[過去ログ] 【剣も魔法も】ヘヴィファンタジーTRPGスレ【重厚】 [転載禁止]©2ch.net (273レス)
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232: ラウテ ◆uUre4dQFyk 2016/02/01(月)23:18 0 AAS
時刻は未だ朝方、オメルタ邸は煙に包まれ混迷している様子が伺えた。
ラウテが召還したショゴスに加え、リタリンが送り込んだバントラインへの対応のため情報が交錯しているのだ。
本来指揮官であるはずの焔月や喝破らの姿が見えないことも、その影響のひとつだろう。
ショゴスは数名の丙種冒険者を捕食する事で、その体積は減るどころか増えてさえいた。

囲んで殴ると言う戦法が通じないと察した冒険者たちは、包囲を広げ安全な距離からの射撃を基本とした戦法へと切り替え始める。
しばらくはその戦法が効果的であると思われていたが、状況は一変する。
十分に距離を空けていたはずの冒険者たちが、攻撃を受け倒れ始めたのだ。
最初は何が起きたのか分からなかった。しかしよく見ると、倒れた冒険者の体には深々と「牙」が突き刺さっていたのである。
ショゴスは闇雲に暴れていた訳ではない。周囲の状況を把握し、学習する事の出来る生き物なのだ。
体内に生成した牙を射撃の弾として扱うことを、この状況から学習したのだ。
全方向に収縮できる筋肉のような構造を持つショゴスにとって、体をそのように変化させること自体は難しくない。
しかし、優れた知性を持たずして、きわめて効率的な自己進化を促すことは不可能であろう。

遠距離攻撃を学習したショゴスの周囲では、被害が広がる一方だった。
倒れた冒険者は捕食され、新たな弾薬の材料として吸収されていく。
臆病な冒険者たちはその場を離脱し、数名の冒険者と鋭鋒のみが残されていた。
鋭鋒はその卓越した槍捌きで、ショゴスの復元速度を上回る攻撃を与える事が出来る。
そう思われていたが、攻撃が射撃に移行した現在、両者の戦力が拮抗したのだ。
たった今思いついたとは思えないほどに、ショゴスの放つ牙の弾丸の速度は速い。
否、明らかにそのスピードは進化し続けていた。より効率的な射撃を模索しているのだ。
不定形故に射撃モーションも存在せず、射撃精度と弾速は放たれるたびに上がってゆく。
鋭鋒がそれを見切れなくなるのも、時間の問題であろう。

「獣使いから魔女へ…そのまま真っ直ぐ…15秒後に二時方向から敵影、隠れて」

ラウテは騒ぎに乗じて身を隠し、ソナーを用いてリタリンの誘導援護を行っていた。
窓から侵入したそこは屋敷の二階に位置する客間のひとつ。周囲の状況を探るには絶好の位置取りだ。
人払いの魔法は感知される恐れがあるため、あえてそれは使用しない。
壁は頑丈な石造りであったが、床は木製で音を通しやすい。
床を通じて十分に敵を察知する事が出来たのは幸いであった。
屋敷の地下へと至る通路は隠蔽されていたが、音を頼りに入り口を見つけるのは容易いことだ。
一階の厨房の床板に偽装された入り口は、おそらく知る者は少ないのだろう。
この混乱の最中では見張りの者もおらず、辿り着ければ侵入は容易だと思われた。

リタリンを誘導する一方で、ラウテは同時にヴィクトルの動向もまた窺っていた。
状況は劣勢、しかし援護を要求しないのは彼なりの策があってのことだと察せられた。
彼はおそらく、甲種を釣る事が目的なのだろう。彼なりのこちらへの援護なのだ。
ならばこちらは予定の任務をこなすのみ。ラウテは物陰に身を隠したまま魔笛を奏で続ける。

ソナーの魔法は音を媒体に周囲を探知する魔法だが、息が途切れればその効果は失われる。
しかしその音色は途切れることはない。ラウテは既に十分ほど、その音を保ち続けていた。
循環呼吸法、と言うものがある。実際に存在する楽器の奏法の名称だ。
鼻で息継ぎをしながら、同時に口は息を吐き続けるという離れ業を成す奏法である。
熟練した奏者のみが奏でることが出来るというそれを、ラウテは若年にしてマスターしていたのだ。
途切れぬ音は屋敷中を駆け巡り、数十メートルに及ぶ範囲を手に取るように彼女に伝える。
魔笛を奏でている最中は身動きがほとんど取れないのが欠点だが、身を隠していれば安全だろう。
もちろんソナーの魔法は自身の周囲も探知しているため、この環境において完璧に近い安全を確保していた。
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