マルチジャンルバトルロワイアルpart20 (683レス)
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576: オレはここに在り ◆hqLsjDR84w 2013/11/19(火)13:48 ID:Tl1UHFf5(11/15) AAS
 
 
 エリアE−5に、市街地であった名残はほとんどない。
 戦闘の跡がいくつもあるとはいえ、ほんの少し前まではたしかに市街地であったというのに、いまとなっては瓦礫の山だ。
 電柱は倒れ、電線は引き千切れ、街灯は砕け、街路樹は折れ、車は引っ繰り返り、屋根は剥がれ、壁は粉と化し、標識は歪にねじ曲がっている。
 病院などの強固に作られたと思しき建物はいくつか残っているが、それらも表面は焼け焦げてしまっており、ガラスに至っては割れていないものを探すほうが難しい。

 そんな一瞬にして荒廃した街の中心に、ミュウツーは悠然と立っている。
 エクスカリバーの真名解放によって消耗した体力は、すでに回復薬で取り戻した。
 一つしかない道具を使用してしまったが、断じて惜しいとは思っていない。
 戦闘中にあんなものを使う隙はそうそうないので、使えるときに使っただけだ。
 これまでのミュウツーならば、回復薬を保管して身体を休めただろう。
 しかし、いまとなってはその必要はない。

 ――すでに制限は解除されているのだから。

 両手両足がもぎ取られたり、腹に大穴が開く程度ならば、『自己再生』で十分だ。
 回復薬を消費したマイナスよりも、真名解放をすれば根こそぎに念動力を持っていかれることを知れたプラスのほうが大きい。
 あそこまで消耗してしまえば、自己再生でもすぐには追いつかない。
 多少時間をかければ問題ないだろうが、その多少は戦闘においては大きすぎる。

 それに――狙い通りの結果はもたらされた。
 見覚えのある二人の男女が巨大な黒馬を駆って、凄まじい勢いで接近してきているのだ。

『もはや、どこにもオレの居場所はない。
 故郷には帰れないし――過去には戻れない』

 二人と一匹にテレパシーを送り、黄金の剣を持たぬ左手を微かに上げる。

 直後、ミュウツーの周辺が一変した。
 雰囲気などという曖昧な感覚ではなく、見て分かるほど明らかに『変質』した。
 深夜の肌寒い空気が生温かいものとなり、先ほどまでほとんどなかった風と化す。
 その勢いは見る見る増していき、さらに吹く方向までもがことごとく異なっている。
 ほどなくして風は巨大な竜巻を形成し、周囲の瓦礫をも持ち上げてしまう。

 ――――『サイコウェーブ』。

 元来、その名は超能力で形成した波状光線の総称だ。
 いまミュウツーが行っているものとは、似ても似つかない。
 どちらかと言えば、飛行タイプの『風起こし』や、ドラゴンタイプの『竜巻』に近い。
 しかしながら威力が雲泥の差である上に、全体にミュウツーの強大な念動力を帯びている。

 だから、『呼ぶしか』なかった。

 たとえ、同じ名前をした他の技と大幅に異なっていようと。

 『サイコ(超能力)』の『ウェーブ(うねり)』という大枠に、無理やりにでも『当てはめるしか』なかった。 

『だから帰らないし――戻らない。
 これまでの二十四時間のように死を振り撒いて、生を終わらせるだけだ』

 無数の瓦礫を持ち上げる巨大な竜巻の中心で、ミュウツーはエクスカリバーを前に突き出す。
 剣を向けられた先では、巨馬がすでに瓦礫なき大地に蹄を埋め込んで、漆黒の体毛をなびかせながら強引に踏ん張っている。
 その上に跨る巨漢は、竜巻にうろたえる素振りすら見せずに涼しい顔で切り出す。
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