荒木比奈「周遊」 (26レス)
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24: ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga] 2019/04/21(日)00:34 ID:q+xfJe/W0(2/3) AAS
私は酔うのが早いし、それが醒めるのも早い。もう頭のほわほわとした感覚は大分薄れている。

「酔いはもう平気?」

「はい」

「よかった」

纏わり付いていたアルコール臭は消えて、代わりに温泉の匂いや、木々の音、春の夜の冷たさを風が運んでくる。

「……またここに来たいっスね」

「……だったら、明日行こうとしてた場所は、またにしようか」

「……っスね」

明日はのんびりして、筋肉痛の足でも労って、ゆっくり帰ろう、と彼は言う。私は腰掛けていた身体を少し、彼の方に寄せて、肯定の意を示した

まだ旅行は終わってないのに、また次の事を考えた。次はどこへ行くんだろう、どんな季節で、どんな料理を食べて……何人で、旅行に行くんだろう

どれだけ考えても、未来のことは分からない。けれど、明るいものになるだろうと言うことだけは確信出来た

水の音、風の匂い、空気が肌を撫でる感触……どれもこれも、漫画では伝えられない、目で見えないものだ。それを、最愛の人と一緒に共有出来る幸せを噛みしめながら、湯船で時間を溶かしていく。

この感情は、写真じゃ切り取れないだろうな

彼の手をとった。指先が湯のせいでふやけていた。私も同じようにしわしわだった。構わず握った。

空気が澄んでいて、月が美しく夜空に映えている。「綺麗でスね」と言うと「綺麗だね」と返ってきた。互いの顔が赤いのは、シチュエーションのせいで、きっと、温泉のせいじゃないだろう
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