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【剣も魔法も】ヘヴィファンタジーTRPGスレ【重厚】 [転載禁止]©2ch.net (273レス)
【剣も魔法も】ヘヴィファンタジーTRPGスレ【重厚】 [転載禁止]©2ch.net http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/
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189: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2015/12/31(木) 19:55:39.12 0 オメルタ傘下の乙種冒険者『鋭鋒』は随所から火の手の上がる街を駆けずり回っていた。 これだけ走り回って額に汗の一つもかいていないのは日頃の鍛錬の賜物であるが、 額の下の双眸は、怪訝と驚きと釈然としなさ、多種の感情によって複雑に歪んでいた。 やっとその実力を見ることができると期待していた甲種『地走』。 しかし彼女は最初に訪れた薬屋の安否を一人で確認した後、鋭鋒を置いて疾走していってしまった。 向かう先は先ほど高所から弓を降らせてきた狙撃手だ。居所が知
れれば近づいて殴りに行くのはまあわかる。 しかし地走のサポート、言ってみればお目付け兼小間使いとしてつけられた鋭鋒は、地走から目を離すわけにはいかないのだ。 「しっかしすげえ魔法だな。あれが『地走』の時空歪曲……」 立ち上る煙を『停止』させ、それを足場にして地走は空を疾走する。 試しに鋭鋒も登ってみようとしたが、地走が使ったそばから解除されていくらしくすっ転んでしまった。 話には聞いていたが、改めて目の当たりにするととんでもない高位魔法だ。 魔法の心得のない鋭鋒には専門的なことはわからないが、十三階梯は余裕で超
過する禁呪の領域であろう。 あんなものをまるで呼吸でもするみたいに乱発できる出鱈目な魔力、まさに甲種の面目躍如といったところか。 とまれかくまれ、こうなってしまっては地走を追いかける手段はない。 それよりも『砂漠の海亀亭』の方を押さえて、それから合流した方がスムーズにことが運ぶだろう。 狙撃手の人着は鋭鋒も確認した。先の処刑台で乙種二人を制した魔女狩りだ。紛れも無い掛け値なしの凄腕である。 それでもなお、甲種には敵わないだろうという確信めいた予感があった。 ただの地上げ屋に過ぎなかったオメルタを、フロンティアラ
インの支配者にまで躍進させた礎の一つ。 数々の利権渦巻くこの街で、これまで何度も訪れた抗争、戦闘、小競り合い…… そのすべてに勝利してきたのが地走であり、甲種冒険者なのだ。 鋭鋒が『砂漠の海亀亭』にたどり着いた時、既に消火活動はヤマを超えていた。 近隣住民の手によって延焼防止に周囲の建物が崩されていく。 その中で、破壊消火の音頭をとっていた自治班長に鋭鋒は声をかけた。 オメルタが支配するこの街のこと、この班長も当然オメルタ傘下の人間で、鋭鋒とも顔見知りだった。 「状況はどんな感じだい?」 「おお、ボスの所のあん
ちゃんか。今ちょうどぐるっと周囲の建屋を潰したところさ。 他のところも順調だって聞いてる、あとは消防隊が来るのが先か、燃え尽きるのが先かって所だな」 水源が限られているこの街において、破壊消火は非常に有効な消火手段だ。 しかし消火と言っても直接火を消すわけではないので、たった今燃え盛る大衆食堂自体に手出しをすることはできないのだ。 「そりゃ良かった。ここの店主は?」 「それがな、店員を脱出させた後に家財を取りに行くって中に残っちまって。 俺たちゃ止めたんだがな。命あっての物種だろうに、なんだってこんな……
」 班長は心底気の毒そうに言った。 彼には、そして鋭鋒も知る由のないことだが、ここはオメルタの薬物精製所も兼ねている。 家財はともかく上納分の薬物だけでも確保しておかないと自分に明日はないと店主も理解しているのだろう。 「他になんか変わったことはあったかい」 魔女狩りに関する情報が何かないか、確認するつもりで鋭鋒は尋ねた。 班長がそういえば、と手を打つ。 「逃げてきた客の誰かが、まだもう一人客が店内に残ってるって言ってたな。 非常時で曖昧な情報だし、火勢がこんなだからまだ確認はとれてないんだが……。 苔みた
いなローブを着た、肌の白い陰気な女だって話だ」 ―――――― http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/189
190: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2015/12/31(木) 19:56:14.60 0 時は少し遡り、まだ無事な『海亀亭』のテーブルの一角。 リタリンはいつものローブを着て給仕の到着を待っていた。 隣にはラウテから借り受けた犬が行儀よく座っていて、撫でようとしたリタリンの左手をべろべろと舐める。 これまで犬と言えばスラムで人の吐瀉物を貪るギラついた眼の汚い野良犬ぐらいしか見たことがなかったので、 純粋に好奇心と好意をこちらに抱いてくれる飼い犬とのふれあいは温かいものをリタリンの胸にもたらした。 その犬が、厨房からの匂いを嗅ぎとって、小
さくひと吠えした。 「みつけた?」 ご褒美の干し肉を小さく割いて与え、ついでに自分も咀嚼する。 ここの油と香辛料の匂いは、空腹の身には辛すぎる。 さて、早速店主を押さえるべく立ち上がる、すると犬が更にもう三回鋭く吠えた。 >「リタリン、火事よ。それも魔力を感じる…」 店の裏手で待機していたラウテから遠話が入った。 ぎょっとして見回せば、天井のあたりが黒く煤けて煙が漏れ始めていた。 屋根の上で何かが燃えているのだ。 「えっ、えっ、どうしよう。魔力?誰かが火をつけたの?」 混乱収まらぬままに通行人の一人が店に飛び
込み、火事だと客達に伝える。 昼前でさほど客入りがあるわけではないのが幸いしたのか、急ぎつつもパニックとはならず避難が開始された。 リタリンは他の客に先を譲りながら、気を落ち着かせようと深呼吸して、噎せた。 煙に巻かれた犬は薄情にもリタリンを置いて逃げ出してしまった。 「ごほっ、ごほっ……う、なんかいやな予感が……」 屋根からの出火だとすれば厨房の火の不始末が原因ではない。完全に不審火だ。 そして出火元の位置関係的に、火種は上から投げ込まれる形で、通行人には見えない距離から置かれたことになる。 そんな芸当ができ
る人間には心当たりなど一つしかないのだが――これ以上考えるのはやめよう。胃が保たない。 >「リタリン、今なら気付かれずに店主を確保出来る…やれる?」 「やってみるわ。裏口をお願い」 火は完全に建物全体に回っており、既にすぐそばの柱まで燃え始めていた。 じきに火のついた天板が降ってくるようになるだろう。そうなる前に脱出しなければ。 気休めにテーブルに置かれた水差しの中身を被り、湿気ったローブで頭を覆いながらバックヤードへ向かう。 果たして、『海亀亭』の店主はそこにいた。一心不乱に何かをかき集めて鞄にしまってい
る。 火は裏にも回ってきており、取りこぼしと思しき粉が焼けて異臭が漂っていた。 「ごめんなさい」 こちらを見ようともしない店主の後ろ頭目掛けて、杖を振り下ろした。 水晶球と頭蓋骨の激突してごちんと音を立て、店主は昏倒して膨れた鞄の上に沈む。 気絶させてから、しまったと思った。男一人を抱えて店から脱出するなんて到底ムリだ。 だからといって薬だけもらって店主を見捨てるわけにはいかないし…… >「…冒険者が近付いてる。男が一人、槍みたいなものを持ってる。殺すのは難しいかも」 ラウテから注意喚起の遠話が飛んできた。
弾かれるように振り向く。その瞬間、焼け焦げてもろくなった壁が爆ぜるようにぶち破られた。 瓦礫を蹴り飛ばしながら一つの人影が入ってくる。 背が高く、がっしりとした体型の男。手には長槍を持っていて、この石突で壁を破ったのだろう。 浅黒く焼けた肌、彫りの深い精悍な顔つき、頭に巻いたターバン。 リタリンはこの男についても一年の調査で知っていた。オメルタ傘下の用心棒だ。 槍使いの乙種冒険者、『鋭鋒』の異名を持つ手練である。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/190
191: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2015/12/31(木) 19:56:35.58 0 「――――ッ!!」 「おい大丈夫か!?」 鋭鋒はリタリンと、その後ろで倒れる店主を見て気付けのように叫んだ。 燃え盛る床面を震脚めいた踏み込みでかき消し、何もないかのように歩いてくる。 彼は店主の首に指をあてて脈を確かめたあと、その巨体を軽々と担ぎあげた。 「悪い、そこのパンパンの鞄を持ってきてくれ。大事なものみたいだからな」 生きた心地がしなかったリタリンだが、そこでようやく状況を理解した。 自分は鋭鋒に、店主を助ける為に飛び込んだ善意の市民だ
と思われているのだ。 よく考えればあの処刑台には身代わりを立てたし、オメルタ側はリタリンの顔を知らないのである。 トレードマークのローブも、深緑はドルイドの民族色なのでそう珍しいものではない。 リタリンもラウテも遠距離から遮蔽物越しに魔法戦を繰り広げていた為、索敵した氷城しか人着を知る者はいない。 つまり、あの場で直接戦闘したヴィクトル以外は面が割れていないのだ。 『ごめん、オメルタの手下と接敵したわ。乙種の槍使い、"鋭鋒"って男……。 でもこっちの顔はバレてないから、火事の巻き込まれ被害者と思われて
るみたい』 声には出さず、遠話でラウテとヴィクトルに連絡を入れる。 ラウテは裏口で待機中、やろうと思えば挟み撃ちも可能だ。 しかし、この段階で顔の知られていないアドバンテージを捨ててしまって良いものか……。 思案していると、店主の身体を自分に固定し終えた鋭鋒が相好を崩して言った。 「大丈夫だ、俺がちゃんと外まで送ってってやるから。しかし迷惑な話だぜ、昨日の処刑台の大立ち回りを見たか? この火事、あの魔女狩り野郎が火ィ着けて回ってるんだよ。……どうした?顔色が余計に悪くなってんぞ」 (何考えてるのあの短足〜〜〜
〜ッ!) 鋭鋒は、おそらく何も考えずにリタリンを安心させようとして、あるいは魔女狩りの陰口のつもりで言ったのだろう。 しかしそれを聞いたリタリンのただでさえ白い顔が、もはや病的なレベルにまで青くなった。 まさかとは思っていたが、しかしそれでもあの悪魔のような男に最後の良心を期待してしまった。 いくらなんでも仲間が今まさにいる店に、予告もなしに火を放つなどしないだろうと、僅かな願望に縋っていた。 おかげでこちらは煙にまかれて顔は煤だらけ、一張羅のローブもボロボロになってしまった。 その件で文句の一つも垂れたくなった
が、ヴィクトルはヴィクトルで取り込み中のようだ。 「さっき確認したけど、この先に裏口があるわ。そっちから出ましょう」 鋭鋒に頼まれた通り、膨らんだ店主の鞄を担ぎ上げながらリタリンは脱出路を示した。 裏口はまだ火に巻かれていない為、そこの使用を提案することは不自然には映らない。 扉を開けた先にはラウテが待機しているはずだ。 『これから槍使いと一緒に裏口から出るわ。適当に話を合わせて』 ラウテが合流するのを鋭鋒に不審がられない為に、適当なカバーストーリーが必要だ。 このレベルの冒険者を相手に下手に隠れて尾行するよ
りは、無害を装って近づいてしまうほうが安全だろう。 奇襲するのは、ヴィクトルと合流してからでもいいのだ。 燃え盛る店内から、店主を担いだ鋭鋒を伴って、リタリンは裏口から脱出した。 【鋭鋒に対し無害を装い、店主と薬を確保して裏口から脱出】 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/191
192: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2015/12/31(木) 19:57:57.90 0 >>188 【ご挨拶が遅れてすみません!すごく好きなスタイルなので是非またご一緒させてください!】 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/192
193: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/01/03(日) 03:59:08.68 0 人混みに紛れ、ヴィクトルは水鏡の魔法を纏う。 どこにでもいるような庶民の姿に変装――同時に手近な通行人の衣服に火を点ける。 結果――大混乱が起こる。 人の波に紛れてヴィクトルは細い路地へと身を隠す。 そして背景へと同化し――跳躍。屋上の縁に指を掛ける。 そのまま上方の様子を伺う。 地走は別の屋上から地を見下ろし、しかし動きあぐねていた。 逃げ惑う群衆から水鏡を纏ったヴィクトル一人を見つけ出すのは困難だ。 まさしく干し草の山から一本の針を見つけ出すかの如く
至難。 その干し草の山の中に、針があるとは限らないのであれば、尚更に。 (……これで仕切り直しだな。さて、それじゃもう一度「使わせて」みるか) 瞬間、地走が背後を振り返った。 ヴィクトルの位置から、彼女の背後に投げナイフが迫り、しかし傷を負わせる事なく静止したのが見えた。 (……誰の仕業だ?いや……奴らが誰に恨まれていても不思議じゃないか……なんにせよ、好都合だ) ヴィクトルは屋根の上に登り、矢を弓に番える。 そしてその鏃に火を灯してから、風魔法による軌道を欺瞞を用い、地走へと射掛けた。 火矢は薄紫の軌跡を描き
ながら地走へと迫り――今度は彼女の直前、空中で静止する。 (……なんだ?今のは……さっきと、何かが違う) その現象にヴィクトルは微かな違和感を覚え――しかし違和感以上には至らない。 >『これから槍使いと一緒に裏口から出るわ。適当に話を合わせて』 (初戦はこんなもんか。とりあえず……一度距離を取るか) ヴィクトルは思考を切り替え、その場を離脱。 ただし最後にもう一度火矢を、十数本、今度は街の中央区の上空へと放ってから。 中央区は公共の施設と、極一部の上流階級が住む別荘区がある。 (まぁ、どれが地上げ屋の屋敷かな
んて、俺はまだ知らないんだけどな。 だが……お前には、そんな事は分からない。 それに……お前は強い。だから――他の弱い奴らが信用出来ない、だろ?) 地走は強い。その気になれば、富も名声も思うがままに得られるだろう。 それでも地上げ屋の飼い犬に甘んじているのは、強い、強すぎる忠誠心があるからだ。 だからこそ、彼女は可能性を捨て切れない。 地上げ屋の屋敷に火が放たれ、飼い主の身に危険が及ぶ可能性を。 またヴィクトルには知り得ない事だが、地走は先ほど自身のお目付け役である鋭峰を置き去りにしてしまっている。 この事も、ヴ
ィクトルにとっては功を奏していた。 (正直な所、もう少し探りを入れておきたかったがな。 次からは、向こうも対策を講じてくるだろう。きっとやりにくくなる。 せめて……堕廃のが釣り上げた奴は、削っておくか) 中央区へと疾駆する地走の背が見えなくなってから、ヴィクトルは深く息を吐く。 それからこめかみを伝う緊張による汗を拭い、改めて深呼吸した。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/193
194: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/01/03(日) 04:44:12.33 0 『……よう、さっきは災難だったな。だが怪我の功名か、なかなかいい状況になったじゃないか』 風魔法による遠話で魔女と魔笛の少女に声を飛ばす。 『ソイツはここで始末しておきたい。店主の方も、少し気になる事がある。確保したい所だな』 ヴィクトルは地上へ飛び降り、路地を駆け抜け『海亀亭』を目指す。 最後に地走を見た地点から十分に離れてから再度屋上へ。 そして鋭峰を視認出来る位置まで移動、弓に矢を番え――射掛ける。 視界外からの征矢を、鋭峰はいとも容易く――槍
すら用いずに素手で弾いた。 直後に槍を抜き放った彼は、棒高跳びの要領で屋上へ、一瞬の内に昇り詰める。 そして――そのまま動かない。 (出来るな、コイツ。実力があり……判断もいい) 鋭峰はヴィクトルを追わないし、仕掛けない。 彼は目の前の魔女狩りが、所謂邪道的な戦いを得手とする事を知っている。 一度は逃走を果たした魔女狩りがここへ戻ってきたという事は、何か明確な目的があるからだという事も。 だから負わず、攻めない。 この場にはまだ消防隊が到着していない。 つまり――遅かれ早かれ、鋭峰とヴィクトルは他者から目視される
。 そうすれば、増援が――地走が再びこの場へ現れるのも時間の問題だ。 仕掛けるのはそれからでいい。 彼は与えられた役目に、地走の援助に忠実だった。 その上で、位置取りも絶妙だ。 細剣の間合いでは、屋根から屋根へ飛び移らないと仕掛けられない位置に立っている。 ヴィクトルの方から攻めようにも、不利な勝負をする羽目になる。 (こういう奴は………やりにくい。ただ強いだけの奴よりも、遥かに) ヴィクトルは、動きあぐねていた。 それでも瑞鉄で二振り目の細剣を作り、一振りは切っ先を鋭峰へ。 もう一振りを振り被り、地上の魔女と少
女へ投擲可能な構えを取る。 鋭峰が二人に、人を呼べと命じる事を牽制しているのだ。 もしそうなれば、二人がそれに応じないのは不自然だ。警戒される。 だが応じられれば今度はヴィクトルが不利な状況に立たされる。 どう転んでも損な状況になってしまう。 ヴィクトルは、それを嫌った。 つまり――状況の打開を望んでいる、という事だ。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/194
195: ラウテ ◆uUre4dQFyk [sage] 2016/01/04(月) 01:55:32.47 0 >『ごめん、オメルタの手下と接敵したわ。乙種の槍使い、 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/195
196: ラウテ ◆uUre4dQFyk [sage] 2016/01/04(月) 01:57:14.22 0 >『ごめん、オメルタの手下と接敵したわ。乙種の槍使い、"鋭鋒"って男……。 > でもこっちの顔はバレてないから、火事の巻き込まれ被害者と思われてるみたい』 それを聞いてからのラウテの行動は非常に素早かった。 まず、召喚していた犬たちを撤収させ、魔力を回収する。そして、次なる召喚へ移った。 圧縮した高速詠唱のように、速く複雑で奇怪な旋律。それはこれまでのどの召喚よりおぞましいもの。 暫くの『呪文』の後その場に召喚されたのは、巨大な漆黒の不定形
生物だった。 以前召喚したスライムに似ていなくもないが、その体からは出鱈目に触手や目玉が生成されては消えている。 「お願いショゴス、あとで餌はあげるから言う事を聞いて」 瘴気を噴出していたその生き物……ショゴスは、それを聞くと大人しくなり、テケリ・リと一声啼いた。 とある魔術師が召喚に成功し、扱いきれず村ひとつを地図から消した化け物だ。詳しい出自は不明である。 村が襲われた時点で討伐隊が組まれ、乙種魔法使いと壁役が十人がかりで討伐に成功した、とされている。 その十人のひとりだったラウテが、仲間たちを出し抜いて契
約を行い、辛うじて使役に成功したものだ。 元は鉄道車両ほども大きかった体も戦闘で消耗し、現在のところ大人三人分程度のサイズになっている。 正式な契約とは些か勝手が違ったためか、また知性を持っているため命令をほとんど聞かないのが難点だが、戦闘能力は恐ろしく高い。 基本的に物理属性の攻撃のほとんどを無効化する上、魔法耐性もそこそこ強い。 更に、欠片でも残っていればそこから再生するという強靭な生命力まで備えている。 人工的な生命体である可能性が高いとラウテは考えているが、誰が何のために作ったのかは謎である。 記録に残っ
ているのは、召喚した魔術師はそれをショゴスと呼んでいた、という事だけだ。 出て来た鋭鋒に気取られないよう、近くの民家の屋根裏に姿を隠すよう命令する。 するとショゴスは、その体躯からは想像出来ないような跳躍で屋根裏へと消えた。 >『これから槍使いと一緒に裏口から出るわ。適当に話を合わせて』 >『……よう、さっきは災難だったな。だが怪我の功名か、なかなかいい状況になったじゃないか』 >『ソイツはここで始末しておきたい。店主の方も、少し気になる事がある。確保したい所だな』 手にしていた魔笛を鞘へと戻し、ついでに自分
の鼻をぶん殴る。 裏口から出て来た二人が目にしたのは、その目に涙を溜めた少女の姿だった。 「お姉ちゃん! 心配したんだからね! ラウテの心臓がどうにかなりそうだったんだから…」 そう言ってリタリンに飛び付くラウテ。もちろん全ては演技である。 それを微笑ましく見守っていた鋭鋒だったが、瞬間自身に向けられた脅威に気付き、腕を振るう。 叩き落されたのは一本の矢。間違いなくヴィクトルのものだ。ラウテは小さく悲鳴を上げてみせた。 射掛けられた鋭鋒は、ヴィクトルのいる屋根へと跳ね上がる。都合良く、ショゴスの潜んでいる民家だ
。 睨み合う両者…その足元で、化け物は息を潜め出番を待ちわびている。 合図をする必要すらなかった。動きを止めた獲物を察して、屋根を突き破り襲い掛かるショゴス。 その姿は醜悪の一言で表すには禍々し過ぎた。無数の牙と触手に覆われたそれを表現する言葉は見つからない。 完全な不意打ちだったが、鋭鋒は強く跳躍することでその牙から逃れる。 しかし同時にショゴスは触手を伸ばし、鋭鋒の足を掴んで屋根へと叩き付けた。 鋭鋒は槍で屋根を突き通し威力を軽減させていたが、ある程度のダメージは負っているだろう。 『その子、こっちにも襲っ
てくるから気をつけてね』 今更ながら、そう二人にだけ聞こえるよう声を飛ばしたラウテだった。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/196
197: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/01/06(水) 23:49:24.19 0 この街で起きた、オメルタ傘下を含む複数の店舗での同時多発火災。 その調査にやってきた雇われの冒険者・鋭鋒は、救助に踏み込んだ店内で店主と共に取り残された1人の女性客と出会う。 彼女の協力を得つつ、火の手の回っていない裏口から脱出したところから今回の物語は始まる―― >「お姉ちゃん! 心配したんだからね! ラウテの心臓がどうにかなりそうだったんだから…」 裏口から出た途端1人の少女が飛び出して、共に脱出した苔色ローブの女性客に抱きついた。 二人は
