[過去ログ] アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ2 (594レス)
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55: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:51 ID:3WZf49N1(1/25) AAS
投下します
56: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:53 ID:3WZf49N1(2/25) AAS
AA省
57: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:54 ID:3WZf49N1(3/25) AAS
いきなり殺し合いをしろ、なんて可笑しなことを言われたら、誰だって必然と視野が狭くなるもの。
灯台下暗し――なんて諺があるが、暗くて見失ってしまうようなものは、何も手元にあるとは限らない。
「まぁ。今まで気にも留めませんでしたけれど、ここから見える月夜もなかなかのものじゃありませんの」
空に上る満月を見ながら、獣耳の女――カルラは、物思いにふけるような素朴な笑顔を作る。
「まったく、こんな厄介なことに巻き込まれたりしなければ、今頃ウルトあたりと一緒に月見酒と洒落込むところですのに」
素朴……そう、月を見上げる彼女の笑顔は、確かに素朴だったのだが、
省8
58: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:54 ID:3WZf49N1(4/25) AAS
「あ、あ…………」
やらかしてしまった失敗への後悔のせいか、それとも単純に、カルラへの恐怖からくるものか。
分からない。分かるのは、自分が彼女に攻撃を仕掛けてしまったということだけだ。
普段の冷静な思考が、取り戻せない。
タヌ機による幻覚作用が齎した最悪な不幸――親友が人を殺す、という悪夢がフェイトを混乱の渕に追い込んでいた。
目の前の女性は誰か? 耳や尻尾など、獣の象徴的なパーツを宿しつつも人型を成すその姿。アルフやザフィーラと同じ使い魔なのだろうか。
そもそも自分は、殺戮を続けるなのはを追ってここまで来たはずなのに。当のなのはは何処に消えてしまったのか。
省4
59: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:54 ID:3WZf49N1(5/25) AAS
「…………通る」
殺し合いに乗った親友――高町なのはを止める。
フェイトは意思を強め、見失わない内になのはを追おうと、再び進み出そうとするのだった。
それこそ、降りかかる火の粉、行く手を阻む障害は、全て蹴散らしてでも。
「あらあら。殺気を放っても臆せずに向かってくるなんて……本当に困ったお子様ですわね。忠告しておきますけれど、わたくし、そんなに優しくありませんことよ」
微笑の影に強大な剣気を隠し、カルラは杖を構えるフェイトに向き直る。
ホーホー、と何処からか梟の鳴き声が聞こえてきたような気がした。いや、ひょっとしたら虫の鳴き声だったかもしれないし、周囲の参加者が高笑いでもしていたという可能性もある。
省14
60: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:54 ID:3WZf49N1(6/25) AAS
余談だが、キママゥとはカルラが居た世界『ウィツァルネミティア』に生息する猿のことである。
木の上から飛び出したカルラが向かう先は、魔法陣の上で光球の操作を行っているフェイト。
カルラの想像以上のスピードに目を白黒させつつ、残った三つ目の光球を引き戻そうとする。が、
時、既に遅し。カルラはフェイトの眼前に立ち、フェイトの額を目掛けて右腕を伸ばす。
「おイタはいけませんことよ」
大人女性特有の、優しげだがどこか迫力のある微笑を見せ、フェイトの額にデコピン一閃。
普段、大人の男四人がかりでも持ち運ぶのが困難な大剣を振り回すカルラのデコピンは、もはや単なるお仕置きのレベルを超越していた。
省5
61: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:55 ID:3WZf49N1(7/25) AAS
立ち上がりながら、フェイトはブツブツと何かを呟く。
その複雑な言語様式が何を意味するものかは分からなかったが、フェイトの足場に形成された陣が未だ消えぬことに、カルラは警戒した。
(ウルトやカミュが術を使うのと似た雰囲気……まだ、何かがきますわね)
フェイトから距離を取り、来るべき何かに備えるカルラ。
その間も、フェイトは呪文の詠唱を止めなかった。
「サンダー……フォール!」
瞬間。
省4
62: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:55 ID:3WZf49N1(8/25) AAS
「…………やった?」
砂埃舞う森林地帯。焼け焦げた草の大地に立っていたのは、フェイトただ一人だけだった。
獣耳の怖い女の人はいない。影も気配も見当たらない。
クロノのデバイスを通して放った魔法、死ぬことはないはずだが。
「……!」
消えたカルラを捜すフェイトの視線の先、その場に倒れた一本の木を発見して、顔色が変わった。
長さはそれほどでもなく、太さは人間の女性といった細い倒木。
省14
63: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:56 ID:3WZf49N1(9/25) AAS
