうだ。
男の子じゃなくって、絶対ぜったいぜーったい女の子がいいと思っていたそうだ。
どうして?と聞いたことがある。
(*゚ー゚)「だってママが赤ちゃんだった時の服が着れるのよ?」
そう言ってママは、ママとわたしが赤ちゃんだった時の服を見せてくれた。
小さくて、綿製のフリルがたくさんついたかわいいベビードレスだった。
省8
337: 2017/05/21(日)15:22 ID:fUPr0iSM0(1/3) AAS
支援
338: 2017/05/21(日)15:23 ID:Fqa66Dmo0(9/24) AAS
(*゚ー゚)「生まれてきてくれてありがとう、女の子でありがとう。デレ、大好きよ、愛してるわ」
ちゅ、ちゅ、とキスの雨が降って来る。
ママのキスは、長い。
一度始まるとなかなか逃げられない。
ずーっと一日中、仕事しないでキスできると言っていた。
ママがわたしを一人にしないでくれるなら、こんなに嬉しいことはないと思った。
一人にしておくのは、ママも負い目があるようだった。
省14
339: 2017/05/21(日)15:24 ID:Fqa66Dmo0(10/24) AAS
夕暮れもとっくに過ぎて、星が天高く輝く頃。
ママは疲れた顔をして帰ってくる。
怖い夢を見て泣きそうになったような顔をして、ママはわたしにキスをしてくる。
ぎゅぅっと強く、苦しくなるほど抱きついてくるから、わたしはママの気がすむまで頭を撫でてあげた。
怖い夢を見たときにママがそうしてくれるからだ。
そうすると少しは気が休まって、ママのことを好きになれるのだ。
ママも、怖い目にあって頭を撫でられたら、わたしのことを好きになってくれるに違いなかった。
省11
340: 2017/05/21(日)15:25 ID:Fqa66Dmo0(11/24) AAS
マッチに火がついた。
すぅ、と息を吸うとたばこに火がついた。
マッチが、わたしの足をジュッと焼く。
やけどのうえに作るやけどはとても痛い。
治りきらないうちに、また皮膚がぐちゃぐちゃになるからだ。
夏になると膿が出ることもあったし、そうなると体に毒が回って熱を出すこともあった。
それでもそう言う時はママがつきっきりで看病してくれるから、嬉しかった。
省11
341: 2017/05/21(日)15:26 ID:Fqa66Dmo0(12/24) AAS
ある日、ママはいつものように仕事に出た。
ちょっと違ったのは、ママがたばこを忘れていったことだった。
ママはわたしの次にたばこが好きだった。
たばこがなくてママは困るだろうと思った。
わたしは、初めて外に出た。
ママの忘れ物を届けに、裸足で外を出た。
ちょうどその前の日は雨で、地面はぬかるんで居た。
省13
342: 2017/05/21(日)15:27 ID:Fqa66Dmo0(13/24) AAS
ママがどんな仕事をしているのかはあまり知らなかった。
でもバスに乗るということだけは知っていた。
ママは、たしかにバス停にいた。
新しく買ったばかりのたばこを開けて、ぷかぷかとふかしていた。
ζ(゚、 ゚*ζ(……なんだ、買えばいいんだ、)
そうだ、たばこなんてお店にたくさん売っているのだ。
わたしが届けなくたって、ママはいくらでもたばこを買えるのだ。
省5
343: 2017/05/21(日)15:28 ID:Fqa66Dmo0(14/24) AAS
誰か、誰か。
わたしのことを笑わないでください。
わたしは、大好きなママに褒めて欲しかっただけなのです。
わたしのために働いてくれるママのために、役立ちたかっただけなのです。
日に晒されて、惨めな泥が、服から剥がれ落ちました。
そうしているうちに、ママはバスに乗り込んで、仕事に行きました。
わたしは、また足を引きずって、元来た道を戻りました。
省4
344: 2017/05/21(日)15:29 ID:Fqa66Dmo0(15/24) AAS
でも。
「どうしたんだい、お嬢さん」
ママよりも柔らかく、優しい声が、聞こえたのです。
その人はすらりと背が高い人でした。
その人は優しい灰色の目をしていました。
その人はママが好きそうなフリルのついた服を着ていました。
その人は昔、絵本で読んだ王子様のような人でした。
省3
345: 2017/05/21(日)15:30 ID:Fqa66Dmo0(16/24) AAS
わたしは、その人の服を汚すことも厭わずに泣きつきました。
その人もまた、怒ることなくわたしを抱きしめてくれました。
大好きなママのためにママの役に立てなくて笑い者になった悔しさと、ママが愛してくれたという証のせいでこんなにも汚れてしまった怒りと、それに対する裏切りを、全て全てぶちまけました。
それはまるで呪詛のように、己の身の内に響き渡り、ママを嫌いになりそうなわたしをまたさらに憎悪させました。
(´・ω・`)「よし、よし、お嬢さん。まずはお茶でも飲みませんか?」
そう言って、その人はラベンダーを踏みつけました。
346: 2017/05/21(日)15:31 ID:Fqa66Dmo0(17/24) AAS
するとそこら一帯は、たちまち灰色の影に飲み込まれて。