どうやら姉妹で、火災に巻き込まれた姉のもとへ妹が駆けつけたところのようだ。 「あ、ご、ごめんね、心配かけちゃって……」 姉の方、苔女はなんとも言い難い微妙な表情をしていたが、怖ず怖ずといった具合に少女の肩を抱き返す。 なんだろう、あまり姉妹仲が良くないのだろうか。しかし他人の家庭事情に首を突っ込むことはない。 とにかく姉妹が無事に再会できたことを部外者ながら喜んでおこう――ほっと一息ついたその瞬間。 ビュオ!と微かな風切り音を耳が捉えた。 脊髄反射ではなく思考を経由した上で腕が動いた。 羽撃きに近い速度で右手が
閃き、指二本の間に飛来する矢の軸を捉える。 そのまま指先の動きだけで軌道を逸らし、明後日の方向へと弾き返した。 「伏せろ!」 未だ抱き合う姉妹に鋭く警告し、自身は抜き放った槍を用いた跳躍で手近な民家の屋根に上がる。 今の狙撃は明らかに自分を狙っていた。だからまず射線に身を晒すことで的を絞らせ、周囲への誤射を防ぐ。 鋭鋒自身に矢を射掛けられる分については問題じゃないという絶対の自信を裏付けとした動きだ。 「出やがったな、魔女狩り。おいおいおい姐さんを撒いたのか?マジかよ」 鋭鋒の立つ民家から、路地を挟んだ向かい
の屋根の一つの人影があった。 たった今射撃したばかりの弓をしまい、ふた振りのレイピアを諸手に構えるその姿。 間違いない、処刑台で華翼を圧倒して見せた魔女狩りのエルフ男だ。 地走が追跡していたはずだが、彼女の姿は見える範囲にない。まさか甲種に追われて振り切ったと言うのだろうか。 (どうなっていやがる……一連の火事から何かが変だ) 処刑台で不覚をとって以来、敵に先手をとられ続けている。 華翼と氷城が捕虜になっている以上ある程度は情報が漏れることも覚悟はしていたが、 オメルタの切り札・地走を動員してもなお魔女狩りを捉え
ることができていない。 甲種冒険者に対する絶対の信頼が、そのままこの現状への不審へと裏返る。 つまりそれは、鋭鋒を取り巻くこの状況のすべてが魔女狩りの罠なのではないか、という疑念だ。 例えばそう、火災現場に現れたこの苔ローブの女も本当に偶然巻き込まれたのか……? そんな疑心暗鬼に突き動かされ、魔女狩りへの牽制を続けながら苔女を見る。 鋭鋒は幾多もの戦場で生き残ってきた手練だ。 アイコンタクトで無言の連携が成り立つのと同じように、目を見ればその人物の敵意や悪意の所在を推し量ることができる。 (……あ、シロだこの女、
めちゃくちゃすげえ顔で魔女狩り睨んでる) 唇を噛み締め眼を見開き、全力で魔女狩りを睨めつけていた。おおよそ仲間に向けるような表情ではない。 完全に火災に巻き込んでくれたはた迷惑な魔女狩りに向ける怒りに染まった目だった。 まあ命に関わる窮地を脱した途端、妹共々人質のようにレイピアを向けられているのだから納得だ。 目撃者は始末するつもりなのか、これではこの姉妹に増援を呼ぶよう伝えることもできない。 逃げ出した彼女達に、魔女狩りが後ろから射掛けることなど容易に想像できてしまう。 「異端審問会が既得権益の保持に必死、っ
て風じゃねえよな。魔女を処刑したいだけなら、秘密裏にやりゃ良かった。 裏で誰が糸引いてる?本国の軍部か、枢機院か……飯屋焼き払って教会でもおっ立てるつもりかよ」 言うまでもなく、鋭鋒には魔女狩りが単独でオメルタファミリーに喧嘩を売っているなどという発想はなかった。 フロンティアラインつまり開拓拠点でもあるこの街は伸びしろのある利権が地下資源の如く豊富に眠っている。 オメルタが手にしたものもその一つであるし、宗教家達にとっても裸足の人々に靴を売るようなものだろう。 開拓民に好き勝手やらせておいて、十分育ったらう
まみのあるところだけ収穫する、ありふれたやり口だ。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/197
198: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/01/06(水) 23:49:53.39 0 (この膠着も奴の段取りだとしたら、ちっとやべえな) 増援を期待できるのは鋭鋒だけではないということだ。 地走の消息のわからぬいま、下手に時間を稼がれて魔女狩りの仲間が駆けつけても面白く無い。 打って出るべきか?しかしこちらに踏み出させる罠の可能性も高い。 一撃で魔女狩りを仕留める自信はあるが、敵の狡猾さにおいては油断は絶対にできない。 伸るか反るか、永遠のようにも思われたにらみ合いは、突如の闖入者によって破られることとなる。 鋭鋒の足元、下の民家から
屋根を突き破って巨大な何かが飛び出してきたのだ。 それは、本当に"何か"としか言い表しようのない、生き物に対する冒涜さえ感じる魔物だった。 ゲル状の不定形な体躯に、寄せては返す波の如く目玉や触手が浮き沈みしている。 その無数の目玉の一つが鋭鋒を捉え、無数の触手を伸ばしてきた。 「何だこいつ……!」 対する鋭鋒の判断は素早く、即座に跳躍することで宙へ逃れる。 だがそれは失敗だった。追従するように音もなく迫る触手により、鋭鋒は下方向へとつかみ落とされる。 「がっ……」 屋根へと頭から叩きつけられた。瞬間的に
槍を着地点へ突き立て、衝撃を『伝導』させる。 鋭鋒のぶち当たった箇所から放射状に亀裂が走り、代わりに鋭鋒自身へと向かう威力が軽減された。 しかし完全なる不意を打たれた上に頭へのダメージは無視できるレベルではない。 ぐらつく視界の中、それでも彼が反撃できたのは適切なダメージコントロールが出来ていたのと、あとは超人的な反射神経の賜物だ。 鋭鋒を掴んでいた触手が一瞬で細切れになり、不定形の土手っ腹にも大きな風穴が一つ空いていた。 彼の持つ長槍は瑞鉄で出来ており自在に伸縮が可能、叩きつけられる一瞬のうちに無数の刺突を浴
びせていた。 「召喚狙撃……魔女狩りの増援か!」 昨日の処刑台で見たマジックイータースライムのように、距離無視で魔物を召喚してきた。 やはりと言うべきか、魔女狩りもまた増援を待っていたのだ。 こいつはマジックイーターと違って魔力吸収はしないようだが、こちらの刺突が効いた様子もない。 物理攻撃を無効化するタイプだ。 「クソ……おい逃げろ、巻き込まれるぞッ!」 眼下で妹と共にオロオロしていた苔女に声をかける。 もともと白い顔が死人みたいに青ざめていて、やはり巻き込まれてしまっただけの一般人だと確信する。 彼女が妹を
引っ張って路地の向こうに消えるのを待たずして、不定形の魔物が再び襲いかかってきた。 「お前の相手なんかしてる場合じゃねえっての!」 今度はバックステップで触手の範囲から難なく逃れるが、依然として魔女狩りはこちらと対峙しているのだ。 鋭鋒からの牽制も活きているらしく迂闊に攻めてはこないが、こちらは都合2つの敵に同時に注意を払わなければならない。 魔女狩りほどの手練を相手に、またこの厄介な魔物を相手に、それは骨の折れる話であった。 (方針は決まりだ……時間を稼いで姐さんを待つ。あわよくばどっちか仕留める!) 化物は
見たところ無差別に破壊を繰り返している。下手に逃げまわって行動範囲を広げれば被害が拡大することは必至だ。 そして魔女狩りはそれを厭わない。街を護る側の都合などお構いなしだ。だからまずはその思惑から切り崩す。 鋭鋒は踵を返し、屋根から屋根へと飛び移っての移動を開始した。向かう先は、レイピアふた振りを掲げた魔女狩りだ。 奴の弓であれば真正面から撃たれても躱すか払うかできる。受け流せば背後の化物に当って足止めになる。 魔法で攻撃してくるとしても、仲間の使い魔である化物への誤爆を考えて広範囲の攻撃は難しいだろう。 そう
やって近づき、接近戦に持ち込めば、リーチに分のある槍で遠間から攻撃できる。 疾走しながら、槍を抱えて走る動きからまったくのノーモーションで鋭鋒は槍を魔女狩りめがけて伸ばした。 カメレオンの舌よりも素早く伸張する瑞鉄の槍は、所見で躱すのは難しいだろう。 【ショゴスをトレインしつつヴィクトルへ肉迫。同士討ちを恐れて行動の選択肢を狭める構え】 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/198
199: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/01/10(日) 03:33:48.47 0 >「異端審問会が既得権益の保持に必死、って風じゃねえよな。魔女を処刑したいだけなら、秘密裏にやりゃ良かった。 裏で誰が糸引いてる?本国の軍部か、枢機院か……飯屋焼き払って教会でもおっ立てるつもりかよ」 「俺の目的が知りたいのか?俺は弱い者いじめをする奴が嫌いなのさ。それを金儲けにする奴はもっと嫌いだ」 鋭鋒の問いにヴィクトルが答える。 小馬鹿にするような口調と共に、口元には嘲笑を浮かべながら。 たった今述べた言葉が彼の本心だとは、とても思えないだろ
う素振りを、彼は意図して行っていた。 その直後だった。 魔笛の少女が召喚した名状しがたき何者かが、鋭鋒へと襲いかかったのは。 迫る無数の触手を跳躍して躱した彼を、しかし「何か」は逃がさない。 死体の喉から溢れる血液の如く更に長く伸びた触手が、鋭鋒の足を掴む。 そして 先程まで立っていた屋根に、今度は頭から引き戻された。 >「がっ……」 まともに受ければ頚椎が折れて死に至る攻撃――しかし鋭鋒はそれを凌いでいた。 自分の体に下方向への加速が完全に掛かる前に、自身を掴む触手を切断。 更に「何か」の土手っ腹を貫いていた。
凄まじい槍捌きだった。その斬撃の速度はヴィクトルのそれに勝るとも劣らない。 「体が完全に地から離れ、踏ん張りの利かない状態で放った」にも関わらず、だ。 「武人」としての素質は、鋭峰の方が数段上だ。 >「お前の相手なんかしてる場合じゃねえっての!」 鋭峰の槍を受けて、しかし「何か」はまるで怯んだ様子を見せなかった。 腹部に穿たれた風穴もいつのまにか塞がっている。 そして今もなお執拗に鋭峰へと付き纏っている。 だが、彼は乙種の中でも上位の、戦闘技能に長けた冒険者。 その状況下でも致命的な隙を一切見せない。 位置取り
や、回避の動きに攻撃の予備動作を織り交ぜる事で、ヴィクトルに対して不利な状況を作らない。 『……今の内に、その店主を運ばせろ。確保しときゃ何かしら聞き出せるだろ』 ヴィクトルに出来るのは、眼下の二人にそう指示する事くらいだった。 それほどまでに、彼と鋭峰の、真っ向勝負における実力差は大きかった。 と、不意に鋭峰が大きく動く。 彼は「何か」を槍の柄で自分の後方へと大きく投げ飛ばすと同時に、ヴィクトルに対して距離を詰めてきた。 「来るか……!」 彼我の距離は殆ど一瞬で半分まで縮まった。 同士討ちを恐れて、と言うの
は理由としては軽微だ。 ヴィクトルは同士討ちする事など厭わない。される事への警戒はあったが。 だが距離を一瞬で詰められた最大の理由は――単純に鋭峰の跳躍が鋭かったからだ。 そして、半分未満にまでなった両者の距離は――既に鋭峰の間合いよりも短い。 放たれるのは疾走した状態から上体から腰にかけての捻転を用いた、予備動作のない刺突。 今度は地に足の着いた、万全の状態からの一撃。 瑞鉄による伸張と共に繰り出された突きは――ヴィクトルの眼にも殆ど閃光のようにしか映らない。 それでも彼は辛うじて鋭峰の刺突に反応していた。 「
何か」を切り刻み、貫いた槍撃が、彼に最大級の警戒心を抱かせていた。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/199
200: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/01/10(日) 03:38:18.40 0 首元へと迫る幅広の穂先を細剣二本を交差させ受ける。 だが受け止められるほど鋭峰の突きは微温くない。 故に、受け流す。槍の柄の下の潜り込むように踏み込み、穂先を押し上げ、いなした。 そのまま更に一歩前進。右の細剣は槍を制する為に掲げたまま、左の細剣を横に薙ぐ。 狙いは槍を保持する右手の指。 だが剣先が鋭峰に至るよりも早く、ヴィクトルの体に重い衝撃が走り、鋭峰から大きく突き放される。 石突である。穂先を押し上げられた事を利用して、石突を用いた下からの殴打で彼
を殴り飛ばしたのだ。 距離は再び槍の間合いに――更に鋭峰の体勢は既に穂先を左に大きく振り被った状態にある。 流星の如き横薙ぎ――防御は間に合わない。 ヴィクトルは瞬時にそう悟り――渾身の力をもって前方へ跳躍。 穂先による斬撃ではなく、柄による打撃を受けることを選んだ。 「ぐあっ……」 ヴィクトルはまたも大きく殴り飛ばされ、屋根の上に倒れ込む。 即座に膝立ちの状態まで体勢を立て直すが――鋭峰は既に開いた距離を再び埋めている。 「そう焦んなよ」 だがヴィクトルは柄による打撃を受けた瞬間、既に瑞鉄で盾を形成していた。
それを用いて打撃の直撃による肋骨の骨折を免れ――直後に、閃光が迸る。 華翼戦にて用いた照明魔法による目眩まし。 つまり――既に種が割れているという事だ。 鋭峰は自分の左腕を掲げ、閃光の直視を回避。 更に槍の掴みを、左手だけを逆手に持ち替えていた。 するとどうなるか――左腕で眼を庇う体勢から、即座に刺突を放つ事が可能なのだ。 目眩ましを免れた鋭峰の双眸に、細剣を振り被るヴィクトルの姿が映り―― 「っ、こっちじゃねえな!」 ――鋭峰はそれが水鏡による鏡像だと見抜いた。 そして即座に、上体を前方へ倒しながら跳躍。 左
に前進を回転させる事で、前方へ放つ筈だった突きの軌道を強引に修正。 自身の頭上、やや後方へ。 閃光を放つと同時に高く跳躍し、鋭峰の後方から斬撃を仕掛けていたヴィクトルを、遠心力を帯びた刺突が捉えた。 空中で攻撃を受けたヴィクトルは再三、先ほどよりも更に大きく吹っ飛ばされる。 水鏡の魔法は華翼との戦いには使っていない。 鋭峰は完全初見で、ヴィクトルの欺瞞を看破したのだ。 彼は「冒険者」としては乙種だが――「戦士」としては、その肩書き以上に優秀だった。 「……つくづく、やりにくいな」 ヴィクトルは、まだ戦闘不能に
はなっていない。 瑞鉄の帷子はその性質上、常に一定の形状を保とうとし続ける。 刺突の威力に耐え切れず破られはしたが――深手には至っていない。 ヴィクトル自身も、手傷は機動力を落とす。 それは魔女との戦闘において致命的――故に、吹っ飛ばされた直後には既に治癒魔法を使い始めていた。 既に止血は完了している。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/200
201: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/01/10(日) 03:46:51.33 0 (思った以上に、かなり出来るな……ここで始末するのは諦めるか。 店主の確保が完了したら、さっさと撤退して……) 不意に、ヴィクトルの視界外から無数の影が迫る。 目視せずとも感じられる不穏な気配を、細剣の閃きが断ち切った。 『……何のつもりだ?』 ヴィクトルが問う。 脅し付けるような、まさしく拷問者と言った声色だった。 >『その子、こっちにも襲ってくるから気をつけてね』 しかしラウテの返答を聞くと、彼は更に不快そうに双眸を細めた。 それから深く、ゆっく
りと、何度か頷く。 『……あぁ、なるほど。つまりこの挽肉のなり損ないはこう言いたい訳だ。 「俺の方が食いやすそうだ」って。そういう事だろ?なぁクソガキ』 直後、鋭峰が動いた。 「何か」の行動は完全に予想外で、今もなおその理由や目的は分かっていない。 だがいずれにせよ真っ向勝負ならば自分が優勢なのは間違いないのだ。 ならばヴィクトルを挟んで「何か」の反対側に回り込むように動けばいい。 それなら先ほどの仲間割れが罠だとしてもヴィクトルを盾のように立ち回れる。 そしてもし本当に仲間割れが起きているなら、挟撃を仕掛ける
事が出来る。 まさしく最適解と言える動きだった。 故に、ヴィクトルはその動きを完全に読んでいた。 そして後方へ――鋭峰との間に「何か」を挟む位置へと跳躍。 仲間割れが起きているとは言え、鋭峰も「何か」と結託するような動きは出来ない。 不確定要素が強すぎる。彼にとってヴィクトルは、所詮は真っ向勝負さえすれば勝てる相手なのだ。 だからこそ、待つ。一時的にだが「何か」との一対一が成立する。 「俺は「食い物」じゃねえ。テメェだ。俺が「食う側」なんだよ」 「何か」が無数の触手をヴィクトルへと伸ばす。 彼はそれを切り裂かず―
―刀身の腹でいなし、弧を描き、一つに纏め上げる。 そしてそれらを左手で掴み取り――半ばから噛み千切った。 「何か」が、ヴィクトルから飛び退いた。 半分になった触手群を引き戻し――しかし「噛み跡」が消えていない。 魔女の刻印は刻まれた部位の皮膚を削ぎ落とそうとも消し去る事は出来ないが、 まさしくそれと同じように、ヴィクトルの噛み跡には「何か」の再生能力が及んでいなかった。 それはヴィクトルの「切り札」の片鱗だった。 処刑台での戦いで使った吹雪の魔法も同じく片鱗ではあったが――今回は更に、本質に近い。 「……出来れ
ば「コイツ」は隠しておきたかったんだがな」 ヴィクトルは心底忌々しいと言った声音で呟く。 「まぁ……お前が死ねば何の問題もないか」 そして直後、左手に魔力を集中。手のひら大の水球を作り出し――それが炸裂。 周囲に局所的な濃霧を作り出した。 白く塗り潰された戦場に、鋭峰が顔を顰めた。 状況は一転、魔女狩りが有利――言うまでもなく、この戦場は彼が作り出したのだ。 だが、だからと言って安直に離脱を図るのは下策――それは魔女狩りにとって容易に予測出来る隙だ。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/20
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202: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/01/10(日) 03:47:38.94 0 と、鋭峰の背後で靴底が石材を躙る音。 瞬時に振り返り――細剣を構えるヴィクトルを視認。 だがそれは水鏡による鏡像。 鋭峰は欺瞞を一瞬で看破し――その鏡像を貫いて、細剣の切っ先が彼に襲いかかった。 鏡像の真後ろにヴィクトル自身も潜んでいたのだ。 鋭峰は不意を突かれ、しかし驚異的な反応速度で後方へと飛び退く。 切っ先は――鋭峰の胸部を浅く切り裂いた。 退いた彼に追い迫るように、剣閃が濃霧を切り裂く。 鋭峰は牽制の刺突を数本放つが――手応えはない。 直後、低い
姿勢から懐に潜り込むヴィクトルの――鏡像。 だが先ほど不意を突かれた事が鋭峰の強気な判断を阻んだ。 もう一歩後退して――彼の右足を鋭い痛みが襲った。 罠だ。瑞鉄で形成した拷問用の小さな杭が、その先端を上向きに足元に固定されていた。 痛みを感じた瞬間に反射的に足を上げた為、踏み抜く事はなかったが――精神的な拘束は更に強まった。 更に――濃霧の中からまるで投網のように、無数の触手が鋭峰に迫る。 「何か」には知性がある。 再生の困難な傷を負わせる魔女狩りと、濃霧の中での戦いに不慣れな鋭峰。 狙うべき獲物がどちらなのか、
再び判断を下したのだ。 しかし――それでも鋭峰は攻め落とされない。 鏡像の欺瞞があり、足元に罠があり、無数の触手が襲い来るのならば。 鏡像を全て斬り伏せた上で奇襲にも反応し、一歩も動かず、さらに全ての触手も切り払えばいい。 召喚狙撃も、更なる搦め手も、全て対応すればいい。 彼には、それを可能とするだけの実力がある。 (……来るなら来いよ、魔女狩り) 視界外の濃霧の僅かな揺らぎさえも的確に知覚出来るほどに、鋭峰は集中していた。 「――よし、退くぞ。じきに甲種が帰ってくるだろう。その前に完全に撤退する」 その時ヴ
ィクトルは既に地上に降り、魔女と少女に合流していた。 「初日はこんなもんだろう。明日も何かしら勝負は仕掛けるが……ひとまず、ご苦労だったな」 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/202
203: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/01/10(日) 03:52:17.79 0 「――上納している薬は「二種類」か。依存性の強い多幸薬と……命じられるままに製造していたもう一つ。 堕廃の、どういう類の物なのか、お前なら分かるか?」 ごく一般的な拷問の第一行程が完了するよりも早く、拉致された店主は情報を吐くだろう。 二つ目の薬物の性質は、もし判明させられるなら甲種との戦いにおいて非常に有用な情報となる。 しかし――敵も、地上げ屋も無能の集団ではない。 陥れられれば、対策を取る。 翌日、街の人通りは激減していた。 地上げ屋が市長に働
きかけ、厳重な「外出禁止令」を布いたのだ。 外出が許可されるのは基本的に家長のみ、それも日の出から日没までの間に限る。 加えて、街中には「協会から正式な依頼を受けた」、 つまり地上げ屋の飼い犬ではない冒険者が哨戒を行っている。 練度はまちまちだが――数は大幅に増えている。 「……面倒だな。この手の作戦は時間を掛けられれば勝手に綻びていくもんだが。 ただ待つのは、面倒だ。さて、どうしたもんか」 西地区の高所から街を見下ろすヴィクトルは、一度下へと降りて魔女と少女へ視線を向けた。 「この状況、俺よりもお前たちの方
がやりにくいだろう。どう動くか、決めさせてやるよ。 特に希望がないなら……そうだな、明日はとりあえず地上げ屋の屋敷でも燃やすか。 甲種の動きはもっと観察しておくべきだ」 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/203
204: ラウテ ◆uUre4dQFyk [sage] 2016/01/11(月) 21:28:30.83 0 ショゴスはただひたすらに暴れていた。二人の男のうち片方は、被害が増大する事を懸念しているのを察したからだ。 足場を崩す事で自らの領域を確保し、そこへ誘い込む。あらゆる地形を踏破出来るショゴスならではの作戦だ。 半壊した屋根の上で、時々距離を詰めては御しやすい方の獲物を狙っている。 見たところ二人の男の戦力は拮抗し、こちらにも警戒をしているため手出しが難しい。 最初に狙った男が隙を見せないため、ショゴスは標的をエルフのほうに変えていた。 その巨体から