「――――――――ッ」
言葉が、出なくなった。
非殺傷設定があるから、クロノのS2Uがあるから、相手が死ぬことはない。そう思って攻撃魔法を放った。
しかし、そのせいで木が倒れた。その先に彼女がいて、下敷きにされてしまったのだとしたら。
――死ぬ。間接的だが、自分が殺した。
「…………わたし、が?」
殺すつもりなんてなかった。殺戮に走ってしまった友人を止めるため、ちょっと退いてもらおうと思っただけなのに。
省9
64: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:56 ID:3WZf49N1(10/25) AAS
涙が溢れ出す――その間際、フェイトの涙腺を閉めるきっかけとなったのは、ひょうひょうとした女性の声だった。
倒木が持ち上がり、その下から獣耳の女が姿を現す。
頭部から血を垂れ流し、痛みに苦しむ顔をしているにも関わらず、手では軽々と倒木を持ち上げている。
若い女性が血を垂らしながら木を持ち上げる。その光景にも驚かされたが、それよりも何より、
「…………生き、てた」
――殺して、なかった。
その現実に、フェイトはいたく喜んだ。
省12
65: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:56 ID:3WZf49N1(11/25) AAS
「う、うぅ……」
実力……いや、違う。『覚悟』が違いすぎた。
身も心も、全て捧げた主ハクオロのため。楽しく過ごした仲間たちと、一緒に帰るため。また、平穏を取り戻すため。
カルラは戦うのだ。死ねないのだ。降りかかる火の粉は何度も振り払い、押しのけてでも進まなくてはいけないのだ。
片やフェイトは、親友を取り戻すため……本当に、そうだったろうか。
あれは本当に真実だったのか。なのはが、あんなことをするというのか。
今では、全てがまやかしであったようにも思える。それに、振り回されていただけのようにも思える。
省12
66: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:57 ID:3WZf49N1(12/25) AAS
「なのは…………」
呟く。小さくもしっかりと、会ってもう一度呼びたい、その名を。
「なのは、なのは……なのは」
「……その『ナノハ』というのは、あなたの恋人か何かかしら? それとも家族?」
フェイトの呟きを聞き漏らさず、興味を持ったカルラが尋ねてみる。
フェイトは、カルラのその問いを拒絶することなく、立ち上がって正面から返答する。
省13
67: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:57 ID:3WZf49N1(13/25) AAS
「ブレイズキャノン」『Blaze cannon』
杖の先端をカルラへ向け、魔力を集中させる。
「……参りますわ!」
倒木を槍のように突き構え、フェイトへ向けて突進する。
「……ファイア!」『Fire!』
省9
68: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:57 ID:3WZf49N1(14/25) AAS
「ブレイズキャノン」『Blaze cannon』
杖の先端をカルラへ向け、魔力を集中させる。
「……参りますわ!」
倒木を槍のように突き構え、フェイトへ向けて突進する。
「……ファイア!」『Fire!』
省9
69: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:57 ID:3WZf49N1(15/25) AAS
そこには、極めて明確な勝敗結果が示されていた。
先程まで構えていた杖はカード形態に戻し、立ったままの状態で、横たわる女性を見つめる少女が一人。
地面に仰向けになりながら、開けてきた朝空と少女の顔を見つめる女性が一人。
「…………負けて、しまいましたわ」
どこか陽気に聞こえるのは、彼女の楽天的な性格故のことだろうか。
大した悔しさも見せず、カルラが終わりを告げた大地に倒れていた。
「ウルトやカミュの術も凄かったけれど、あなたの術の規模も相当なものでしたわよ」
省11
70: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:58 ID:3WZf49N1(16/25) AAS
「よろしければ……名前を教えていただけるかしら」
「……フェイト。あなたは?」
「カルラ、ですわ。別に覚えていてもなんの得もない、つまらない名前でしてよ」
カルラのふざけたような物言いが、妙に心地よい。
殺し合いという不安な境遇に置かれた中で、少しだけ元の世界の暖かさを取り戻せたような、そんな気がした。
背後に死神が迫ってきていたことに気づけなかった。
それは、一瞬でも殺し合いの世界から脱線してしまった意識のせいなのかもしれいない。
省12
71: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:58 ID:3WZf49N1(17/25) AAS
人気の薄くなった森の奥まで連れて来られ、フェイトはやっと、状況を理解した。
「あ、あ、あ……」
差し伸ばした手――カルラの背中辺りから、ヌメッとした感触を感じる。
そして、暖かさも。
確認するまでもなかった。自分の手にカルラの血が付着したことも、カルラの背中にどうしてこんな液体が付着しているのかも。
「カルラさん……あの時、誰かに撃たれて……」
「……あらあら、そんな泣きそうな顔をしちゃって、せっかくの可愛らしい顔が台無しですわよ」
省7
