[過去ログ] アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ3 (397レス)
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119(1): 本を取り戻せ ◆ARkjy9enog 2007/09/29(土)23:36 ID:J4ObJL8g(1/9) AAS
かつて人は、物事を伝えるために口伝を用いるしかなかった。
だが当然のように人から人、その人からまた別の人へと1つのことが伝わっていくにつれ、
やがて情報は今で言う伝言ゲームのように誰の悪意を一切受けることなく、自然と元ある形を歪ませていく。
このままでは間違った情報が蔓延してしまうことになると、当時の人々は頭を悩ませた。
そこで発明されたのが、本である。
様々な知識を正確に伝えるものとして歴史上他に類のないほど画期的な発明だったといえるこれは、
古代インカ帝国の石版を起源とし、中国における竹札、メソポタミアにおける粘土板文書、古代エジプトにおけるパピルス書物という風に
全世界に爆発的に広まっていった。
仮に世界中全ての本を読みつくすことが可能であれば、恐らくその人間は神と並べるほどの全知を有するであろう。
それどころかもしも運命的な本と出会えたならば、それまで自分が世界と信じてきたものの殻を一瞬で突き破り、新たな地平を見渡すことすらできる。
本とは世界。世界とは宇宙。宇宙とは全て。全てとは人。
嗚呼、神様。この世に本と、そして私をお作りくださって本当にありがとうございます。
「…………で?」
何やらどこぞの危ない宗教家のように語りだした眼前の女を、スパイクは冷めた視線で眺めていた。
工業区の波打ち際。コンクリートと海の段差はざっと見て2メートル前後か。
間違って足でも踏み外して落ちようものなら、少なくともここらへんでは二度と地上に上がってこれないだろう。
なのでスパイクは、海を背にして多少離れた位置にあぐらで座り込んでいた。
右手には相変わらず最初に支給された道具の1つであるやけに分厚い本を持っている。
昔の連中にとって画期的な発明だろうが至高の文化的財産だろうが、彼にとっては少なくともこの本は
せいぜい角で殴れば少しは武器になるくらいのただのゴミという認識でしかない。
それこそ古本屋に売るしか価値がない。
ただ、そんなゴミを意地で渡そうとしないというのもまた滑稽な話ではあるのだが……
ともあれ、まだ辺りは暗いというのにそこだけ天から光が舞い降りて輝いているように見える女……読子・リードマンは
先刻まで胸のあたりで指を絡めて明後日の方向を向きながら陶酔していたが、スパイクがそう半分投げやりな言葉をかけると
くるっとその長い黒髪を翻してこちらに向き直り、まったく邪気のない笑顔で要点を告げた。
「というわけでその○極○彦先生の本、読ませてくださいっ」
「なにが『というわけで』だ!? 前後関係まったくわかんねえよ!」
思わず体を前に乗り出して怒鳴り返す。
だが本人は特にその勢いに怯んだ様子もなく、形の良い眉を八の字に曲げつつ両手で黒縁メガネの端を押さえると
どこか舌ったらずな口調で先ほどの論調について解説し始めた。
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