想像出来ないほどの素早さで跳躍し、狙いを定め触手を伸ばす。 しかしエルフを捕まえるはずだった触手は、いとも簡単に「噛み千切られた」。 素早く触手を引っ込めて再生する……が、何故かその傷は簡単には閉じない。 ショゴスは明らかに怯んだ。おそらく何らかの魔力干渉を受けたのだろう。 一度撤退して様子を見ると、いつの間にか周囲は濃霧に覆われていた。 ショゴスは眼を作るのを止め、代わりに全身に柔毛を生やす。 空気の流れを敏感に感じ取れるそれは、視界の利かない状態では非常に役に立つ。 そうやって周囲を探る事で、ショゴスは狩りを
行うのだ。 先程再生の追いつかない怪我を負わされたエルフを狙うのは得策ではない。 もう片方の槍の男の方は、この霧で動きを制限されている様子だった。 どちらを狙うかは決まっている。ショゴスは狙いを変えて投網のように触手を放つ。 槍の男は何らかの理由でその場から動くことはしなかった。代わりにその槍を振るい、全ての触手を叩き落す。 槍の男とショゴスは、停滞し睨み合いの戦況と成った。 そんな様子を感覚共有で探っていたラウテだったが、当のヴィクトルがこちらに現れたのは素直に驚いた。 濃霧で撹乱している間に、隙を見て離脱した
のだ。全く食えない男である。 >「――よし、退くぞ。じきに甲種が帰ってくるだろう。その前に完全に撤退する」 「…じゃあ、あと五分だけショゴスに戦わせれば良いのね? 時間稼ぎは出来るわ」 >「初日はこんなもんだろう。明日も何かしら勝負は仕掛けるが……ひとまず、ご苦労だったな」 「お疲れ様。さくらは召喚しておいたから、この店主はこっちで運ぶわ…」 馬に店主を担ぎ上げ、一同はその場から素早く撤収した。 火事騒ぎで野次馬も多いため、人ごみに紛れるのは実に簡単な事だった。 そもそもこちらの正体を知らない鋭鋒では、人ごみ
から見つけ出すのは不可能だろう。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/204
205: ラウテ ◆uUre4dQFyk [sage] 2016/01/11(月) 21:29:40.11 0 ラウテたちが潜んでいる西区の廃墟では、縛られた店主が今まさに拷問を受けようとされていた。 召喚させていたショゴスは、空間転移でこちらに呼び戻し現在はここにいる。 ショゴスは腹を空かせているのだ。餌を与える必要がある。 数多居る彼女の召喚獣の中でも、このショゴスだけは異常に食欲旺盛だ。 そして何より厄介なのが、ショゴスが特に好むのは人肉であること。 今までもスラムで何人か攫っては、餌にすることがあったりする。 ショゴスは縛られている店主の脚に、今すぐに
でも喰らい付きそうな様子を見せていた。 「この子の餌になりたくなかったら、質問にはちゃんと答えてね?」 異形の怪物に睨みつけられている店主は、既に発狂寸前である。 食われて死ぬよりも精神が崩壊するほうが早いだろう。 「まずひとつめ、オメルタの屋敷はどこか……知ってるよね?」 「ちっ、中央区の五丁目、丸い屋根の屋敷だ! 頼む、放してくれ!」 ぞぶり、と音がした。ショゴスが店主のつま先を食い千切ったのだ。 絶叫を上げもがき苦しむ店主。その様子をラウテは嬉しそうに見つめていた。 「余計な事を言ったり叫んだりすると、
この子が次は膝まで食べちゃうからね?」 「わ、分かった。だから頼む、足の治療を! 血が出て死んでしまうっ!」 「人間はこの程度では死なないわ。次の質問、この二種類の薬の効能は?」 「片方は気持ち良くなるヤクだ! もう片方は知らない、本当に知らないんだ! ギャァアアアアッ!!」 片足を膝まで失った店主は絶叫を上げる。 だがラウテが「静かに」と言った瞬間、店主は血が滲むほど歯を食いしばって叫ぶのを止めた。 「いい子ね。止血は必要?」 「た、頼む! 死にたくない!」 「だったら薬の効能を答えて。この出血だと死ぬか
も知れないわ」 「知らない! 頼む、血を止めてくれ!」 ラウテは手に取った松明を、店主の傷に何の躊躇いもなく押し付けた。 今度は悲鳴はしなかった。ただ、苦痛にもがくのみだ。 「ヴィクトル、この人本当に何も知らないみたいだけど……もう食べさせて良い?」 もちろん拷問が終わり次第、彼はショゴスの餌となる事が確定している。 それまで引き出せるだけの情報を引き出すことが出来れば、多少の成果は望めるだろう。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/205
206: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/01/13(水) 15:48:38.92 0 濃霧の中、対峙する魔女狩りの動向に鋭鋒は研ぎ澄ました神経を傾けていた。 彼を乙種上位たる実力の礎は、その間合い自在なる槍術の他にもうひとつある。 荒野の民に秘伝として継承される、力の伝導を操る『流し』と呼ばれる武術だ。 もとは敵の攻撃を受け流す技術だったものが何代にもわたって磨き抜かれ洗練を重ねた結果、 炎の熱が鉄鍋に広がるように、波紋が水面を伝わるように、様々な力を伝導させる術へと昇華を果たした。 この技術を極めた鋭鋒にとって、地面や壁は単なる
足場や遮蔽物ではない。 鍋底に触れればその向こうの熱源がわかるように、水面の航跡を見れば船の場所がわかるように。 その床にかかる重量、その壁に触れる風、あらゆる触覚を鋭鋒へと流し『伝える』感覚器だ。 全方位に張り巡らされた鋭利過敏な感覚の刃、眼には見えない第二の穂先――故に『鋭鋒』。 極度の集中を完成させた今の彼ならば、半径10メートル以内に落ちる木の葉の形さえ正確にわかるだろう。 (いかに霧が濃かろうが、そいつは『眼』に対する誤魔化しだ。肌で感じられる俺には意味がねえ) そして彼の間合いに立ち入る者があれば、脊髄
反射の速度域で槍が貫きに奔るだろう。 無論、デコイの対策も万全だ。あの化物も含め、敵意をもった生き物の接近に関する感度を上げてある。 視界を塞いだと安心して近づけばそれが魔女狩りの最期だ。 「いつでも来い……!」 挑発ではなく本心で、鋭鋒はそう言った。 十秒、二十秒と張り詰めた弓のような緊迫に満ちた時間が過ぎる―― ふっ、と音もなく背後に着地する気配。 刹那、弾かれるように鋭鋒は槍を手繰り、振り向きざまの一閃! 背後の人影が風巻く音とともに貫かれる。切り裂かれた大気が巻き戻り風を起こし、霧が晴れた。 「……?」
霧の向こうで槍の先にいたのは、魔女狩りではなかった。 踊り子風の露出の多いドレスに身を包んだ、すらりとした肢体の美女。 彼女は少しだけ驚いたように眉を上げて、それから愉快そうに零した。 「あらあら?」 「姐さん、なんでこんなところに」 背後に現れた気配の主は、魔女狩りを追っていたはずの同僚、甲種冒険者『地走』だった。 困惑しながら槍を戻すと、瑞鉄製の穂先がまるで花弁のように4つに分かたれ拉げていた。 おそらく破壊の源は、地走の指先で力なくぶら下がっているチャクラムだ。 言葉を失っている鋭鋒を感情なく睥睨して、地走
はため息混じりに言った。 「やっと見つけたと思ったのに。逃げられちゃったみたい」 はっとして鋭鋒があたりを見回すと、濃霧は既に消え去っていた。 そして消えたのは霧だけではない。魔女狩りも、店主も、あの巻き込まれ姉妹すら、覚めた白昼夢のように消滅していた。 「あーっ!?霧自体がデコイかよ……!!」 濃霧に乗じて襲い来ると見せかけての撤退。初めからこうするつもりでなければこんなに早く逃げ切れはしまい。 おそらく撒いてきた地走が追いついてくることを見越して早期撤退を決めていたのだろう。 結果として地走も鋭鋒も魔女狩
りと直接交戦したにもかかわらず彼を殺せず、どころか店主さえも拉致されてしまった。 なんのことはない、奇襲から撤収まで、徹頭徹尾魔女狩りのペースに載せられていたということだ。 「つか姐さん、霧の中で人着確認せずに攻撃したんすか?俺じゃなかったら死んでますぜ」 「んー、なぁに?」 「いや、何でもねえっす……」 ―――――― http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/206
207: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/01/13(水) 15:49:47.75 0 >「初日はこんなもんだろう。明日も何かしら勝負は仕掛けるが……ひとまず、ご苦労だったな」 鋭鋒との戦闘を早々に切り上げて戻ってきたヴィクトルを、リタリンは半眼で迎え入れた。 ラウテが馬を召喚するまでの間店主の肩を支えながら、恨めしそうに情感をたっぷり込めて言う。 「なんで火をつけるの黙ってたの……」 ヴィクトルは涼しい顔でこれを無視。 煤だらけの濡れ鼠、苔色のローブに本当に苔が生えそうなリタリンはもう黙ってついていくしかない。 そうして彼らは、
西区の暫定アジトへと帰投した。 人払いを済ませた路地裏には、拉致してきた店主の叫び声が響き渡っていた。 先に捕獲した乙種二人組がドン引きした眼で見る中、情報を引き出す為の拷問が行われているのだ。 今回の主な拷問吏はラウテだ。彼女は喜々とした表情で魔物に店主を襲わせる。 >「片方は気持ち良くなるヤクだ! もう片方は知らない、本当に知らないんだ! ギャァアアアアッ!!」 >「――上納している薬は「二種類」か。依存性の強い多幸薬と……命じられるままに製造していたもう一つ。 堕廃の、どういう類の物なのか、お前なら
分かるか?」 「解析して成分を確かめればどういう効能かはわかると思う。ちょっと時間をちょうだい」 店主が鞄に詰めていた薬をいくつか受け取ると、リタリンは別室へと引っ込むことにした。 今をもってなお、嬉しそうなラウテの声と店主の苦痛と絶望に満ちた叫びが入り混じり、とてもじゃないが集中できない。 >「ヴィクトル、この人本当に何も知らないみたいだけど……もう食べさせて良い?」 もう助からないことが確定していても、なお助命を求めて足掻き続ける人質の姿は見るに耐えなかった。 リタリンとて私欲の為に薬物をバラ撒いていた
わけだから人のことは言えたもんじゃないが、それにしたって残虐が過ぎる。 これ以上ここにいたら体調を崩しそうだったので、分析の必要性は良い口実になった。 監禁部屋を後にしようとするリタリンに、拷問の様子を見ていた華翼が呟くように言った。 「……地獄に堕ちるぞ、お前ら」 「じゃあせめて、そっちの飼い主が同じところに堕ちないよう祈っててあげて」 いつの間にか『お前ら』とあの残虐魔人二人と一絡げにされていることに軽くショックを受けながら、リタリンは部屋を出た。 解析には半日ほどかかるだろう。それまでに拷問が終わっている
といいが。 翌日、街からは昨日までの活気が嘘のように消え去っていた。 オメルタ組による外出規制だ。おかげで人混みに紛れて動きまわるプランは使えなくなった。 スラムの人間に金を渡して買ってこさせた食事を食べながら、これからの方針について話し合う。 >「……面倒だな。この手の作戦は時間を掛けられれば勝手に綻びていくもんだが。 ただ待つのは、面倒だ。さて、どうしたもんか」 「向こうもなりふり構わなくなってきたものね」 甲種を出動させたにも関わらず魔女狩りを捉えることができなかったという事実は、オメルタ側にも看過
できないものなのだろう。 依然として魔女狩りの仲間については顔も人数も戦力すら分かっていないのだ。 畢竟、対応としては不確定要素を排し戦力を際限なく増強していく他なくなっていく。 街にはいま、新たに雇われた冒険者の一団が猟犬のように放たれ歩哨を行っていた。 >「この状況、俺よりもお前たちの方がやりにくいだろう。どう動くか、決めさせてやるよ。 特に希望がないなら……そうだな、明日はとりあえず地上げ屋の屋敷でも燃やすか。甲種の動きはもっと観察しておくべきだ」 「また火をつけるの……!?」 偵察から戻ってきたヴィ
クトルが、主導権をこちらに寄越す。 そんなものはいと渡されても扱いに困るわけだが、この男にその辺の気遣いなど求めるだけ無駄であろう。 リタリンは鶏肉と煮込んでバターを垂らした麦粥に匙を突っ込んで、傍にある魔導書を手繰り寄せた。 開かれたページの上で薬が魔力光に包まれて浮いており、白紙だった羊皮紙に墨字が刻まれている。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/207
208: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/01/13(水) 15:51:17.42 0 「その前に、例の鹵獲できた二種類の薬の解析結果が出たわ。 片方は情報通り、多幸感を増幅させるいわゆる気持ちよくなる薬。使った時の実例はこんな感じ」 リタリンが指さした先では、乙種二人組が縛られたまま壁に身を預けて放心していた。 ラリっている。眼には焦点が合っておらず、膝ががくがくと震えていた。 「うひゃあ、真っ暗なのにお星様が見えるぜぇぇ。パンツ履いたままおしっこするの気持ち良いなあああ。 ああはああはあは……ああ?なんだこの虫!ああ!虫が!
虫が沢山這い上がってくる!これが幻覚症状ってやつか!!」 「まあ虫は普通にこの廃屋に湧いてるやつよ。幻覚見るような中毒にならない程度に量抑えてあるから安心して。 こんな感じに品性をジワジワ破壊していく私のハーブより強力な薬で、量が増えると依存性も凄いことになるわ。 うまく使えば捕虜をこっちの手駒に仕立てあげることもできるかもだわ」 華翼の反応を見るに、どうやらオメルタは自前の兵隊にはこの薬を使っていないらしい。 丙種程度であればともかく乙種以上は戦闘職である以上に技能職だ。品性と人格を破壊するこの薬とは相
性が悪い。 逆に言えば、こっちが敵の捕虜に使う分には制限なく使って洗脳できるということだ。 「もうひとつは……これは正直試しで使う気にはなれなかったわ。 この薬は使用者の魔力、身体能力、五感などを多角的に向上させる、いわゆる戦闘力強化薬。 それだけなら私のハーブでも似たようなことができるけど、問題はその『上げ幅』ね」 アサナギの里で薬作りのノウハウを学んだリタリンは、製薬のセオリーというものを知っている。 人体に用いる薬とは『通常とは異なる生理作用を起こす物質』であり、その本質は毒と表裏一体だ。 では毒と薬
とを区別する要素とは何なのか。それは有害な効果を抑えるリミッターの有無である。 薬は症状に合わせて適切に使用しなければかえって身体の害となることは周知の事実だ。 だから効き過ぎないように、過剰な効果を相殺するような薬を混ぜておく。 熱さましの薬に体温を維持する薬を合わせたり、消化薬に胃薬を合わせて処方するといった具合にだ。 薬を身体に入れるというのは肉体にとって不自然な状態であり、その影響は少ないほうが良い。 「この強化薬には、薬作りに絶対必要な制御物質が含まれていないの。 服用すればするほど、その量に比例し
て戦闘能力は際限なく上がっていく、まさに『超人を作る薬』、『英雄霊薬(エリクシル)』。 だけど副作用は寿命を縮めるなんて生易しいものじゃない。どんな人間でも即死するほどの負担がかかるはずよ」 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/208
209: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/01/13(水) 15:51:44.20 0 それだけならただの自殺用の毒に過ぎないが、問題はその効果にある。 常人なら耐え切れない薬の副作用に、『超人』なら耐えてしまう。 尋常ならざる痛みと苦しさ、幻覚などに苛まれながら、それでも薬の効果が切れるまでは死ぬこともできない。 リタリンは頬を滑り落ちてきた冷や汗を舐めた。この薬は強化薬としても出来損ないの役立たずだ。 こんなものを量産して、オメルタは一体なにを企んでいるというのか。 本国相手に戦争でもおっぱじめるつもりなのか。 「これの使用者がオ
メルタ陣営にいるとしたら、かなり危険だわ。 甲種クラスの化物が二人も三人も出てきたらこの街ぐらい軽く消し飛んでもおかしくないもの」 どういう形でこの霊薬が流通しているのかは不明だが、オメルタを相手取るなら向こうにこれを保たせておくのはまずい。 「屋敷に忍び込みましょう。薬の在り処をつきとめて破壊、可能なら奪取。 幸いこっちには顔の割れてないフリーの乙種冒険者がいるし、警備として紛れ込めないかな」 ラウテは今のところ鋭鋒にしか顔を見られていない。 それに彼女は様々な街の協会で冒険者として実績を積んできた正真
正銘の正式な乙種だ。 オメルタと深く癒着している協会が、腕っこきの冒険者を求められて派遣したとしても不自然はない。 傘下でない冒険者が多く出歩いている現状なら、疑いの眼をかけられることなく潜入できるはずだ。 屋敷に入るのに符牒や証書がいるなら、適当な冒険者を拉致して吐かせれば良い。 「ラウテ、遠隔召喚はどのくらいの距離までいける? 屋敷のど真ん中にショゴスを召喚して、撹乱したところに犬で薬品庫を探知。 甲種がうまくショゴスに釣り出されてくれれば一番ありがたいんだけど……」 オメルタ最強戦力であれば、その警護
箇所はオメルタ本人か最も大切な財産かの二択になるだろう。 こればかりは運になるが、あとはこちらでどれくらいコントロールできるかが分け目となる。 一方的に情報を持っているというアドバンテージを使いきって望まなければ明日はないだろう。 冷めてしまった麦粥を流し込みながら、リタリンは提案した。 【提案:ショゴスを屋敷の中から召喚して撹乱。協会手配の冒険者を装って潜入】 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/209
210: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/01/17(日) 05:31:39.75 0 >「ヴィクトル、この人本当に何も知らないみたいだけど……もう食べさせて良い?」 「……いや、ステイだ」 ヴィクトルは細剣を「何か」に突きつけて牽制、店主を見る。 「一つ、確認したい。これは決して強制ではないが……もし、俺達がこの街の支配権を得たとして。 また同じ薬を、今度は俺達の為に作れと言ったら、お前はどうする?」 店主の眼に、希望の光が浮かび上がった。 「やる!やるよ!薬なら幾らでも作る!だから助けてくれ!」 縋り付くような返答――ヴィクトルの
双眸が、わずかに細った。 「……そうか。やってくれるか」 そして――「何か」に突きつけられた細剣が引っ込められた。 「なら、駄目だ。お前みたいな奴が俺は嫌いだ」 捕食が、始まった。 >「……地獄に堕ちるぞ、お前ら」 >「じゃあせめて、そっちの飼い主が同じところに堕ちないよう祈っててあげて」 「心配ご無用だな。もし神様とやらがいるのなら……ソイツは俺に負い目がある筈だ」 自嘲気味に、忌々しいものを吐き捨てるかのように、ヴィクトルは答えた。 そしてそのまま部屋の隅に転がる家具の残骸を枕側に寝転んで、目を閉じた。
「……そうだな、明日はとりあえず地上げ屋の屋敷でも燃やすか。 甲種の動きはもっと観察しておくべきだ」 >「また火をつけるの……!?」 「そりゃそうだろ。エルフってのは木と水と風を愛するもんだが…… 如何せん、奴らは俺の敵を殺してくれないからな。 その点、火はいいぜ。何もかもを消し去ってくれる」 愕然と共に零れた魔女の問に対して、ヴィクトルは事もなげにそう言った。 「で、希望がないなら俺はさっさと火を点けに行くぜ。今回は、点け方も少し工夫する」 >「その前に、例の鹵獲できた二種類の薬の解析結果が出たわ。
片方は情報通り、多幸感を増幅させるいわゆる気持ちよくなる薬。使った時の実例はこんな感じ」 リタリンが指差す先には、華翼と氷城――どちらも眼の焦点を失い、涎を垂らしている。 明らかに、薬効によって正気を失っているようだった。 >「まあ虫は普通にこの廃屋に湧いてるやつよ。幻覚見るような中毒にならない程度に量抑えてあるから安心して。 こんな感じに品性をジワジワ破壊していく私のハーブより強力な薬で、量が増えると依存性も凄いことになるわ。 うまく使えば捕虜をこっちの手駒に仕立てあげることもできるかもだわ」 「……
俺は品のない人間は嫌いだ。品のないやり方もな」 ヴィクトルは言葉少なに、だが強い否定を声に込めて答えた。 放火が品性のあるやり方かと言えば間違いなくそうではないが、要するに「するな」と言いたいのだ。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/210
211: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/01/17(日) 05:32:29.83 0 彼は生まれながらの奴隷――エルフの気品を持って生まれる事を許されなかった存在。 その事が彼の態度に関係しているのは明白だった。 感傷ではない、ただ自分を奴隷として扱った連中と同類になるのが不快なだけだ。 彼は自分にそう言い聞かせながら、捕虜二人から視線を外した。 >「もうひとつは……これは正直試しで使う気にはなれなかったわ。 この薬は使用者の魔力、身体能力、五感などを多角的に向上させる、いわゆる戦闘力強化薬。」 魔女が解析した二つ目の薬品の効用を、ヴ
ィクトルは神妙な表情で聞いていた。 そして全ての説明が終わってから、今度は顎下に手を添えて、視線を床へ。 露骨に二人からの干渉を避けるように、一層深く思索を始めた。 >「ラウテ、遠隔召喚はどのくらいの距離までいける? 屋敷のど真ん中にショゴスを召喚して、撹乱したところに犬で薬品庫を探知。 甲種がうまくショゴスに釣り出されてくれれば一番ありがたいんだけど……」 「良いプランだ。俺は……今回は裏方だな。撹乱と戦力の誘導は出来る限りやってやる」 顔を上げてそう言ったヴィクトルは、そのまま魔女へと視線を向ける。 「
三つ、聞きたい事がある」 人差し指を立てて、彼は続ける。 「まず一つ。その薬は普通の人間が普通に服用すれば、 効果が切れた瞬間、即死するような反動が訪れる。この認識に間違いはないか?」 中指が立てられる。 「もしその認識に間違いがないなら……それを服用し続ければどうなる? 例えば……仮に一回の処方に適切な量があるとしてだ。まずその量を服用し、 それから暫く時間を置いて、追加で少量服用すれば……」 ヴィクトルは問いを述べながら細剣で床に図解を記す。 彼が言ったような摂取法を取れば、まず最初に服用した分の効力
が失われる。 それによって反動のように負担が訪れるが――体にはまだ追加で摂取した分の効果が、僅かにだが残っている。 「これなら、薬の反動を限りなく先延ばしに出来るんじゃないか?」 そして堕廃の魔女がそれを肯定しようとも、否定しようとも、ヴィクトルは三つ目の問いを発する。 「その薬には制御物質が含まれていないと言ったな。だが…… もう一つの、多幸薬を、制御物質として使用する事は……可能か?」 超人薬はその効力が続いている間も、副作用に襲われる。 ヴィクトルが言った服用法も、並みの人間では最初の服用分の効果が切