72: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:58 ID:3WZf49N1(18/25) AAS
「わたしは……なのはに……」
もう一度、確かめるかのようにその名を呼ぶ。
もう二度と、この気持ちを失わないように。
もう二度と、目的を見失わないように。
「なのはに、会いたいぃぃ……………………………………」
目から大粒の涙をたくさん流し、フェイトは、号泣しながらカルラにそう言った。
「……その言葉さえ聞ければ、わたくしはもう満足ですわ。そうだ、あなたが無事に友達と再会できるよう、おまじないをかけてあげましょう。
省5
73: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:59 ID:3WZf49N1(19/25) AAS
何が「おっぺけぺ〜のぺ〜」だ。
正直、あんな状態になってしまった時はどうなるんだろうかと心配したものだったが、意外と早めに効果が切れたようで助かった。
バカになっている最中に誰とも遭遇しなかったことは、運が良かったとしかいいようがない。
あの尻尾の子には報復が必要ね……フフフ……いえ、それにお礼も必要かしら。
なにせ、現在のこの状況を招く、きっかけを与えれてくれたんですもの。
「……つくづく、子供運がないですわね、わたくしも。まさか、襲撃者があなたのような可愛らしい娘だなんて」
「フフフ……あれだけ大きな戦闘音をたてれば、誰だって気になって調べてみようとするものよ。すぐにその場を立ち去らなかったのは、失敗だったわね」
省7
74: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:59 ID:3WZf49N1(20/25) AAS
私は満面の笑みを見せながら、銃を内蔵した傘を突きつける。
女は既に死を受け入れたのか、木に凭れ掛かったまま静かに目を瞑った。
「何か言い残すことはあるですか? 今が最後のビッグチャンスなのですよ」
「遺言……ですか。そんなもの特にはありませんけれど、残念といえば残念ですわね……」
「みぃ? ここで死んでしまうことがですか?」
「後悔……というほどのものでもありませんけれど。叶うなら、もう少し居たかったですわね……あの居心地のいい食卓に……」
「食卓? ごはんが食べたいのですか? 心配しないでも、天国へいけばお腹まんぷくで、ペコペコフラフラになることもないのですよ」
省9
75: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:59 ID:3WZf49N1(21/25) AAS
『それは俺の芋だァーーーー!』 『バカっ、テメー一人で食いすぎなんだよ!』
『クロウ、あなたもいい加減にしておきなさい』
『若様、おかわりはどうですか?』 『あらあらウフフ』
『おいしいねーユズっち』 『はい……』
『うぅ……聖上ぉ……某は、某はぁ……』 『ちょ、トウカさんそれお水じゃなくてお酒じゃないですか!』
省8
76: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)03:59 ID:3WZf49N1(22/25) AAS
後に残ったのは、怪しく笑う青髪の少女が一人。
木に凭れ掛かったまま、体中を銃弾で貫かれた死体が一つ。
「まずは一人……そろそろ夜も明けるだろうけど、まぁまぁの滑り出しといったところかしら。
役に立ちそうな支給品も手に入ったことだし、早めにこの場から立ち去ったほうがいいわね」
カルラを銃殺した古手梨花は、彼女の四次元デイパックを回収し、その場を離れる準備を進めていた。
震源地から少し離れているとはいえ、あの戦闘音を聞きつけた参加者がまだ湧いてこないとも限らない。
それらと接触するというのも手だが、近くに死体がある以上、無駄な誤解をされる危険性もある。
省5
77(2): 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)04:00 ID:3WZf49N1(23/25) AAS
風が吹く。
その風は、少女を覆っていた布をバタバタとはためかせ、空へと舞い上げる。
むき出しにされた少女は目元に涙を溜め、すぐ傍で起こっていた惨劇に気づけぬまま、朝を迎える。
カルラが死亡前、フェイトに被せた布――『透明マント』が、梨花の目からフェイトを救ったのだ。
だが、死は免れても、悲しみから逃れることは出来ない。
フェイトは目を覚ましたあとも、きっと泣きじゃくることになるのだろう。
分かり合えた、戦友になれると思えた女性の、死を受け止めて。
省11
78: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)04:00 ID:3WZf49N1(24/25) AAS
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:気絶、疲労大、全身に軽傷、背中に打撲
[装備]:S2U(元のカード形態)@魔法少女リリカルなのは
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム残数不明
[思考・状況]1:なのはに会う。それ以外の思考は停止中。
[備考]:タヌ機による混乱は治まった様子。
【カルラ@うたわれるもの 死亡】
省6
79: 「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc 2007/09/25(火)04:01 ID:3WZf49N1(25/25) AAS
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