狸吉「華城先輩が人質に」アンナ「正義に仇なす巨悪が…?」【下セカ】 (433レス)
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3: ◆86inwKqtElvs [saga] 2020/08/21(金)09:52 ID:Vqcr7VCy0(3/86) AAS
 正直ゴム有なら僕ももう、アンナ先輩の言うとおりにしてもいいかと思っていたりも正直あるけど、アンナ先輩が妊娠したらアンナ先輩の両親からは社会的に命を絶たれ、僕の母さんからは生命的な意味で命を絶たれる。そして僕の死体はアンナ先輩が美味しく戴いてお腹の中でずっと一緒、ハッピーエンドだ。アンナ先輩、僕を傷付けないようにはしてくれてるんだけど、どうも食人趣味にも目覚めかけてて、この前喉元や小指を食い千切られそうになったんだよなあ。……あれは一時的な混乱と駆け引きの為のものだったと思いたい。

 とにかく中出しだけは絶対に出来ない。アンナ先輩は妊娠を望んでいるから避妊が出来ない。避妊抜きにゴムを着けなければならない理由も思いつかない。何よりアンナ先輩は上も下もどちらの口でも、僕の愛の蜜で満たすことが何よりも最上級の愛で快感らしく、故により美味しくいただきたいと、そういう発想に至ってしまっているらしい。

「ふふふひっ、忘れてはいませんわよね? ……わたくしの許可なく愛の蜜を出したら、オシオキですわよ? それとも、オシオキを望むなら、それでもわたくしは……ふふふふ、はあ、あはあ、あ、それも、いいですわね……! 奥間君が愛に悶える顔も見たいですの……!」

「ひ!」

 捕食者が悦びの声に思わず反射的な悲鳴が出た。強制的に快楽を与えられ続けて発狂しそうになった悪夢が蘇る。今のアンナ先輩なら間違いなくあれ以上のことが出来る。

「ああ、我慢はよくありませんわよ? ……ずっとわたくしの為に愛を確かめ合うことを我慢していたのはすごくうれしかったですけど、もう愛の試練は乗り越えましたし、奥間君が我慢する必要はもうありませんわ」

 さらに追い打ちでぐぐ、と腰が押し付けられる!

「たった一言でいいんですのよ? 『僕の愛の蜜を飲み干してください』と、それさえ言えばいいんですの」

 発射が目前だった。でもアンナ先輩が上で飲むのか下で飲むのかわからない以上、答えられない。ついでに言うならアンナ先輩もずっと僕と繋がってないから、下で飲みたがる可能性が高い。

「あら、……奥間君はオシオキがお望みですのね? それもいいですわね……!!」

 とうとう手が股間に伸び、僕の言葉を待たず息子を発射させようと「あ、先輩、ここ、ここじゃちょっと!」僕は両手を使ってアンナ先輩の手を押しのけようとするけど、アンナ先輩の怪力には当然敵わず、むしろ獲物の最期の抵抗を愉しむように嫣然と笑って、

『――皆さん、騙されてはいけません!』

 ――PMの強制放送が始まった。

 僕らの勝利ともいえるデモが行われてから、政府はその主張を否定する為に毎日PMで強制的に放送をしている。

 アンナ先輩の顔が、陰った。

「…………」

 さすがに萎えたようで、アンナ先輩は何も言わずに自分の席に戻る。

「奥間君、続きはまた今度にしましょう? 今日は申し訳ありませんが、綾女さんの分も仕事を頑張っていかなければ」

「……はい」

 寸止めで終わったけど、助かったとは思えなかった。

 僕がアンナ先輩の家からなかなか出なかった理由の一つに、このPMによる政府の強制配信があった。

 アンナ先輩はそのそぶりを見せないけど、この件でアンナ先輩の家は揉めている。僕を拉致監禁なんて暴挙に及んだのも、この件が無関係だったとは思っていない。アンナ先輩が気に病んでないわけがないのだ。

「大丈夫ですか?」

 思わず安っぽい声をかけてしまった。だけどアンナ先輩は、性欲とは全く関係なく、本当に嬉しそうに、

「ありがとうございます。その言葉だけで、わたくしは……」

 政府の強制配信はまだ続いている。真実がどちらかにあるか、《SOX》の一員である僕にはわかっているけど、アンナ先輩はわからない。本能で分かっていても、性衝動や愛が満たされて安定しつつあっても、知識という判断材料がなければどちらが正しいのかなんてわからないのだから。

 僕も何とか性知識を、真実を伝えたいのだけど、そうするとアンナ先輩は今まで自分の行ってきた崇高な愛が卑猥というアンナ先輩にとっての絶対悪だったことを教えることになるわけで、どうすればいいのかわからない。アンナ先輩が壊れたらどれほど恐ろしいことになるか、僕は十日前にさんざん思い知っている。ついでに言うなら僕はアンナ先輩に限らず他の時岡学園の生徒にも性知識を教えたら即退学になることをアンナ先輩の母親であるソフィア・錦ノ宮と約束させられている。

 本当に情けないけど、この期に及んで僕は何もアンナ先輩に伝えられていなかった。

「アンナ先輩」

 とっさに呼びかけてしまったが、かけるべき言葉は見つからず、

「あの、よければ……えっと、今日帰り、華城先輩のお見舞い行きましょうよ」

 今の僕だけじゃ、アンナ先輩の負担を軽くすることはきっと出来ないと思った。

 アンナ先輩には、僕だけじゃ駄目なんだ。

「ええ、そうですわね」

 アンナ先輩は強制放送が続く中、それでも喜びの顔を見せる。同時に悪戯っぽい笑みも浮かべて、

「綾女さんには内緒で行きましょうね。奥間君、一緒に病院に行く前にお見舞いの品物、買っていきましょう」

 その笑顔は可愛らしくも大人っぽく、以前の天使の笑みとはやはりベクトルが違っているけど、魅力の大きさは変わらずに僕の胸をドキドキさせる。

 だけど、無理しているように見えるのは、きっと気のせいじゃなかった。

 やっぱりアンナ先輩には、心の底から笑っていてほしい。

 政府の強制配信は、まだ続いていた。
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