れた時点で、 僅かな超人効果では耐えられないだろう反動により死んでしまうだろう。だが―― 「――元から人並み外れた素養のある者が、更に僅かとは言え超人化の恩恵を得た状態で、 更に痛みを初めとした諸々の副作用を無視出来るような精神状態にあったとして。 ソイツが超人薬の副作用を先延ばしにし続ける事は可能だと思うか?」 無論、魔女の答えが最終的に否定のままであったとしても、ヴィクトルの行動指針は変わらない。 地上げ屋の屋敷を攻め、薬物の貯蔵庫を破壊するのは間違いなく必要だ。 ただ、魔女の答えが肯定であるのなら――
彼はもう一つ、問いを付け加えるだろう。 「もう一つ、質問が増えた――その薬には、依存性があると思うか?」 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/211
212: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/01/17(日) 05:34:42.38 0 そうして、ヴィクトルは西地区から移動を開始する。 哨戒の人数は多いが――「どこにいるかも分からない者」を意識的に探し続けられる者は、少ない。 水鏡の魔法による隠密と風魔法による消音を併用し、表通りを避けて中央区を目指す。 また水鏡の魔法は単に鏡面として使えば周囲の索敵も可能になる。 秘密裏に移動する事は容易だった。 ヴィクトルは監視の薄い屋上へと登り、弓矢を構える。 ただし番える矢は――瑞鉄で形成したものだ。 それは細く長い糸によって腰に差した細剣と
繋がっていた。 彼はそれを遠くに見える哨戒兵へと射掛ける。 狙いは極めて正確に――首筋を掠め、頸動脈を切り裂くように。 哨戒の首から大量の血が噴き出た事を確認すると、ヴィクトルは瑞鉄を操作。 糸で繋がった矢を回収する。 結果として――まるで不可視の何者かに「近距離から」首を切り裂かれたようにしか見えない死体が残る。 つまり警備の偏りが生じる――その隙に、彼は中央区にまで潜り込んだ。 そして適当な、背の高い建物の屋上を目指す。 彼の筋力なら、石材の僅かな隙間に指をかけて登攀する事は容易だ。 屋上に到達して、ヴィク
トルは中央区を見渡す。 五丁目、丸い屋根の館――地上げ屋の屋敷はすぐに見つける事が出来た。 三階建ての、広大な敷地を有する邸宅だ。 彼は再び弓矢を構える。 今度はただの矢に、火を灯したものだ。 それが十三本、二度に分けて地上げ屋の屋敷へと放たれる。 屋敷に火の手が上がる――だがそれが大きく燃え広がる事はない。 この街を牛耳る裏社会の支配者の本拠地なのだ。 魔法による消火が可能なほどの手練が、常駐していない訳はない。 「だが……十三箇所の火元を同時に潰す事は出来ないだろ。「優先順位」を見せてくれよ」 まず三階から、
窓から漏れる煙が途絶え始めた。 ほぼ同時に一階も――しかし消火のペースは三階の方が早い。 そして――不意に三階の火の手が瞬く間に消失した。 龍の如く迸る水の波濤が、屋敷の外からも容易に視認出来た。 「……まさしく、炙り出しって奴だな」 やはり甲種――地走には飼い主ですら制御し難い忠誠心がある。 ヴィクトルはそう確信した。同時に、彼女が浅慮である、とも。 「さて……ここからどう動いたものかな」 暫しの思案――ひとまず場所を変え、多くの退路を取れる地点まで移動。 そして再び地上げ屋の屋敷へと火矢を射掛ける。 あくま
でも遊撃的な攻勢であると見せかける為だ。 つまり、まさかこの隙に屋敷に侵入を目論む仲間がいるなどとは、決して予測すらさせない為に。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/212
213: ラウテ ◆uUre4dQFyk [sage] 2016/01/18(月) 22:00:02.21 0 結局店主は、そのはらわたが食い破られ心臓に牙が届くまで、痛みと恐怖を味わう事となった。 人間って案外死なないものね、とラウテは微笑む。彼女とショゴスは、人の死というものを熟知していた。 最終的に店主の頭まで丸呑みしたショゴスは、満足して床で丸くなる。それを見届けたラウテは、召還を解除した。 操作のほとんど利かないショゴスの召還はなるべく控えたいところだ。扱いどころが難しいのである。 ふと見ると、リタリンとヴィクトルは先ほど手に入れた薬の効果について
意見交換を交わしていた。 ラウテは薬にはあまり興味はない。ただ、ある種の薬草は良く売れるため、その種は十分に確保している。 魔力をわずかに消費して種から薬草を育てれば、それを売るだけで十分に元は取れる。 そんな経緯から、ラウテは薬には興味はないが種類についてはある程度の知識はあった。 まぁ、どんな薬草が需要があるのかという程度なのだが。 リタリンの言う気持ちよくなる薬については、少々見覚えがあった気がする。 非正規ルートに限り高値で売買される薬草のひとつだ。花が綺麗なのを覚えている。 もう片方には全く覚えがなかっ
たが、とりあえずあまり売れる代物ではないと覚えておこう。 話は明日の作戦について語られていた。戦力が街中に分散した今こそ、オメルタの屋敷を狙う好機だ。 無論、屋敷は雇われの冒険者などに守りを固められていることだろう。しかし、その程度は烏合の衆だと思われる。 >「ラウテ、遠隔召喚はどのくらいの距離までいける? 屋敷のど真ん中にショゴスを召喚して、撹乱したところに犬で薬品庫を探知。 甲種がうまくショゴスに釣り出されてくれれば一番ありがたいんだけど……」 「…障害物がなければ百メートル程度。今回は建物内だから、
その半分が限界だと思うわ」 壁が厚く複雑な構造をした建造物であれば、その効果範囲は三十メートルといったところだろう。 要するに、ある程度の音量で音が届きさえすればどこでも召還は可能なのだ。 もちろん警戒されないために、人の耳では捉えられない音域などを駆使する事も出来る。 そもそも音楽魔法などと言うどマイナーな魔法体系など、普通の人間は知りもしないだろうが。 「ショゴスは撹乱にしか使えないし、私にもほとんど操作が出来ないこと、覚えておいてね」 と、念のため釘を刺す。ショゴスは十分な餌を捕食出来るまで、召還解除す
らまともに応じてはくれない。 まぁ屋敷の使用人でも捕食してくれれば、おとなしく言うことを聞いてくれるだろう。 「ラウテは冒険者協会のツテで、派遣された冒険者として潜り込むわ。 幸いにもラウテの顔はまだ誰にも見られていない……だから問題ないはずよ」 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/213
214: ラウテ ◆uUre4dQFyk [sage] 2016/01/18(月) 22:00:40.16 0 翌朝、まだ明けて日の暗いうちからラウテは動き出した。 徐々に日は明けている。少しだけ肌寒く、乾燥した空気の流れが感じられた。 昨晩のうちに協会に話をつけ、本日から屋敷周辺を哨戒する任務に充てられている。 街中の哨戒で冒険者のほとんどが駆り出されているらしい。大したものだ。 主に大通りに沿って複数の冒険者が配置されているのを確認する事が出来る。 ラウテは協会から借り受けた認識票を首からぶら下げているため、全く問題なく大通りを歩く事が出来た。 目指す屋敷
にはすぐにたどり着いた。見通せないほど長い塀と、呆れるほど広い周辺道路がその屋敷の規模を物語っている。 いかにも歴史を感じさせる邸宅だが、同時に堅牢さも伺えた。まるでちょっとした砦のようだ。 正面から屋敷に入り警備主任から大体の配置を聞き出すと、ラウテはそのまま配置に付いた。 ちょうど屋敷の庭園の哨戒任務だ、ここならば人目を気にせず魔笛を扱える。 ラウテは周辺を確認してから魔笛を取り出し、人間には聞こえない音域で高らかに吹き鳴らした。 音楽魔法の基礎のひとつ、ソナーの魔法だ。音の反射で周囲の状況を探る事が出来る
。 反響を十分に聞き取ってから、ラウテはそろそろ配置に付いているであろう二人に声を飛ばす。 「この屋敷、地下があるわ。たぶん倉庫もそこ…屋敷を燃やしても燃え残るかな?」 まぁ屋敷が全壊してしまえば、掘り出すのは容易ではない。ただのジョークである。 しばらく哨戒しているフリをして歩いていると、風切音と共に屋敷に火矢が射掛けられた。 屋敷は一気に混乱に陥った。屋敷の外を哨戒していた連中も駆け込んで、とにかく消火活動に充てられる。 その背中を、召還したショゴスが襲い掛かった。 食い千切られる訳ではない。丸呑みにされ、
ゴリゴリと噛み砕く音が響く。 消火活動のため布陣も揃わぬ烏合の衆だ。あっという間にショゴスに蹂躙された。 その冒涜的な外見から、ショゴスを見ただけで恐怖に絶叫する者すらいる。 それでも冒険者を名乗るのかと、ラウテは少し残念に思う。全く根性のない連中ばかりだ。 ラウテは回復魔法で援護する様子を見せながら、混乱のデバフの音色を奏でていた。 魔法陣を用いる訳でもない、呪文も唱えない、先述の通りどマイナーな魔法だ。 どんな音色がどんな効果を表すのかを知る者は、まず居ないはずである。 混乱と恐怖により、そこは阿鼻叫喚の地獄
と化していた。これだけ騒ぎになれば、侵入も容易だろう。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/214
215: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/01/21(木) 05:05:54.41 0 >「…障害物がなければ百メートル程度。今回は建物内だから、その半分が限界だと思うわ」 リタリンの問いに、ラウテはそう答えた。 音楽魔法は音を媒介にする為、遮蔽物の影響を受けやすい。 処刑台での戦闘では開けた広場への召喚だったから距離をとれたが、今回はそうもいかないだろう。 ピンポイントでショゴスを落とすには、やはり現地で内側から召喚する必要がある。 >「ショゴスは撹乱にしか使えないし、私にもほとんど操作が出来ないこと、覚えておいてね」 「ほと
んど無差別破壊だったものね……」 鋭鋒だけでなくヴィクトルに襲いかかった時にはあの性悪エルフをそのまま食べちゃってくれないかとぼやっと祈ったりもしたが、 甲種も絡む大一番でアンコントローラブルな手札を切るのはギャンブル要素が強すぎる。 早い段階でショゴスに暴れさせて、一気にこちらの有利に持ち込むのがベターであろう。 >「良いプランだ。俺は……今回は裏方だな。撹乱と戦力の誘導は出来る限りやってやる」 黙って何事か考えていたヴィクトルが、それでも話はちゃんと聞いていたらしく顔を上げた。 >「三つ、聞きたい事が
ある」 >「まず一つ。その薬は普通の人間が普通に服用すれば、 効果が切れた瞬間、即死するような反動が訪れる。この認識に間違いはないか?」 「ないわ。どれだけ鍛えていようが、薬理の作用する内臓は鍛錬しようがないもの」 >「もしその認識に間違いがないなら……それを服用し続ければどうなる? 例えば……仮に一回の処方に適切な量があるとしてだ。まずその量を服用し、 それから暫く時間を置いて、追加で少量服用すれば……」 >「これなら、薬の反動を限りなく先延ばしに出来るんじゃないか?」 「うーん、理論上は可能だと
思うけれど……」 リタリンは顎に手をやって考え込んだ。考えもしないというか、考えたくもなかったことだ。 確かに超人効果が残っていれば、反動による即死は避けられるだろう。 しかしそれは、確定してしまった死をひたすら後回しにし続けることに他ならない。 補給が切れればその時点で即死だし、反動を耐えられてもそれは死なないというだけで地獄の苦しみには違いない。 まず間違いなく、即死した方が楽だと気付いて薬を飲むのをやめるだろう。 「可能だけど、やる人間はいないと思うわ。よほど常軌を逸していなければ――」 >「その薬には
制御物質が含まれていないと言ったな。だが…… もう一つの、多幸薬を、制御物質として使用する事は……可能か?」 「あ……」 そこでようやく、リタリンもある発想に思い至った。 即死の反動を超人薬で、副作用の苦痛を多幸薬で押さえ込む二重の制御機構――! 「確かに、それなら超人化の無期延長にも現実味が出てくるわ。 補給物資が増えることになるから兵站の維持は大変になるけど、個人の私兵なら無視できるレベル。 まさか、オメルタ傘下にそれをやってる人間がいる……?」 >「もう一つ、質問が増えた――その薬には、依存性があ
ると思うか?」 依存性、という言葉の原義からは少し逸れるが、補給が途絶えればアウトであることには変わらない。 ヴィクトルの言いたいことがピタリとわかってしまって、そんな発想に染まりつつある自分に寒気すら感じる。 「……そういうことね」 きっとここに鏡があったら、目の前のエルフと同じ顔をしていただろう。方針はこれで決定だ。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/215
216: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/01/21(木) 05:06:25.08 0 ―――――― 「始まったみたいね」 オメルタの屋敷からの索敵範囲外に確保したセーフハウスに、三人のうちリタリンだけが留まっていた。 ここは街の外縁から中央に来た低所得者が逗留するための安宿で、サービスが劣悪な代わりに干渉もない。 当然オメルタ傘下ではない場所を選んでいる。出納帳がないので前払いになるが、記録に残らない為足もつきにくい。 リタリンのように戦闘力の維持に多くの補給物資が必要な魔法使いは、こうした拠点の確保も重要な仕事だ。 西区の本拠点
から夜間の間にラウテに頼んで必要な道具の一式を亜空間輸送してもらっておいた。 薬草の数々、大玉水晶、魔法陣の描かれたキャンバス、魔導書が数冊。 そして、捕虜として拘束している乙種冒険者、華翼と氷城のコンビも連れて来ていた。 彼らに人質としての意味はない。純粋に、リタリンにとっての『補給物資』なのだ。 >「この屋敷、地下があるわ。たぶん倉庫もそこ…屋敷を燃やしても燃え残るかな?」 「ついでに甲種も生き埋めになってくれるといいんだけどねぇ」 千里眼の魔法を映し出す水晶の向こうでは、屋敷から13箇所にわたって火の手
が上がっていた。 先行して潜り込んでいたラウテが遠隔召喚を発動、ショゴスが屋敷中央部に生み出され、さらなる混乱が巻き起こる。 隠密機動を得手とするヴィクトル、冒険者としてのアンダーカバーを持つラウテとは違い、 高い索敵技術をもつ場所へリタリンはこっそりと忍びこむということができない。だから撹乱を待っていた。 リタリンが真正面から突き進んだとしても、敵の要撃が間に合わないほどの撹乱を。 「そろそろ私も混ざろうかな」 杖先で床を突く。先端には蝋石が仕込まれており、地面に筆記できるようになっている。 安宿の埃の浮いた
木床に直接描く形で、乙種二人を囲むような円を描いた。 幾何学模様で装飾された魔法円は、これもまた蝋石によって引かれた線によりキャンバスの魔法陣とバイパスされている。 「何するつもりだ」 薬が抜けて正気を取り戻した華翼がこちらを睨んで言った。 氷城は魔法の専門家らしく既に見当がついたようで、なお黙っているのは彼らに危害を加えるものではないからだ。 「魔力を借りるのよ。私の自前じゃすぐ空になっちゃうから」 キャンバスの魔法陣に用意した薬品を垂らしながらリタリンは答えた。 これもまた魔女の技術だ。通常は術者の魔力を
使用する魔法を、動力源が他者となるよう『改造』したのだ。 魔法陣と薬液が反応して極彩色の煙が立ち込める、染まった大気を胸いっぱいに吸い込んで魔女は詠唱を始めた。 『礫の王、賽の帝、光溢れる地へと導かれし星の脈。 大地を裂き、海を割り、断崖の向こうより我が呼び声に答えよ。 汝の力、汝の名、汝の躯を借りてその剣を深く深く深く荒野へと突き立てん。 ――――貌なき征伐の軍勢よ、我が覇道に君臨せよ!』 召喚魔法。宿の前の街道に空間の歪が発生し、闇を可視化したかのような澱と共に影が染み出してくる。 産み落とされた影は
厚みを持ち、輪郭を得て、色彩を纏った。 それは甲冑を纏った騎士に近い形状をしていた。暗褐色の鎧は身動ぎの度に骨の鳴るような薄気味悪い音を立てる。 痩せ型で、背が2mちかくあり、分厚い片手持ちの戦斧を装備している。最も奇妙なのはその頭部だ。 まるで大男の首から上をもぎ取って、代わりに滑空砲を溶接したかのような異形の相貌だった。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/216
217: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/01/21(木) 05:06:39.29 0 リタリンが召喚可能な使い魔の中で指折りの戦闘能力を持つ異貌の怪人『バントライン』。 戦斧よる白兵戦で黒狼を上回るほか、頭部の散弾砲による至近砲撃は対人戦闘で無類の凶悪さを発揮する。 そして何より特筆すべきは、この使い魔は5体で一個分隊を組んでの運用が可能という点だ。 その分消費魔力も従軍魔導師が小隊規模で必要になるレベルだが、今回に限っては使い捨ての『予備』がある。 魔力を無理やり吸い取られた華翼と氷城は汗だくになりながら肩で息をしている。気絶しな
いだけ大したものだ。 「さあ、行きましょうか」 計5体のバントラインを従えて――と言っても最後尾だが――リタリンは進軍を始めた。 いつもの苔色のローブは動きやすいよう裾を絞り、顔面をすっぽり覆うような革製のマスクを付けている。 このマスクは両眼と口の部分だけが空いていて、目の部分は板水晶で保護されている。 口の部分は濾過の魔法を施した缶を取り付けてあり、瘴気や煙幕の中でも活動可能な仕様だ。 かつて彼女が開拓団にいた頃、毒煙を吐く原生魔獣と戦うために自作した防毒マスクである。 これはリタリンの素性と顔がバレないよう
にするのと同時に、用法通りの使い方も想定している。 すなわち、毒煙による撹乱戦術だ。 『"魔女"から"魔女狩り"へ。屋敷正面に使い魔5体を送るわ、自律駆動だから誤射に気をつけて』 遠話は便利な魔法だが、相手に高度な魔法使いがいれば傍受の可能性を捨てきれない。 よって交信は最低限、個人を特定できるような名前や言葉は使わないのがセオリーだ。 『"魔女"から"獣使い"へ。甲種の所在を教えて、鉢合わせしないで倉庫へ行けるルートの指示も欲しいわ』 音響索敵が可能で屋敷の内側を把握している
ラウテの道案内は必須だ。 屋敷を破壊してしまうのも良いが、薬の所在は確認してから潰したい。 やはり地下には行く必要があるとリタリンは考える。ヴィクトルの援護下であればスニーキングは不可能ではないだろう。 あとはリタリンが、現地でどれだけ見つからずに行動できるかだ。 屋敷の正門が見えてきた。火の手はそこかしこで上がっているが、当然ながら正面の警護は固い。 5体のバントラインはそれぞれ戦斧を振り上げながら突撃し、正門を守る冒険者の集団と激突した。 リタリンはその突進に合わせて走りながら、懐から革袋を取り出し着火して
放り投げる。 煙の尾を引きながら放物線を描いた革袋は、空中で爆発して毒々しい色の煙幕を形成した。 痺れ毒だが、毒性は弱い。代わりに皮膚に付くと無視できないレベルで痛みが走る。 そしてこの煙の最も重要なところは、痛みにより『これが毒煙である』と強烈に印象づけることだ。 加えてバントラインによる攻勢は、正門を真正面から破る戦闘だと疑う余地なく思わせる。 ――その全てが囮であり、リタリンがこっそり滑り込む為のデコイと煙幕であるとは考えつくはずもない。 『形容する――白煙と』 形容魔法を自身に使い、煙幕に紛れるようにス
テルスするリタリン。 彼女は地を這うようにしながら白兵戦闘のさなかをくぐり抜け、一人正門を突破することに成功した。 『こちら"魔女"。第一段階クリア』 正門入ってすぐの茂みの中に飛び込んで隠れると、屋敷の中からまた複数の冒険者が飛び出した。 バントラインが予想以上に奮戦しており、増援に呼ばれて駆けつけたのだ。 ばたばたと駆けていく彼らをやり過ごしてから、リタリンは注意深く索敵しながら屋敷の中へと入った。 ラウテと合流しても良いが、それぞれが地下を目指した方が早いかもしれない。 ―――――― http://tamae
.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/217
218: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/01/21(木) 05:07:32.69 0 屋敷は混乱の渦中にあった。昨日からちょっかいかけてきている魔女狩りがついに屋敷に火を放った。 そこまでは想定内であり、鎮火もスムーズに行ったのだが……のっぴきならない事態が起きた。 突如屋敷の中央に出現した化物が、周囲を破壊し冒険者達を捕食し始めたのだ。 どれだけ攻撃を加えても即時に再生し、反撃は瞬く間に敵対者の命を奪った。 「報告!例の化物は止まらず、屋敷を南方向に食い荒らしながら移動しています!!」 オメルタ子飼いの乙種冒険者・鋭鋒は詰め所に
飛び込んできた丙種の報告を脂汗混じりに聞いた。 彼はオメルタより冒険者達の実質的な指揮官を任じられており、指示の必要があった。 「クソ、何人殺られた?」 「死体が確認できてるだけで6名、いずれも冒険者です」 「やっぱあの化物かよ。あいつはダメだ、丙種じゃ何人いたってかないっこねえよ、乙種を回せ」 「いえ、それが……殺された6人の中には乙種の『明鏡』様も含まれていまして」 「なにィ!?あいつ殺られたのかよ、何やってんだ乙種!」 明鏡は乙種の中でも手練の水魔法使いだった。 それが丙種と連携しても手も足も出ずに殺さ
れたとなると、いよいよ拙い事態である。 「報告!屋敷正門に戦闘用の軍用召喚獣と思しき一団が出現、正門警備隊と交戦しています! 敵の数は5体ですが戦闘力が高く、増援の要請が届いています」 「次から次へと……!屋敷内の警備用員に通達、『喝破』と『焔月』を増援に回せ。 軍用召喚獣で丙種と拮抗してるってことは、突破目的じゃなく何らかの時間稼ぎの可能性がある。 誘いに乗るな、こっちの戦力を一気に引き上げてカタをつけろ」 「隊長!化物は!」 「俺が出る」 鋭鋒は傍に立てかけていた槍を手にした。 指揮官が動くわけにはい
