【枯れても走ることを】能力者スレ【命と呼べ】 (999レス)
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(1): [sage saga] 2019/05/16(木)22:58 ID:6z+14K+X0(2/4) AAS
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【彼女はずっと俯いていた。眼差しは"こう"なってから一度も合っていなかった。だから口元の仕草ばかりを見せていた。なら、たぶん、赤い靴しか見ていない】
【あるいはそれすら恐れ多くて、地面の草でも見ているのかもしれない。――だから泣きたくなった、教えてくれたこと、教えてもらったこと、そんなのあんまりに敵わない】
【だってわたしがされたのは結局どこまでも個人的な出来事でしかなかった。何度かあった死を積み上げてみたって、貴女のいるところには届きやしないんだと(わかっちゃうから)】
【今すぐ消えてしまいたかった。神様は乗り越えられない試練を与えないなんて嘘だった。自分が乗り越えられなかったものを乗り越えてゆく人たちを、世界はそれから目を逸らすなって意地悪を言う】
【誰からも同情されてしまえる弱者になってしまえたならどれだけ良かったのだろうって思ってしまう。だって優しくないから。優しい子はこんな風に思わない。思うはずない。だって、優しいから】

――――――――、、

【――嫉妬に狂いかけた歯列が軋む音がした、獣みたいな醜い吐息を漏らさずに済んだことだけが一生のうちで一番誇れる出来事なのに違いなかった。だとしたら】
【ふわふわのお洋服はどこまでも死に装束、一生懸命に何か隠そうとする薄霧すら死に化粧に過ぎず、なら最後に全部燃えてなくなっちゃって終わるから、畑に撒いてしまってほしい】
【そしたら今度こそ世界を滅ぼしてみせる。人間が大好きな犬ならお花を咲かせてくれるけど、人間が大嫌いな蛇だから未来永劫一ツだって花なんて咲かなくしてあげるって】
【もっと深く俯くのなら、あるいはそのまま座り込んでしまいたいのかもしれなかった。子供みたいに振る舞うには、少し、大人になりすぎてしまったけど】

どして、

【だから彼女は沈黙を返した。それが一秒でも十秒でも一分でも百分でも七分でも十三秒でも何でもよかった、彼女の中で「なにか」が終わるだけの時間、それだけの時間を沈黙し続けて、】
【そしたらもしかしたら百年だって待たせてしまうのかもしれなかった。――そんなはずなかった。だって百年も大事な貴女を隠し続けたなら、わたしはやっぱり許されないから】
【だれかを怒らせてしまうまえに言葉を返してあげる、――だとしても、なにか不明瞭なノイズとよく似ていた、長い前髪に委ねたままの表情が何かを訴えていた、付点四分休符いっこ、】

――――――――――――――――――――――――――――っ、かんないよ、なんで、やめちゃえるの!?
なんで、……、なんで、…………、ずるい、……ずるい! わたし、だって、――――――――――――わたし、だって、

【"睨みつける"視線が、けれどひどく濡れていた。だから視線なんて涙のせいで乱反射、どっかに飛んでっちゃって、貴女に届くころにはうんと弱くて、ちっとも怖くない】
【泣いてしまっていた、そうして初めて目線がきちんと向けられた。そして訴えるのなんてやっぱりちっぽけな言葉、うらやましいって言いかえることも知らない、子供みたいな嫉妬】
【だって苦手なことだって我慢しないといけないんじゃないの? ――そうやって信じて我慢していた。――我慢するのをやめたらやはり分かりきっていたことになった、ゆえに】
【嫌い/苦手だからってやめてしまえること、やめてしまうことができること、わかんないしわかれないみたいに。だから魔法を使っているみたいに見えた、なんでもできちゃう魔法に見えたら】
【――――ずるい、って、また、繰り返す。言葉にならない「ずるい」のなりそこないも。かわいそうに死産した言葉の亡骸は見せつけるほど多くはなら/なれなくて、だから、】

わたしを、

【(不明瞭な声のくぐもり、)(いいこにしないで/えらいこにしないで/すごいこにしないで)】

【(誰かに何かあげるのはわたしが何か欲しいからなの)(誰かに優しくするのはわたしが優しくしてほしいからなの)(誰かに笑うのはわたしが笑ってほしいからなの)】
【(誰かに食べさせてあげたご飯はいつかのわたしが食べたかったご飯だし)(誰かに掛ける言葉はいつかのわたしが掛けてほしかった言葉だし)(わたしの全部はわたしがしてほしいことでできてて)】
【(それをいいことだって、えらいことだって、すごいことだって言われたら、どうしたらいいのか分からないの)(――きれいじゃないわたしを閉じ込めてしまう音)(厳重に鍵をする音)】
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