[過去ログ] あの作品のキャラがルイズに召喚されました part106 (1001レス)
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(2): 虚無のメイジと、吸血鬼 2008/01/31(木)04:25 ID:+nYOoL5H(6/9) AAS
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは確かな手応えを感じていた。
 繰り返された爆発、数えること数十回。最初のうちは囃し立てていた他の生徒も流石に飽きたのか、
今となっては欠伸を漏らすだけ。少し大きな爆発が起きました、だから何ですか、といった風情である。
 しかし、爆発を起こした当の本人は今までとは全く違った感覚を感じていた。それ故に、濛々と立った
煙の中を見詰める目も期待に輝いている。

 徐々に晴れ行く煙の中、姿を現したのは一人の女性だった。

 背は、高い。膝まである長い空色の髪は、長さはともかくとして色はタバサに似ている。ルビーの瞳は、
気に入らない事にキュルケに似ていた。違いといえば、縁なしの眼鏡の奥で理知的な光を放っている事だろうか。
 キュルケの瞳は情熱の赤――この少女は色ボケと主張する――だが、目の前の女性の瞳は色にそぐわず、
氷の様な印象を抱かせる。

 「……あなた、誰?」

 周囲では、ここぞとばかりにからかう声が響いている。
 曰く、流石はゼロのルイズ、平民を召喚したぞ。
 曰く、流石はルイズ、俺たちに出来ないことを平然とやってのける。
 何十分の一かは人間が召喚された事に対する驚きや、綺麗な人だ等と言う感嘆の言葉だったりもするが、
それらはルイズの耳には入らない。普通の人間とは少し違う雰囲気に飲まれて、言葉が零れていた。誰、と。
 ポツリと零された言葉が届くには少し遠い距離だというのに、その女性は自分の方を向いて微笑みかける。
 その事に驚く間もなく、彼女が口を開いた。

「その問いに答えましょう。私は、フィオナ・アイスハイム・イストラッド。あなた方の知る生物で言えば――」

 からかう声の中でも良く通る、声。鈴が鳴るようでいながら、不思議と力強く聞こえる。
 そして、続けての内容に、周囲でざわめいていた生徒たちが、一瞬にして静まり返った。

「――吸血鬼、と表される存在です」

 何を言われたか分からない、と言った様子の生徒たちを気にした様子もなく、フィオナは自分に最も近い、
桃色の髪をした少女に向かって唇を小さく広げ、にっこりと微笑んだ。あたかも、牙を誇示する様に。
 フィオナの知覚は、意味知覚。その知りえる所は、来歴、行動原理、そして、機能。全てを知ると言った
ほどではないにしろ、存在を知覚しただけで人より多くの情報を得る事が出来るのは間違いない。
 少なくとも、隠し事など出来ないほどには――とは彼女本人の弁だ。
 それだから、何も言われない内から目の前の少女が自分を召喚したのだと言う事を知り、あの見た事もない
世界孔を開いた当人なのだと推測する事も可能だった。当然、何を目的としていたかも。

「あなたの名を、お聞かせ願えますか?名前には意味があり、言葉は名付け、意味は力。すなわち、名前は力。
 自らの本質を表し、時には偽装するそれを名乗り合うのは、互いを知る第一歩。お互いの存在を認定しあう、
 大切な儀式です」

 さあ――と促す言葉に、少女が口を開いた。周囲は未だ、沈黙に包まれている。
 その静寂を切り裂いて響き渡る少女の名乗りが、虚無の使い手と吸血鬼の、契約の判となる。
 漸く、周囲がどよめき始めた。吸血鬼と言う、最悪の妖魔の存在に。

「私は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。あなたを召喚した、メイジよ」

 吸血鬼と言う存在がこの世界で何を意味するのか、意味知覚によって知っていたフィオナは、僅かに驚いた。
 己の告げた種族の名にも恐れを見せない、毅然とした態度。少しの驚きの後にやってきたのは、己を使い魔と
為す相手の持つ矜持への満足感。
 これならば、使い魔になってみてもいいだろう。人の一生など、自分たちにとっては瞬きの間に過ぎない。
 微笑みながら少女の名を口の中で一度転がし、頷いたフィオナは、次を促す言葉を紡いだ。
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