かないのは定石であるが、あまりにもたくさんの攻撃に晒され続けている。 件の化物は鋭鋒であれば戦闘経験もあるし、あの触手にもそう簡単には捕まらない。 直接戦闘であれば彼こそが適任と言えた。傍の女性冒険者が止めようとするが、彼の意志が固かった。 「指揮は『紅雀』、お前が引き継げ。あと姐さん――『地走』を探して居場所を俺に遠話しろ」 地走は、火を放たれた時点で部屋を飛び出してどこかへ行ってしまった。 屋敷内ではお目付けの任が解かれているとは言え、彼女も有事の際には鋭鋒の指揮下にいるべき戦闘員だ。 居所を把握し、必要で
あれば移動を命じなければならない……あとでどんな仕返しが待っているとしても。 「行くぞお前ら、オメルタファミリーに売られた喧嘩だ、高く買ってやろうじゃねえか」 応、と配下の冒険者たちが応答して散開し、鋭鋒もまた詰め所を出た。 疾風の如く廊下を疾走し、化物の進路へと回りこむ形で立ちはだかる。 「一日ぶりだなクソ化物。俺が遊んでやるよ」 瞬間、鋭鋒の腕から先が消えた。槍の輝きだけが尾を引く鋼の嵐となり、化物の触手を片っ端から粉微塵にしていく。 再生するからどうしたと言わんばかりの圧倒的な攻撃力の飽和によって、化物
を押し返し始めた。 【リタリン:召喚獣『バントライン』で正門を攻撃、隙間を縫って屋敷内への潜入に成功。 ラウテに索敵を頼みながら屋敷の地下倉庫を目指す。甲種への切り札として秘策アリ】 【オメルタ:鋭鋒が指揮をとって魔女狩りの攻撃及びショゴスに対処。ショゴスと鋭鋒が対決中 地走は指揮を抜けてどこかを護りに行ってしまった】 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/218
219: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/01/24(日) 01:03:12.00 0 連絡が遅れてしまってすまない 実は先日からインフルエンザで寝込んでいた為、レスを殆ど書けていない 順番は従来通りで構わないんだが、少しばかり……具体的にどれほどという指定はないんだが、時間をもらいたい http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/219
220: ◆uUre4dQFyk [sage] 2016/01/24(日) 01:10:08.94 0 >>219 承知しました、お大事になさってください。 目安として一週間程度、停滞させましょう。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/220
221: リタリン [sage] 2016/01/24(日) 01:40:08.20 0 異論なしです http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/221
222: 名無しになりきれ [sage] 2016/01/24(日) 01:50:50.97 0 一週間はいらないだろ 熱が下がれば待機期間、逆にレスを書く絶好の機会が訪れる 普通に仕事してる人間なら、だが http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/222
223: 名無しになりきれ [sage] 2016/01/24(日) 10:52:57.03 0 参加者でもない奴が口出すなカス http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/223
224: 名無しになりきれ [sage] 2016/01/24(日) 13:35:14.17 0 インフルの経験ある奴は分かるだろ 体調良いのに外に出られないし仕事にも行けない期間があるんだよ 読書とかネトゲ、物書きに最適だろ http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/224
225: 名無しになりきれ [sage] 2016/01/27(水) 19:36:35.61 0 知るか関係ねーわヴォケ! インフルなんて予防接種できちんと対策出来たはずだろーが! 俺なんて毎年打ってるから一度もなったことないわ! 体調管理出来ない甘えタレはさっさと弾いて続きせんかいな! http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/225
226: 名無しになりきれ [sage] 2016/01/27(水) 20:13:12.92 0 参加者でもない奴が口出すなカス http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/226
227: 名無しになりきれ [sage] 2016/01/29(金) 18:00:16.44 0 いつまで待たせんだよ糞雑魚 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/227
228: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/01/29(金) 21:45:22.93 0 >『"魔女"から"魔女狩り"へ。屋敷正面に使い魔5体を送るわ、自律駆動だから誤射に気をつけて』 「……おっと、考えたな。そう言っておけば一発くらいなら俺に撃ち込んでも言い訳が利く」 ヴィクトルは皮肉を返しつつ、地上げ屋の屋敷を見下ろす。 敵の兵隊はまだヴィクトルを見つけ出す事すら出来ていなかった。 魔女の召喚した使い魔や、少女の召喚した「何か」、また火災への対応が重なっている為だ。 「さて、こちらは……引き続き嫌がらせをしてやるか」
ヴィクトルは火矢を再び弓に番え、今度は三階に集中して射掛けていく。 火の手はすぐに潰されていくが――火を放つ労力に比べ、火災を消す労力は遥かに大きい。 消火が殆ど一人の手によって行われているのなら、尚更だ。 妄執すら感じられるほどの過剰な防衛。 ヴィクトルは三階に地上げ屋が――そして『地走』がいる事を確信していた。 と、ヴィクトルは新たに数本の矢を手に取る。 鏃に纏わせたのは灯火ではなく――魔法によって形成された水球だ。 それらも、やはり射掛ける先は地上げ屋の屋敷で――直後、三階の内部に膨大な白煙が生じた。 矢に
纏わせた水魔法による濃霧が屋内に打ち込まれたのだ。 「さぁ……警戒しろ。お前の飼い主が襲われるかもしれないぞ」 無論、地走という甲種が防衛しているであろう三階に忍び込むという選択は下策だ。 例え隠密行動を得手としていたとしても、リスクが高すぎる。 そんな事は地上げ屋の陣営も、地走も理解しているだろう。 だがそれでも、万が一があるかもしれない――そう思わせる事さえ出来れば、ヴィクトルの策は成功しているも同然なのだ。 その万が一の可能性を、地走はその強い忠誠心故に捨て切る事も、他人に任せる事も出来ない。 (今回の
目的は破壊工作だ。 最も警戒するべき甲種の意識は既に三階に釘付けになっている筈。 後は侵入して、さっさと地下の倉庫に火を放ち、撤退するだけ……) そう判断し、ヴィクトルは瑞鉄を操作――拷問用の杭と糸と矢を作り出す。 三つは独立しているのではなく、一つに繋がっていた。 そしてまず杭を足元に打ち込み、続けて矢を地上げ屋の屋敷の屋根に打ち込む。 そうする事で、ヴィクトルの現在地から地上げ屋の屋敷まで、糸の道が繋がった。 後は拷問用の鉤爪を瑞鉄で形成し、糸に引っ掛ければ――上空から悠々と、屋敷へ入る事が出来る。 そ
してヴィクトルは糸の道による滑空を始めた。 姿は既に水鏡の魔法により隠匿してある。 一定以上の実力者には看破も可能な水鏡の魔法だが、今、屋敷は混乱の渦中にある。 様々な攻撃への対応に追われる中、「そこにいない者」を探し出すのは極めて困難だ。 「――オメルタファミリーを見くびりすぎじゃあないか?え?」 だがその「極めて困難」を、容易に成し遂げる者がいた。 地上から二階の高さにまで跳躍し、更に壁を蹴り、跳び上がる男。 その視線は――確かにヴィクトルを捉えていた。そして斬撃が彼を襲う。 ヴィクトルは殺気に反応し、咄嗟
に身を捩る――糸の道から身を投げ出して回避。 着地を果たし、首元を左手で撫でる。 魔女狩りのコートの襟が、大きく切り裂かれていた。 もし反応が僅かにでも遅れれば、死に至る傷を受けていた。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/228
229: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/01/29(金) 21:46:28.81 0 「……見くびられるのは、それ相応の理由があるからだぜ」 「そうかい。だが奇遇だな。 オメルタファミリーがこの街で君臨し、恐れられているのも――」 言葉を紡ぎ終えるよりも速く、男は踏み込みを始めていた。 同時に右腕が鋭くしなる――剣を振るう動作。しかしその右手の中に、刃はない。 ヴィクトルはその光景に一瞬怯み――しかし動揺による動作のミスは起こさない。 風魔法による気流の把握から、斬撃が確かに存在する事は感じ取れていた。 故に腕の振りから不可視の剣身の
軌跡を読み――瑞鉄の盾による防御を行う。 鮮血が、屋敷の庭に飛び散った。 「――それ相応の理由があるんだ。お分かり頂けたか?」 ヴィクトルは斬撃を防ぎ損ねていた。 肩口から胸にかけて、致命傷ではないが、決して浅くない刃傷が刻まれている。 殆ど無意識の内に治癒の魔法を発動して、出血を止める。 「……あぁ、よく分かったぜ」 そして――ヴィクトルは不敵に笑った。 「お前のその下らん手品の種がな」 瞬間、男――『焔月』が動いた。 再び不可視の剣による斬撃――今度は、ヴィクトルは盾ではなく細剣を構えていた。 狙いは斬撃を
放つ焔月の右手――見えざる刃の根本。 金属音が響き、焔月の斬り付ける動作が止まった。 「ただの曲刀だ」 ヴィクトルは鼻で笑い――焔月が刃を切り返す。 だが種が割れてしまえば、不可視の斬撃は不可視足り得ない。 ヴィクトルは再び細剣を振るう。 今度は、斬撃を止めるのではなく、焔月の手を切り落とす軌跡で。 今度は焔月が、笑みを――堪え切れず綻びたような笑みを浮かべた。 ヴィクトルの斬撃が、不可視の金属に阻まれた。 しかし感覚的に何が起きているのかは理解出来た。 細剣のハンドガードに剣を誘い込まれ、捕らえられてしまった
時の感覚だ。 剣の自由が利かない。 ヴィクトルの細剣を捕らえたまま、焔月は距離を詰める。 その左手には――やはり不可視の、しかし確かに存在する何らかの武器。 構えと動作からして恐らくは短刀――腹部を抉られれば命に関わる。 ヴィクトルは――咄嗟に瑞鉄を操作。 細剣をコートの内側の帷子と同化させて回収――右手の自由を取り戻し、その場から飛び退いた。 「……瑞鉄か」 「おいおいおい、心外だな。これはれっきとした俺の技術だ」 焔月は炎魔法の使い手だった。 炎は金属を鍛造し、またその熱気は時に見えるものを見えなくする。 彼
が操る武器は鍛造によって形を変え、熱によって姿を消す――まるで月のように。故に『焔月』。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/229
230: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/01/29(金) 21:47:01.61 0 「言っとくが、あのケチな召喚獣の援護は期待するなよ。 喝破のオッサンの怒鳴り声はアイツらの砲撃なんかよりずっと強力だ」 「――そりゃ、厄介だな」 忌々しげにヴィクトルは呟き、そして心中の中で言葉を続ける。 だが予定通りだ、と。 先ほどヴィクトルは三階への直接侵入を試みた。 甲種がいるであろう領域に、あえて侵入する素振りを見せた。 そうする事で自分が「本命」で、その目的が「地上げ屋の暗殺」だと強調したのだ。 ヴィクトルが水魔法を発動――爆発的な勢いで濃
霧が周囲に発生する。 逃亡の為だ。既に敵の一人に「目的地は三階」であるかのような動きを見せている。 後は逃げ出しても、勝手に敵が三階への警戒を強めてくれる。 そう判断し、ヴィクトルは悠々と濃霧の中で身を翻し―― 『無駄だ。まやかしとはいずれ暴かれるもの――喝ッ!』 どこからともなく聞こえてきた声と同時、彼の身を隠す濃霧が一瞬で吹き飛んだ。 彼の視線の先には、男が立っていた。 修行僧の如き様相の、禿頭の強面の男。 「『喝破』のオッサン?召喚獣の方はどうしたんだよ」 「数を減らし、丙種に任せた。紅雀からの指示だ。…
…その男を逃がすなとな」 喝破と呼ばれた男はそう言うと、一度深く息を吸い込んだ。 「では、やるぞ焔月。『悪党に枷を繋いでやるとしよう――喝ッ!』」 喝破が言葉を紡ぐと、不可思議な現象が起こった。 宙空に魔力ではない、何らかの「力」が浮き上がったのだ。 そしてそれは、最後の掛け声と共に矢の如くヴィクトルへと飛来する。 ヴィクトルはそれを跳躍により回避――「力」は背後の庭木に命中する。 直後――その庭木が軋みを上げながら、独りでに、ゆっくりと、へし折れた。 威力による破壊、といった体ではなかった。 まるで――年老い
た木が、自重に耐え切れず崩れ落ちるかのような光景だった。 「……なるほど、なんとなく分かった」 喝破の放ったその「力」は、彼の故郷では「言霊」と呼ばれるものだった。 彼は言葉が秘める力を具象化し、操る事が出来るのだ。 とは言え、それは決して言葉通りの現象を起こせるといった便利な技術体系ではない。 自分に都合がいいだけの言葉に「力」など宿らない。 力を引き出すには、術者が心からそう断言出来る「真実性」が必要なのだ――故に『喝破』。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/230
231: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/01/29(金) 21:49:53.96 0 (状況は……クソッタレだな。だが……まだ「最悪」じゃない) ヴィクトルは焔月、喝破の両方に警戒をしつつ、考える。 (だから……俺はもっと、追い詰められる必要がある) 例えば、今この瞬間に地下室への放火が成功したとして。 それで保管されている薬品を全焼させられるだろうか。 答えは、恐らく否――ヴィクトル達の狙いが保管庫だと悟った瞬間、地上げ屋は甲種に全力の消火を指示するだろう。 それでは超人薬の貯蔵分は残ってしまう。 だから――もっと追い詰められる必要が
あるのだ。 もっともっと追いつめられて、この状況から逃げ切れる訳がないと思わせる必要が。 そして、甲種を誘い出すのだ。 今はまだ甲種に動き回られては困る。 魔女と少女の行動に支障が生じる可能性がある。 だがヴィクトルが逃亡出来ないほどにまで追い詰められたなら、その瞬間、甲種は動く。 彼女自身の判断か、指揮官か、地上げ屋の指示かは分からないが、間違いなく動く。 そうなるようにヴィクトル自身が仕向ける。 そうなれば――最早、地下保管庫に放たれた火を即座に消し止める術は地上げ屋達にはない。 ただし、この作戦には重大な
欠陥がある。 なにせヴィクトルは殆ど詰みの状況にまで追い込まれてから、更に甲種まで誘い出して、その窮地から逃げ延びなければならないのだ。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/231
232: ラウテ ◆uUre4dQFyk [sage] 2016/02/01(月) 23:18:30.67 0 時刻は未だ朝方、オメルタ邸は煙に包まれ混迷している様子が伺えた。 ラウテが召還したショゴスに加え、リタリンが送り込んだバントラインへの対応のため情報が交錯しているのだ。 本来指揮官であるはずの焔月や喝破らの姿が見えないことも、その影響のひとつだろう。 ショゴスは数名の丙種冒険者を捕食する事で、その体積は減るどころか増えてさえいた。 囲んで殴ると言う戦法が通じないと察した冒険者たちは、包囲を広げ安全な距離からの射撃を基本とした戦法へと切り替え始める。
しばらくはその戦法が効果的であると思われていたが、状況は一変する。 十分に距離を空けていたはずの冒険者たちが、攻撃を受け倒れ始めたのだ。 最初は何が起きたのか分からなかった。しかしよく見ると、倒れた冒険者の体には深々と「牙」が突き刺さっていたのである。 ショゴスは闇雲に暴れていた訳ではない。周囲の状況を把握し、学習する事の出来る生き物なのだ。 体内に生成した牙を射撃の弾として扱うことを、この状況から学習したのだ。 全方向に収縮できる筋肉のような構造を持つショゴスにとって、体をそのように変化させること自体は難しく
ない。 しかし、優れた知性を持たずして、きわめて効率的な自己進化を促すことは不可能であろう。 遠距離攻撃を学習したショゴスの周囲では、被害が広がる一方だった。 倒れた冒険者は捕食され、新たな弾薬の材料として吸収されていく。 臆病な冒険者たちはその場を離脱し、数名の冒険者と鋭鋒のみが残されていた。 鋭鋒はその卓越した槍捌きで、ショゴスの復元速度を上回る攻撃を与える事が出来る。 そう思われていたが、攻撃が射撃に移行した現在、両者の戦力が拮抗したのだ。 たった今思いついたとは思えないほどに、ショゴスの放つ牙の弾丸の速度
は速い。 否、明らかにそのスピードは進化し続けていた。より効率的な射撃を模索しているのだ。 不定形故に射撃モーションも存在せず、射撃精度と弾速は放たれるたびに上がってゆく。 鋭鋒がそれを見切れなくなるのも、時間の問題であろう。 「獣使いから魔女へ…そのまま真っ直ぐ…15秒後に二時方向から敵影、隠れて」 ラウテは騒ぎに乗じて身を隠し、ソナーを用いてリタリンの誘導援護を行っていた。 窓から侵入したそこは屋敷の二階に位置する客間のひとつ。周囲の状況を探るには絶好の位置取りだ。 人払いの魔法は感知される恐れがあるため、あ
えてそれは使用しない。 壁は頑丈な石造りであったが、床は木製で音を通しやすい。 床を通じて十分に敵を察知する事が出来たのは幸いであった。 屋敷の地下へと至る通路は隠蔽されていたが、音を頼りに入り口を見つけるのは容易いことだ。 一階の厨房の床板に偽装された入り口は、おそらく知る者は少ないのだろう。 この混乱の最中では見張りの者もおらず、辿り着ければ侵入は容易だと思われた。 リタリンを誘導する一方で、ラウテは同時にヴィクトルの動向もまた窺っていた。 状況は劣勢、しかし援護を要求しないのは彼なりの策があってのことだと察
せられた。 彼はおそらく、甲種を釣る事が目的なのだろう。彼なりのこちらへの援護なのだ。 ならばこちらは予定の任務をこなすのみ。ラウテは物陰に身を隠したまま魔笛を奏で続ける。 ソナーの魔法は音を媒体に周囲を探知する魔法だが、息が途切れればその効果は失われる。 しかしその音色は途切れることはない。ラウテは既に十分ほど、その音を保ち続けていた。 循環呼吸法、と言うものがある。実際に存在する楽器の奏法の名称だ。 鼻で息継ぎをしながら、同時に口は息を吐き続けるという離れ業を成す奏法である。 熟練した奏者のみが奏でることが出
来るというそれを、ラウテは若年にしてマスターしていたのだ。 途切れぬ音は屋敷中を駆け巡り、数十メートルに及ぶ範囲を手に取るように彼女に伝える。 魔笛を奏でている最中は身動きがほとんど取れないのが欠点だが、身を隠していれば安全だろう。 もちろんソナーの魔法は自身の周囲も探知しているため、この環境において完璧に近い安全を確保していた。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/232
233: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/02/04(木) 17:35:21.55 0 屋敷中央二階での化物との戦闘は、既に惨状という形容を違和感なく使える状態となっていた。 捕食された丙種冒険者は10人を超え、生きている者も大半が負傷して撤退を余儀なくされている。 そんな中、指揮官兼筆頭冒険者である鋭鋒はほとんど一人で化物の矢面に立ち進行を食い止めていた。 「負傷者多数!救護を回せ!」「痛え、痛えよ……」 「庭園にて『魔女狩り』と思しき侵入者を捕捉、焔月様と喝破様が交戦を開始しました!」 矢継ぎ早に耳へ入ってくる報告、要請、うめき声
を頭の片隅で処理しながら、鋭鋒はひたすらに槍を打ち続ける。 そうする他に化物の触手を防ぐ方法がないからだ。 しかもこの不定形の魔獣は、鋭鋒と拮抗しながら他の冒険者への攻撃も同時にこなしていた。 それを可能としているのは、触手の合間に撃ち込んでくる小型の砲弾だ。 犠牲者達の肉と骨によって形成されたそれは、丙種冒険者の防御を撃ち抜くほどの威力をもっている。 「攻撃魔法の手を緩めるな!少しでも穴が空いたら突き崩されるぞ!」 現在、こちらの陣形は鋭鋒を中心として丙種の魔術師達を扇状に配置している。 攻撃魔法による十字砲
火を効率よく行い、火力を集中させるための差配だ。 鋭鋒が触手を穿ち落とし、その隙に丙種達が魔法の爆炎で本体に攻撃を加える―― その方法でいっときは化物を押し返すことに成功していたが、時間が経つにつれ戦況は覆り始めた。 化物がこちらの攻撃に対応し始めたのだ。恐るべき学習能力である。 「クソ……火力が足りねえ……!おい『紅雀』、一階か三階にいる乙種を増援に寄越せ! 誰かいるだろ、『黒鉄』か『礫塵』が良い、あいつらの攻撃力なら――」 遠話で『紅雀』に指示を出した、その一瞬の隙をついて、化物の射出した弾丸が槍衾を潜り
抜けた。 羽虫の羽撃きに似た音と共に擦過していった弾丸が、鋭鋒の首筋を食いちぎった。 鮮血が噴き出し、槍を抱えたまま膝をつく。すぐに部下の丙種が治癒魔法をかけるが、鋭鋒の攻撃速度は目に見えて低下する。 化物との戦力差が、決定的になり始めた――。 (持ちこたえられるのか……増援が来るまで……?) 紅雀にはああ言ったが、他の警備要員は警備の必要があるからそこに居るのだ。 防衛ラインに穴を空けてこちらへの増援を工面することは簡単ではないだろう。 すぐさま都合をつけて駆けつけてくれるなんて期待はできまい。 再編成には時間が
必要なはずだ。それまでに、鋭鋒達が全滅すればアウトである。 転移魔法でどこかへ飛ばそうにも、こんな街のど真ん中からどこへ飛ばしたってその先での被害は甚大だ。 街の守護というオメルタファミリーの(建前上とは言え)第一義に大きく反してしまう。 少なくとも鋭鋒の個人的な主義としてそういう民間の犠牲は出したくなかった。 鋭鋒の治療をサポートすべく丙種達が前に出る。 ギリギリで多重障壁の呪文斉唱が間に合ったらしく、戦場である二階通路の狭さも手伝ってなんとか化物を閉じ込めることに成功した。 しかしこれも焼け石に水だ。高度な障
