何も無いロレンシア (83レス)
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19: ◆SbXzuGhlwpak [sage] 2019/06/01(土) 02:39:56.02 ID:zJUkddjZ0 ※ ※ ※ 「一度だけ、警告しよう」 営門を出てしばらく歩き、人気が無い街道でのこと。 俺以外に誰もいない。 誰の気配も感じない。 ただ確信はあった。 正体は不明。目的もわからない。だが――仕掛けてくるのなら、今だろうと。 「姿を見せないのなら、敵と見なす」 風が吹いた。木々がざわめく。木陰の位置が代わり、陰と陽が目まぐるしく浸食し合う。 そして――振り返ると、何の脈絡も無く一人の男がたたずんでいた。 「おお、これは怖い怖い」 何一つ怖がった様子も無く、サラリと男はうそぶく。 狐のような男だった。年齢は三十にも四十にも見えるかと思うと、瞬きした次の瞬間には二十ぐらいに見える。背丈は一八〇ほどで、ほっそりとした体つきだ。長い金の前髪が、人を小馬鹿にしたような細い目を隠したり隠さなかったりしている。 白い服を何重にも身に纏い、内側の服は体のラインに沿ったもので、一番外側の服は外套にもマントにも見えた。儀式の前の神官を連想するが、どの宗派なのか見当がつかない。 獲物は身につけてない。手を見てもその拳は小さく、拳ダコも無い。手の皮も薄く、豆が一つも見当たらない。薄い体もあいまって、見た目からは何一つ強さを感じ取れなかった。 だがコイツだ。 「盗賊団を壊滅させた森で、俺を見ていたのはオマエだな」 狐目の男は頬を釣り上げることで返事をした。 「初めまして“何も無い”ロレンシア。私の名はシモン・マクナイト。以後お見知りおきを」 いったい如何なる技を使ったのか、こうして二度も接近され、さらに目の前で対峙しているのにわからない。 隠形の業なら俺も少しはできるが、コイツのはレベルが違うのではなく種類が違うように思える。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1559323558/19
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