[過去ログ] 自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 46 (884レス)
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60: 元1だおー 2006/06/03(土)16:08 ID:??? AAS
夢を見た。
いきなり殴られる夢だ。
強烈な鉄拳をくらい吹っ飛んだらしく、仰け反った時によく晴れた空が見えた。
課業時間外なのか、空はもう朱に染まろうとしていた。
61: 元1だおー 2006/06/03(土)16:09 ID:??? AAS
「立て。もっぺん言ってみろ」
野太い男の声が朦朧とする意識の中に入り込んでくる。
口の端の血を拭いながら起きあがると、
そこにはよくアイロンのかかったパリパリの深緑の作業服姿の、逞しい陸士長が仁王立ちしていた。
隊舎の屋上。
ぺっと血を吐いた時、二等陸士の階級章が自分の肩に粗く縫いつけられているのが目に入る。
三十五年前の、新隊員だった頃の自分だった。
省10
62: 元1だおー 2006/06/03(土)16:11 ID:??? AAS
「靴を舐めろ。今ならそれで許してやる」
……こいつ、狂ってる。
その時柴田は本気でこの陸士長を殺してやろうかと思った。
憎しみや恐怖ではなく、それが班のみんなのためになると思ったのだ。
入隊してから、この助教の受け持ちになったのが自分を含め班員十二名の運の尽きだった。
最古参の陸士長。教育訓練にかこつけて病院送りにした新隊員の数は両手両足の数では足りないと噂の輩だ。
バディの山下は九州のヤクザの実家から逃れたくて上京してきたはいいものの、食うに困って入隊した訳有りの隊員の典型のような奴だった。
省17
63: 元1だおー 2006/06/03(土)16:12 ID:??? AAS
「どうした。早く舐めろ」
「……舐めたら山下への暴力をやめてくれますか?」
意地なんて張ったところで、絶対的な力の前では無力なのは十分今までの人生で分かっていた。
中学生の頃に地元の不良グループに袋にされて泣いて詫びを入れたときから、抗うということを諦めていたはずだった。
でも、この意地だけは張りとおさないといけない。
殺されたっていいとさえ思う。
逆上したこいつに殺されれば、いくらなんでも警務隊が動くはずだ。そうすればこいつもお終いだ。
省10
64: 元1だおー 2006/06/03(土)16:13 ID:??? AAS
冗談じゃない。誰がお前みたいな士長になるもんか。
そう思いながら、柴田は意識を失った。
後で見ることになるであろう山下の満面の笑顔が脳裏に浮かぶ。
些細なことでもやり遂げた自分を、初めて自分で褒めてやっているような気がした。
ああ、そうだ。
この記憶は、自分が最初で最後の意地をはり通した時のものだ。
なんで、こんな幸せとはほど遠い、いや、むしろ嫌なことばかりだった時代のことを思い出すのか、分かった。
省12
65: 元1だおー 2006/06/03(土)16:15 ID:??? AAS
「シバタ曹長?」
誰かが呼ぶ声に、柴田ははっと目を覚ました。
一瞬、目を開けても暗いままの視界に、まだ夢を見ているのかと思ったが、
すぐに自分が光の一切ない夜のトーチカにいるということを思い出す。
「あ、うん……?」
居眠りしてしまったのか、しまった。
柴田は申し訳なく思いながら、自分を起こした部下の顔を闇の中に探した。
省11
66: 元1だおー 2006/06/03(土)16:16 ID:??? AAS
「そうか?」
「何か怖いことがあったわぅ?」
本当に裏表のない少年だ。心に思ったことを隠したり我慢することがない。
聞かないで欲しいことだったが、不思議なことに柴田は彼には正直に話してもいいような気持ちになった。
人が自分のことを知られるのを恐れるのは、
相手が自分のことを上辺の表情とは裏腹に蔑んだり嫌悪したりしないだろうかという恐れが生まれるからだ。
その点、この少年はそういった負の感情とは無縁だった。
省11
67: 元1だおー 2006/06/03(土)16:17 ID:??? AAS
彼が命をかけ、絶対に失いたくない存在は唯一家族であり、それのない世界など、異世界であろうが意味を成さない。
極端にいえば、柴田は日本がどうなろうが知ったことではなかった。
無関心ゆえに、異種族隊員らが日本のためにこうして戦おうとする理由が疑問ではあるが、あえて知ろうとも思わない。
だがこの少年については枯れた柴田の心の中でも、ほんの少しだけ湧き出る好奇心があった。
フェリーで、マーメイドが物珍しそうに海面から顔を見せるのを大はしゃぎで指さしていたこの優しい少年が、なぜ自衛隊に志願したのか。
もしかしたら、自衛隊に志願すれば難民として保護されている家族の待遇がより改善されるというのは本当だったのかもしれない。
それを思うと、柴田は胸が痛んだ。
省11
68: 元1だおー 2006/06/03(土)16:18 ID:??? AAS
「バディと一緒に、卒業したかった……」
柴田は起きる前にみていた夢が脳裏を過ぎった。
偶然だろうか。
いや、偶然に違いない。自衛官なら誰でも教育隊は経験するのだ。バディが話題に上るのも珍しいことではない。
柴田は夢のことを頭の片隅に追いやると、今度は意外なことに思い至った。
確か異種族隊員のバディは日本人の新隊員だったはずだ。
文化の違いや意識の差からうまくいっていないという噂を耳にしたことがあったが、彼の場合はどうやら違うようだ。
省14
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