壁魔法は長くは保たないし、それより先に化物は対応して破りにかかるだろう。 時間にしてほんの数十秒ほどの限られた安息の中、鋭鋒は治癒魔法の光に包まれながら逡巡していた。 あと数十秒で増援が駆けつけることは不可能だ。負傷した首は治るだろうが、それは振り出しに戻っただけで好転ではない。 むしろこちらの丙種戦力は目減りし、敵の攻撃力が上がっている以上全滅するのは時間の問題、単なる数十秒の延命に過ぎなかった。 この数十秒で打開の策を見つけられなければ、彼らに生き残る術はない―― http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charan
eta2/1447151379/233
234: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/02/04(木) 17:35:57.89 0 「早く運びだせ!引火するぞ!」 障壁のおかげで動けるようになった屋敷の使用人達が手近な部屋からいくつかの壺を持ちだしてきた。 料理や化粧、薬の調合など生活用途に使われる油壺だ。 屋敷に火を放たれているいま、化物によって壺が破壊されれば延焼を免れない為、今のうちに運び出そうとしているのだ。 「待て、そいつをこっちに寄越せ。お前らはさっさと逃げろ」 丙種達に油壷を持たせ、再び鋭鋒は立ち上がる。槍を携えて化物へと吶喊する。 応じるように、ついに障壁が破
られ化物が侵攻を再開する。 戦闘開始時と同じ状況、鋭鋒はまたしても一人で槍衾を形成し、化物と拮抗を始めた。 敵の攻撃力が上がっているいま、この拮抗もすぐに覆されるだろう。だから鋭鋒は決着をつけにいく。 「今だ、やれ!」 丙種達が水魔法の応用、流体制御魔法で油壷の中身を化物めがけて撃ち放つ。 迎撃の触手が奔るが、ここぞとばかりに鋭鋒が槍の回転速度を上げて撃ち落とす。 継戦重視の巡航速度から短期決戦の最高速へと己の中のギアを切り替えたのだ。鋭鋒の槍捌きはまだまだ先がある。 瞬く間に体積の大部分をぶち抜かれた化物が、
降ってきた大量の油によってずぶ濡れになる。 瞬間、鋭鋒が大きくバックステップ。入れ替わるように投じられた魔法の火の玉が化物に着弾。 ごお、と空気の巻き込む音と共に油へと引火し、化物が燃え上がり始めた。 死体を利用する魔法というのは古今東西普遍的に存在している。 死者の肉体から情報を抜き取るネクラファジーのような魔獣や、死体を自律駆動させるゾンビ化の魔術などがそうだ。 戦略的に大きな意味のあるこれらの魔法には、当然ながらそれを行使させない対抗策というものがある。 もっとも簡単で効果的な対抗策とは――火葬である。
化物は殺された丙種達の肉体を取り込んで成長していた。 だから鋭鋒はまずその化物内部にある犠牲者達の遺体を直接火葬することで、化物の身体を維持できないようにしたのだ。 そして基本的なことだが火がついている間継続的に化物はダメージをうけることになる。 火力不足はこれで補えるという寸法だ。 守護すべき屋敷に火を放つ結果となってしまったが――まあその責めは魔女狩りに負わせればいいだけの話だ。 「一気に押し込むぞ、続け!」 魔女狩りよろしく火攻めの助勢を受け、敗北に傾き始めた戦況は更に覆り始めた。 ―――――― http://t
amae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/234
235: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/02/04(木) 17:37:07.74 0 >「獣使いから魔女へ…そのまま真っ直ぐ…15秒後に二時方向から敵影、隠れて」 『了解。――形容する、"灯火"と』 屋敷一階にてスニーキングしているリタリンは、ラウテからの的確な指示によってかなり奥まで入り込んでいた。 廊下の灯火に形容することでステルスし、歩哨をやり過ごす。 下手に戦闘すれば遠話ですぐに仲間を呼ばれかねないので、交戦はおろか不意打ちを狙えてもスルーが基本だ。 『魔女から獣使いへ、姿が見えないけどどこから遠話してきてるの』
ソナーによる指示が可能ということはそう離れた場所にはいないはずだ。 リタリン一人では万が一見つかった時に本当に無力なのでできれば位置を把握しておきたいが、 下手に居場所を遠話に乗せて傍受されてもそれはそれでやりきれない。 と、順調に屋敷を進んでいたリタリンは曲がり角の手前で脚を止めた。 『獣使いへ。まずいことになったわ。この先に乙種冒険者がいる――あれは確か、"礫塵"』 リタリンは千里眼の応用で物陰から視野を広げて角の先を見ることができる。 視界の先には、大型の鎧を着込んだ人影が立っていた。 ドラクマと
同じ超重騎士団の重装鎧だ。彼のものとの違いは、色がカーキ色なのと兜の形状が怪魚を模しているところ。 元騎士のヘヴィアーマーで、術式戦槌による圧倒的な打撃力で全てを瓦礫と砂塵に変えてしまう――故に『礫塵』。 典型的なパワータイプのように見えて、砂礫を巻き上げ鎧の迷彩色でステルスまでこなすという技巧派でもある。 その乙種冒険者が、倉庫までの通路に立ちふさがっていた。迂回するにはあまりにも遠すぎる。 『鉢合わせになるわ。丙種ぐらいならごまかせても、乙種をやり過ごすのは無理――交戦するしかないわね』 幸い礫塵はまだこ
ちらに気づいていない。 不意打ちで一撃食らわせて、ラウテの援護を受けつつ戦えば倒しきれなくても道を拓くぐらいはできるはずだ。 そして地下倉庫にたどり着くのは別にリタリンでなくとも良い。 ラウテが迂回してこっそり厨房まで行き、倉庫の扉を開くかたちでも作戦は成功なのだ。 『魔女から獣使いへ。仕掛けるわ、援護して』 リタリンは杖で床に魔法陣を描く。 奇襲にあたって高階梯の詠唱をしている暇はないので、短い文節でも最大限の効果を発揮するよう陣で補助をするのだ。 礫塵は左右をゆっくりと見回しているが動きはない。鎧を着込んで
歩哨するだけでも体力は消耗する。立哨への切り替えは賢い選択だ。 不意打ちは効果が薄いかもしれないが、いずれにせよこれがリタリンにできる最大の戦略だ。 『――雷槌よ、奔れ』 最短にして最速の現象系第一階梯雷撃魔法。地面を這うように奔る紫電の一条。 それが魔法陣の効力により四条に増加し、それぞれが有機的な軌道をとってリタリンの手から離れた。 飛燕のごとき疾さで通路の角を曲がり、礫塵めがけて疾走する―― 『奔れ、奔れ、奔れ、奔れ!』 立て続けに第一階梯を4連続詠唱。それぞれが魔法陣で四倍されて計16の紫電となって奔っ
ていく。 それを追うように同時にリタリンは走り出す。 礫塵の前に飛び出した瞬間、先行していた雷撃が礫塵によって砕かれた床に阻まれるのを見た。 魚を模した兜の向こうの眼光がリタリンを捉える―― 『爆炎よ、穿て!』 現象系第一階梯の火焔魔法が兜目掛けて炸裂した。 礫塵はまるで堪えた様子もなく、僅かに後退しただけで悠々と雷撃の中を歩き始める。 やはりリタリン程度の現象魔法では目眩まし程度にしかならない。 捕まえられるのは時間の問題であった。 【倉庫手前にて乙種『礫塵』と交戦。劣勢】 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/
charaneta2/1447151379/235
236: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/02/06(土) 07:05:04.93 0 >『鉢合わせになるわ。丙種ぐらいならごまかせても、乙種をやり過ごすのは無理――交戦するしかないわね』 「……何をモタモタしてやがる。マジで俺を死なせるつもりか?」 切迫した報告を寄越す魔女にヴィクトルは悪態を吐き――直後、焔月が動いた。 不可視の得物を携えての踏み込み。 ヴィクトルは目を見開き、腕の振りからその軌跡の予測を試みる。 袈裟懸けの斬撃――だが直刀か曲刀かで斬撃の軌道は大きく変わる。 読み切れない。故に彼は後方に大きく飛び退く。 つまり地から
足が離れる時間が、戦闘の最中としては長くなる。 遠間からの攻撃の的だ。 『お前は強者ではないな。逃げ回るのは、いつだって弱者だ――喝ッ!!』 放たれた言霊がヴィクトルへと迫る。 着地し、再び身を躱す余裕はない。 だがこの手の魔法の類を防御するのもまた下策だ。 魔法や魔術とは、物理的に防御して防げるものばかりではない。 故に、ヴィクトルは自ら転んだ。 着地の瞬間に脚部を脱力し、後方に倒れ込む事で言霊を回避。 だがこの展開は決して好ましいとは言えない。 双剣を武器とする華翼には「低さ」を利用した戦いが出来た。 しかし
焔月は武器を作り直せる。 長物を使われれば、地に倒れ込んだ状態の相手に、一方的に攻撃が可能だ。 焔月が両腕を左右に大きく広げた。 そして縦と横、異なる軌道で同時に振り下ろす。 「さぁ、どっちが当たりか分かるかな――!」 気流で軌道を読んでいては対応は間に合わない。 不可視の一撃が自分に届くまでの一瞬にも満たない時間の中で、ヴィクトルは思考する。 思考し――決断した。 右の細剣を用いて横薙ぎの軌道に対して防御を行い――左手にも、細剣を作り出す。 そして振り下ろしの軌道に対して――見えない、曲刀の刃を弾くように、振り
抜いた。 金属音が、二つ響いた。 「――どっちも当たりだ」 読みは通った。 もしどちらかに渾身の力を込められていたら、細剣では防ぎ切れなかった。 ヴィクトルの額に、冷たい汗がほんの僅かにだが、滲んでいた。 だがそれを拭っている時間はない。 斬撃を弾かれ、焔月の上体は開いている。 起き上がりざまの刺突一閃で心の臓を貫ける。 ヴィクトルは横薙ぎの斬撃を凌いだ右手を支えに体を起こし――鮮血が庭の芝生に飛び散る。 「『――言葉とは時に鋭く、人に突き刺さるものだ』」 ヴィクトルの左腕に、矢の形を得た言霊が突き刺さっていた
。 刺突は放てず――焔月が体勢を立て直した。 ヴィクトルはすぐさまその場から離脱する。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/236
237: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/02/06(土) 07:06:26.90 0 「……命拾いしたな」 「お前がな。俺は喝破のオッサンが援護してくれるって分かってるからな。 何度だってギャンブルが出来るって訳だ。 お前さん、なかなか鋭い読みをしているみたいだが――何回、正解を引けるかな?」 焔月が両腕を、演者めいた動作で広げてみせる。 その前腕の半ばから指先にかけてが、不意に消えた。 見えなくなったのだ。不可視の得物と同じように。 「これならどうだ?さっきの読みも、俺の「握り」を見て曲刀だと読んだんだろ? いやマジで見事な読みだ
ったと思うぜ。残念ながら……次はないけどな」 挑発的な、遊び半分のような口調――だがヴィクトルは眉一つ動かさない。 (……時間稼ぎだな。俺を仕留める事よりも、底を見せず、攻めあぐねさせる事が狙いか。 つまり……増援の予定があるって訳だ。そいつは結構なんだが……。 堕廃の奴め。俺が甲種を釣り上げるまでに保管庫に辿り着けるんだろうな) 地走は、精神の均衡を保てていない。 だからこそ御しやすくもあり――しかし同時に読み切れない。 ヴィクトルは彼女を誘き寄せる為の手段を考えている。 だが、それを用いるよりも早く、地
走が衝動的に自分を始末しに来る可能性は常に否定出来ないのだ。 もし保管庫破壊の準備が整う前に地走が釣れてしまったら、ヴィクトルは極めて危険な状況に陥る。 堕廃の魔女と魔笛の少女の援護を得られないまま、甲種と、至近距離で遭遇する事になるのだから。 (……なんにせよ、一度状況を変えるか) ヴィクトルは水魔法を行使――右手に構える細剣の周囲に水球が現れた。 細剣が虚空を切る。 水滴が周囲に飛散し――それらは空中で薄く広がり、水鏡と化す。 鏡面が周囲の風景を映し――その全てにヴィクトルの姿があった。 濃霧の魔法は先ほど
、喝破の言霊により一瞬で掻き消された。 故に、欺瞞の方法を複数の、分離した水鏡を用いるように変えたのだ。 水鏡に身を隠し、ヴィクトルは左腕の矢傷を見た。 言霊の矢は未だ消えず残っている。 左腕は、神経が断たれているのか上手く動かない。 処置が必要だった。 だがその矢は何らかの術による産物。直接触れるのは下策だ。 故にまず、細剣を矢傷に割り込むように腕に突き刺す。 そして傷口を広げ、そのまま剣先を用いて矢を引き抜き、放り捨てた。 治癒魔法によって傷口が塞がれていく。 焔月と喝破は、動きあぐねていた。 二人で背中を預け
合い、周囲を警戒している。 水鏡の領域から脱出するのも、それらを破壊するのも、不意を突かれるリスクを伴う。 彼らの判断は間違っていない。 しかしその表情は硬い――この状況で、ヴィクトルは逃げようと思えば楽に逃げられると分かっているからだ。 逃がさない為には、不利な勝負に挑むしかない。 鏡面の影から飛び出したヴィクトルが喝破に迫る。 焔月が咄嗟にそれを切り払い――しかし水鏡による囮だ。容易く弾け、水飛沫が飛び散る。 やや遅れて、血飛沫がその後を追った。 焔月と喝破、両者の腕と胸部に、お返しと言わんばかりの矢が突き
刺さっていた。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/237
238: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/02/06(土) 07:07:28.45 0 鏡面越しにヴィクトルが射掛けたものだ。 矢は瑞鉄で出来ていて、すぐに持ち主の手元に戻った。 それに伴って付いてきた二人の血液が、ヴィクトルの手に付着し――彼はそれを無言で舐め取った。 『……魔女狩りから魔女へ。こちらは敵の妨害を受け作戦が滞っている。 状況を脱し、再度陽動を行え。援護してやる』 無論、この作戦の本命は魔女と少女にこそあり、陽動はヴィクトルの方だ。 彼の言葉の殆どは、単に盗聴の可能性がある遠話で、それを悟られぬ為の偽装。 唯一の真実は――
これから援護を行う事。 魔女の姿も、敵の姿も見えない、屋敷の外から中へ、援護を行う。それだけだ。 ヴィクトルが気流に意識を集中する。 焔月と喝破は不意打ちの脅威を強く意識させてある。 水鏡に身を隠した彼を探し回れはしない。 窓の位置、屋敷の構造、堕廃の魔女と――礫塵の位置。 その全てを風が教えてくれるような感覚。 風を読む時、ヴィクトルは奇妙な気分になる。 心地良くもあり――酷く不快でもある気分に。 「エルフの血を引くだけの何か」としてしか生まれられなかった自分が、 まるで本物のエルフであるかのような、そんな気分
に。 彼は矢を手に取り、矢羽を僅かに千切ってから、弓に番えた。 そして弓を目一杯引き絞り――解き放つ。 疾風の如く、征矢が翔ける。 風魔法により構築された「道」を駆け抜け――屋敷の窓を突き破り、屋内へ。 窓があった。つまり風の道は作れていない。 しかし、矢は窓を突き破った直後、更にその軌道を僅かに変化させた。 千切れた矢羽が正常ではない空気抵抗を生み、ぶれが生じたのだ。 『……あぁ、そうだ。一つ言い忘れた。頭下げとけよ』 矢は魔女のローブのフードを僅かに揺らし、そして――礫塵に。 「……本物のエルフなら、仕留め
てたのかもな」 受け止められていた。 狙い過たず、比較的装甲の薄い面頬の隙間を貫く軌道を取っていた征矢が、鋼鉄の五指に掴み取られ、へし折られた。 だが――礫塵は気付けない。 自分のへし折った矢が『薄い水膜を纏っていた』事に、面頬越しの視界と鋼鉄に包まれた指では気付けない。 瞬間生じた濃霧が、礫塵の視界を完全に奪い取った。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/238
239: ラウテ ◆uUre4dQFyk [sage] 2016/02/10(水) 00:41:23.31 0 【遅くなってしまい申し訳ありません。ちょっとした怪我のため遅れております】 【明日、もしくは明後日くらいになりそうな感じです】 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/239
240: リタリン [sage] 2016/02/10(水) 06:37:29.32 0 【了解です、ご自愛ください】 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/240
241: ラウテ ◆uUre4dQFyk [sage] 2016/02/10(水) 22:50:27.87 0 >『魔女から獣使いへ、姿が見えないけどどこから遠話してきてるの』 『魔女へ。大丈夫よ、全部見えてるし。それにここは安全だから』 しばらく屋敷にいる間に、屋敷の壁の特性を生かし反響を効率化させる術も把握した。 屋敷全体……は少々広過ぎるが、概ねの構造と人の有無を把握することは出来る。 ショゴスによる撹乱は十分な功績をあげている。このまま様子を見るだけでも大丈夫だろう。 そう思っていたが、状況は悪いほうに転がるものだ。 ソナーの魔法で大柄な人物の存在を
確認すると同時に、リタリンから遠話が飛んでくる。 >『獣使いへ。まずいことになったわ。この先に乙種冒険者がいる――あれは確か、"礫塵"』 ソナーで把握出来るのは、体格や服装の構成材料までだ。 おそらくはとびきりの重装甲を纏った大男、それで乙種ならかなりのつわものだろう。 >『鉢合わせになるわ。丙種ぐらいならごまかせても、乙種をやり過ごすのは無理――交戦するしかないわね』 リタリンが向かう先の道を塞いでいるのなら、おそらく地下倉庫の存在は確実だ。 突破するだけの価値があるだろうということは、容易に想像出
来た。 しかし、ここに来ての乙種の敵……リタリン一人なら破るのは容易ではないだろう。 援護の必要があると思われるが、ここから届かせられる音魔法では威力が伴わない。 召還のリソースのほとんどをショゴスに費やしている今、ラウテに出来ることは少なかった。 >『魔女から獣使いへ。仕掛けるわ、援護して』 『了解、一分待って。そっちに駆けつけることにする』 そう遠話で伝えるとほぼ同時。 ラウテはソナーを止め大きく息を吸い込むと、鋭く大きな音を発した。 範囲を限定した凝縮された音波は、足元の床に作用しそれを崩壊させる。 崩壊音
波と呼ぶそれは、接触している素材を音波により崩壊せしめる、強力な魔法だ。 床を崩壊させ穴を開けたラウテはそのまま落下し、一階の部屋のひとつに軽やかに着地する。 そこからリタリンの居る位置まではすぐだ。ラウテはそこまでひた走る。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/241
242: ラウテ ◆uUre4dQFyk [sage] 2016/02/10(水) 22:51:04.97 0 そしてちょうど一分、ラウテはリタリンに追いつく形で合流した。 そもそも何故ラウテが屋敷に潜入し地下倉庫の破壊に向かわないのか。それはラウテが援護に特化しているが故である。 身を隠し敵を撹乱させ、戦闘は召還獣に任せることで場を支配する。それがラウテの基本スタイルだ。 もちろん直接戦闘も可能ではあるが、それはあくまで撹乱の手段のひとつだったりする訳で。 魔法を放ち、それでも効果がないことに愕然とするリタリンに、後ろからそっと声を掛ける。 「援護は任せて
、とにかく最大火力で」 ラウテは小さな音で複雑な旋律を奏で、床の魔法陣と自らの間にパスを繋ぐ。 他の体系の魔法と音魔法は、それほど相性が良い訳ではない。しかしラウテにはそれが出来た。 魔法音楽に特化し、優れた魔法作成能力を持つが故に、大抵の魔法を読み取り音楽に組み込めるのだ。 単音では埒が明かないと判断したラウテは、楽器をリュートに持ち替え、更に奏でる。 繋いだパスから魔力を注ぎ込み、リタリンの魔法を強化しているのだ。 人並み外れた魔力を持つが故に出来る力技。にも拘らず繊細に魔法を制御している。 一通りの作業を
終えたラウテは、武装を双剣に持ち替える。 ちょうど時を同じくして、ヴィクトルの遠話が飛ぶ。 >『……魔女狩りから魔女へ。こちらは敵の妨害を受け作戦が滞っている。 状況を脱し、再度陽動を行え。援護してやる』 もちろん作戦というのはフェイクだ。本命はリタリンそのものである。 そしてラウテの目的もまた、リタリンを地下倉庫に導く事なのだから。 ヴィクトルの矢が礫塵に掴み取られた瞬間、ラウテは駆け出していた。 双剣を構え、低い姿勢で礫塵の懐へ潜り込むように近づく。 同時に濃い霧が発生したのを確認したラウテは、走りながら
歌っていた。 それは楽器を用いない声によるソナー。濃霧の中でも正確に相手の位置を捉えているのだ。 まるで踊るような足取りで敵の背後に回り込んだラウテは、首筋の鎧の隙間めがけて、剣を繰り出す。 しかしそれは鎧に阻まれる。攻撃を察知した礫塵が、わずかに動く事で狙いを逸らしたのだ。 振り向きざまにいい加減に放たれる鉄槌の一撃を、ラウテはバク転で距離をとり回避する。 軽い双剣では、礫塵の防御を貫くことは非常に難しい。だがしかし、魔法なら可能だ。 こちらを振り向いた礫塵の背後で、詠唱を終えたリタリンの魔法が放たれる。 http
://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/242
243: 名無しになりきれ [sage] 2016/02/12(金) 00:35:29.35 0 雑魚は一掃しないと キリがなくなるぞ http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/243
244: リタリン [sage] 2016/02/15(月) 20:41:13.55 0 【すみません!一両日中には投下します!】 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/244
245: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/02/16(火) 21:59:57.03 0 重装の甲冑騎士、礫塵が雷撃の林の中を疾駆する。 その先にいるのは防毒マスク姿の魔女、リタリンだ。 彼女は礫塵の圧倒的な防御力、突破力に小さく悲鳴を漏らしながら、健気にも自身の杖を構えて対峙を選んだ。 「……!」 礫塵は無言、しかし裂帛の気合は呼気というかたちで表に出る。 一瞬肉体が鎧越しにも膨張したかのような錯覚とともに、振りかぶった術式戦槌をまっすぐに打ち下ろした。 彼の得物は魔法による加速を施した華翼と同種の魔導兵装だが、華翼のそれが機動力重
