【ミリマスR-18】舞浜歩の抱えたトラウマを上書きする話 (24レス)
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2: オーバーライト 1/19 [sage saga] 2021/03/14(日)00:20 ID:Xw+hWuzl0(2/21) AAS
 十一月の某日。いつものようにアイドルの付き添い兼外回り営業から戻ると、事務所に一通の封筒が届いていた。テレビ局からだ。手に持つとずっしりと重たかったその封筒の中には、ドラマの制作委員会名義で、様々な資料が入っている。封筒の最前にあったドキュメントに目を通すと、我がプロダクション所属のアイドルの名前が書かれているのが目についた。

 名指しのオファーだ。画像を撮影して本人にすぐさま送りつけたかった。きっと飛び上がって喜ぶだろう。だが、内容も把握せず飛びつくのは軽率だ。ムズムズするが、まずはこちらでひとしきり目を通しておかねばならない。

 それから三日後。レッスンを終えた舞浜歩を劇場の事務室へ呼び出した。オファーのあった旨を伝えると、グレートだのマーベラスだのと叫びながら、彼女は拳を高く突き上げてはしゃいでいた。

 温かい紅茶を差し出して、事務室のテーブルへ資料を広げた。歩にオファーがあったのは、月9ドラマの脇役だった。脇役とはいってもほぼ毎回登場の機会があり、主役との関係も頻繁に描かれる。劇中での比重が異なる程度で、扱いは主役と大して変わらないと言っても過言では無かった。受けることになれば相当強力なプロモーションになる。

 歩が打診された役は、幼少期から様々なダンスに触れてきたストリートダンサーの少女(名前はなく【仮】とついている)。高校卒業を前にしても自分の魂を本当に燃やせるダンスに中々出会うことができなかった。ほんの小さなきっかけから彼女が次に足を踏み入れようとしたのは、社交ダンスの世界だった。街の片隅にある小さな社交ダンス教室の門を叩いた彼女は、そこで、背景も動機も全く違う三人と出会い、二組のペアになって新たな世界へ飛び込んでいく。

「ワオ……! 社交ダンスかー。やったことはないけど、面白そう!」
「ダンサーとして確かな実力があり、社交ダンスは未経験、見た目が派手な感じの人を役にあてたい考えらしくて、それで歩へオファーが来たって流れなんだ」
「いいじゃんいいじゃん! その話、受けたい!」
「うん。歩にも資料をよく見てもらう必要があるから最終決定はまだ先にするけど、前向きな返事がもらえてよかった。ただな……」
「ただ……なに?」

 付箋を数ヶ所つけたシナリオを歩に見せた。本格的な台本になる前の、物語全体の筋と言ってもよい。事務所からのNG事項として修正を加えて欲しい所につけた付箋を目印に、そのページをめくった。

 少女がカップルを組む相手は、病弱な読書好きの大学院生だ。就職が目前に迫り、部屋の中でばかり生きていた彼は外の世界を知りたい欲求に目覚めた。公園のベンチに落ちていた社交ダンス教室のチラシを手に取り、地図に誘われるままに歩いていく。先にカップルを作っていた主役の二名の様子を外から見て、自分を変えたい思いに駆られる彼は、相手もいないのに教室へ飛び込み、入室の希望届を書いてしまう。ダンスの相手としての交流を深める内に、二人は親密になり、互いに恋心を抱くようになる。ここまではよかった。

 一向に溝の埋まらない主役の二人と対比するように、脇役の二人は接近し続ける。そして、ベッドシーンが挿入される筋書きになっていることが、そこには明記されていた。

「ベッドシーン……って、アレだよね。その、はっ、裸で……うわ、キスシーンもある……マイガー……!」
「ああいうのって、実際に裸になることは無いよ。カメラに映らないようにチューブトップの水着を着けて撮影するんだ。本当に脱いで撮影する映画なんかもあるにはあるんだが。問題はそこじゃない。アイドルをやっている歩にそんなシーンを演らせるのは、歩本人の負担になるだけじゃなくて、イメージダウンにも繋がりかねない。だから、そのシーンを変えてもらおうと交渉する予定なんだ」
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