わたしの服を汚した泥は、ぐつぐつと煮え渡り、チョコレート色のテーブルを作り上げました。
風に揺れていたラベンダーは、水けを失って互いに縫い合いました。
そうしてたちまち、暗紫色のテーブルクロスが出来上がったのです。
道端の石ころは、かたかたと揺れてぽこりと膨れ上がりました。
ポットやカップの形をしたそれは、こつんとテーブルを叩くと……。
ζ(゚ー゚*ζ「わあ……」
省6
347: 2017/05/21(日)15:32 ID:Fqa66Dmo0(18/24) AAS
テーブルをコツコツと叩けば、見たことのないお菓子が飛び出しました。
カゴに入ったクッキーにビスコッティ、チョコレート漬けのさくらんぼ。
ババロア、メレンゲのケーキ、いちごのたっぷり挟まったサンドイッチ。
気付けばわたしの顔も服も綺麗さっぱり、泥が消えていました。
わたしは遠慮なく、この見たことのないお菓子に手をつけました。
ζ(゚ー゚*ζ「おいしい!」
ふかふかのクッションのようなお菓子は、ギモーヴというものでした。
省5
348: 2017/05/21(日)15:33 ID:Fqa66Dmo0(19/24) AAS
(´・ω・`)「パパはどこに行ったのかな?」
ζ(゚ー゚*ζ「ママは一人でわたしを産んだって言ってた」
(´・ω・`)「でも必ずパパになる人がいるはずだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「んー……。よくわかんない」
(´・ω・`)「まあそれで君が幸せならいいけども」
省11
349: 2017/05/21(日)15:34 ID:Fqa66Dmo0(20/24) AAS
ζ(゚ー゚*ζ「好きだもん」
それを眺めながら、マフィンに手を伸ばしました。
かぼちゃの甘さとチーズのしょっぱさが引き立ちあって、あっというまにお腹の中に消えました。
(´・ω・`)「君が男の子でも?」
ζ(゚ー゚*ζ「……きっと好きだもん」
歯切れ悪く、幼いわたしは紅茶を飲みます。
ぴとりと鼻にレモンのスライスがくっついて、バツの悪い気分になりました。
省6
350: 2017/05/21(日)15:35 ID:fUPr0iSM0(2/3) AAS
しえしえ
351: 2017/05/21(日)15:35 ID:Fqa66Dmo0(21/24) AAS
(´・ω・`)「君はお母さんと出かけたことはあるのかな?」
ζ(゚、 ゚*ζ「ママはお仕事で忙しいもん」
(´・ω・`)「じゃあ君が風邪を引いてもほったらかしにして仕事に行くんだね」
ζ(゚、 ゚*ζ「そんなことないもん!」
(´・ω・`)「じゃあどうしてお母さんは君とお出かけしてくれないのかな」
省13
352: 2017/05/21(日)15:36 ID:Fqa66Dmo0(22/24) AAS
(´・ω・`)「本当に愛していたら君を痛い目には合わせない」
ζ( 、 *ζ「…………」
(´・ω・`)「本当に愛していたら、君を海に、いや、どこにだって連れて行くよ」
ζ( 、 *ζ「…………」
(´・ω・`)「君は本当の愛を知らないんだ」
省16
353: 2017/05/21(日)15:37 ID:Fqa66Dmo0(23/24) AAS
(´・ω・`)「ああ」
どこにでも連れてってあげるよ。
(´・ω・`)「君のことを助けたいんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「……デレ」
(´・ω・`)「僕は、 」
省12
354: 2017/05/21(日)15:38 ID:Fqa66Dmo0(24/24) AAS
愛の炎よ、澄み渡る方へ向かえよかし 了
.
355: 2017/05/21(日)15:42 ID:fUPr0iSM0(3/3) AAS
乙でしたー
久々の投下嬉しい!
356: 2017/05/21(日)21:32 ID:mDQVV/QQ0(1) AAS
乙!
デレのお母さん怖いわ…
357: 人妻出会い掲示板 2017/05/21(日)21:56 ID:1hkQkFzU0(1) AAS
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人妻掲示板書き込み一覧
省29
358: 人妻出会い掲示板 2017/05/22(月)20:18 ID:RzCMLlUs0(1) AAS
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省28
359: 2017/05/23(火)18:15 ID:NXwRScpA0(1) AAS
乙乙
母親怖いけど救われる話でよかった
360: 2017/05/24(水)14:06 ID:w6M4Mt6o0(1) AAS
乙です!
デレがどんな家庭環境で育ったのかちょっと気になってた
これはデレがショボンに依存するのも分かるな
361: 2017/05/26(金)17:28 ID:FyO5tNSM0(1) AAS
きて嬉しい!!おつ
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