視であるのに対し、こちらは威力に全振りだ。 その加速度と超質量、超硬度によってあらゆる物体を砕き尽くす。 その一撃には指向性のある大量の魔素が伴う為に、この戦槌は魔法さえも砕くことができる。 ドラクマがタフさを頼りに魔法を受け切って殴り合いで勝つスタイルなら、礫塵は魔法ごと相手を叩き潰す超攻撃的防御戦型である。 いずれにせよ、リタリンにとって相性が悪いことには変わるまい。 (バントラインを一体でも連れてくるんだったわ……!) 正門の陽動に当てているバントラインは、本来こういった重装甲の相手をする為の戦術要素だ。
潜入任務においてはあの巨体はむしろ邪魔になると踏んで置いてきたのが裏目に出たかもしれない。 当然だが、新たに召喚する余裕などあるはずもない。 『形容する――"泥沼"と!』 向かってくる礫塵の足元へ向かって形容魔法を放つ。 床が液状化し、泥のようにうねって礫塵の脚部甲冑を絡めとる。 鎧武者はそれを面頬の奥の相貌で一瞥すると、打ち下ろし軌道にあった戦槌のグリップを巧妙に握り替えた。 加速ののった鉄塊の軌道が僅かに変更され、リタリンの頭蓋ではなく足元の泥と化した床へと叩きつけられた。 パギィン!と金属質のなに
かが爆ぜ割れる音と共に形容魔法が打ち砕かれ、床のエンチャントが解除される。 この巨体で恐ろしくアドリブが効く。やはり乙種の名は伊達ではない。 生まれた隙にリタリンは矮躯を必死にねじ込んで、なんとかバックステップで距離をとった。 もう後はない。廊下は狭く、逃げるスペースは有限だ。 ――しかしそれでも、戦況はジリ貧ではない。 >「援護は任せて、とにかく最大火力で」 要請していた援護に応え、ラウテがリタリンの背後から合流した。 これで二対一。たとえ相手が乙種であろうが、このラウテもまた正式な乙種冒険者。 一回りも年齢
の違う少女の頼もしさにリタリンはもう泣きそうだ。 「詠唱するわ。時間をちょうだい」 ラウテはその短いやり取りで完全に意図を理解したらしく、魔法の音律を奏で始める。 魔法陣への魔力供給を確認、魔女の魔法を強化する支援魔法だ。 驚く無かれこの魔笛の少女は、この若さで魔女の専門分野を理解し、使いこなし始めているのだ。 >『……魔女狩りから魔女へ。こちらは敵の妨害を受け作戦が滞っている。 状況を脱し、再度陽動を行え。援護してやる』 そこへヴィクトルから遠話が飛んできた。 陽動。彼は意図的に遠話に虚実を織り交ぜている
。 それはつまり、傍聴者の存在を示唆するような『敵の妨害』を受けているということだ。 そんな中で何が嘘で何が真実なのか判別する根拠は示されていないが、彼が何をするつもりなのかはわかっていた。 あの男は、やると言ったことはやる男だ。――たとえそれがどれだけはた迷惑な副次被害を産もうとも。 >『……あぁ、そうだ。一つ言い忘れた。頭下げとけよ』 「もう慣れたけれどね!」 リタリンは半ばやけくそ気味に膝を曲げた。 瞬間、窓を突き破って入ってきた矢が意味不明な軌道をとってリタリンの頭上を刈った。 冷たいものが背中を駆け下
りていく感覚に身震いしながら見上げると、礫塵へ向けて鋭い曲線を描く矢羽の尾が見えた。 甲冑騎士は危なげなくそれを掴みとる。曲軌道で速度が下がっていたとはいえ、信じられない反射神経だ。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/245
246: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/02/17(水) 00:53:12.56 0 「ダメじゃない!」 リタリンはヒステリックに叫んだ。 しかしそれは、彼女がヴィクトルの意図を完璧に理解していたが為の、礫塵に対する精一杯のブラフだった。 本命は矢による刺突ではなく――矢にエンチャントされた水魔法だ。 礫塵によって矢がへし折られた瞬間、仕込まれた魔法が発動、水が濃霧となって礫塵の周囲一体を白く染め上げた。 そして連携できていたのはリタリンだけではない。 ラウテもまた、矢が掴み取られた時点でその手の武器を双剣に持ち替え疾走を開始して
いた。 礫塵にはそれが、失敗した狙撃のフォローに動いたように見えただろう。 だが真実は違う。何故なら彼女は歌っている。濃霧の中でも敵の位置を把握できるソナーの魔法だ。 彼女の言った援護という言葉にも嘘はない。だからリタリンは、間髪入れずに詠唱を開始できた。 『燦然の空、十二の柱、四方千里を染め上げる霜の平野。 銘は氷雪、その神威を以って万象一切の時を止めよ』 文節五つ、第五階梯現象系氷魔法。 第五階梯はいわゆる中位魔法で、魔法使い系職であればそう苦労せずに唱えられる程度のものだ。 詠唱破棄の使えないリタリンが戦
闘中に使える魔法としては最大級。 これでも礫塵ほどの実力者であれば大したダメージもなく耐え切ることができるだろう。 だが、今は加えてラウテの魔力供給がある。その彼女はソナーで霧の中へと切り込み、礫塵へと飛びかかる。 放たれた剣閃は浅い、しかし急所狙いの一撃は礫塵に警戒させるには十分だった。 甲冑武者が術式戦槌を少女へ向けて振り回す。霧の向こうのその背中へ、リタリンも魔法の照準が合った。 『――凍てつけ!』 凝集された氷結魔素による投射攻撃。 疾風の速さで殺到する魔力の波濤が、廊下の壁や床を凍りつかせながら礫塵へ
と迫る。 しかし礫塵もまた乙種冒険者。こちらに魔法使いがいるという意味を読んでいた。 ラウテへ向かって振り抜いた戦槌、その勢いを殺さずに右足を軸に一回転。 十分な加速が乗ったまま周回してきた術式戦槌が、リタリン肝煎りの魔法攻撃を迎撃する。 あの戦槌には魔法を破壊する効力がある。どれだけ健気に詠唱した魔法であろうと、ディスペルされれば意味を失う。 鎧の向こうの双眸が、己が勝利への確信に輝いた。 ――しかし! 完璧な軌道でもって出迎えたはずの戦槌は、攻撃魔法を穿つことなく空振った。 氷結の魔法は礫塵の位置まで届かなか
った。何故ならリタリンの魔法は、初めから礫塵など狙っちゃいなかったからだ。 魔法の対象となったのは、礫塵ではなくその周囲の『濃霧』。 あの性悪エルフが性懲りもなく放り込んできた嫌がらせの水魔法、それが生み出した濃霧へと氷結魔法を放ったのだ。 霧とは、密度こそ低いものの空間に偏在する水の集合体である。 水であるからには、当然凍る。それが強化された魔法による影響力であれば抗いようがない。 リタリンの魔法は礫塵の周囲を色濃く覆っていた霧へと作用し、一瞬で凝結させた――その渦中にいる礫塵ごと。 氷城のように氷柱の塊の中
に閉じ込めることはできなくとも、鎧の関節や隙間を強靭な氷で覆うことはできる。 そしてこの重装甲、一旦駆動性を失われてしまえば、それは最早鎧ではなくただの鋼の棺桶だ。 ヴィクトルの水魔法、ラウテの魔力援護、そしてリタリンの氷結魔法が歯車のごとくピタリと噛み合った結果。 関節を固められ身動きの取れなくなった礫塵はそのまま屋敷の壁めがけて倒れこんだ。 脚も固まっているので起き上がることすらできないだろう。 リタリンは鎧の隙間から杖先を差し込み、初級の雷撃魔法を流して礫塵を失神させた。 「終わったわ……ご苦労さま。先へ
進みましょう」 礫塵がここで歩哨をしていたということは、この先に重要な物資があることは間違いない。 急激な魔力の使用に肩で息をしながら、リタリンはラウテへ先を促した。 【礫塵撃破】 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/246
247: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/02/21(日) 05:54:32.76 0 ヴィクトル・シャルフリヒターは風を読む。 濃霧に満たされた廊下の中で、交錯する疾風と暴風――礫塵と魔笛の少女。 その外側から紡がれる空気の震え――堕廃の魔女の詠唱。 そして――その震動が終わると同時、刹那の内に静止する気流。 濃霧の動きも、暴風の如き気配も、最早感じ取れなかった。 「……使えるな、アイツ」 ヴィクトルは小さく呟き――その手は既に弓に矢を番え、引き絞っていた。 水鏡の鏡像で取り囲んだ焔月と喝破に、状況を改善する隙は与えない。 射掛けられる無
数の矢は、少しずつ、だが確実に二人を追い詰めていた。 喝破の操る言霊は強力な術だが――その発動には言葉を伴う必要がある。 ヴィクトルの放つ征矢は彼が一呼吸を終えるよりもずっと短い時間で、彼を貫ける。 初撃で胸部――肺を射抜かれていれば尚更、被弾を堪えて言葉を連ねる事も困難だった。 そしてそんな喝破を庇わざるを得ない焔月も、徐々に消耗を強いられていった。 だが彼とて乙種の冒険者――ただ一方的に嬲られているばかりではない。 『――其は尾を喰む蛇。森羅の起こり、万象の終焉』 射掛けられる矢の雨を、致命の物のみを弾き
ながら焔月が声を紡ぐ。 『全を巡り、遍く一の姿を得し者よ。汝に求めしは灰と塵。 一を零に。零を全に。全てをその輪廻の裡へ』 彼は優れた白兵戦術の使い手だが、その基盤となっているのは高度な炎魔法の技量だ。 時間稼ぎや魔力の消耗と言った「戦闘における不純物」を考慮しなければ、 近接戦闘を行いながらの魔法行使が彼には可能だった。 『喰らい尽くし、虚無を齎せ――【燃える世界】』 大振りの斬撃と共に放たれた炎の魔素が、彼の周囲を焼き払った。 周囲に張り巡らされた水鏡が一瞬間の内に蒸発する。 (晴れた!あの野郎は――)
焔月が周囲を見回そうとして――その体を、四肢の関節を、疾風の如き尖矢が貫いた。 矢は、屋敷の窓――彼らのすぐ傍にあった一階の窓から射掛けられていた。 展開された水鏡を打破するべく、炎魔法の使い手が取り得る最良の手段は明白だ。 周囲を焼き尽くす大魔法――だが、それも無制限に使える訳ではない。 彼は地上げ屋とその屋敷の警護に雇われた冒険者だ。 その彼が、屋敷を巻き込み、火災を招き、主人に危険の及びかねない魔法の使い方を出来る訳がない。 詠唱が聞こえた時点で、水鏡の欺瞞に身を隠しながら屋敷の窓に飛び込む判断をする事は
、ヴィクトルにとって困難ではなかった。 「なかなかいいザマじゃないか。飼い犬風情にはかなりお似合いの姿だぜ」 芝生に倒れ伏す焔月と喝破を見下しながら、ヴィクトルは再び屋敷の外へ出た。 「だが――今の判断は最悪だったな。まったく、何の意味もないぜ」 彼は嘲笑を浮かべながら――屋敷の三階を見上げた。 「考えてもみろよ。お前達が負けたら……一体誰が代わりに俺を止めるんだ?」 そして細剣を自身の眼前に立てるように構え――口を開く。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/247
248: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/02/21(日) 05:57:12.08 0 『其は天上の神。全の象徴。分け隔てなき施す者』 焔月の表情が、強張った。 『慈悲を示せ。愛を以って与えよ。無慈悲なまでの施しを。 草木に灯りを。大地に温もりを。闇に黄金の如き輝きを。 その施しで全てを押し潰せ』 エルフが剣を掲げた。 切っ先の向く先は――屋敷の三階。 『熱を満たし、光を与えよ――【爆ぜる世界】』 詠唱完了と共に放たれた火球が、屋敷の外壁に触れた瞬間、炸裂した。 強烈な爆風と熱波が拡散し――『城塞』の魔法により高度な堅牢化を施された外
壁が、容易く砕け、溶け落ちる。 屋敷の三階の内装が、外からでも確認出来るほどの大穴が穿たれていた。 もし「壁のすぐ裏側に誰かがいたのなら、絶命は免れなかった」だろう。 それは、地走には我慢ならない事だろう。 自分の一切与り知らない状況から、運が悪ければ飼い主の命を奪っていた爆撃が放たれたのだ。 「さぁ、『キレて』きやがれ、甲種……!」 故に、地走は間違いなく激怒する。 そして――爆撃を仕掛けた外敵を始末しに来る。 最早それを、自分以外の、信用ならない部下達に任せはしない。 ヴィクトルは確信していた。 そして―
―穿たれた大穴から、悪鬼の如き形相の地走が、彼を見下ろした。 死神の鎌を首に掛けられたかのような悪寒。 それを感じた時には、ヴィクトルは既に水鏡の魔法を行使していた。 己の姿を隠匿し、更に周囲には無数の鏡像を展開、加えて濃霧を張る事で幻惑の看破を阻害。 同時にその場から飛び退き――直後、地走の飛び蹴りが、彼が一瞬前にいた地点を抉った。 ヴィクトルがやや緊張混じりの、皮肉げな笑みを浮かべた。 所詮は獣だ、と。 後はこのまま付かず離れずの距離で牽制を仕掛け、屋敷から引き離せばいい。 魔法に長けた乙種が二人、鎮火に適
性がある乙種が一人、既に無力化出来ている。 地走さえ誘き寄せれば、地下保管庫の消火はすぐには行えないだろう。 そうなれば――後は地上げ屋の陥落も時間の問題だ。 その未来予想図を打ち砕くように、地走が、姿を隠したヴィクトルの方を見た。 不可視の相手を闇雲に探している動きではない。 彼女は確信を持ってヴィクトルを睨み――そして、踏み込んだ。 鋼鉄の刃とすら見紛う貫手を――ヴィクトルは深く屈み込んで躱した。 地走はヴィクトルよりもずっと背が高い。つまり視点も高いという事だ。 濃霧の中、地に伏して姿を隠したヴィクトルを見
つけ出すのは――少なくとも先ほどよりかは難しい。 ヴィクトルは地走に対する見くびりを捨て、気配を殺して地に伏せ続ける。 周囲には鏡像だけでなく鏡面そのものや、中身の無い不可視の水鏡を展開。 欺瞞に欺瞞を重ね、発見される恐れを少しでも低減させる。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/248
249: ◆xAR6oa9/33KJ [sage] 2016/02/21(日) 05:59:05.41 0 (……どうなってんだ。昨日よりも……更に動きが……感覚も、鋭くなってやがる) そして地走の変貌に対して思索を始め――答えはすぐに見当が付いた。 (そうか……「過剰摂取」させやがったな。甲種が薬の正体を知っているにせよ、 いないにせよ、口実は幾らでも用意出来る……!あのキレっぷりも、「悪酔い」混じりって訳だ……!) 「自分が地上げ屋の立場である」と仮定して考えれば、すぐに分かる事だった。 (逃げ切れる……か?) 考えて――今度もやはり答えはすぐに出た
。 逃げ切るのは極めて困難だ。 完全に気配を殺している今でこそ発見されていない。 が、地走は欺瞞の目もくれずに周囲の様子を伺っている。 動けば、見つかる――ヴィクトルは確信していた。 ならば、どうするのか。 答えは、単純明快。 それでも、動くしかない。 魔女と少女はもう放火を済ませた頃合いだろう。 二人の援護を受け、地走を屋敷から引き離し、地下保管庫を完全に破壊する。 作戦に変更はない。 ヴィクトルは立ち上がり、屋敷の塀へと脱兎の如く駆け出した。 その不可視の背中を、地走はやはり正確に見据えた。 『――離脱する。
援護しろ』 (……アイツの魔法、何かがおかしかった) 焔月は四肢を射抜かれ動けない状態のまま、思考していた。 (あんな魔法が使えるなら……なんで戦闘中に使わなかった? 階梯を幾つか落としゃ、エルフなら詠唱短縮か……完全破棄して魔法が使えるだろうに) 彼は首を左右に振る。 (それだけじゃない……アイツが使ったあの魔法は……俺の、俺が使える最大の爆炎魔法だ…… 偶然、なのか……?戦闘中、一度も戦闘用の魔法を使わなかったアイツが、 唯一使った魔法が俺の、最大魔法……何かが、おかしい……) だが、その疑問が解
に至る事はない。 そして失血による失神寸前である彼は――その疑問を誰かに伝える事さえ、出来はしない。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/249
250: ラウテ ◆uUre4dQFyk [sage] 2016/02/24(水) 21:27:47.37 0 ヴィクトルら一行が作戦を開始して未だ一刻も経たず……オメルタ邸の周辺は騒ぎに気付き始めていた。 立ち上る煙と戦いの声や音……邸宅の外からでも分かるそれらは、住民らに不安を与えている。 ここは高級邸宅地、それなりに地位のある者ばかりが住んでいるのだから、安全は必須だ。 宅地の広さ故に火事が起きても延焼の危険は少ないが、何らかの形で被害が及ぶ可能性はある。 しかし付近の住民らが下した結論は「関わらないこと」だった。 何せ相手はあのオメルタの屋敷だ。警備も
厚く、この街で最も安全な場所のひとつである。 もし何か騒ぎがあったとしても、すぐに鎮圧されるのは目に見えているのだ。 煙が上がっていると言っても大した様子はないし、消防を呼ぶ必要はないだろう。そう考えたのだ。 リスクを避けるには関わらないことが一番である……彼らにとって、それは唯一の答えだった。 さて、その騒ぎの只中、最も中心に位置しているのは暴れるショゴスとバントラインたちだ。 ショゴスの胃が満たされているせいだろうか、それとも単に不味そうなのか、ショゴスはバントラインに手を出さない。 むしろショゴスは率先し
て、バントラインたちの行動を手助けするような動きすら見せている。 と言うのも、ショゴスはこの状況に飽き始めていたのだ。餌は豊富だし遊び相手もいるが、刺激が少ないのだ。 だったら状況を転がして騒ぎを大きくし、より快適に捕食と殺戮を行えるようにする。そう考えたのだった。 ショゴスの主人から、ここで可能な限り時間を稼ぐように言われていた事は覚えている。 だがその命令はどうでも良い。必要なのは殺戮を楽しむ事だけだ。それがショゴスの思考の全てであった。 そんな騒ぎのおかげで比較的安全に建物一階を探索出来ているラウテとリタ
リンだったが、ラウテはひとつの疑問を感じていた。 「さっきの大男、何故殺さなかったの?」 リタリンにそう問い掛ける。少しでも魔力を消耗するより、刃物でも鎧の隙間に突っ込めばいい話だ。 そういう部分を、ラウテは合理的ではないと感じる。逆に人の命を奪うことに疑問を感じないのだ。 ラウテは生まれたときから、魔笛と契約することを定められていた。 彼女の実家は代々魔笛を奉り、それを守り操ることを生業としている。 一族の中でも秀でた才能を持っていたラウテは、当然のように魔笛に選ばれた。 彼女が教わったのは、魔笛の扱い方と音
楽魔法、そして人の殺し方だった。 魔笛アムドゥスキアスは人の魂を餌とする。それを扱うためには、贄を用意する必要があったのだ。 故にラウテは、人を殺すことにためらいを、禁忌を覚えない。 弱い者は餌となり、強く生きねば食い殺される生活を当たり前として過ごしてきた。 だから彼女は人を殺す。魔笛が喜ぶように、出来るだけ残虐に。 急ぎながらも言葉を交わしていた二人だったが、すぐにお目当ての厨房に到着した。 安全を確認し厨房に侵入した二人は、すぐに床に作られた扉を発見する。 一見ただの床下収納……しかしその先に広い空洞がある
ことは、ラウテの魔法で感知済みだ。 案の定、扉には大きな南京錠がかけられている。物理的に破壊するか、開錠の魔法を使う必要があるだろう。 ラウテの扱う魔法体系に、開錠のスペルは存在していない。そこでラウテは迷うことなく、その錠前に短剣を振り下ろした。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/250
251: ラウテ ◆uUre4dQFyk [sage] 2016/02/24(水) 21:28:42.72 0 「リタリン、ちょっと離れててね」 叩き付けた短剣を足で押さえ、空いた両手で笛を吹き鳴らす。 先ほども使った、崩壊音波の魔法を短剣に対し使ったのだ。 接触している物体にしか作用させられない上に、楽器を扱うのに両手が塞がってしまうという、使いどころの難しい魔法だ。 それでも簡単に床に穴を開けてしまうほどの音波は、南京錠を破壊するのには十分だった。 南京錠はあっけなく砕け、地下への扉は開放された。後は中を確認して火を放てば良いだけだろう。 「ラウテはここ
で見張る。その間に中をお願い」 入り口はひとつしかない。そこを押さえられてはならないし、火を放つならリタリンのほうが適任だろう。 ラウテは改めて笛を吹き鳴らし、周囲の状況を音波と一つ目蝙蝠で探り始める。 相変わらず人の気配は二階に集まっているようだ。三階にも人影は確認出来るが、脅威にはならないはずだ。 問題は建物の外、戦闘を繰り広げているヴィクトルとその相手たちだ。 ここからだと多少距離があるため巻き込まれる心配はないが、問題は戦っているヴィクトルだ。 気配から察するに、あの地走もまた戦闘に参加したものと思われ
る。 そう察知してすぐ、遠話がヴィクトルから飛んできた。 >『――離脱する。援護しろ』 『了解、こちらもすぐに「靴紐が解ける」わ』 あらかじめ決めておいた暗号だ。倉庫の破壊を示している。 しかし援護か……と、ラウテは暫し思案する。 ショゴスを動かすために、リソースを割き過ぎているのだ。今は大したものは呼べない。 思案の後、彼女は笛を鳴らす。すると、邸宅の上空に黒雲が垂れ込め始めた。 否、それは雲ではなく鴉や鳩の群れだ。上空を旋回し、ひとつの意思ある生き物のように蠢いている。 ヒッチコックの「鳥」という映画をご存
知だろうか? 鳥が人間を襲うと言う、パニック映画の傑作である。 人々は謎の鳥の凶行に恐怖し、逃げ惑う事しか出来ない。鳥が恐ろしいのではない、群れと言うのが恐ろしいのだ。 そんな映画さながらのように、鳥たちは「獲物」を睨み付け、群れと言う生き物として行動する。 狙いが定まった鳥たちは、まっすぐに人間たちに向かって落下し始めた。 その嘴で、爪で、攻撃を繰り返す。大したダメージにはならないが、邪魔くらいにはなるはずだ。 支配された鳥たちは、攻撃を受けても怯んだりはしない。効果があるとすれば、動物が本能的に忌避する炎く
らいだろうか。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/251
252: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/03/02(水) 21:01:09.27 0 「うまくいってるみたいね、陽動」 オメルタ屋敷の瀟洒なインテリアを指でなぞりながら、リタリンは窓の外の喧騒を垣間見た。 彼女達は現在、屋敷一階の厨房を探して歩き回っている最中だ。 はじめに撃破した礫塵を除いて、立哨などは配置されていなかった。 それは一階の警備人員を割かねばならないほどに庭での戦闘が激化しているという証左に他ならない。 最低限の要員として残されていた礫塵さえ突破すれば彼女達が自由に動き回れるだけの空白地帯がそこには生まれていた。 と
