【ポチひとしは】フレオアイドル総合 2【出禁です】 (253レス)
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23: 2023/12/12(火)08:07 AAS
「おおおい」
たしかに呼んでいる。不思議な事にその声が妙に足の下から湧わいて出る。
「おおおい」
碌さんは思わず、声をしるべに、飛び出した。
「おおおい」と癇かんの高い声を、肺の縮むほど絞しぼり出すと、太い声が、草の下から、
「おおおい」と応こたえる。圭さんに違ない。
碌さんは胸まで来る薄をむやみに押し分けて、ずんずん声のする方に進んで行く。
「おおおい」
「おおおい。どこだ」
「おおおい。ここだ」
「どこだああ」
「ここだああ。むやみにくるとあぶないぞう。落ちるぞう」
「どこへ落ちたんだああ」
「ここへ落ちたんだああ。気をつけろう」
「気はつけるが、どこへ落ちたんだああ」
「落ちると、足の豆が痛いぞうう」
「大丈夫だああ。どこへ落ちたんだああ」
「ここだあ、もうそれから先へ出るんじゃないよう。おれがそっちへ行くから、そこで待っているんだよう」
圭さんの胴間声どうまごえは地面のなかを通って、だんだん近づいて来る。
「おい、落ちたよ」
「どこへ落ちたんだい」
「見えないか」
「見えない」
「それじゃ、もう少し前へ出た」
「おや、何だい、こりゃ」
「草のなかに、こんなものがあるから剣呑けんのんだ」
「どうして、こんな谷があるんだろう」
「火熔石かようせきの流れたあとだよ。見たまえ、なかは茶色で草が一本も生はえていない」
「なるほど、厄介やっかいなものがあるんだね。君、上がれるかい」
「上がれるものか。高さが二間ばかりあるよ」
「弱ったな。どうしよう」
「僕の頭が見えるかい」
「毬栗いがぐりの片割れが少し見える」
「君ね」
「ええ」
「薄すすきの上へ腹這はらばいになって、顔だけ谷の上へ乗り出して見たまえ」
「よし、今顔を出すから待っていたまえよ」
「うん、待ってる、ここだよ」と圭さんは蝙蝠傘こうもりで、崖がけの腹をとんとん叩たたく。碌さんは見当を見計みはからって、ぐしゃりと濡れ薄の上へ腹をつけて恐る恐る首だけを溝みぞの上へ出して、
「おい」
「おい。どうだ。豆は痛むかね」
「豆なんざどうでもいいから、早く上がってくれたまえ」
「ハハハハ大丈夫だよ。下の方が風があたらなくって、かえって楽らくだぜ」
「楽だって、もう日が暮れるよ、早く上がらないと」
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