[過去ログ] アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ3 (397レス)
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369: 誰かが死ぬのが怖いのか? ◆LXe12sNRSs 2007/10/05(金)23:17 ID:Oj+1+lxJ(4/12) AAS
 テンション定まらぬラッドの視線が、狂気の念に固定され、ヨーコに向く。
 ヨーコは不覚にも、ゾクッ――としてしまった。
 ガンメンから感じるそれではない。体感したことのないような、新種の恐怖……『人間の狂人』が放つ殺気だった。
 蛇に睨まれた蛙のように竦むヨーコと、今にもやらかしかねないラッド、両者が数秒睨み――合うかと思われたが、間に小柄な影が割って入る。
 その人物こそが、この異質な談合の場で、唯一ラッドの狂気に干渉されない――自由すぎる少年だった。

「あ? なにおまえ? ナイト気取り?」
「ナイトね……そりゃ見当違いかな。ほら、俺って誰にも縛られない存在だからさ」

 そうだ。このジンという少年は、いきなり拉致され殺し合いを強要されても、他参加者の襲撃に遭っても、まったく自己のペースを乱さなかった。
 そして今も、ラッドという危険極まりない狂人と相対してなお平静を保っている。

「あー……もしかしてアレ? 俺ツエーから、女の前で格好つけても平気なくらいツエーから、こんなところで殺されるはずねーとか思ってる?
 そうか、そうだよなぁ。見た目からしてゆるそうなツラしてんもんなぁ。
 一秒後に自分がタコ殴りにされてて、二秒後にその痛みに悶絶してて、三秒後にショック死してる未来なんて信じられねぇよなぁ。
 俺ぁよ……そういうヤツを殺すのが大好きなんだ。『自分は安全だ』と信じてやまない、どこぞの田舎貴族みたいに緩みきったヤツ。
 そんな奴等がよ、いきなり命の淵に立たされるんだ。想像してみろ、ゾクゾクするだろ!?
 どんな顔すると思う!? どんな命乞いすると思う!? 知りてぇよなぁ〜俺も知りてぇ! だから、死ね!」

 言って即刻、ラッドはジンに向かって拳を突き出した。
 情け無用の右ストレート。手加減などという文字は、この男の辞書には存在しない。出会ったばかりでも、それくらいはわかる。
 息を飲む暇もなく、目を背ける暇もなく、それでもヨーコは咄嗟に身を引いてしまい、
 ジンは、ラッドに殴られぶっ飛ばされた。数メートルほど。

「――なッ!?」

 命中したのは顔面。軌道は地面に対して並行だったが、なぜかジンは、一発のパンチで宙高く舞い、後方のヨーコすら飛び越え、数分前に埋もれていた衣料店の中に逆戻り。
 突き破られたショーウインドウが、またもやジンの体を店内のマネキンたちの下へと誘う。
 盛大な物音を立てて店内の床を転がり、そしてジンは、再び女性物の服に塗れた。
 思わず声を漏らすほど、不自然かつ大胆なぶっ飛ばされ方だった。ラッドのパンチの威力がそんなにも強烈だったのかと言えば、そうではない。
 あれはどう見ても、ジンがわざと大袈裟にぶっ飛ばされてみた。そうとしか捉えられない。
 それは傍観者であったヨーコと清麿、ジンを殴ったラッド自身も、皆同じ見解だった。
 衣料店から音がやみ、三者がしばし呆然とし、ほどなくしてジンが這い出てきた。
 その有様は、以前のようなミイラ状態ではなかったものの、見るからにヨロヨロで、パンチ効いてますよーと主張しているようなものだった。

「ってて……メチャクチャ痛いね、これ。こんなん何度も食らってたら本当に死んじゃう。もうカンベ……ってあれ?」

 飄々とした態度で舞い戻るジンだったが、周りのリアクションは薄い。
 それどころか、ラッドの凶悪な面相はさらに凍てつき、清麿の顔は微かに青ざめていた。

「……なんだよ、拍子抜けするじゃんかよ。俺は軽いジャブのつもりで打ったんだぜ。
 それでまず相手を沈めるだろ、そっからマウントポジションを取る。んで、そっからタコ殴り。……ってのによぉ。
 なに? ハデにぶっ飛ばされりゃ俺が満足するとでも思ったわけ? だからあんなスタントマンみてぇなカッコしてみせたの?
 それってさぁ……おちょくってる? 俺、おちょくられてる? ……ふざけんじゃねぇぞォォォォォ!!」
「ヤバッ、墓穴掘った――!?」
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