はいえ、悠長に時間をかけて探していられるわけではない。 庭では依然としてヴィクトルが戦っているのだ、こちらに援護を寄越す余裕があるとはいえ、それは永久保証ではない。 甲種が出てくる前に撤退できるならそれに越したことはないのだ。 >「さっきの大男、何故殺さなかったの?」 共に廊下を歩きながら、ふとラウテがそんなことを聞いてきた。 リタリンは心の底から何を言ってるのか理解できないといった顔をして、それをすぐに消した。 魔笛の少女が本心からそう訪ねていることに気付いたからだ。 「殺す理由がないでしょ」 リタリンは短
くそう答えた。これも本心だった。 リタリンにとって、敵というのは長らく巨大な恐怖の塊だった。 開拓地時代は馬よりも大きく狼より凶暴な原生魔獣や、言葉の通じぬ残虐な風習を持つ現住部族と戦ってきた。 もっぱらリタリンの役目は魔法を用いた後方支援で、直接対峙して打破することは稀ではあったが―― むしろそれ故に、開拓地で彼らに遭遇すること、彼らの間合いに接近することは死を意味していた。 貧弱な魔法使いであるリタリンには、戦うことはおろか逃げ切ることさえ絶望的だったからだ。 そして戦えば、彼らを殺すしかなかった。 言葉が通
じなければ分かり合うこともできないし、分かり合えなければ共存することもできない。 目が合えばそれは相手を殺すか相手に殺されるときで、コミュニケーションは言葉ではなく剣と魔法の炎だった。 内地に戻ってこれた時、そこでの諍いに巻き込まれた時、話すことができるというのはなんと素晴らしいことかと痛感した。 今でもそう思っているし、現に二度目の魔女狩りで生き残れたのも交渉の余地がヴィクトルにあったからだ。 分かり合おうという意志を無視して殺される絶望を、リタリンは理解できる。 分かり合える可能性が少しでもあるならば、それ
を完全に無くしてしまいたくはない。 故に、リタリンは殺さない。もちろん完全に無力化できているという前提はあるが。 では殺さなきゃ無力化できない、作戦に支障が出るとなった時、リタリンは相手を殺せるのだろうか……? とまれかくまれ、結局のところ、理由は一言に帰結する。 「私は殺されたくないの。だから殺さない。自分がやられて嫌なことは他人にもしない、これって大事なことよ」 そこまで言って、なんだか説教臭くなりそうで、やめた。 偉そうにラウテに説教できるほど自分が出来た人間じゃないという自覚はもちろんある。 だけどそれ
以上に、どんなに言葉を尽くしたって、この少女にはおそらく、自分の想いは響かないという確信めいた諦念があった。 ラウテ・パユ。魔笛の奏者。百千もの魔獣を従える魔性を持つ少女。 彼女は利発で、仲間であるリタリンやヴィクトルに好意的だし協力的だ。 しかしその反面、自分と深く関わりあわない他者に対しては驚くほどに酷薄で、残虐だった。 砂漠の海亀亭で拉致してきた店主を酸鼻極まる拷問の末に殺し、化物の餌にしてしまった昨日の夜、リタリンは真に彼女に恐怖した。 もっと言えば、あの化物に食わせる為にスラムから何人か攫ってきて殺し
ていることも知っていた。 殺すなとは言えなかった。それはラウテの無機質な殺意が自分に向かうことを恐れてのことではない。 おそらくラウテは、純粋に単純に『必要だから』人を殺しているのだ。 若年の自覚があるリタリンをして一回りほども年下の、まだあどけなさを残すこの少女に、殺人の必要を迫らせる"何か"が恐ろしい。 そして必要にかられての殺人を、なんの感動もなく事務的にこなしてのける少女の変質が怖かった。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/252
253: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/03/02(水) 21:01:30.76 0 青い顔で話を打ち切ったリタリンと、その後に続くラウテは、やがて目当ての厨房を探り当てた。 誰もいなかった。当たり前だ、この非常時に火の気のある場所にとどまる者などいるはずもない。 そして、ラウテの探知魔法に導かれるまま床の扉を発見した。 酒瓶などの湿気に強い食材を温度の低い床下に保存する為の収納口、しかし不釣り合いな空洞が探知されている。 不自然なほど厳重に施錠されているのも怪しい。 「少し時間かかるけど、解錠魔法を使うわ」 リタリンが魔導書のペ
ージを手繰るのを、ラウテの小さな手が制した。 >「リタリン、ちょっと離れててね」 返事をするより速く、彼女は短剣を錠前へと叩きつけた。 足で押さえつけながら、魔笛でなにやら音楽を奏でると――突き立てられた短剣の先で錠前が爆ぜ割れた。 魔力視では特別な魔法は検知できなかった……もっとなにか別の物理的な現象だ。 さすが魔笛、できることの幅が広い。 二人がかりで分厚い扉を開けると、案の定地下への階段が出てきた。 >「ラウテはここで見張る。その間に中をお願い」 「了解、行くわ」 リタリンは注意深く一歩ずつ階段を降り
る。 地下は薄ら寒く埃っぽかったが、階段の中央にだけは埃が積もっていない。 毎日のようにここへ出入りしている人間がいるのだ。数年に一度開くか開かないかの床下収納にはありえない。 そしてそんなペースで搬入搬出がされているのに、不必要なほど厳重な施錠が必要な物品と言ったらもう答えはすぐそこだ。 「やっぱり……こちら魔女、『ガラスの靴に履き替えた』わ」 地下室は広く、棚がところせましと林立していた。 それぞれの棚の日付を書いたラベルの下には、この街にあるいくつかの大きな薬屋や料理店の名前が記されている。 その中には砂
漠の海亀亭の名前もあった。リタリンは棚を一つ一つ回って、それぞれの名前を素早く手帳に書き写した。 手近な棚の中の革袋を破り、出てきた錠剤と持ち込んだサンプルを照合。 間違いない、これが『超人の薬』そのものだ。 >『――離脱する。援護しろ』 と、ヴィクトルからの遠話が耳に響く。 あの皮肉屋がなんの冗句も交えずに短文で連絡してきた、それだけ差し迫った事態ということだ。 甲種と接敵した、と考えて良いだろう。 >『了解、こちらもすぐに「靴紐が解ける」わ』 ラウテが遠話を返す。もう工作する余裕はない、一刻も早く撤退を
開始しなければ。 リタリンは杖で簡易の魔法陣を描き、ラウテからの魔力供給を受けながら呪文の詠唱を始めた。 『北に灰。南に幻想。西の黒き森。東に在るは鉄の都。 四方より来たる灯火の群れ、八方の敵の直上を照らせ。 昏き帳を貫き穿ち、緋色の原野を朱色の血潮で覆い尽くさん。 ――赫き竜よ、己が尾を喰み灰燼と化せ』 第八階梯炎魔法。 リタリンの描いた陣を中心に緋色の輝きが地下室へ満ち、色濃い陰影が輪郭を得始める。 影の中から滲みだすように生まれたのは、夕日にも似た赤々と輝く一匹の竜。 その鱗の一つ一つが燃え盛る炎、空
気中の塵が引火してその劫火の体躯を何倍にも膨れ上がらせる。 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/253
254: リタリン ◆77DMiRtfME [sage] 2016/03/02(水) 21:02:26.53 0 上位魔法は現象そのものがひとつの生き物のように振る舞うほどの存在密度を獲得する。 出来損ないの魔女であるリタリンには到底使いこなせるはずもない高等呪文が、ラウテの力を借りた今なら可能なのだ。 緋色の竜は己の為すべきことが初めからわかっているかのように、片っ端から棚を食い荒らして灰燼へと変えていく。 リタリンは間違って自分も燃やされないように急いで地下室の階段を上がった。 「安置でじっくり詠唱できて外部魔力ありならこんなところね。もう私にも制御は無
理、全部燃やし尽くすまで止まらないわ」 行きましょう、リタリンは先を促した。 先と言うのは無論、戦闘中のヴィクトルの離脱支援だ。 既にラウテは先行して使い魔による援護を行っているらしかった。 リタリンも防毒マスクを脱ぎ捨ててローブの裾を掴みなりふり構わず走りだす。 『こちら魔女。わたしに一案あるわ、どうにかして一撃くれてやれるような隙をつくって。 確証はまだないけれど、うまく行けば甲種を完全に足止めできると思う』 遠話でヴィクトルとラウテへ向けて声を通しながら、リタリンは手近な窓へと齧りついた。 悲鳴や喧騒と
は別の、鈍く太い音が断続的に上から響いている。 見上げればそこには、何百、何千羽からなる鳥の群れがあった。 ラウテの使役する使い魔(鳥)の集団だ。 「庭園に出ましょう、あの短足を援護しなくちゃ」 聞こえないようにボソっと溜飲を下しながら、リタリンは舞い落ちる羽毛に紛れるようにして身を屈め移動する。 壁をうまく使いながら、戦闘の起きている場所からの視線を防ぎつつ、その近くまでやってきた。 一案あるとは言ったが、それは地走相手に『リタリンが』接近して攻撃できるような隙がないと成り立たない。 言うまでもなく鈍足で、紛れ
も無く貧弱な魔女の成り損ないの彼女が、ヴィクトルですら手を焼く化物に直接攻撃を仕掛ける。 たとえ保身をかなぐり捨てた捨て身の吶喊をしたって触れる前に骨にされるだろう。 自分で言うのもなんだがとてつもない無理難題だ。 だから、リタリン自身も動く。己のプランが少しでも現実味を帯びるように。 「バントライン、『プランB』発動」 正門で戦っていた軍用召喚獣バントラインの5頭分隊は、既にその数を1頭にまで減らされていた。 乙種冒険者喝破の参戦はもとより、丙種達の統率のとれた戦術により1頭また1頭と仕留められ、魔素の粒子へ
と還元されていく。 召喚獣の死というのは、肉体を構成する魔素が形を保てないほどに流出することによって起こる。 密度を失った魔素は空気中に霧散して再び集合することはできず、故に召喚獣は生身の生き物と同じように負傷によって消滅する。 徹底された集団戦術――バントラインのそれよりも遥かに高度な連携により、最後の1頭が全身に槍や剣を突き立てられて昏倒した。 各所の傷から流出する魔素を止められず、その存在密度が急速に希薄となり崩壊していく――召喚獣の死である。 丙種冒険者達が勝鬨の雄叫びを上げる。彼らは見事に正門を守り切
ったのだ。 だが、その先の事象は彼ら一介の冒険者達の常識には存在しなかった。 この5頭の異貌なる召喚獣を生み出し、操っていたのが魔女であることなど、知る由もなかったのだ。 召喚主、リタリンは魔女である。 ――当然、その召喚獣には違法な改造が施してある。 自分が逃げる時間稼ぎの為に手持ちの召喚獣は軒並み継戦能力を限界まで引き上げていた。 具体的には、崩壊し霧散した魔素を再び掻き集めて新たに召喚獣を再構成できるような機構の搭載だ。 無論、苛烈な戦闘による消耗を考慮すれば、倒されたバントラインをそっくりそのまま元に戻す
などということは望めまい。 回収率はせいぜいが二割程度――5頭のバントライン全ての残留魔素を寄せ集めて、ようやく1頭を復活させられるぐらいだ。 そして、その復活の1頭が、今まさにリタリンの傍へと再構成されていた。 2mを越す巨体に分厚い手斧、何より頭部を大口径の滑空砲へと換装した……異貌の怪人。 怪人は音もなく庭園へと降り立つと、巨躯に見合わぬ速度で滑るように疾走した。 走り、跳び、角を曲がり、ヴィクトルと地走が鎬を散らし合う戦場へと闖入する。 『――言い忘れてたけど、頭下げてたほうが良いと思うわ』 巧妙にステ
ルスを続けているヴィクトルごと、地走の背中へ向けてバントラインの散弾砲が火を吹いた。 【地下倉庫に放火を完了、倒されたバントラインの魔素を寄せ集めて一体都合し、地走へと攻撃を仕掛ける】 http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/254
255: 名無しになりきれ [sage] 2016/03/04(金) 01:51:43.49 0 少しずつ世界観崩壊してるな http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/255
256: 名無しになりきれ [sage] 2016/03/06(日) 18:41:28.44 0 ◆◇◆ 重 要 告 知 ◆◇◆ なりきりネタ板TOPの板ルールに http://tamae.2ch.net/charaneta2/ >この板はキャラクターになりきり、レスのやり取りを行うための掲示板です。 >なりきり形式ではない創作の投稿は創作発表板でどうぞ。 創作の投稿は創作発表板向けとルールが明記されました。 なりきり行為より創作の意味合いが強いTRPGはこの板ではなく創作発表板向けのスレということになります。 従って板のルールに沿い、今後は創作発表板に場を移してお願いします。 創作発表板
http://hayabusa6.2ch.net/mitemite/ http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/256
257: 名無しになりきれ [sage] 2016/03/06(日) 19:14:50.74 0 / \ / / ヽ / / / ィ /i /1 、 / i / ∠ム/_ | // ! i ,' | i |/ レ トハ/イハ.| | , /^レ| kィぅ卞z, 乂| /ト|、 | , { rハ |弋シ リ/Jイ_ | `/i | / ヽr- ヘ ! """ 辷癶,| / リ 今日は何食べたい? , |:! ヘ 、
"" /ル / | l \ r‐ ァ / / |:i 」>-\ _ -‐' // i |/ ヽヽ .ィ=y = 、 __ イ |/ ',ヘ __ γ/_j__r ヽ、 .|[]| i i ! | l ^ ≧-ュ: : :≧、 丶 |::::| | | 人∧ | ー丶ヽ: : ハ l ィニL;;--ュ、 | | i i { |丶,! | 丶 `ヘ: : } / -‐ 〈 | i .| i i | ト; : | | \ }: :∧ノ
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V: : : : : :ヾ: : : : : : イ r 丶 V: : : : : : ヘ : : : : : j リ . /____/;::::::::/.::::/.:::::::::::i::::::::::::::i::::::::::::::`:┐ V ∠._ i /.::::::::::, '' i::::::/.::::/.::::::::::::::i:::::;::::::::i::::::::::::::::::::ト.、 ?::::::::..... _|_ T:::::/ ;:::/.::::/.::::::i:::::::::i:::::l::::::::i:::::::::::::::::八ハ ?三ミ::::::::{
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258: 名無しになりきれ [sage] 2016/03/06(日) 19:15:20.14 0 / \ / / ヽ / / / ィ /i /1 、 / i / ∠ム/_ | // ! i ,' | i |/ レ トハ/イハ.| | , /^レ| kィぅ卞z, 乂| /ト|、 | , { rハ |弋シ リ/Jイ_ | `/i | / ヽr- ヘ ! """ 辷癶,| / リ 今日は何食べたい? , |:! ヘ 、
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259: 名無しになりきれ [sage] 2016/03/06(日) 19:15:51.43 0 / \ / / ヽ / / / ィ /i /1 、 / i / ∠ム/_ | // ! i ,' | i |/ レ トハ/イハ.| | , /^レ| kィぅ卞z, 乂| /ト|、 | , { rハ |弋シ リ/Jイ_ | `/i | / ヽr- ヘ ! """ 辷癶,| / リ 今日は何食べたい? , |:! ヘ 、
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260: 名無しになりきれ [sage] 2016/03/06(日) 19:16:21.07 0 / \ / / ヽ / / / ィ /i /1 、 / i / ∠ム/_ | // ! i ,' | i |/ レ トハ/イハ.| | , /^レ| kィぅ卞z, 乂| /ト|、 | , { rハ |弋シ リ/Jイ_ | `/i | / ヽr- ヘ ! """ 辷癶,| / リ 今日は何食べたい? , |:! ヘ 、
"" /ル / | l \ r‐ ァ / / |:i 」>-\ _ -‐' // i |/ ヽヽ .ィ=y = 、 __ イ |/ ',ヘ __ γ/_j__r ヽ、 .|[]| i i ! | l ^ ≧-ュ: : :≧、 丶 |::::| | | 人∧ | ー丶ヽ: : ハ l ィニL;;--ュ、 | | i i { |丶,! | 丶 `ヘ: : } / -‐ 〈 | i .| i i | ト; : | | \ }: :∧ノ
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261: 名無しになりきれ [sage] 2016/03/06(日) 19:16:50.83 0 / \ / / ヽ / / / ィ /i /1 、 / i / ∠ム/_ | // ! i ,' | i |/ レ トハ/イハ.| | , /^レ| kィぅ卞z, 乂| /ト|、 | , { rハ |弋シ リ/Jイ_ | `/i | / ヽr- ヘ ! """ 辷癶,| / リ 今日は何食べたい? , |:! ヘ 、
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262: 名無しになりきれ [sage] 2016/03/06(日) 19:18:08.09 0 / \ / / ヽ / / / ィ /i /1 、 / i / ∠ム/_ | // ! i ,' | i |/ レ トハ/イハ.| | , /^レ| kィぅ卞z, 乂| /ト|、 | , { rハ |弋シ リ/Jイ_ | `/i | / ヽr- ヘ ! """ 辷癶,| / リ 今日は何食べたい? , |:! ヘ 、
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263: 名無しになりきれ [sage] 2016/03/06(日) 19:18:40.54 0 / \ / / ヽ / / / ィ /i /1 、 / i / ∠ム/_ | // ! i ,' | i |/ レ トハ/イハ.| | , /^レ| kィぅ卞z, 乂| /ト|、 | , { rハ |弋シ リ/Jイ_ | `/i | / ヽr- ヘ ! """ 辷癶,| / リ 今日は何食べたい? , |:! ヘ 、
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264: 名無しになりきれ [sage] 2016/03/06(日) 19:19:09.59 0 / \ / / ヽ / / / ィ /i /1 、 / i / ∠ム/_ | // ! i ,' | i |/ レ トハ/イハ.| | , /^レ| kィぅ卞z, 乂| /ト|、 | , { rハ |弋シ リ/Jイ_ | `/i | / ヽr- ヘ ! """ 辷癶,| / リ 今日は何食べたい? , |:! ヘ 、
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265: 名無しになりきれ [sage] 2016/03/06(日) 19:19:39.41 0 / \ / / ヽ / / / ィ /i /1 、 / i / ∠ム/_ | // ! i ,' | i |/ レ トハ/イハ.| | , /^レ| kィぅ卞z, 乂| /ト|、 | , { rハ |弋シ リ/Jイ_ | `/i | / ヽr- ヘ ! """ 辷癶,| / リ 今日は何食べたい? , |:! ヘ 、
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266: 名無しになりきれ [sage] 2016/03/06(日) 19:20:06.77 0 / \ / / ヽ / / / ィ /i /1 、 / i / ∠ム/_ | // ! i ,' | i |/ レ トハ/イハ.| | , /^レ| kィぅ卞z, 乂| /ト|、 | , { rハ |弋シ リ/Jイ_ | `/i | / ヽr- ヘ ! """ 辷癶,| / リ 今日は何食べたい? , |:! ヘ 、
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267: 名無しになりきれ [sage] 2016/03/06(日) 19:20:37.17 0 / \ / / ヽ / / / ィ /i /1 、 / i / ∠ム/_ | // ! i ,' | i |/ レ トハ/イハ.| | , /^レ| kィぅ卞z, 乂| /ト|、 | , { rハ |弋シ リ/Jイ_ | `/i | / ヽr- ヘ ! """ 辷癶,| / リ 今日は何食べたい? , |:! ヘ 、
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268: 名無しになりきれ [sage] 2016/03/06(日) 19:21:04.23 0 / \ / / ヽ / / / ィ /i /1 、 / i / ∠ム/_ | // ! i ,' | i |/ レ トハ/イハ.| | , /^レ| kィぅ卞z, 乂| /ト|、 | , { rハ |弋シ リ/Jイ_ | `/i | / ヽr- ヘ ! """ 辷癶,| / リ 今日は何食べたい? , |:! ヘ 、
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269: 名無しになりきれ [sage] 2016/03/06(日) 19:21:06.22 0 終了スレ関係者様御用達スレ・4©2ch.net http://tamae.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1456249720/ http://tamae.5ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1447151379/269
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