【ポチひとしは】フレオアイドル総合 2【出禁です】 (253レス)
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60(1): 2023/12/12(火)09:50 AAS
「ところが裏面はなかなかそんな気楽なんじゃないさ。これでもいろいろ心配があって、いやになるのだよ」と中野君は強しいて心配の所有権を主張している。
「そうかなあ」と相手は、なかなか信じない。
「そう君まで茶かしちゃ、いよいよつまらなくなる。実は今日あたり、君の所へでも出掛けて、大おおいに同情してもらおうかと思っていたところさ」
「訳わけをきかせなくっちゃ同情も出来ないね」
「訳はだんだん話すよ。あんまり、くさくさするから、こうやって散歩に来たくらいなものさ。ちっとは察しるがいい」
高柳君は今度は公然とにやにやと笑った。ちっとは察しるつもりでも、察しようがないのである。
「そうして、君はまたなんで今頃公園なんか散歩しているんだね」と中野君は正面から高柳君の顔を見たが、
「や、君の顔は妙だ。日の射さしている右側の方は大変血色がいいが、影になってる方は非常に色沢いろつやが悪い。奇妙だな。鼻を境に矛盾むじゅんが睨にらめこをしている。悲劇と喜劇の仮面めんを半々につぎ合せたようだ」と息もつがず、述べ立てた。
この無心の評を聞いた、高柳君は心の秘密を顔の上で読まれたように、はっと思うと、右の手で額の方から顋あごのあたりまで、ぐるりと撫なで廻わした。こうして顔の上の矛盾をかき混まぜるつもりなのかも知れない。
「いくら天気がよくっても、散歩なんかする暇ひまはない。今日は新橋の先まで遺失品を探さがしに行ってその帰りがけにちょっとついでだから、ここで休んで行こうと思って来たのさ」と顔を攪かき廻した手を顎あごの下へかって依然として浮かぬ様子をする。悲劇の面めんと喜劇の面をまぜ返えしたから通例の顔になるはずであるのに、妙に濁ったものが出来上ってしまった。
「遺失品て、何を落したんだい」
「昨日きのう電車の中で草稿そうこうを失って――」
「草稿? そりゃ大変だ。僕は書き上げた原稿が雑誌へ出るまでは心配でたまらない。実際草稿なんてものは、吾々われわれに取って、命より大切なものだからね」
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